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ショパール 時を刻む芸術「Inspirations from Japan - Artistic Crafts in Time」

日本をテーマとした、ショパール渾身のメティエダールコレクション。

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2025年10月。ショパール共同社長カール‐フリードリッヒ・ショイフレ氏が来日し、いけばな三大流派のひとつ、草月流の総本部である東京・赤坂の草月会館を会場に、日本文化や伝統美に着想を得た特別なL.U.Cコレクション「Inspirations from Japan - Artistic Crafts in Time」を発表した。

 同コレクションは、カール‐フリードリッヒ・ショイフレ氏が40年以上にわたって日本を訪れ深い絆を育むなか、日常の品々を芸術作品の域にまで高める日本の文化に魅了されたことに端を発する。ショパールの最もアイコニックなL.U.Cコレクションをキャンバスとし、日本を象徴するエレメントや、日本の伝統と装飾芸術から得たインスピレーションをショパール マニュファクチュールが大切に守り続けるメティエダールと融合させたエクスクルーシブなスペシャルエディションを通じて表現している。

日本のモダニズム建築の巨匠、丹下健三が設計した草月会館。その1階部分を占めるのは、彫刻家や作庭家、インテリアデザイナーなどさまざまな顔を持っていた世界的アーティスト、イサム・ノグチによる石庭『天国』を有する大空間だ。© Chopard

 1927年に初代家元・勅使河原蒼風(てしがわらそうふう)が創流した草月流では、“いけばなは、型にとらわれることなく、常に新しく自由に”という考えのもと、伝統を大切にしながら挑戦を続けてきた。これは伝統的なサヴォアフェール、すなわち長年の経験によって培われた匠の技や職人技への敬意と繊細なディテールへのこだわりを大切にしながら、新しい挑戦を続けるショパールのウォッチメイキング、L.U.Cコレクションのビジョンにも重なる。そうした経緯から、草月会館がコレクションお披露目の場として選ばれたという。

 ショパールジャパンの代表取締役トーマス・ドベリ氏のそんな裏話からスタートしたイベントは、ショパール共同社長カール‐フリードリッヒ・ショイフレ氏自らがコレクションのプレゼンテーションを引き継いだ。

ショパール共同社長カール‐フリードリッヒ・ショイフレ氏自ら、プレス向けに「Inspirations from Japan - Artistic Crafts in Time」コレクションについてプレゼン。その力の入れようがうかがえる。© Chopard

© Chopard

© Chopard

© Chopard


L.U.C フル ストライク スピリット オブ ザ・ウォリアー

© Chopard

© Chopard

© Chopard

 なんと言っても最も目を引いたのは、ユニークピースとなるL.U.C フル ストライク スピリット オブ ザ・ウォリアーだ。見てのとおり、侍の面頬(めんぽお、甲冑に付属した顔面を守るための防具)を大胆に表現したダイヤルが印象的だ。武士の世界観にインスピレーションを得たというこの時計は、ダイヤルのみならず、随所に施された手彫りのディテール装飾がストーリーを紡ぐ。

 ケース側面には、瞑想する武士と琵琶を奏でる人物(3時側)と激しい戦闘シーン(9時側)が彫刻で表現されている。これは武道の規律と精神的探求との二元性を描き出したものだという。そしてラグのあいだには不気味な形相でありながら守護的な意味合いを持つ鬼の彫刻、ベゼルには伝統的な鎧の意匠である毛引縅(けびきおどし)や古(いにしえ)の仮面を彷彿とさせる装飾が施される。

 手作業による丹念な装飾はムーブメントにも及ぶ。シースルーバック越しに見えるムーブメントのブリッジには余すところなく様式化された波模様、そして神社の社頭や社殿の前に据えられた“狛犬”があしらわれている。

