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いつかは起こることだと思っていた。これまで9本のBring a Loupeを執筆し、38本(“番外編”や“購入者注意”は除く)の時計を取り上げてきた。2週間前、私はドクサのサブ 300Tでハズレを選んでしまった。いくつか問題があったが、とにかく針がオリジナルではなかったのだ(私はダイヤルのほうを懸念していたのだが)。ドクサのヴィンテージダイバーウォッチへの熱意が先走り、ミスを犯してしまったことをお詫びしたい。だがコールマン・ホーキンスも慰めてくれるように、「間違いを犯していないなら、本気でやっていないということだ」。
2週間前の結果を振り返ると、エッソスタンダード社製のブレゲは1万5200ユーロ(日本円で約280万円)、ブランパン フィフティファゾムス “BUND”は1万5500ユーロ(日本円で約290万円)で落札。ジュベニアのアリスモはまだ販売中で、ドクサ サブ 300Tは流札、ショーメは金曜の午後にオークションにかけられ、本稿執筆時点で1万2000ドル(日本円で約190万円)まで入札されている(編注;ショーメは4月25日に2万1000ドル/落札日のレートで約330万円で落札)。そして、ブラックダイヤルを備えたシーマスターは1000スイスフラン(日本円で約20万円)で落札された。
番外編
ユニバーサル・ジュネーブのレイルルーターはOmegaForumsにて販売中。
今週末(編注;オークションは4月26日に終了しており、9750ユーロ/落札日のレートで約180万円で落札)にモナコ・レジェンドで出品されるギュブランのチョコラトーネ。
特に理由はないのだが、ここに素晴らしいドクサ サブ300がある。(テレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』の)ステフォンならこう言うだろう。「この時計にはすべてが詰まっている」と。オリジナルの(そして正しい)ブラックの針、T表記なしのダイヤル、サイン入りの伸縮するブレスレットとねじ込み式リューズ、そしてもちろんオリジナルの薄型ケースを備えている。
この初期の薄型ケースを持つドクサ サブ300は、わずか1年間しか製造されなかった。ベゼルの塗装にわずかな剥がれがあるものの、素晴らしい個体に見える。もしドクサが好みでなかったり、ダイビングに興味がなかったりするなら、このユニバーサル・ジュネーブ レイルルーターはいかがだろうか。私は竪琴ラグを備えた時計に対する評価と同じくらい、レイルロードウォッチに過剰なまでの愛着を抱いている。だからこのユニバーサル・ジュネーブは多くの条件を満たしてくれる。最後に、先週マークがモナコ・レジェンド・グループのオークション記事でこの時計に触れていたが、時計愛好家の皆さんもブラウザを開いて、このギュブラン “チョコラトーネ”(編注;オークションは4月25日に終了しており、7500ユーロ/落札日のレートで約140万円で落札)の栄光を見て欲しい。
さて、先へ進もう。
サーチナ アルゴノート Ref.8501 501
確かに、風防には3時位置にあるインダイヤルを少し覆うようなシミが、6時位置のインダイヤルの上には擦り傷がある。またご覧のとおり、特にケースバックにはかなりの汚れが付着している。出品情報にあるこうしたディテールは一部の人々を警戒させるかもしれないが、私にとっては、時計を売りやすくするために飾り立てていないことを証明してくれるものだ(このハミルトン ロイヤルエアフォース 6Bにも同じことが言えるだろう)。
Photo courtesy Potters Auction Saleroom
なぜならこのサーチナ アルゴノートはすごい時計だからだ。1968年から72年にかけて製造され、私の目にはシンガー社製としか思えないダイヤルを備えている。搭載するのはバルジュー726で、この個体にはサーチナのサイン入りブレスレットが付属する(これはありがたい。というのもラグ幅が19mmらしく、ブレスレットを見つけるのが最も厄介なサイズだからだ)。私はラウンドケース至上主義だが、この大きな角張ったケースに魅力がないわけではない。特にわずか38mmというサイズであればなおさらだ。加えてこの個体は全体的に良好なコンディションに見え、使用による傷はあるものの、ポリッシュされた形跡はない。
