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時計愛好家の皆さん、深呼吸しよう。瞑想アプリは閉じて、これから紹介する時計たちに身を委ねてみて欲しい。どんな価値があるにせよ、10分間、時計の世界に浸ることで、少しばかりの安らぎと夢見る時間が得られるはずだ。
まず最初に、パテック フィリップのRef.2508を手に入れた方、おめでとう。もう少しアンテナを張っていれば、これも紹介できたのだが、前回は時計を見つけて記事を書き、金曜の朝にチェックしたらすでに売約済みだったということが起こった。今後も何度かあるかもしれない。先週は、この素敵なロンジン 13ZN (ケースとムーブメントが一致していなかったが、それでもかなりおもしろかった) が 7000 ユーロ(落札日のレートで約120万円)で落札された。落札された方、おめでとう。このサプライズ落札を受けて、グライシン エアマンを掲載することにした。
今週、本格的に取り上げるほどではなかったものの、注目したい時計をいくつか紹介する。まずは1970年代後半のバルジュー製ムーブメント Cal.7765を搭載したホイヤー 1589Bだ。もしこれが好みでなければ、ホイヤーのノーブランド版ともいえるモデルもある。30分積算計が12時位置、スモールセコンドが9時位置という7765のレイアウトは誰もが好むものではないだろうが、この2本にはどこか荒削りなパンクのような魅力がある。
前回取り上げた時計について報告しよう。Arrow of Timeが出品したオーデマ ピゲ ZV SSCは24時間以内に売却され、この時計の価値を正しく理解する人がすぐ現れたことに安心した。ジラール・ペルゴのRef.9034 プレイボーイ、またの名をムーンウォッチは3626ドル(落札日のレートで約57万9000円)、スポーツウェイズのスキンダイバーは396ドル(落札日のレートで約6万2000円)、グライシン エアマンは1026ドル(落札日のレートで約16万3000円)で売却された。それでは、今週の注目する品を見ていこう。皆さんには、いつも読んでくれて感謝している。
クォーツのヴァシュロン・コンスタンタン 222 Ref.46003
Photo courtesy Piguet Hôtel des Ventes
この時計にはもう1週間近く、心をかき乱されている。
ヴァシュロン・コンスタンタン 222の背景はご存じだろう。1977年にメゾンの創業222周年を記念して発表されたこのモデルは、“世界三大ブランド(Holy Trinity)”のなかで唯一ジェンタのデザインではない一体型ブレスレットを備えたスポーツウォッチだった。222をデザインしたのはヨルグ・イゼック(Jorg Hysek)。このモデルは、その歴史のなかでさまざまな素材とサイズ(37mmのジャンボ、34mmのミッドサイズ、26mmのレディース)で3100本が製造され、長年ロイヤル オークとノーチラスの影に隠れていた。このおかげで、このモデルは(相対的に)手ごろな価格で手に入ったが、2022年にヴァシュロン・コンスタンタンがゴールド製のヒストリーク・222を発表し、昨年にはステンレススティール製モデルが登場したことで、状況は一変した。どちらも美しい時計だが、私が222(ヴィンテージであれ復刻版であれ)を買う可能性は、宇宙旅行のチケットを買うのと同じくらい低い。だからこそ、私はその時計に関わりのない、客観的で純粋な気持ちでこのモデルを楽しむことができている。
Photo courtesy Piguet Hôtel des Ventes
私がこの時計に出会うまで知らなかったのは、ミドルサイズの34mmモデル(Ref.46003)にもクォーツムーブメントを搭載したモデルがあったということだ。
残念ながら、私がお伝えできる背景情報はこれくらいだ。というのも、情報を探したり、私よりはるかに知識のある何人かの人に尋ねたりしても、誰もクォーツムーブメントを搭載したミッドサイズの222について多くを語ることはできなかったからだ。それも不思議ではない。ミッドサイズモデルは1000本しか製造されず、その大部分は自動巻きだったからだ。1984年に発売されたミッドサイズの333にはクォーツムーブメントが搭載されていたため、もしかしたらこの時計(1982年製造)は、ある種のテストケースだったのかもしれない。
Photo courtesy Piguet Hôtel des Ventes
Photo courtesy Piguet Hôtel des Ventes
