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我々は今、これまでに見たことのないようなオークションシーズンを迎えている。モナコ・レジェンド・グループは市場の年間チェスゲームにおいて最初に動いた。10月18日(土)と10月19日(日)に開催されたMLGオークション(編注;現在は終了している)はさまざまな価格帯のコレクターのために幅広い選択肢を提供している。
そこで3つの異なる価格帯に分類した、私のピックアップをご紹介する。さらにいくつかの重要なロットもハイライトしよう。
このオークションには2本の重要なF.P.ジュルヌの時計が含まれている。推定落札価格が20万ユーロから40万ユーロ(日本円で約3520万~7040万円)のクロノメーター・レゾナンス(Ref. RN、ロット81)と、推定落札価格が100万ユーロから200万ユーロ(日本円で約1億7600万~3億5200万円)の信じられないほど複雑なアストロノミック・スヴラン(ロット152)だ。また、いくつかのランゲの時計も含まれている。モナコ・レジェンド・オークションは、かつてこの種の時計が注目されずに取引されていたオークションハウスであったので、私はこれらの結果に注目している。
ロット170とロット220、2本のイエローゴールドのパテック フィリップ Ref.1518。
ロット220
ロット170
少し前の、イエローゴールド(YG)のパテック フィリップ Ref.1518がオークションの注目ロットであった時代を思い出す。今ではそれが昔のことのようにに感じられるかもしれないが、MLGにはふたつの注目すべき例がある。ひとつはオリジナルオーナーの家族から委託された出品(ロット170)で、推定落札価格は50万ユーロから100万ユーロ(日本円で約8800万~1億7600万円)だ。こちらは少し使用感があるが、Ref.1526(このオークションにも含まれている)でより一般的に見られる珍しい過渡期の署名があり、長い署名のダイヤルの長さでありながら“Patek Philippe”という言葉のみが記されている。もうひとつの例もYG製で、全箇所にフランスのホールマークが刻印された2重構造のケースを備えており、より力強い。そしてダイヤルはより美しく、シャープな窓を持つ現代的なクリーニングが施されている(ロット220)。推定落札価格が65万ユーロから130万ユーロ(日本円で約1億1400万~2億2900万円)という高いレンジなのは、この時計のほうが額面どおりに評価しやすいという事実を反映している。
どちらがよりモダンだろうか? パテック Ref.5959の小振りなサイズは一部のコレクターにとって理解するのが難しいかもしれないが、これはこれまでつくられた最もクールなモダンパテックのひとつかもしれない。
このオークションにはスプリットセコンドクロノグラフの堅実なラインナップもある。パテック フィリップ Ref.5004のスティールモデル(ロット20、50万ユーロから100万ユーロ/日本円で約8800万~1億7600万円)が再び出品された。私がしばしば引用する(50本製造されたという)数字はかなり過小評価されているように見えるが、それでも信じられないほどの時計だ。ブラックダイヤルを備えたプラチナ製 Ref.5004もカタログに登場している(ロット259、35万ユーロから70万ユーロ/日本円で約6100万~1億2300万円)が、私は一風変わったRef.5959P(ロット266、25万ユーロから50万ユーロ/日本円で約4400万~8800万円)に特別な思い入れがある。これはホワイトラッカーダイヤルとブラックペイントのブレゲ数字を備えた33mmのスプリットセコンド モノプッシャーだ。そして、きわめてクールなブライトリング デュオグラフ Ref.764(ロット109、2万5000ユーロから5万ユーロ/日本円で約440万~880万円)がある。これは1940年代の製造にもかかわらず、38mmというサイズのよりモダンな印象だ。ダイヤルには少しパティーナが見られるが、それに伴う独特の魅力もある。そして今回、スプリットセコンドクロノグラフではないが、ロレックスとパテックの1930年代と1940年代のクロノグラフにも素晴らしいセレクションもある。
価格を問わないピックアップ
