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Bring a Loupe 聖杯クラスのロレックス ポール・ニューマン デイトナ、ジャガー・ルクルト トリプルカレンダー、ネオヴィンテージのダニエル・ロート クロノグラフほか

HODINKEE名物コラムの“どこで何が買えるか?”。今週号でそのすべてをご紹介しよう。

金曜日から始まったGeneva Watch Daysで連日お届けされる新作ニュースにちょっと飽きてきたあなたに、うってつけの記事をお届けしよう。正直に言って、今週はインターネット上の時計の神様のおかげで執筆が楽だった。私のレーダーには次々と時計が飛び込んできて、私の要掲載リストに入ってきている。なかには惜しくも掲載から漏れたものもあるくらいだ。

 前回(8月23日)掲載したオークション結果を2件紹介しよう。結論から言うとどちらも好結果だった。eBayのピンク・オン・ピンクのモバードは2000ドル(日本円で約29万3000円)で落札され、私の落札予想価格と私自身の入札額をわずかに上回る結果となった! 新しいオーナーさんおめでとう、これはかなり状態のいい個体だと思う。押収物として競売にかけられたパテック ノーチラス Ref.5711/1300A-001は今朝、手数料含め35万4960ポンド(日本円で約6850万円)で新しい持ち主を見つけたようだ。英国政府当局も胸を撫で下ろしたのではないだろうか。

 今週のピックアップは、聖杯級のポール・ニューマンダイヤルのロレックス デイトナ、ジャンヌレ社製ケースのユニバーサル・ジュネーブ コンピュール、そして小規模オークションハウスの掘り出し物を数点ご紹介する。さっそく見ていこう。

ロレックス ポール・ニューマン デイトナ Ref.6263 Mk1.75 パンダダイヤル、1969年製
a Paul Newman Daytona

 先日、トロピカルウォッチ(Tropical Watch)のジャセック(Jacek)氏が、明らかにポール・ニューマン デイトナだとほのめかす、モザイクのかかったリストショットを自身のInstagramに投稿したとき、私はそれがヤバいシロモノのはずだと悟った。彼ほどの人物がこうやって私たちをからかって興奮させるには、それなりに特別な時計が必要なのだ。翌日、この時計は正式に販売サイトに掲載され、すべてが明らかになった。

 パンダダイヤル仕様のポール・ニューマン Ref.6263は、ベン・クライマーのような著名コレクターを含む多くの人にパーフェクトな存在として崇められている。漠然とした表現に思われるかもしれないが、時計愛好家と話していると、世界でもっとも広く愛されている時計にも“欠点”があることが分かってくる。“そうだな、ケースがもう少し薄かったらよかったのに”というような感想はよく飛び交うフレーズだ。しかし、ホワイトダイヤルのニューマン Ref.6263に関しては、ケチのつけようがない。

 ニューマンのなかでも究極とされるRef.6263は、バルジュー社製Cal.72ベースの改良ムーブメント、ねじ込み式プッシャー、ブラックベゼルを備えた手巻きデイトナ世代の最終型として際立った存在だ。審美面では、大概の時計コレクターが赤いアクセントが省かれた(それゆえパンダのニックネームがある)後期ニューマンダイヤルに引かれるようだ。

a Paul Newman Daytona

 今回販売されている個体はすべての要件を満たす。ケースは軽く使用感があるものの力強さは健在している。ダイヤルは全体的にクリーンで、適度な経年変色が見られ、トラックの外側はわずかにトロピカルな雰囲気を帯びているものの、パーツはオリジナルのままである。多くのディーラーが気づかないなか、この個体が最後に販売されたのは2022年5月のクリスティーズ・ジュネーブであるとジャセック氏が明記していることは称賛に値する。私は当時この個体を見た記憶があり、そのダイヤルを忘れることはないだろうが、この時計が以前に一般向けに販売されたことが明確であることはマイナス要素ではなく、むしろプラスに働いている。

