ADVERTISEMENT
ヴァシュロン・コンスタンタンが、自社のアンバサダーで登山家かつ写真家でもあるコリー・リチャーズ氏(Cory Richards)との親善特別プロジェクトとして製作した、尋常でなくクールなオーヴァーシーズ デュアルタイムのプロトタイプを正式に公開した。つい最近、エベレストを新ルートで登るという果敢な挑戦において、リチャーズが着けていたものである。仕様はスタンダードなステンレススティール製のオーヴァーシーズ デュアルタイムとほぼ同じだが、唯一無二のこの時計には、チタンケースが使われ、ベゼルの下をタンタル素材で補強し、ざらつき感のあるグレーカラーの文字盤にはやや大きめのインデックスが配されている。
『ナショナルジオグラフィック』誌などに発表の場をもつ著名な写真家であるリチャーズが、つい最近ヴァシュロン・コンスタンタンの仲間に加わり、彼のスポーツ好きな性格と冒険に挑む志とが、とてつもなくかっこいい腕時計として形になった。41mmながら非常に軽量なこのプロトタイプの、オーヴァーシーズ定番ブレスレットのフルチタン版(さすがのヴァシュロンも製造に手を焼いたそうだ)とミッション専用のベンタイルコットン製ストラップの両方を目にする機会に恵まれた。ストラップもブレスレットも本機のために特注されたもので、本記事の写真に写っているストラップは、リチャーズがエベレストで実際着けていたストラップそのものだ。
チタンとタンタルの構造だけでなく、このプロトタイプには特別な点がまだまだある。デュアルタイム機構にオレンジのアクセントが加えられ、ケースバックから見えるローターには、リチャーズが捉えたエベレストの眺めが再現されている。今回のリチャーズの登頂は、登山パートナーであるエステバン“トーポ”メナ(Esteban "Topo" Mena)と挑んだ試みで、中国チベット側から登り、新ルートを確立しようとするものだった。この計画自体が非常に困難であるうえ、メナとリチャーズは支援を受けず、酸素補給なしで登るというのだ。この手の登山は登頂の難易度を一層増したものであり、一般的には登山のより純粋な形態だと思われている。才能と信念を持ち合わせた登山家の証そのものとされているのだ。
極度の悪天候と劣悪な条件に、リチャーズとメナは頂上への挑戦途中に下山を余儀なくされた(そのお陰で生きてまた翌年再チャレンジができる)スタートから最後まで、リチャーズはこのスポーティで端正ともいうべきヴァシュロン・コンスタンタンを着けていた。もし僕と同じように、このプロトタイプに目を付けている方がいれば、悲しいニュースがある。限定というわけでもなく、本機が生産される予定はないというのだ。まさにヴァシュロンが掲げたスローガン「One of not many」のように、このチタン製のプロトタイプもまたオーヴァーシーズラインナップの「たった一つ」である。本機が成し遂げたのは、ヴァシュロンの品格とセンスを受け継ぎながら、ブランド未踏のスポーティな領域に達したことだ。僕の目には、そこでは本機の製品化が求められているように見える。
詳細についてはヴァシュロン・コンスタンタン公式サイトへ。
話題の記事
Auctions 日本の時計収集を支えた機械式時計ブームと、市場を牽引した時計ディーラーたち
Four + One カントリー歌手の時計コレクションが描く音楽キャリアの軌跡
WATCH OF THE WEEK アシンメトリーのよさを教えてくれた素晴らしきドイツ時計