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Bring a Loupe マラカイトダイヤルのデイトジャスト、ミントコンディションのロンジン、そしてホイヤー スキッパー

今週もヴィンテージウォッチの世界に招待しよう。

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本稿は2020年5月に執筆された本国版の翻訳です。

今回はマラカイトダイヤルが装着されたデイトジャストや、グレイル(聖杯)と呼ぶに値するホイヤー スキッパーといった、ユニークなデザインのアイコニックな時計を含む多彩なラインナップでお届けしよう。さらにクロノグラフの操作を楽しめる高名なCal.30CHを搭載したミントコンディションのロンジン、そして現在の時計シーンでベストバイのひとつに数えられるであろうヴァシュロン・コンスタンタンだ。予算を抑えたい人には、比類なきスタイルで味わい深いセンスを見せるシーマもご紹介しよう。今週のラインナップは、最高の時計がそろうラウンドアップとなっている。


ロレックス デイトジャスト Ref.1601、1973年製
Rolex

 ロレックスが長年にわたりデザインに大きな変更を加えてこなかったことを批判する人は多いが、それこそがこのブランドの魅力だと私は主張したい。同社がセオリーから外れたデザインを採用する際、特に評価の高いフォルムにおいてそのインパクトは一層際立つのである。その顕著な例のひとつが、ロレックスがベストセラーモデルに木材や石材などのエキゾチックな素材で作られた文字盤を装着した場合である。

 今回紹介するのはデイトジャストだが、ただのデイトジャストではなく、その美しいマラカイトダイヤルが物語るように特別な1本である。かつてマラカイトはそこから抽出される銅の採取のために重宝されていたが、その緑豊かな輝きからのちに装飾用の石としても選ばれるようになった。Ref.1601はこのモデルの系譜で初めてストーンダイヤルを採用したリファレンスであり、同時にデイトジャストを現在のアイコンたらしめたモデルでもある。この個体は非常に良好な状態で保存されており、それは厚みのあるケースと完璧なダイヤルを見ても明らかである。

Rolex

 この時計はあらゆる意味で真のレアウォッチである。しかし“レア”という言葉が明確な説明もなく使われることが多いため、今回はこの時計がなぜ“レア”であるかを簡単に説明しよう。まず第1に、ロレックスは歴史的にクラシックモデルの特別なバリエーションを意図的に少量生産することで、その特別性を強調して価値を維持してきた。さらに見逃せないのは、ストーンダイヤルは製造過程で高い破損率を伴うために量産が非常に難しいという事実である。言い換えれば単に岩を切り出し、その端を整えるだけでは済まないということである。

Rolex

 この時計はアーティストであると同時にコレクターでもあり、Talking Watchesの出演者でもあるフィリップ・トレダノ氏が、自身のコレクションから提供している。価格は4万ドル(当時のレートで約320万円)で、詳細は彼のInstagramからチェックできる。


ホイヤー スキッパー Ref.7754
Heuer

 それほど前のことではないが、コレクターズアイテムとしてのホイヤーの市場の変遷について議論したことがある。そしてそのあとも、私の見解は大きく変わっていない。その要点を述べると、投機的なコレクターが誤った理由で参入した一方で一部のオークションハウスが誇大広告戦術を推し進めた結果、コレクターとその周辺が利益を得ようと現金化を図り、結果として市場は質の高い在庫であふれかえったのである。ほとんどのモデルの価格は値崩れして現実的なレベルに戻ったが、その希少性ゆえに依然として強い価値を保っているものもある。次に紹介するのはコレクターたちが夢見て手に入れたいと願う希少な時計であり、まさに見逃せない好機と呼べるものになっている。

Heuer

 ヨットレースをインスピレーション源としたスキッパーはかつて知る人ぞ知る存在だったが、そんな時代はとうに過ぎ去った。現在ではヴィンテージホイヤーシーンにおける“イットウォッチ”であり、その理由も明白である。まず第1に70年代を象徴するあのカラーコンビネーションはほかのどの時計にも見られるものではなく、基本的に控えめな表情のカレラをサイケデリックな領域にまで引き上げている。さらにその極端なまでの希少性もまた魅力の一因であり、この点でもこの時計は相応の価値があると思う。存在が確認されているのはおおよそ20本程度であり、これが売れた後にグレーマーケットでロレックスのデイトナ並みに同じものがすぐに供給されることは期待しないほうがいい。