 トロピカルウォッチに掲載された全容をご覧いただきたい。希望価格は73万5550ドル(日本円で約1億730万円)で、偉大な時計に相応しい数字となっている。もし私と同じように、70万ドルのポール・ニューマンの市場から締め出された人たちには、残念賞としてeBayのこのクールな古いロレックスのTシャツを提案したい。

チューダー サブマリーナー Ref.7928 “トロピカル・ポインテッド・クラウンガード”、1960年製
a tropical tudor submariner

 そう、2週間前に紹介した時計と同じ個体を紹介しているわけではないという私の言葉を信じて欲しい。ヴィンテージのチューダー サブマリーナーに関して、私はこだわりがある。この前の記事で、マットでありながらギルトダイヤルのチューダー サブマリーナーについての私の考えを詳述したが、繰り返す価値はある。これらのダイヤルは、トロピカルパティーナがなくてもきわめてユニークな表情を持つが、特有の事情により、このようなパティーナの風合いが生じたようだ。

 この個体は1960年製で、販売ディーラーがハワイの元の所有者の家族から譲り受けたものだ。出品者の調査によると、元の所有者であるアルバート・ラポゾ(Albert Rapozo)氏は1919年にカウアイ島で生まれ、第2次世界大戦中にアメリカ海軍に入隊し、除隊後は軍属として勤務を続けた。この時計に添えられているIDカードは、ラポゾ氏が米海軍補給センターで“42年間の名誉ある連邦政府職員として勤務後”退職したことを祝う品である。現在見られるトロピカルな色調は、ハワイの陽光の下長年着用された結果であると推測され、正真正銘トロピカル チューダーと言えよう。

a tropical tudor submariner

 サンフランシスコのフォグシティ ヴィンテージ(Fog City Vintage)のティム(Tim)氏は、この時計のオリジナル性を考慮し、メンテナンスもレストアも一切施さない現状渡しでの販売を選択した。希望価格は2万9450ドル(日本円で約428万円)で、こちらから出品の詳細を確認できる。

アンリ・ジャンヌレ社製コロニアル風ケースのユニバーサル・ジュネーブ コンピュール、1930年代製
a universal geneve compur

 Bring A Loupe(BAL)が復活して以来、ここで紹介するための素晴らしいユニバーサル・ジュネーブ(UG)を探してきたが、なかなか目ぼしい出品物に巡り会えないでいた。その昔、BALで初めて同ブランドとニーナ・リントの時計について知って以来、このコラムとUGは私の頭のなかで密接に結びついている。このブランドの良質なモデルが市場に出回っていないことは、私にとって興味深いことだ。ユニバーサルの復活のニュースを考えると、時計コレクターたちは最高の時計を待ち望み、手元に置いているのだと思う。

 この1930年代製コンピュールはまさに特別で、ニーナやクラプトンのような有名モデルよりもはるかに玉数が少ない。直径34mmで、非常に旧世界然としたルックスで、万人向けではないが、もし魅力が理解できないのであれば、代わりにHODINKEEのほかの記事を読んでみて欲しい。ダイヤルのフォントには鮮明なセリフ体が使われており(外周の“1”の文字を見てほしい)、セクターダイヤル風のインナーリングとアプライドアワーマーカーの組み合わせが個人的にとても気に入っている。

a universal geneve compur

 売主はこのケースの特別な点について長文で解説しているが、それも当然のことである。簡単に言えば、この“コロニアル”風ケースは、スポーツウォッチの黎明期の試みであったということだ。頑丈でタフなビジュアルを矜持としているのだ。そしてこのケースは、当時最高のケースメーカーのひとつ、アンリ・ジャンヌレ社が手がけたものだ!