Photo courtesy Potters Auction Saleroom
確かに針先の夜光塗料は黒ずんだり崩れたりしているが、修理可能だ。特にこれが熱心に収集され、徹底的に研究されているようなリファレンスではないことを考えればなおさらである。それにこのダイヤルを見て欲しい。傷だらけの風防の下には、素晴らしい表情が隠れているに違いない。この時計にはまだ誰も300ポンド(日本円で約6万5000円)の開始価格で入札さえしていないが、オークションは4月30日に開始されるのでまだ時間はある。
18Kホワイトゴールド製のヴァシュロン・コンスタンタン Ref.6394
ロックデールズ(Lockdales)は信頼できるオークションハウスで、定期的に注目に値する時計を多数出品しており、28日と29日のオークションも例外ではない。200点以上の選択肢があり、誰にとっても楽しめるものが揃っている(それに出品物をブランドのアルファベット順に並べているだけのオークションハウスには、どこか愛らしいものを感じる)。初めに私が最も引かれたのは、このホイヤー ケンタッキーだった。ツートンカラーのデザインと、ムーブメントのETA 7750はまさに80年代初頭を彷彿とさせる。
次に、このサーチナ DSが目に留まった。この時計を愛しているのは私だけではないだろう(この数字!)。この個体が軍用支給品であるという事実はクールだが、オリジナルのゲイ・フレアー社製ブレスレットが付属していても、私の心を躍らせるには少し足りなかった。そしてローズゴールド製のピアジェの3針モデルもある。これは胸が張り裂けるほど美しく、この1週間ほど、私はゴラム(編注;『指輪物語』『ホビットの冒険』に登場するキャラクター)のように“愛しいしと(my precious)”とつぶやきながらクリックする羽目になった。
Photo courtesy Lockdales
しかし最終的にこのオークションで私が最も心を引かれた時計は、このホワイトゴールド(WG)製のヴァシュロン・コンスタンタン Ref.6394だ。この時計の素晴らしい点は、1.5mほど離れて見たり、ちらっと見たりしただけでは、1950/60年代製のハミルトンかオメガか、あるいはどこかのブランドのドレスウォッチとしか思えないだろうということだ。ドーフィン針、プレーンなダイヤル、3時位置の日付、長方形のインデックスを備えたこの時計は、時計業界のグレーフランネルのスーツだ。
しかしもう一度、あるいはもっとよく見ると、さりげないディテールが浮かび上がってくる。最も印象的なのはラグと、ケース上部のサテン仕上げだ。針にはブラックの塗料が充填されており、同じくブラックが施されたインデックスとマッチしている。部屋中の視線を集めるような派手な時計を求めているなら、このヴァシュロンはあなた向きではない。しかし見るたびに少しずつ新たな魅力を発見できるような、声高に主張するのではなく、ささやくような時計が欲しいのであれば、これほど適したものはそう多くないだろう。
Photo courtesy Lockdales
Ref.6394は長年にわたり様々な素材や針、ダイヤルが採用されてきたが、すべてK107Xムーブメント(この個体は日付表示を備えたK1072)を搭載していた。このムーブメントはジャガー・ルクルト製だが、ヴァシュロン・コンスタンタンとオーデマ ピゲのみが使用している。ローターには回転するルビーが採用されており、これが摩擦の低減にどれほど貢献するかは定かではないが、間違いなく魅力的なポイントになるだろう。この36mmで18KWG製の時計は、本稿執筆時点でもなぜか入札がなく、開始価格は2000ポンド(日本円で約40万円)。オークションは英国夏時間で4月28日の午前10時(編注:日本時間で同日18時)に開始される。
1990年代製のIWC マークXII(Ref.3241と推定される)
1994年に発表されたIWC マークXIIは、多くの重荷を背負っていた。最も明白なのは、40年代後半から80年代半ばまで、わずかな変更のみで製造され続けた伝説的なマークXIの伝統とレガシーを背負わなければならなかったことだ。機能的で無駄のないマークXIは、誰もが切望するような純粋さを保っていると私は常々感じている。余計なものは一切なく、必要なものはすべて揃っているのだ。
Photo courtesy Cheffins
Photo courtesy Cheffins
Photo courtesy Cheffins.
