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“フォティックゾーン”という用語は、光が浸透し、光合成を可能にする海洋の深さを指している。そこは最も繁殖力が強く、多様な海洋生物が見られる場所だ。フォティックゾーンの実際の深さの限界は世界中の海で異なるが、一般的に水面から200m以内とされている。ダイバーズウォッチに求められる最低限の防水深度がこれと同じなのは、偶然だろうか? おそらくそうだろう。それでも、ダイバーズウォッチの防水性能がまさに底なしの競争のように見える一方で、浅いところに留まることには利点がある。小さな英国ブランドであるクレメンス(Clemence)の、その名もフォティックの第2世代、すなわち“MKII”バージョンを例に考えてみよう。
間違いなく200mという水深は十分な深さであり、スキューバダイバーが冒険する深度をはるかに超えている。酸素中毒や減圧症の問題を心配する必要があるだけでなく、そこにはあまり見るべきものがない(結局のところ光合成が起こらないからだ)。したがって200m防水のダイバーズウォッチはサンゴ礁を探索したり、沈没船を巡ったりするのに最適で、それは着用者がそもそもダイビングをする場合の話だ。
さらに言えば、深海の深淵を生き残るために時計をそれほど過剰に作り込んだり、分厚くしたりする必要がないことも意味している。オリジナルのフォティックは、創業者であるトム・クレメンス(Tom Clemence)氏が自身の名を冠した会社を立ち上げた際、ブランドにおける最初の時計だった。その第1世代は、メロー ウォッチのボネール(Méraud Bonaire)やバルチックのアクアスカーフ(Baltic Aquascaphe)といったマイクロブランドのダイバーズウォッチの部類に入る、ハンサムでモダン、そしてクリーンなデザインを持っていた。MKIIにおいてフォティックはアップグレードされたスティールやスリムなプロファイルなど、さらなる洗練を遂げている。
マイクロブランドは、過去10年から15年のあいだで大きく進歩した。マイクロブランドブームの先駆者たちを貶めるつもりはないが、彼らの時計はしばしば粗いリューズのネジ山、緩いベゼル、不均一な夜光、そして不安定な精度など、大手ブランドの時計と容易に見分けがついていた。既製部品の仕様は言うまでもない。
クレメンス フォティックは、物事がどれほど進歩したかを示す素晴らしい例だ。スペック上、この時計はわずかにドーム型となっているダイヤル、アプライドのポリッシュ仕上げを施したインデックス、ブレスレットの片側ネジ、ムーブメントの耐衝撃機構と耐磁シールドの追加といった細部への配慮が印象的だ。これらはあくまで些細な点にすぎない。
ダイバーズウォッチはシンプルなものであり、それを好む私たちはいくつかの主要な要素、なかでもおそらく最も重要なベゼルによって品質を判断する。フォティック MKIIのベゼルは高価格帯の時計に見られるような絶妙な操作感を実現し、ソリッドながらもスムーズな120クリックの逆回転防止ラチェットを備えている。
これはシンプルなクリックバネではなく、ボールベアリング式クリック機構を使用していることによる。タイミングリングはサファイア製でさまざまな色で提供されており、5分間隔でシンプルなドットとハッシュマーク、そしてゼロ位置にはトライアングルが配されている。ベゼル自体はアップグレードされた904Lステンレススティールで作られている。これはより硬く耐食性の高い合金であり、クレメンスはそれが摩耗に強く、そしてより長い期間精度を保つはずだと述べている。
39mmのケースはより一般的な316Lスティールから削り出されているが、ビッカース硬度で1000という硬度評価を達成するためにコーティングされている。私が新しいフォティック MKIIを初めて見たトロント・タイムピース・ショーでトム・クレメンス氏と話した際、彼が最も誇りに思っているのはケースの変更点、特にその厚さであることがわかった。ドーム型サファイアクリスタル風防の上部から測ると10.5mmになるが、代わりにベゼルの上部にノギスを当てると10mmをわずかに下回っている。これはチューダー ペラゴス 39や、オリス ダイバーズ 65、あるいはそのほかのほとんどのダイバーズウォッチよりも薄い。
このスリムさを際立たせているのはケース側面の低いエッジにある、さりげないポリッシュ仕上げの面取りだ。ラグのエッジに沿ったポリッシュ仕上げの角度が、光の遊びを続けている。この薄さと細部へのこだわりは、特にクラシックな3連のテーパードブレスレットを装着した場合、フォティックをドレスダイバーの領域に押し込むかもしれない。しかし私はNATOストラップでも試着したところ(当然ながら)、ダイヤルのシンプルさとゴースト(かすれた)タイミングリングが、落ち着いたスポーティさを保っていた。
このブレスレットは特に注目に値するもので、素晴らしい出来だ。20mmのラグからクラスプにかけて16mmにテーパーしたクラシックなプロポーションで、完全に連結し面取りされたリンクが特徴だ。クラスプ自体はふたつのボタンで操作し、クラスプ内部のボタンを押すことで延長できる“オン・ザ・フライ(on-the-fly)” マイクロアジャスト機能を備えている。しかしこの数mmの微調整以外にはダイビングエクステンションはないため、厚い袖の上から着用する場合は別のストラップに交換する必要があるだろう。クレメンスからはフォティックのラバーストラップバージョンも提供されている。
時計の内部では、ミヨタ製の自動巻きムーブメントCal.9039が時を刻む。これは42時間のパワーリザーブをもつ日付表示なしの専用ムーブメントであり、クレメンスは3姿勢で調整を施し、日差±12秒の精度に収めている。これはバルチック アクアスカーフを含むいくつかのマイクロブランドの時計に見られる、実績のあるキャリバーだ。軟鉄製シールドの追加により、全体の厚さを損なうことなく耐磁性は2万5000A/mという驚異的な値に向上している。クレメンスはフォティック MKIIを英国で組み立てており、同ブランドは製品寿命における二酸化炭素排出量の2倍を相殺し、販売する時計1本ごとにスコットランドで固有の木を植えることで、“カーボンポジティブ”な製品であると主張している。
クレメンス フォティック MKIIの価格は11月26日に開始されていた予約期間中とは異なり、12月11日以降はブレスレット付きで625ポンド(日本円で約13万円)、ラバー付きで575ポンド(日本円で約11万9800円)に値上がりした。時計は2026年2月に出荷される予定だ。
フォティック MKIIはそのオーバースペックな機能と品質で感銘を与える一方で、その美学が最も輝くところかもしれない。クラシックな要素とプロポーションを新鮮なカラーウェイと融合させた、美しくデザインされたダイバーズウォッチだ。私が時間を過ごしたのは、最も控えめなバリエーションであるライトグレーのダイヤルとゴーストベゼルを備えた“ショール(Shoal)”だが、ジェームズがこの記事のために撮影した時計はペールオレンジ/イエローのベゼルとグレーダイヤルを備えた“クラーケン(Kraken)”だ。ほかにもブラックダイヤルとベゼルを備えた“モレイ(Moray)”、目を引くオレンジダイヤルを備えた“ニモ(Nemo)”、そしてブルーダイヤルを備えたベースモデルの“フォティック”がある。
お気に入りのひとつを選ぶのは難しいだろう。いずれにせよ、クレメンス フォティック MKIIはマイクロブランドのダイバーズウォッチの進化の証拠であり、浅瀬に留まることの意義を主張している。
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