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1832年に創業し、翼のある砂時計のロゴでおなじみのロンジン。スイス・サンティミエで生まれたこの老舗ブランドが、2032年に200周年を迎えることを知っているだろうか。長大な歴史を誇るロンジンだが、今また非常に興味深い動きを見せている。2025年6月にCEOに就任したパトリック・アウン(Patrick Aoun)氏に、これからのロンジンがどこへ向かうのか、その胸の内を聞いてきた。彼が語ったのは、単なる時計のスペックの話ではなく、自社のヘリテージを現代の生活になじむサイズや素材へと見直す、具体的なアップデートの話だった。
パトリック・アウン。ロンジンCEO。2005年にスウォッチ グループへ入社後、2007年からロンジンで中東・東南アジア市場を担い、2017年にはスウォッチ グループ・インディアのマネジメント・デリゲーションに就任。2025年6月1日付で現職。
200周年に向けたロードマップと、フライバックの重要性
ヘリテージコレクションがこれほど充実している今、来たるべき創業200周年に向けて、ロンジンはどんな未来図を描いているのだろうか。その核心に触れようと問いかけると、アウン氏は自信に満ちた表情でこう語り始めた。
「私たちは常に過去を振り返り、そこから未来を計画しています。2032年の周年に向けて、私たちの歴史をきちんとお祝いするためのロードマップはすでに準備できています」。もう準備は万端といった様子だ。アウン氏の話しぶりは、派手な演出で期待を煽るというよりは、むしろ大切な道具をひとつずつていねいに磨き上げる職人のような、地に足のついた確信があった。
2025年に発表されたロンジン スピリット パイロット フライバック。
そのロードマップのなかで、特に大切なキーワードは何か? 「フライバックです。これは私たちにとって単なる機能ではなく、非常に重要な要素となります。そもそもフライバックを発明して特許を取得したのはロンジンです。元々はパイロットのために開発され、その後軍用時計としても活躍した歴史があります」。2025年に発表されたロンジン スピリット パイロットも素晴らしい出来栄えだったのは記憶に新しい。
「2026年はラインナップを広げ、カラーバリエーションも増やしていく予定です。技術的な信頼性はもちろん、見た目の美しさも素晴らしく、価格に関しても他ブランドにはない自信があります」
彼が語るフライバックは機械の説明というより、機構の便利さ以上に航空のために生まれ、軍用にも採用されたという出自そのものだ。それを現代の私たちが使える形にして届けてくれているのだと感じた。
左が40mmの現行モデル、右が1960年代製のオリジナル(35mm)に敬意を表した37mmの現行モデルだ。
昔のデザインを今の時代へとアップデートすることは難しくないのだろうか? 「私たちは偉大な遺産(ヘリテージ)を誇りに思っています。ただ同時に、現代の美意識も取り入れなければなりません。たとえばウルトラ-クロンです。1960年代のオリジナルは35mm径でしたが、今の基準では少し小さいと感じる人もいます。そのためオリジナルのDNAは大切にしつつ、37mmにするなど現代に合わせた調整を行っているのです」。これは非常に共感できる点だ。ヴィンテージは魅力的だが、サイズ感や使い勝手が今のファッションに合わないことは多々ある。昔のままではなく、今の私たちに合うように考えられているのが嬉しい。ウルトラ-クロンは、出自は60年代でありながら見え方はきちんと現代的だ。
「私にとって時計とは、単にショーケースに並ぶ存在ではなく、値札の数字だけで語れるような存在でもありません。私たちが積み重ねてきた経験であり、達成してきた成果や目標の記録なのです。ロンジンは100年以上前から高精度の技術を追求してきました。時計を見るとこれまでの歴史や目標、達成してきた成果を思い出します。だから私は、ロンジンのヘリテージを愛してやまないのです」
時計は時間を知るための道具を超えて、持ち主の人生を記録するアルバムのようなものかもしれない。そう語る彼の姿に、時計に対する並々ならぬ情熱を見た気がする。
手の届く名品であるために、13ZNを神格化しない
時計ファンのなかには、ロンジンが誇る伝説的クロノグラフムーブメントである13ZNや30CHの復活を期待する声も多い。
「確かに13ZNは、その後のすべてのクロノグラフの基礎になった記念碑的な時計です。しかし現在、ヴィンテージ市場でオリジナルを手に入れようとすると、価格はきわめて高水準に達します(編注;現在の相場は約300万~500万円)。私が自信を持っているロンジンのポジションは、1000〜5000スイスフラン(日本円で約20万~100万円)という価格帯のリーダーであること。過去の偉大な歴史を感じさせる作品を、一部の富裕層だけでなく、多くの人が無理なく手にできる価格で届けたいと考えているわけです」
もし今、13ZNを完全に復刻させようとすればコストは跳ね上がり、到底5000スイスフランには収まらないだろう。それでは多くの人に届けるという彼らの哲学に反してしまう。超高級時計にするのではなく、日常で使える相棒にする。この現実的な感覚こそ、ロンジンが手の届く本格派として、初めての機械式を探す人から、時計に目が肥えた層のセカンドウォッチ需要まで幅広く支持されている理由なのかもしれない。
ここ数年、オリジナルに忠実な復刻がトレンドになっていたが、それについてアウン氏はどう考えているのか? 「ロンジンにとって、ヘリテージは一時的なトレンドではありません。私たちは一貫して歴史を大切にしてきました。2026年は歴史的なモデルの再現が多く登場する予定ですが、それは流行しているからやるのではなく、私たちの戦略の一部であり、これからも続けていきます」
Introducing ロンジン ウルトラ-クロンがカーボンで生まれ変わった
そう語る彼が、その戦略の核として挙げたのが再解釈というキーワードだ。それは単なる過去のコピーではなく、素材やスペックを大胆に更新するというもの。「重要なのは再解釈です。たとえば2025年に登場した、カーボンファイバー製のウルトラ-クロン。過去のデザインからインスピレーションを受けつつ、スポーツやスピードの世界に合う軽量素材を使う。これが現代的な解釈なのです。レジェンドダイバーの39mmモデルも、見た目はクラシックですが、300mの防水性や耐磁性能など中身は最新のスペックになります。形を真似するだけではなく、現代のリアルな生活に即したイノベーションを加える。DNAを守りながら進化させることが何より大切なのです」
DNAを守るために変わり続ける
アウン氏が着用していたのは40mmのウルトラ-クロン。
インタビューをとおして感じたのは、アウン氏が見ているのが懐かしい過去ではなく、常に“私たちのいる現在”だということだった。2032年の200周年に向けて、ロンジンは積み上げてきた歴史のなかから意義のあるデザインを取り出し、最新の技術と素材で、現代人が着けたい時計へと仕立て直してくれるに違いない。
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