ジャガー・ルクルト製の889/2(IWCではCal.884と呼ばれる)を搭載したマークXIIは、主にダイヤルのいくつかの表記と日付表示が導入されている点で、その前身モデルとは異なっている(フォントに詳しい方のために言うと、マークXIはサンセリフ体の数字を特徴としていたが、マークXIIはセリフ体だ)。だが35mmのステンレススティール製ケースと傾斜しながらも平坦であるベゼル、そして大型のねじ込み式リューズはそのままだ。さらに、一部の知識豊富な人々が心から愛しているブレスレットも導入されている。
出品されている個体はありのまま姿だと思われ、かなり期待できる。初期のシリアルナンバーから90年代半ばのものと推定され、あらゆる部分には使用感があるもののオリジナルだろう(例えばケースバックの汚れ具合に注目して欲しい)。少なくとも私が見つけたプラットフォームでは、このオークションの現在の入札額は表示されていないため、この時計がどれほど熱く競り合われているのかはわからない。とはいえ1000〜1500ポンド(日本円で約20万~30万円)という見積もりは、おそらく最終的な落札価格をかなり下回るものだろう。この時計は英国夏時間で4月30日の午前10時(編注;日本時間で同日18時)にオークションにかけられる。
カルティエ バンブー クッション Ref.78110
私がカルティエの魅力に気づくまでには長い時間、約10年以上かかった。おそらく私と同世代(80年代、90年代生まれ)の多くの人がそうであるように、カルティエの時計に対する印象はマストタンクに始まり、それで終わっていた。子供のころ、どうしようもなくダサかった私は、ほかのクールなステータスを象徴するようなアイテム(スタータージャケット、ジョーダン、パンプスなど)と同じように、手の届かないものに反発していた。カルティエを手に入れる可能性はきわめて低かったため、むしろ嫌うことにしたのだ。
Photo courtesy Genève Enchères
ありがたいことに時は私たちを丸くし、私も若さゆえのそのひねくれた見方をしなくなった。そこで、この素敵なカルティエ クッション バンブー Ref.78110だ。クリスティーズが11月にきわめてよく似たモデルをカタログに掲載したが、その情報によるとこのno.0244の個体は1975年製ということになる(そしてトレイナ氏のデータに基づくと、6時位置にスイス製と表記したMark 3ダイヤルを持つことから、ニューヨークで販売されたものだとわかる)。
カルティエのシェイプウォッチの人気について、今更指摘するまでもないだろう。あなたもここ数年でそのような話をたくさん読んできたはずだし、市場がさらに多くを求め続けていることにも気づいているに違いない。
Photo courtesy Genève Enchères
このカルティエは私が渇望するようなものではないが、その先進的なデザイン、あるいはブランドの様式化された表現方法から生まれた大胆なデザインには驚嘆せざるを得ない。考えてみて欲しい。誰かが“カルティエの時計”と言えば、ほぼ確実に思い浮かぶデザイン要素がいくつかある(私が最初に思い浮かべるのはローマ数字とカボションリューズだが、デザインに言及したカルティエの公式サイトを読んでもいいだろう)。
Photo courtesy Genève Enchères
このクッションケースは小ぶりで、縦27mm×横20mmだ。それでもケースバックの刻印は鮮明で、クリーンなダイヤルと針、そしてポリッシュされた形跡のないケースを持つ素晴らしい個体だ。ユニークなシェイプのカルティエの価値が下がる気配は今のところない。つまり8000〜1万2000スイスフラン(日本円で約160万から240万円)という見積もりは、おそらく最終的な落札価格よりずっと低いだろう。オークションは、中央ヨーロッパ夏時間で4月29日の午前1時30分(日本時間で4月30日の午前8時30分)に開始される。
購入者注意
このモバードの18K製クロノグラフは魅力的かもしれない。サーペント針を持つ古いM90/M95に憧れたことのない者がいるだろうか? それにこのセンセーショナルなケースは素晴らしい。だがこれは、ダイヤルに手が加えられている。
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