Heuer

 これほど希少な時計に関してはコンディションはほとんど関係ないという人もいるかもしれないが、そんな主張は明らかに間違っている。全体的には非常に良好な状態だが、いくつかの点には注意が必要だ。具体的にはケース側面の10時位置に小さな穴が空いていること、クロノグラフの針が色褪せていることや、ダイヤルの9時位置付近に小さな傷跡があることなどだ。それ以外は未研磨のきれいな状態であり、ほかの個体で見られるような夜光塗料周辺の変色もない。このような“ほかに同じコンディションのものは見つからない”ような場合で、ホイヤーのスキッパーのなかで特に素晴らしいモデルを求めているならこの機会を逃す手はないだろう。最近公開されたスキッパーのオークションのうち、ボナムズでの2回のオークションではそれぞれ8万ドル(当時のレートで約640万ドル)と10万ドル(当時のレートで約800万ドル)を超えていたことも注目に値する。したがってこれらの市場がその後劇的に変化したかどうか、この時計についてさらに詳しく調べる価値があるかもしれない。いずれにせよ、非常に希少かつクールな時計であることには変わりない。

 Analog Shiftはこの希少なスキッパーを6万ドル(日本円で約480万円)で販売している(記事執筆当時)。詳細な情報についてはリンクをクリックして欲しい。


シーマ Cal.234
Cyma

 ブランドのデザイン能力の高さは、そのラインナップでも最もシンプルな作品で判断できることが多い。私がシーマに初めて出合ったのは見事なギルトダイヤルを備えたメーカー初期のタバンのクロノグラフで、時計メーカーとしてのシーマへの評価が高まるにつれて彼らの計時用モデルにも興味を持つようになった。洗練された手巻きキャリバーで駆動し、センスよくスタイリングされたこれらの時計には好きにならない理由が見当たらない。もちろん、このピースも例外ではない。もし小振りな時計をつけることに抵抗がなければ、このピックアップは優れた選択肢であり、しかも比較的手ごろな価格で手に入る。

Cyma

 この時計の時・分針は私が気に入っている特徴のひとつであり、ヴィンテージのシーマのシーンにどっぷり浸かっていない限りは、ほとんど見たことがないようなデザインだろう。幅広い長方形のベースから急激に細くなるこの形状は“シリンジ型”と簡単にラベルを貼ることもできるが、それでは数えきれないほどの針の形状を無視することになる。これは“キュビスト”型ハンズとして知られ、小さな四角形がそれぞれ異なる幅を分けているのが特徴である。この針は非常に少数の時計にしか見られないため、これらの特徴を備えた時計に出合うといつも興奮する。

Cyma

 コンディションに関していえばこの個体は非常に素晴らしく、未研磨のSS製ケースにはほとんど使用感が見られない。売り手はこれを新古品と説明しているが、(以前にも言ったかもしれないが)この用語は本当に1度も日の目を見たことのない完璧な時計にこそ使われるべきだと思う。この時計には当時の純正レザーストラップがすでに装着されており、それにマッチするバックルとシーマの吊り下げタグも付属している。このブランドタグがこの時計オリジナルのものである可能性はあるが、すでに魅力的な時計の魅力をさらに高めるために付属品が追加されるというのはこれが初めてではないだろう。幸いなことに、価格は非常にリーズナブルである。

 ポーランドのeBay販売者はこの時計を999ドル(日本円で約8万円)で出品している(記事執筆当時)。リンクをクリックしてチェックして欲しい。


ロンジン クロノグラフ Ref.7414、1967年製
Longines

 私のロンジン収集に関する基本的なルールに、“ダイヤルに翼のある砂時計がある場合はスルーする”というものがある。冒涜的な偏屈者と呼んでくれても構わないが、それが私のスタンスなのだ。確かにこれが1889年にさかのぼる豊かな歴史を持つ時計メーカーの最初のロゴであることは理解しているが、このエンブレムがあることで時計の全体的な外観が変わってしまっているのも事実だ。ダイヤルにこのエンブレムが頻繁に使われ始めたのは40年代で、60年代にはすでに完全に定着していた。その時点でブランドは従来とまったく異なる存在となっていた。しかしこうした背景を持ちながらも、特定のモデルは例外として私の増え続ける“ヒット(狙い目)リスト”に名を連ねることがある。この時計もそのひとつだ。