Photo courtesy Piguet Hôtel des Ventes
したがって、この時計はその珍しさゆえに特に興味深い。2026年の今、40年以上前の時計で、ほとんど履歴が不明なものを見つける機会は滅多にない。時計自体は美しいが、ケースは再研磨されていると記載されている。この時計にはアーカイブの抜粋が付属しており、少なくとも真正性に関する疑問をある程度解消してくれるだろう。比較対象が見つからなかったため、5000~7000スイスフラン(日本円で約100万から140万円)という予想価格が妥当かどうかは見当がつかない。これは、これまで手の届かないと思っていたモデルへの(比較的)手ごろなエントリーモデルとなるのだろうか? オークションは19日から開催されているので、結果をお楽しみに。
コルム ゴールデンブリッジ 05.0002
私はこのタイプのジャガー・ルクルト製クロックに弱い。スケルトン、あるいはインラインと呼ばれているのを見たことがあるものの、正式名称はわからない。時計の部品が垂直に配置されていること自体に特別な意味はないが、その厳格なまでのシンプルさには、どこか心を落ち着かせるものがある。何人かの時計職人に、このような配置の時計を知っているか尋ねてみたところ、皆がジャガー・ルクルト以前に誰かが作っていたはずだと認めつつも、すぐには思いつかないようだった。
Photo courtesy Das Kunst und Auktionshaus Kastern GmbH & Co.KG
そのクロックへの愛着から、このコルム ゴールデンブリッジに出会ったときはかなりの衝撃と興奮を覚えたのだが、不思議なことに、このふたつには何の関連性もない。これまで私がコラムについて理解し、高く評価してきたのはアドミラルコレクション、特にフラッグダイヤルを持つ1980年代と90年代のモデルに限られていた。それらはどれも、90年代半ばに友人の父親が着けていたような時計だが、対して私たちはそれに目もくれずこっそりタバコを吸いに出かけ、パール・ジャムなどの話をしていたものだ。
しかし私が知らなかったのは、ヴァシュロン・コンスタンタンが222を発表したのと同じ1977年に、ヴィンセント・カラブレーゼ(Vincent Calabrese)氏がジュネーブ国際発明展で、彼自身が“リニアムーブメント”と呼ぶものを発表し、金メダルを獲得していたということだった。その後、このムーブメントの特許はコルムのルネ・ヴァンヴァルド(René Bannwart)氏が取得し、1980年にゴールデンブリッジモデルが発売された。
Photo courtesy Das Kunst und Auktionshaus Kastern GmbH & Co.KG
この時計の控えめなフォーマルさとは裏腹に、その誕生秘話には反骨精神が感じられる。カラブレーゼ氏によると、彼がある時計を修理していたとき、客が「ムーブメントは見えないのだから、それほど重要ではない」と鼻であしらうように言ったそうだ。そこで彼は、彼の言葉を借りれば“ケースやデザインではなく、ムーブメントが主役の時計を作ろう”と決意したと言う。
この特定のモデルは2000年代のもので、幅32mm、ラグ・トゥ・ラグ50mmの18Kゴールド製のレクタンギュラーケースが特徴だ。Cal.7000は6時位置のリューズで巻き上げられる手巻き式だ。出品情報にはわずか3枚の写真しか掲載されていないが、少し探せば、前面、背面、側面に使われたサファイアクリスタルの大胆な美しさを存分に味わえる写真を多数見つけることができる。それぞれの写真から、この美しいムーブメントの新たな表情を発見できるだろう。
開始価格は6000ユーロ(日本円で約100万円)で、オークションは1週間後。つまり、私はドレスウォッチの時代に突入するのかもしれない、と自分を納得させる時間がまだあるということだ。
18Kゴールド製のエベル 1911 Ref.8134901
これはゼニスのエル・プリメロを搭載した、ソリッドゴールド製のエベルのクロノグラフだ。ドン・ジョンソン(Don Johnson)氏が『特捜刑事マイアミ・バイス(原題: Miami Vice)』で演じたソニー・クロケットが着けていたのと同じモデルで、1996年に修理されたことを示す書類も付属している。これ以上、心を動かされる理由が必要だろうか。
Photo courtesy Antikauktion Krefeld
