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Photos by TanTan Wang
数年前に初代エコ/ネイトラ リヴァネラが発表されたとき、クラシックなレクタンギュラー(角型)シルエットに、純粋なブルータリズムの思想を宿した現代的なデザインとして、私は強く引かれた。たしかに独創的ではあったが、ムーブメントによるサイズやプロポーションの制約のせいで、スポーティさとエレガンスの両立には少々苦戦している印象を受けた。それでもそのデザイン言語は非常に魅力的で、リヴァネラは当時として新鮮な存在だった。
新作リヴァネラ ピッコロは、ついに完成形に近づいたと言える仕上がりだ。より多くの手首に自然に収まる、真にコンパクトなデザインとなっている。グレード5チタン製のレクタンギュラーケースは幅26mm、ラグ・トゥ・ラグで33mmと、先代モデルよりもはるかにバランスの取れたプロポーションを実現。ケース厚はわずか6.9mmと非常にスリムで、軽量なチタンによる構造は、実際のサイズ以上に小ぶりに感じられる。
サンドブラスト仕上げのケースは、ブルータリズムを堂々と体現したものだ。カルティエ タンクのようなシルエットを持ちながらも、全体にファセットを効かせたエッジの立った造形で再解釈されているように見える。遠目にはダークアンスラサイトの色調と直線的なラインが控えめに見えるかもしれないが、近くで見るとケースサイドには段差を設けた構造とポリッシュ仕上げの面が巧みに組み合わされており、所有者だけが気づく上質なディテールが光る。
リヴァネラ ピッコロには3種類のダイヤルが用意されている。うちふたつはグレイン・ド・リ(Grain de Riz)仕上げのギヨシェを施したタイプで、残りのひとつは深みのあるソリッドブラック仕様である。ギヨシェダイヤルは文字盤の中心から放射状に広がる細かな粒状パターンが特徴で、ブラックまたはホワイトの2色展開。その上に重ねられたスクエアフレームが、立体的な奥行きを生み出している。もちろん、この価格帯で旋盤機によるギヨシェを期待するのは現実的ではないが、それでも仕上がりは非常に良好だ。個人的には控えめな印象のブラックギヨシェが好みだが、ホワイトダイヤルにブラック針を合わせたコントラストの効いた顔立ちも非常に魅力的だと感じる。
一方、ソリッドブラックのダイヤルは一見シンプルに見えるが、実は最も興味深い仕様といえる。というのも、このダイヤルには世界で最も黒い塗料のひとつとして知られる無双ブラック(Musou Black)が採用されているからだ。より高価なモデルに使われるヴァンタブラック(Vantablack)を意識しつつも、より現実的なアプローチといえるだろう。この塗料は99.4%の光を吸収するとされており、実物では見事な質感を見せる。ただし、無双ブラックの上に印刷されたホワイトのレタリングは若干粒子が粗い。ギヨシェのモデルに設けられたデイト表示は違和感がないが、このダイヤルに限っては視覚的な一体感をわずかに損ねてしいるように思う。
今年の初めにこのモデルを実際に見たときにまず驚いたのは、このコンパクトなケースのなかに自動巻きムーブメントが搭載されていたことだった。搭載されているのはセリタ製SW1000エラボレ グレードの自動巻きキャリバーで、2万8800振動/時で駆動し、サイズを考慮すれば十分な46時間のパワーリザーブを備えている。
装着感はその寸法から想像されるとおり、小ぶりだ。だが、それこそがこの時計の狙いである。スポーティな要素を持ちながらも、装いとしてはドレスウォッチのように振る舞える。そして、サファイア製カボションの装飾や、伝統的なドレスウォッチに見られる柔らかな曲面ケースを好まない人にとっては、日常使いにおいて非常に魅力的な1本となるだろう。さらに、各モデルにはレザーストラップに加えてラバーストラップも付属しており、シーンを問わず使える汎用性を持つ。エコ/ネイトラのチームが素晴らしいのは、初代リヴァネラのデザインをそのままに、より多くの人が日常的に楽しめるサイズ感へと見事に落とし込んだ点である。ただし、手首の大きな人にとってピッコロが小さすぎると感じる場合もあるかもしれない。しかし心配はいらない。オリジナルのリヴァネラは、今もカタログにラインナップされている。
価格は31万4800円(税込)。このレンジに入ると、マイクロブランド市場のなかでも数多くの選択肢が存在する。購入前に2度、いや3度考えさせられる価格帯である。しかし、リヴァネラ ピッコロと同じデザインや装着感を持つモデルをほかに挙げるのは難しい。ブルータリズム的なケースでありながら、仕上げと作り込みの完成度は驚くほど高く、ブランドはこのモデルによって、従来のラウンド型デザインとは一線を画す独自の魅力的なポジションを確立したといえる。
詳細はエコ/ネイトラのサイトをチェック。
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