 思わずその装飾に眼を奪われてしまうが、ムーブメント自体もユニークピースにふさわしいハイエンドなものだ。本作が搭載するのは、ミニッツリピーター機構を備えるCal.L.U.C 08.01-L。ダイヤルを保護する風防と時刻を音で知らせるゴングが、溶接、ねじ、接着剤を一切使用せずにモノブロックのサファイアクリスタルから一体成形され、時、15分、分をクリスタルのクリアな音色で告げる。ショパールが出願した数々の特許のひとつが、不変の音響特性を持つCal.L.U.C 08.01-Lの構造であり、この偉業が称えられて2017年にジュネーブ時計グランプリ(GPHG)では最優秀賞の金の針(Aiguille d’Or)賞を受賞した(受賞自体はローズゴールド製L.U.C フル ストライク)。本作はすでに購入者が名乗りを挙げており購入はできないが、間違いなく今回のコレクションのハイライトとも言うべき1本だ。

 そのほか、時計の詳細はこちらから。


L.U.C クアトロ スピリット “瞑想する達磨”、“サムライ ラスト スタンド”、“円相”

 マニュファクチュールの熟練職人によるグラン・フー エナメルの技を通して、東洋と西洋の邂逅というテーマを表現したのが、この3作品。いずれもジャンピングアワー機構を搭載したL.U.C クアトロ スピリットをキャンバスとしている。すべてブラックのグラン・フー エナメルダイヤルを備えており、一見すると単なるダイヤルデザインバリエーションのようにも見えるが、内実はそれほど単純ではない。

 “瞑想する達磨”は、安土桃山時代の公卿であり書家・画家でもあった近衛信尹(このえのぶただ、1565-1614)の作『瞑想する達磨(Daruma in Meditation)』に着想を得たもので、禅宗の開祖である伝説の僧侶、達磨をミニマルな筆致で描く。

 “サムライ ラスト スタンド”は、傷つきボロボロになっても要が外れないほど強いことから、不撓不屈の精神や最後まで戦い抜くことを象徴する文様である“破れ扇”をモチーフとしている。もちろんこれも、日本では古くから用いられてきたモチーフだ。

 そして“円相”は、禅宗の書画である円(丸)を一筆で描いたもので悟り、真理、宇宙全体など多様な概念を象徴し、始まりも終わりもない円の形は永遠性や無限性を表す。

 これらは筆を使って一気に描き上げられ、時に細く整い、時に太く不規則に描かれ、書き手の瞬間の心境を映し出す。描き直しができないことから、その時の心のありようが筆致として表れるため、単なる装飾ではなく、まさに唯一無二の芸術作品となる。

 そのほか、時計の詳細は“瞑想する達磨”“サムライ ラスト スタンド”“円相”をクリック。

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L.U.C XP “漆 浮世絵”、“日本刀”

 こちらは、L.U.Cコレクションのなかでも薄型である自動巻きムーブメント Cal.L.U.C 96.41-Lを搭載した、L.U.C XPをベースとしたモデル。

 “漆 浮世絵”は、日本を代表する浮世絵師、葛飾北斎の作品にオマージュを捧げたモデルで、伝統的な蒔絵技法を用い、漆工芸の名匠の手作業によって文字盤に富士山が描かれている。北斎の『富嶽三十六景』のなかでも、湾の潮流に逆らう帆船や、波間に網を放つ漁師と対比するかのように静謐にして不動の富士山が印象的な「東海道江尻田子の浦略図」をモチーフとしている。ショパールは2009年以来、宮内庁御用達の老舗漆器店、山田平安堂とのコラボレーションを行なっているが、本作のダイヤルも山田平安堂の熟練漆職人である小泉三教氏によって制作されている。

 “日本刀”は、厳密に言うとダマスカス鋼を加工したダイヤルを持つモデルだが、日本刀の“聖なる鋼”として用いられる玉鋼(たまはがね)から着想を得た技法により、120~160層もの鋼板を重ねて制作された。炎の揺らめきを思わせるモアレ模様が浮かび上がったそのダイヤルは、無常観を説く禅の哲学を表現した。“漆 浮世絵”とは異なり、ダイヤルを手がけるのはスイス・ヌーシャテルのコルセル鍛冶工房だが、数十年にわたり日本の鍛造技術を習得してきた熟練の職人が手がける。