丸みを帯びたエッジ、ふっくらとしたケース、マッシュルーム型のプッシャー、ベゼルのビスといった特徴を持つエベルの時計を私が心から好きなのか、それとも時間をかけて文化的・時計学的な影響を受けて洗脳されてしまったのか、自分でもよくわからない。どちらでも大した問題ではないだろうが(ウィーザーを初めて聴いたときは好きになれなかったし)、今では1980年代のエベルに、たとえ直感的に引かれるわけではなくとも、少なくとも以前ほどすぐには見過ごさなくなった。
Photo courtesy Antikauktion Krefeld
この時計の開始価格は2200ユーロ(日本円で約40万円)で、状態はよさそうだ。特に、傷ひとつないように見えるダイヤルが最大の魅力だろう。内部にはゼニスのエル・プリメロ Cal.400(エベルでは134と刻印)が搭載されているようで、そのムーブメントの由緒ある歴史を考えれば、それだけで手を出してみる価値があるかもしれない(編注;現在オークションは終了しており、4800ユーロ/落札日のレートで約87万円で落札)。
自分だけの(イエマウォッチの)冒険
2010年代のある時期、どこかの怪しげな組織によって我々が、ヴィンテージクロノグラフ再発見の時代に生きていると宣言されたかのに感じられた(おそらくほかにもそういう時期はあったのだろうが、私がそれを実感したのはこの時だった)。デイトナが長年、過小評価されてきたことは広く知られていた。スピードマスターに関する研究は長年乏しく、ドットが90に近いことなど誰も気にしていなかった時期もあった。スキッパレラが実際にホイヤーが発売した時計なのかどうかも定かではなく、ニーナ・リントもかつて3000ドル(日本円で約47万円)以下で売られていた。これらの時計が爆発的に人気を博すと、次々と見過ごされてきた時計や過小評価されてきたブランドを探し出す動きが活発になったように思えた。
Photo courtesy Hôtel des Ventes Bordeaux Quinconces
こちらはバルジュー製のCal.7734を搭載しており、おそらくこのモデルにも同じムーブメントが搭載されていると思われるが、出品情報には明記されていない。どちらの時計も55年以上前のスポーツウォッチに期待されるような、良好な中古状態に見えるが、前者のベゼルは後者のものよりもかなり使い込まれている。私よりも詳しい方がいれば、出品されているモデルについて詳しく正確に説明してくれるだろう。以前はフォルミカ ラリー(Formica Rallye)とブラウンシュガー(Brown Sugar)のモデルもあったようだが、そこまで詳しく複雑なことは知らない。私の素人目には、どちらも60年代後半から70年代前半の素晴らしいスポーツクロノグラフに見え、きっと着けていてとても楽しいだろうと思う。
Photo courtesy ADJUG'ART
そしてイエマが復刻したもうひとつのモデル、ヨッティングラフもある。しかし現代の兄弟機とは異なり、この個体は3時位置に美しいカウントダウンタイマーを備えている。また、この時計の状態には少し驚かされた。1978年の販売を記録した原産地証明書が付属しており、つまり48年前の時計だが、風防に多少の傷がある以外は、それほど年季を感じさせない。誰もがこんな幸運に恵まれたらいいのだが。
最初の個体は3000~4000ユーロ(日本円で約50万から70万円)の見積もりで22日に販売される。2番目の個体は1200~1800ユーロ(日本円で約20万から30万円)、ヨッティングラフは2500~3500ユーロ(日本円で約45万から64万円)の見積もりで、この2本は17日に販売される。
購入者注意:まったくの別物である“チューダー レンジャー”
チューダー レンジャーは、伝説と呼ばれるにふさわしいモデルだ。どういうわけか、すべてがちょうどよい、まさに理想的な存在なのだ。新しい36mmモデル(オリジナルは34mmでした)はまだ試着していないが、その憧れをかなり満たしてくれるのではないかと想像している。
この個体は(編注;現在オークションは終了しており、3600ユーロ/落札日のレートで約65万円で落札)どう考えてもレンジャーではない。一番の証拠は赤いRANGERという文字だ。そのようなレンジャーは存在しない。ダイヤル以外にも、この時計には多くの問題点があり、時針は短すぎる上に形も違い、秒針も異なる。読者の皆さん、どうか冷静でいてくれ。出品情報にある付属品(この場合は現代のチューダーのポーチ)に惑わされてはいけない。いつか、ここで紹介して議論できるような、正真正銘の個体が登場することを願っている。
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