ほとんどの人にとっては手の届かないものであり、最もクリエイティブな選択とは言えないかもしれないが、常に議論に値するほど特別な時計がいくつかある。この場合、一番の話題はオークションで最高の推定落札価格を誇る、ブラックダイヤルとダイヤモンドインデックスを備えたYG製のロレックス Ref.6062だ。これは真のヴィンテージコレクターなら誰もが実際に手に取ってみたいと思うもののひとつだ。
この構成のロレックス Ref.6062は、知られている2本のうちの1本だ。
風防が汚れているか、または曇っているように見えるかもしれないが、実際に、長い年月のあいだに溜まったホコリや曇りのために内側をクリーニングする必要がある(これはモノブロック Ref.6062ケースでは特に顕著)。
これは有名なバオ・ダイではない。その来歴がないことに加えて、ダイヤルの構成とブレスレットが異なっており、この構成で現存が確認されているのは2点のみで、そのうちの1本だ。時計に詳しくない人にとっても、驚くほど素晴らしい時計だ。知識がなくても、何がこの時計を偉大にしているかを容易に理解できる。そして、それはバオ・ダイの品質をもはるかに凌駕しているのだ。バオ・ダイの時計はその来歴により2017年に506万427ドル(当時のレートで約5億7000万円)の結果をもたらしたが、この時計はそれよりわずか10年強前にその10分の1の価格で売却された。コレクターがこれがロレックスの聖杯であることを最終的に理解すべき今、この種の時計が市場に戻ってくるのに絶好のタイミングだ。推定落札価格は“300万ユーロ以上(日本円で約5億2800万円)”で、これは市場のブームの後でもオークションではめったに見られない価格だ。
ロレックスにこだわるなら、似たような雰囲気とアラブ関連の歴史を持つ、本当に信じられない2本のプラチナ製デイデイトモデルがある。ロット67は黄色に変色したダイヤモンドセットのダイヤルを備えた珍しいRef.6612Bであり、イースタン・アラビア語のディスクと格子状のプラチナ製ブレスレットが特徴だ。何があったのだろう? なぜもうこのようなブレスレットは手に入らないのだろうか? そしてロット196は“シェヘラザード”というニックネームで知られるRef.1804。ゴールドトーンのダイヤルに、イースタン・アラビア数字のピンクゴールド製アプライドインデックスとダイヤモンドセットのベゼルを備えている。これはコレクターにとって伝説的な時計であり、最後にMLGで売却されたのは2022年で、26万ユーロ(当時のレートで約3590万円)だった。推定落札価格はそれぞれ12万ユーロから24万ユーロ(日本円で約2100万~4200万円)、18万ユーロから36万ユーロ(日本円で約3200万~6300円)だ。
最後にオークションの最後のロットである、クロワゾネエナメルダイヤルを備えたパテック フィリップ Ref.2481 “Tropical Rain Forest”を見ることができてかなり興奮した。それは期待を裏切らなかった。このダイヤルが最後に出品されたのは2023年6月のフィリップス ニューヨークで、111万7600ドル(当時のレートで約1億5600万円)で売却されたが、これは1950年代の鮮やかなダイヤルへの需要を示している。このモデルは特に鮮やかだが、これらのダイヤルでは必ずしもそうではないことが少なくない。ケースも力強く見え、リューズの近くに素敵なパティーナが見られる。通常、同様のダイヤルを見るにはパテック フィリップ・ミュージアムを訪れる必要がある(そこには2本ある)ため、40万ユーロから80万ユーロ(日本円で約7000万~1億4000万円)でこれを手に入れたいと思うコレクターがいることは間違いない。
ミッドバジェットのピックアップ(開始価格2万5000ユーロ/日本円で約440万円以下)