Longines

 Cal.13ZNと並び、ロンジンのCal.30CHは今なおクロノグラフのベンチマークを示し続けている。機械的にも構造的にもこれは真の芸術作品であり、非常に読みやすく簡潔に情報を伝達してくれる。この2レジスタークロノグラフキャリバーはフライバック機能も備えることでその機能性にさらに拍車をかけており、連続する複数の瞬間をスムーズに測定することが可能である。私はフライバックを“究極のバーベキュー用コンプリケーション”と冗談で呼んでいるが、おそらくもっと想像力豊かな用途を思いつく人もいるだろう。Ref.7414はこのムーブメントを格納するための優れたホームであり、真のコレクターたちの目には、ロンジンの偉大なデザインの最後のひとつに映っている。

Longines

 この特別な個体はよりコンディションに優れたものであり、1度も研磨されたことのない18KYG製ケースを特徴としている。SS製のモデルと同様にこのダイヤルにはテレメーターとタキメーターの目盛りが赤と青であしらわれており、控えめな時計にポップな色彩を添えている。ロンジンによるとこの時計は1967年にイタリアで最初に販売されたことが確認されており、私自身も現在市場に出ているYG製Ref.7414のなかで最も美しい個体だと確認している。

 イタリアのコレクター、@matt.watchesがこのクロノグラフを5500ユーロ(当時のレートで約66万円)で提供している(記事執筆当時)。


ヴァシュロン・コンスタンタン ヒストリーク Ref.47101、1992年製
Vacheron Constantin

 今回の記事を締めくくるために、少し新しめではあるがそれでも十分に魅力的な時計で終わりたいと思う。この時計に数年間にわたり魅了され続けてきたが、それはその美しさだけが理由ではない。かなり長いあいだ、これは時計シーン全体で最も優れた価値を持つ時計のひとつだとされてきたが、この事実はまだ多くの人に知られていないようだ。90年代に見られたその他多くの素晴らしいリファレンスにも同じことが言えるが、この時代からひとつ選ぶとすれば私はこの時計を推奨したい。その理由を述べよう。

Vacheron Constantin

 ヴァシュロン・コンスタンタンのヒストリークコレクションが、コレクターたちからの評価が高いデザインを忠実に継承し続けている点には常々感心している。これらの時計は復刻と再解釈のあいだに位置し、オリジナルの素晴らしさを損なうことなくハイブリッドな現代化を遂げている。Ref.47101はその完璧な例であり、Ref.4178に忠実なプロポーションで敬意を示しながらも同様に洗練された内部機構を備えている。ヴァシュロンはこれらの時計にレマニアCal.2310をベースにしたCal.1140を搭載しており、ご覧のとおり聖なる三位一体の手巻きクロノグラフに期待される仕上げが施されていることがわかるだろう。

Vacheron Constantin

 ホワイトメタルのケースやブラックダイヤルのバリエーションはプレミアム価格がついているが、このような構成の個体は本当に過小評価されている。状態や付属品の完璧さにもよるが、一般的に1万5000ドルから1万8000ドル台(当時のレートで約120万円〜144万円)で取引されることが多い。これは、非常にお値打ちな時計であることを示している。念のために記憶を呼び覚ますために言っておくと、これは36mm径のヴァシュロン・コンスタンタンのクロノグラフであり、史上最高のクロノグラフキャリバーのひとつを搭載しており、最高の基準で仕上げられている。それがサブマリーナーのマットダイヤルモデルと同じ価格帯(当時)手に入るのだ。サブマリーナーを否定するわけではないが、これには頭をひねらざるを得ない。

 このクロノグラフはクリスティーズオンラインオークションに出品されており、3万〜5万香港ドル(当時のレートで約41万4000円〜69万円)という控えめな予想価格で提供されている(記事執筆当時)。この範囲内で手に入れるのは難しいかもしれないが、それでもお得な買い物になる可能性が高い。詳細はここをクリックして確認してほしい。