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Hands-On トリローブ トランテ=ドゥ、ブランド史上最もスポーティな(そして最も重要な)時計を実機レビュー

ダイヤルとケースに最も注目が集まるだろうが、より注目すべきはその内側にあるものだ。

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正直に言って、実機を前にして、私はトリローブの新作がこれほど気に入るとはまったく予想していなかったことを認めなければならない。“スポーティ化”への疲弊、あるいはすべてのブレスレットの過剰な一体化がついに私にも影響したのかもしれない。すべてのデザインがブレスレットでよりよくなるわけではないという事実に、私はついに納得したのかもしれない。理由が何であれ、ジュネーブ・ウォッチ・デイズでの怒涛のリリースラッシュのなかで、私はトリローブ トランテ=ドゥ(仏語で32を意味する)の発表を見過ごしてしまった。しかし実際に時計を見て、私は予想していたよりもこの時計に多くの魅力があることを発見した。

Trilobe Trente-Deux

 トリローブ トランテ=ドゥのデザインは愛好家のコミュニティにとってはなじみ深いものだろうが、それは諸刃の剣だ。ケースサイドの左側の“ウィング”が右側のリューズガードとのデザインのバランスを取る様子は、パテック フィリップ ノーチラスとの明白な類似性がある。ブレスレットの形状もそのデザインを反映しているが、ポリッシュ仕上げを施したセンターリンクはより角張っている。そして私は通常、ほかのアイデアに近すぎるデザインだと感じる時計にかなり批判的だが、実機を手に取るとトランテ=ドゥはまったくそのように感じなかった。

Trilobe Trente-Deux

 ひとつの利点は、そのクリエイティブで珍しいダイヤルレイアウトのおかげでブランドが強いアイデンティティを保っていることだ。トランテ=ドゥは(HODINKEE限定モデルのような)ニュイ・ファンタスティックの表示を使用しており、3つのディスクが魅惑的な表示で回転する。外周の時刻表示は常に適切な時間が最上部にあり、ブランドのロゴによって示される。分表示はディスク上にあり、最も小さく沈んだディスクはフレーム内の別のポインターによって参照される。最後にスモールセコンドディスクはより大きく、分の下に配置されており、その大きさのおかげですべてのディスクの繊細な動きに目が引きつけられる。

 私はダイヤルのテクスチャーの使用も評価している。中央のダイヤルはスモールセコンドから放射状に広がるソレイユ仕上げを持ち、それ自体は中央にクル・ド・パリのギヨシェと、エッジにアズラージュ装飾を組み合わせて施している。時・分表示は小石のようなグレイン仕上げを施したテクスチャーを持つが、分ディスクがダイヤル平面のほかの部分よりもわずかに下に設定されているため奥行きと陰影が加わっている。

Trilobe Trente-Deux
Trilobe Trente-Deux
Trilobe Trente-Deux

 しかしダイヤルやケースに注目が集まる一方で、トリローブの功績はケース内部にある。このパリのブランドは創業わずか7年だが、近年(パリからわずか20分の)イヴリー=シュル=セーヌに自社の製造施設を開設することで、同年代のブランドではほとんど踏み出さないであろう重大な一歩を踏み出した。ブランドはパリの9区(オペラ地区)に時計のデザイン、プロトタイプ製作、組み立てを行うスタジオを持っているが、マニュファクチュールを持つというのはまったく異なる展望だ。ブランドの最初の時計は、ジャン・フランソワ・モジョン(Jean-François Mojon)氏が設計し、ル・セルクル・デ・オルロジェが製造したムーブメントを使用していた。しかし今、自前の多軸加工機を手に入れたことで、ブランドはムーブメントの重要なコンポーネントを自社で製造できるようになった。実機がそれを証明しており、Cal.X-Nihiloはトリローブにとって初めてとなる、ほぼ完全な自社製ムーブメントなのだ。