 マレーシアに拠点を持つS.ソング(S.Song)のショーン(Sean)氏は、このユニバーサル・ジュネーブ コンピュールに1万3500ドル(日本円で約197万円)を提示している。詳細はこちらをご覧いただきたい。

ジャガー・ルクルト トリプルカレンダー Ref.2721 ピンクゴールド製、1940年代製
a JLC triple calendar

 同僚であるタンタン・ワンは私の意見に大反対だが、私はトリプルカレンダーの複雑機構がとても魅力的だと思っている。実際、嫌いなものなどほとんど存在しない。時計に月、日、そして曜日表示が本当に必要だろうか? いや、そんなことはない。ジャガー・ルクルトのこの時計は、ニューヨークのファウンドウェル(Foundwell)のアラン(Alan)氏と最近会ったときに(誰も驚かなかったが)私の目に留まった。この時計は以前にも見かけたことがあるが、率直に言って、完璧なものなどなかった。ケースが極端に研磨痩せしていたり、リダンダイヤルだったりと残念な個体が大半のなか、この時計にはそれがなく、真の価値がある。

 これはきわめてレアな時計だ。“レア”という言葉の定義について議論するリスクなしに、私は自信を持ってそう断言できる。簡単に言えば、PG製ケースとオリジナルダイヤルを持つこの時計の新たな個体を見つけるのは幸運だということだ。今日、ほかに売りに出されている個体を見たことがないし、実際、これまでに見たことがないと思う。売主によればケースは未研磨だと説明されているが、実際に時計を触ったところ、私もアランと同じ意見だった。直径は35.5mmと大きく(特にこの時代のものとしては)、エレガントな薄さで、手首によくフィットする。

a JLC triple calendar

 ニューヨークのファウンドウェルのアラン氏は、このヴィンテージJLCを5895ドル(日本円で約86万円)で掲載している。こちらから詳細をご覧いただきたい。

ダニエル・ロート クロノグラフ Ref.2147 イエローゴールド、1990年代製
a Daniel Roth chronograph

 およそ50年前までさかのぼるが、このダニエル・ロートのクロノグラフは、復活を遂げたブランドから今週発表されるタイムリーなものであり、純粋に特別な時計である。ダニエル・ロートがブレゲに長年勤めたあと独立し、その名を冠したベンチャーを立ち上げた初期に製作されたRef.2147 クロノグラフは、私のお気に入りのロートモデルのひとつだ。

 ダニエル・ロートをご存じの方なら、彼独特の二重楕円のケースシェイプも知っているだろう。Ref.2147 クロノグラフはこのユニークな形状を見事に生かし、インダイヤルがメインダイヤルに必要な多層構造を加えている。また、プッシャーも二重楕円の形をしており、とても気に入っている。ダイヤルにはロートのもうひとつの特徴であるピンストライプギヨシェを採用。内部に搭載されたレマニアCal.2320は、ロートの工房内にて手作業で組み立てられ、パテックRef.5070と同等のレベルに仕上げられている。

a Daniel Roth chronograph

 このダニエル・ロート クロノグラフは、プッシャーズ.io(Pushers.io)を通じて、グラール(Graal)のゾーイ氏とInstagramの@watchgirloffdutyによって4万9500ドル(日本円で約721万円)で掲載されている。出品の詳細についてはこちら

ロンジン ルーレット イエローゴールド製懐中時計、1950年代製
a longines roulette pocket watch

 イナイヘン(Ineichen)のやや雑多なオンラインオークションで、ロンジンのこのルーレット懐中時計を見つけた。私はカルティエルクルト、モバードなど、さまざまなブランドのものを長年にわたって見てきたが、以前アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)で販売されていたスティール製モデルを所有していた。これらは興味深い小さな時計であり、2024年にも使用可能な懐中時計という数少ないもののひとつだ。内側の時計ケースと外側のルーレット部分を隔てているのは、なんといくつものボールベアリングであり、中心を持って外側を回せばなんと不思議なことに、外出先でギャンブルができてしまうのだ。

