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現在、独立時計師たちが注目を集めています。とりわけフィリップ・デュフォーは、伝説的な存在で、2020年11月には、シンプリシティ 20th アニバーサリーが約1億5630万円で落札されるなど、ハイエンドな独立時計を収集するコレクター達のあいだで熱狂的な人気を博しています。
今年の11月にフィリップスによって開催されるジュネーブ・時計オークションXIVは今の熱狂をさらに加速させるかもしれません。フィリップ・デュフォーの希少な作品4つが登場するからです。これからご紹介するものはすべて、長年にわたって収集してきた個人コレクターから提供されたものです。
グラン・プチ・ソヌリ 懐中時計 No.1(ユニークピース)
グランドソヌリは、チャイム音で時を知らせる時計で、毎正時および15分毎に、時と15分の数を自動的に音で知らせるフルストライクモードと毎正時のみ作動させるプチソヌリモードが搭載されています。
フィリップ・デュフォー氏がグランドソヌリに取り組むことになったのは、1980年代初頭にオーデマ ピゲのために2000時間以上をかけて製作した5個のポケットウォッチがきっかけでした。その後、同氏は1980年代後半に独自のグラン・プチ・ソヌリ懐中時計を製作。今回オークションに登場するこの個体は、1つめの作品で、ケースバックのヒンジ付きのカバーを開けると、"No.1"、"grande sonnerier"、そして"Philippe Dufour"のエングレービングが施されているのを確認することができます。また、文字盤上に同氏の名前が記された唯一のグラン・プチ・ソヌリ懐中時計でもあるのです。
予想落札価格: 40万〜80万スイスフラン/ 43万6000〜87万2152ドル / 338万4000〜676万8000香港ドル(約4800万〜9600万円)
グラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーター No.1
1989年から1992年にかけて、デュフォー氏はソヌリのムーブメントを腕時計サイズに小型化するという難題に取り組み、史上初のグラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーターの製作に成功しました。これがその1つめの作品、つまり今回のオークションでは、懐中時計のNo.1だけでなく、グラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーターのNo.1も登場するということです。
グラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーターは、ケース側面にある2つのスライダーで、チャイム機構を操作。4時位置のスライダーで、グランドソヌリとプチソヌリの設定を切り替え、2時位置のスライダーでチャイム機構のオン・オフの切り替えを行います。また、ミニッツリピーターは、リューズにあるプッシャーで、いつでも手動で作動させることが可能です。
グラン・プチ・ソヌリ・ミニッツリピーターは、デュフォー氏のキャリアのなかで8本しか作られていません。そのうち5本がホワイトエナメル文字盤を備え、3本はサファイア文字盤が採用されています。ケース素材は、ホワイトゴールド、イエローゴールド、ピンクゴールド、そしてプラチナが存在します。
今月の上旬に、ピンクゴールドの個体がA Collected Manにおいて763万ドル(約8.3億円)で販売され注目を集めましたが、これを考えるとフィリップスの予想落札価格はかなり控えめに感じられますね。
予想落札価格: 100万〜200万スイスフラン /109万〜218万ドル / 846万1000〜1692万2664 香港ドル(約1億2000万〜2億4000万円)
デュアリティ ピンクゴールド No.8
1996年、フィリップ・デュフォー氏は、1つのムーブメントに2つの脱進機(エスケープメント)を搭載した世界初の腕時計としてデュアリティを誕生させました。それぞれのエスケープメントが完全に独立して動き、ディファレンシャルギアによって誤差が平均化され、より高い精度を実現するというもので、驚異のメカニズムと称賛されました。
デュフォー氏がこのデュアリティの着想を得たのは、1930年代のヴァレ・ド・ジュウ時計学校で作られた数本のスクールウォッチに基づいており、それは、二重テンプ式の懐中時計でした。同氏は、グランドソヌリ同様に、この機構を腕時計のサイズに縮小して作り上げました。デュアリティの機構についてより詳細を知りたい方は、ジャック(・フォースター)が直接デュフォー氏に伺って執筆した記事「フィリップ・デュフォー デュアリティをデュフォー氏本人が解説」をご覧ください。
デュアリティは、当初は25本の製造が予定されていましたが、結局はムーブメントNo.00の個体を含めて9本のみが作られました。No.00は、2017年にフィリップス・ニューヨークで100万ドル近く(約9881万円)で落札されました。今回登場するのは、最後に作られたNo.8。また、ピンクゴールド製は3本しか製造されていません。
予想落札価格: 80万〜160万スイスフラン / 87万2152〜174万4520ドル / 676万8000〜1354万0596香港ドル(約9600万〜1億9200万円)
シンプリシティ (37mm) プラチナ No.57
複雑さと独創性を極め、その才能と専門知識を証明したデュフォー氏が、時計の原点である「いつまでも使い続けられること」に立ち戻るため発想されたのが、極めてシンプルな3針時計のシンプリシティです。2000年のバーゼルワールドで発表され、2014年ごろまでにシリーズとして200本が生産されました。これは年産10数本ですが、シンプリシティのブリッジの緩やかにカーブを描くような流れや、大胆で魅力的な面取り、コート・ド・ジュネーブといった装飾や組立が手作業で行われていることを考えると年産10数本であっても驚異的であると言えます。
次のオークションで販売されるNo.57は、同氏が製作したシンプリシティの中でも初期のモデルの1つです。過去にクリスティーズで2016年に販売された近い製造番号をもつNo.61の個体は、198万香港ドル(約2800万円)で落札されています。現在の環境を考えれば、今回のオークションでは、ロー・エスティメートは軽々と超えていくのは間違いないと思います。
予想落札価格: 25万〜50万スイスフラン / 27万2581〜54万5176ドル / 211万5743〜423万1326 香港ドル(約3000万〜6000万円)
同オークションのオーレル・バックス氏(バックス & ルッソ シニアコンサルタント)とアレクサンドル・ゴッビ氏 (ヨーロッパおよび中東地域のウォッチ部門責任者)は、今回のコレクションについて共同コメントでこう語っています。
私たちや世界中の多くの人々にとって、フィリップ・デュフォーはミケランジェロに相当する時計職人であり、彼の作品がもたらす意味は計り知れません。
デュフォーの半生における作品数は、モディリアーニやマンネなどの巨匠の絵画よりも少なく、デュフォーの愛好家にとって、このコレクションはデュフォー作品のグランドスラムと言えるでしょう。
– オーレル・バックス、アレクサンドル・ゴッビ時計オークションでは近年、ポール・ニューマンのロレックス デイトナやF.P.ジュルヌのスースクリプションウォッチ、オンリーウォッチ2019のパテック フィリップ グランドマスター・チャイム Ref.6300Aなど非常に特別で希少な時計の需要は高まり続けています。次のオークションでは、キャビノチェのなかのキャビノチェと呼ばれるフィリップ・デュフォーの作品においても極めて希少な作品も含まれており、この勢いがさらに加速し続けていくのか、時間が経てばやがてそれもわかるでしょう。
オークションに関しての詳細は、フィリップス公式サイトをご覧ください。