 そのほか、時計の詳細は“漆 浮世絵”“日本刀”をクリック。


L.U.C XP サクラ バイ ナイト

 最後に紹介するサクラ バイ ナイトもL.U.C XPをベースとしているが、こちらはコレクション唯一の女性に向けたモデル。“漆 浮世絵”や“日本刀”とは異なり、小ぶりなCal.L.U.C 96.23-Lを搭載する。

 そのダイヤルは、1774年に創作された歌舞伎演目『二人椀久(ににんわんきゅう)』で、遊女松山太夫がまとう舞台着物にインスピレーションを得たもので、夜に輝く桜を模した精微なミニアチュールが、儚く移ろう生命の美を表現する。ショパールはこのモデルのためにメゾンが有する最高の職人技を結集。背景に繊細なギヨシェ装飾を施し、半透明のラッカーをコーティングすることで光の角度や強さによって刻々と変化する輝きを作り出し、幻想的な夜桜の雰囲気を描き出した。

 この背景の上に、桜の花を彫刻したマザーオブパールをあしらう。一枚一枚の花弁には精巧なエングレービングが施される。淡いピンクで縁取られた花弁の中心部はより深みのある色合いで丹念に彩色。ダイヤモンドのセッティングでさらに輝きを放つ。加えて、これらのエレメントを同じくダイヤモンドで装飾した透かし彫りのゴールドの花々が引き立てている。この立体的な構成がダイヤルに印象的な奥行き感を生み出し、細部に至るまで自然の繊細さと芸術的な技巧を盛り込む。そのすべてが1本1本手作業によって製作されているというのだから、驚嘆に値する。

 もちろんムーブメント側も抜かりがない。ショパール マニュファクチュールの職人によって受け継がれてきた伝統のフルリザンヌ彫刻技法を用いて、文字盤と同様に洗練された装飾が施された。ホワイトゴールド製のブリッジは、精巧な花を掘り込むキャンバスとなり、そのなかで桜のモチーフが際立つ。その表現はきわめて繊細で、エングレービング後、まずは全体に薄い金箔を施して花の周囲を丹念に削り取っていく。さらに周囲の表面にはドット模様を刻み、コントラストを生み出すことでゴールドをまとった桜の花々だけが浮かび上がるように仕立てた。こうして洗練されたツートンカラーのムーブメントとなるが、ブリッジの堅牢性を保ちつつ、その美しさを高めるために、わずか0.02mmの厚さの表面に細部に至るまで緻密な配慮がなされている。

 そのほか、時計の詳細はこちらから。


メティエダールコレクションに宿るメゾンの思い

 「Inspirations from Japan - Artistic Crafts in Time」に代表されるように、ショパールは近年だけにとどまらず、長いあいだメティエダールにフォーカスしたコレクションを発表し続けているが、なぜこうしたコレクションに注力するのだろうか? ショパール共同社長カール‐フリードリッヒ・ショイフレ氏は次のように語る。

 「私たちが、なぜこうしたコレクションを手がけるのかと言えば、ブランドにとってはもちろん、時計産業にとっても失われていく技術を継承していかなければならないという思いがあるからです。そうしたサヴォアフェールは生産性が制限されるため、やはりコレクションのなかでは限定的にしか作れません。それを手がけることができる職人をメゾンとしても抱えなくてはいけませんが、このノウハウが途絶えてしまったら時計産業もここで終わってしまうかもしれない。伝統工芸をやはり残していかなくてはいけないという義務が、私たちメゾンにはあると思うのです」

 「特にそのなかでも私たちはリーダー的な存在になっていきたいと考えています。なぜそうしたことができるかといえば、それは私たちが家族経営のファミリー企業だからです。数字に追われたり、制約されることなく、継承していきたい技術を継承し、そうした技術を持った職人を今後も育てていきたいと思います。こうしたコレクションを好む人はそれほど多くはないのかもしれません。でも、こうした芸術的コレクションが好きな方たちは確実にいるのです。私たちメゾンは、今後もそうした人たちに向けてコレクションを作っていきたいと考えています」

 そのほか、ショパールの詳細については公式サイトまで。

 特に記載のないものは、すべてPhotographs by Kyosuke Sato.