 ブランドによるとメインプレート、ホイール、ブリッジ、自動巻きローター、ピニオンといったムーブメントの80%が自社製だという。ほかの多くのブランドと同様に、ルビー、主ゼンマイ、ヒゲゼンマイは外部から調達している。しかし装飾、デザイン、そのほかの製造をすべて自社内で行うことでブランドの垂直統合の度合いを高めている。

Trilobe Trente-Deux

 Cal.X-Nihilo自体はきわめて珍しいデザインだ。幾何学的でオープンな構造でありながら、長方形のユニークなメインブリッジが全体を支配しており、これはこれまでに見たことのないものである。2万8800振動/時で動作し、42時間のパワーリザーブ(やや物足りない稼働時間)を持つこのムーブメントは、より正確な調整のための4つの調整ネジを備えた存在感のあるテンプを特徴としている。また、妥当なケースサイズにもかかわらず、大きな直径を持つ。全体が直径39.5mm ×厚さ10.15mmのケースに対して、ムーブメントは直径35.2mm×厚さ7mmというサイズであり、高度にくり抜かれた自動巻きローターのおかげで軽快な印象を与える。ほとんどのブランドはムーブメントを巻き上げるための慣性を失うことを恐れて、これほど多くの素材を取り除くことはないが、トリローブはそれを実現したようだ。

 しかしダイヤルと同様に、ムーブメントの美学もかなり珍しい。テンプ受けはほかのフランスウォッチに一般的に見られる伝統的なデザインを採用しているが、グレイン加工されたムーブメントプレートと並んでここで唯一真に伝統的な要素だ。私はゴーティエ・マッソノー(Gautier Massonneau)氏になぜ輪列をもっと見せなかったのか尋ねたが、彼の正直な回答に感銘を受けた。「それほど外観がよくないからです」と彼は私に語った。それで十分である。

Trilobe Trente-Deux

 ラグ・トゥ・ラグ46.18mmで、コンパクトな直径39.5mm×厚さ10.15mmのケースはスペック上の数字よりも厚く見えるが、着用するとそう感じさせない。フルーテッドベゼルはダイヤルの仕上げをきわめてよく補完し、フォントやダイヤル仕上げのようなよりフォーマルなタッチと調和し、ブランドのほかのカタログを補完する伝統に傾倒した美学に時計を留めている。

 バネ仕掛けのダブルフォールディングクラスプはMB&Fやリシャール・ミル(シャネルが供給)で使用されているものと同様だ。このデザインの唯一の欠点はラバーストラップへのクイックチェンジ機能がないことと、マイクロアジャストメントがないことである。

Trilobe Trente-Deux
Trilobe Trente-Deux
Trilobe Trente-Deux

 しかし、これらはすべてプレスリリースを読んだだけで明らかになるスペックにすぎない。時計を手に取り私は魅了されたが、本当にしっくりきたのは手首に着けてからだった。私とは手首のサイズがまったく異なる同僚のアンディとジェフに回したところ、驚くほどパッケージ全体がうまく機能していた。合理的なラグ・トゥ・ラグの長さにより、ケースがすぐに手首に沿ってカーブするため、幅広い手首にフィットする。本作は細部に至るまでほとんどすべての人に合うだろう、ホームラン級の時計である。

Trilobe Trente-Deux

 発売時の価格はファーストロットのテストとして1万6500ユーロ(当時のレートで約285万円)に設定されていた。現在、ブランドがパーマネントコレクションの一部として本格的な生産に移行するにあたり、価格は1万7500ユーロ(日本円で約310万円)となっている。この値上げにより時計は300万円の価格帯を超えてしまうが(税金と関税を除く)、トランテ=ドゥはブランドにとって本当に興味深い選択肢であり、トリローブだけでなく、過熱しているフランスの時計製造シーンにおける成長期の指標となるものである。

 トリローブ トランテ=ドゥの詳細についてはこちらから。