 このヴィンテージのロンジン ギャンブルモチーフの懐中時計は、2024年9月4日に終了するイナイヘンの“Elegant Era”セールのロットNo.58だ。入札開始価格は2800スイスフラン(日本円で約48万円)で、現在入札はない(US版公開時)。

ホイヤー カレラ Ref.73653N “ファースト・エクセキューション”、1970年代製
a vintage heuer

 eBayで最近、素晴らしいヴィンテージ・ホイヤーが多数出品されている。これは時計コレクターがほかのブランドに目移りしている兆候かもしれないが、もしヴィンテージホイヤーに恋焦がれているのなら、今が手に入れるチャンスかもしれない。Ref.73653N カレラは数年間しか製造されず、ユニークな特徴がいくつかあるため、私のホイヤーのウォッチリストに長いあいだ入っていた。これらの時計は、Cal.11を搭載した自動巻きカレラがC型ケースに登場したあとの、1970年代初頭のものであり、1960年代と70年代のカレラが融合している。クロノマティックのリファレンスから受け継いだシェイプとスタイルの内側には手巻きのバルジュー社製キャリバーが組み込まれている。手巻きムーブメントのため、ケースは自動巻きのC型ケースほど厚くはない。

 このリファレンスのブルーメタリックダイヤルは、ミック・ジャガーのカレラを思い出させる。彼の時計はリファレンスが異なるうえ自動巻きだったが、外観は非常によく似ているし、私ならこれを選ぶだろう!

 セルビアのクラグエバツ(Kragujevac)のeBay出品者がこのRef.73653N カレラを、9月2日(月)午前8時54分に終了するオークションに出品している(US版掲載時)。現在、開始価格4690ドル(日本円で約68万2000円)にまだ入札はない。

オーデマ ピゲ 超薄型ドレスウォッチ イエローゴールドケース、1960年代製
a vintage audemars piguet

 ロイヤル オーク以前のオーデマ ピゲは結構見落とされており、率直に言って過小評価されている。そこで、ヴィンテージの魅力が詰まったシンプルな超薄型ドレスウォッチを紹介しよう。ケースはシンプルだが、ラグは横から見るとわずかに傾斜しており、手首への収まりをよくしている。わずか32mmだが、これがこの手の時計の定石なのだ。実物に何本か出合ったことがあるが、毎度シンプルでエレガントなインデックスに引かれている。12時位置の3本線と、3・6・9時位置の太めのマーカーにご注目。

 搭載されたJLCベースのAP Cal.2003/1は手巻きで、(本当に)見た目もゴージャスだ。超薄型ムーブメントにより、ケース全体の厚さは3.75mm(風防含め!)に抑えられている。

 マイアミに住むeBay出品者は、このオーデマ ピゲを3895ドル(日本円で56万6000円)のBuy It Nowまたはベストオファーで掲載している。

ロレックス オイスター パーペチュアル (おそらく)Ref.6565、1950年代製
a vintage Rolex

 ニューハンプシャー州の小さなオークションハウスからの掘り出し物を紹介しよう。ヴィンテージ時計収集で重要な3つのCは“コンディション、コンディション、コンディション”だと言われているが、この時計はまさにそれに当てはまる。この時計自体は特別なものではなく、おそらく1950年代製のRef.6565 オイスター パーペチュアルであろうが、このようなコンディションで見つかれば、非常に厳しい目を持つ時計コレクターでさえ誇りを持って身につけることができるロレックスとなる。とてもユニークなダイヤルデザインで、通常のヴィンテージOPとは一線を画している。この時計は、風防を研磨剤で磨けばきっと素晴らしい状態となるだろう。

 このロレックスはニューハンプシャー州プレーンフィールドのウィリアム・スミス・オークションにより、第57回ポストレイバーデー・オークションのロットNo.181として、さまざまな美術品、家具、宝飾品とともに出品された。予想落札価格は400〜600ドル(日本円で約5万6000円〜8万7000円)であったが、US版掲載時点ではなんと1000ドル(日本円で約14万5000円)に達している。