私はここで、ブラックダイヤルを備えたYG製パテック Ref.1578 “GMOO”によって、アメリカの誇りを示している。パテックのタイムオンリーウォッチにおいてイエロー/ブラックのコンビはとても希少価値が高いが、さらにクールなのはこの時計に“A.G. Ferris – 1921–1953”という刻印が施されていることだ。彼はゼネラルモーターズ海外事業部(General Motors Overseas Operations)の一員として働いていた。これらのダイヤルはGMウォッチ(おそらく50本程度)であることの動かぬ証拠なのだ。言うまでもなく、パテックの純正ブラックダイヤルは信じられないほど希少だ。1万5000ユーロから3万ユーロ(日本円で約260万~530万円)という推定落札価格は、これらの時計がしばしば1万8000ドル(日本円で約320万円)前後で売却されていることを考えると少し高めに感じるかもしれないが、どのような取引になるかはわからない。これらの時計は実際の価格よりもはるかに高い価値があるはずだ。
私がオーデマ ピゲの13リーニュムーブメントについて語るのをやめるのは難しい。例えばロット43のような、センターセコンドのバリエーションであるCal.VZSSCだ。SS製にシルバーダイヤル、そして3、6、9、12時位置にアラビア数字インデックスという構成は私がこれまで見てきたなかで一番好きなものではないが、きわめてよい時計であり、推定落札価格1万5000ユーロ(日本円で約260万円)の最低価格帯であればかなりよい買い物だ。ただ33mmというサイズは少し小さい。
最後に、ロット198は基本的なSS製であってもそれほど注目されない、きわめて興味深いカルティエだ。このモデルはプラチナ製である。サントス オクタゴンはどう見ても風変わりな時計であることは間違いない。しかしロイヤル オークの雰囲気を持ちつつ、カルティエらしいブルータリストで大胆な美学を持っており、かなりイケている。プラチナとクリーミーなダイヤル、ダイヤモンドインデックス、ダイヤモンドベゼル、そしてラグのあいだのネジ穴にも施されたダイヤモンドという組み合わせはまさにクールだ。ダイヤルは完璧ではないが、2万ユーロから4万ユーロ(日本円で約350万~700万円)のレンジの最低価格帯であれば妥当な価格に思われる。
手ごろな価格のピックアップ(開始価格1万ユーロ/日本円で180万円以下)
私見だが、ここが最も選ぶのが難しいグループだ。なぜならMLGは600ロットもの大量のロットで圧倒することなく、手ごろな価格帯の取引を提示する点において、どのオークションハウスよりも優れていると考えているからだ。私はいくつかの明確な取引(いくつかの潜在的な選択肢がある)を選ぶこともできたし、本当に型破りなオプション(ほとんどの人には間違いなく小さいジルベール・アルベール風の楽しいヴァシュロン-ロット12を含む)を選ぶこともできたが、その中間を選ぶことにした。
まずはクールなホイヤー ソルナール(ロット26)だが、4000ユーロから8000ユーロ(日本円で約70万~140万円)という推定落札価格は妥当だ。このモデルのダイヤルはほかのモデルと比較してかなり明るいホワイトに見えるのがよい。過去の売却価格は4000ドルから7000ドル(日本円で約70万~120万円)の範囲にあるようだが、このケースとダイヤルの組み合わせは久しぶりに登場した最も強力なものに見える。
次に、カルティエのサインが入った珍しい長方形のオーデマ ピゲ エリプス(ロット60)で、推定落札価格は1万ユーロから2万ユーロ(日本円で180万~350万円)だ。APとカルティエには長くて魅力的な協業の歴史があり、そのためほかのカルティエのフォルム(彼らの横向きのエリプスなど)に似ているが、少し異なる時計を見ることがある。これはケースからムーブメントまでAPが手がけたが、ダイヤルにカルティエの署名があるだけでかなりクールである。
最後に、YGとピンクゴールドのコンビのロレックス Ref.3167 “クロノメーター”がある。5000ユーロから1万ユーロ(日本円で約80~180万円)という公正な価格における、珍しく、または予想外の形状のロレックスには多くの魅力があると考えている。これは34mmであるため一部の人には少し小さいかもしれないが、その興味深い形状が大きく見せる。ダイヤルも少し傷みがあるが、それはヴィンテージ愛好家が年月の個性として共感できる傷みだ。このサイズと状態を楽しめる人であれば、このような時計で驚くほど興味深いコレクションを築くことができるだろう。
2025年秋に開催されたモナコ・レジェンド・グループのオークション(編注;現在は終了している)の詳細と登録については、こちらから。
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