Photos by TanTan Wang
今年に入ってから、ロンジンはドレッシーで端正なマスター コレクションの刷新を進めている。これまでのアップデートは、時刻表示とデイト表示を備えたモデルに限られてきたが、今回発表された新作では、より注目すべきモデルが登場したと思う。今回の主な新作はふたつ。ひとつは、ロンジンを代表するクラシックなクロノグラフをアップデートしたモデル。そしてもうひとつは、マスター コレクションとしては初となるモノプッシャー・クロノグラフだ。
アップデートされたマスター コレクション クロノ ムーンフェイズ
ひとつ目は、マスター コレクション クロノ ムーンフェイズ Ref. L2.962.4.73.2の刷新だ。今回のアップデートは、従来モデルのデザインを洗練させることが中心となっている。まず、従来の40mmと42mmというふたつのケース径を統合し、新世代モデルではその中間となる41mmにサイズを一本化した。ステンレススティール製ケースの厚さは13.8mm(旧モデルの14.2mmからわずかに薄型化)で、ラグ・トゥ・ラグは48.6mmと大きめだが、過度に大ぶりというほどではない。ケースのシルエットは基本的に従来モデルを踏襲しており、外装にはコントラストの効いたラインやファセットをほとんど設けず、丸みを帯びたフォルムとなっている。全面にポリッシュ仕上げを施し、ポリッシュ仕上げのコンケーブベゼルを組み合わせることで、ケース全体の柔らかな造形が強調されている。
変更の大部分はダイヤルに施されており、細かなデザイン変更を積み重ねることで、個人的には大幅に完成度が高まったと感じる。ロンジンおなじみのバーリーコーン模様があしらわれたダイヤルを踏襲しつつ、タイポグラフィを全体的に整理し、よりバランスの取れた印象に仕上げている。
そもそもダイヤルデザインは、クロノグラフ、ムーンフェイズ、ポインターデイトを備えたトリプルカレンダー、さらに24時間表示を収めるため、情報量が多い。従来見られた、きわめて装飾的な数字と、ところどころにヘルベチカのようなフォントが混在するちぐはぐな構成は姿を消した。新作では、ダイヤル上の数字表記が統一され、全体の一体感が大きく向上している。サンセリフ体が残されているのは、カレンダー表示窓内の文字と、“Swiss Made”、“Automatic”の表記くらいだ。
ロンジンはまた、旧モデルにあった傾斜したリホートを廃止し、よりフラットなダイヤルデザインを採用した。ポインターデイトの数字はチャプターリングの最も外側にプリントされ、その内側に分目盛りを配置。従来とは位置が逆転している。この変更がどれほど大きな改善なのか、強調してもしすぎることはないだろう。なぜなら旧世代では、分針が内側のデイトリングまでしか届かず、その周囲の傾斜したリホートに分目盛りが配されていたためだ。そしてアプライドインデックスと、ロンジンを象徴する翼の付いた砂時計型ロゴも採用。立体感のあるブルーの数字が加わることで、ダイヤルにさらなる奥行きを与えている。何より素晴らしいのは、どのアプライドのアワー数字もインダイヤルによって欠けていないことだ。
手首に着けると、ダイヤルは以前よりも光を美しく捉え、時刻の視認性も向上している。数字と青焼きの針が、ダイヤル上の印字による情報量の多さに埋もれることなく、より明確に際立つようになった。また内部に搭載するのは、ロンジン専用仕様のバルジュー7751をベースとしたCal.L687.5。66時間のパワーリザーブ、コラムホイール、シリコン製ヒゲゼンマイを備えている。堅実なスペックだが、従来モデルと同じものだ。新作はブレスレットまたはアリゲーターレザーストラップから選択できるが、どちらも61万4900円(税込)であることを考えれば、個人的にはブレスレットを選ばない手はないと思う。ブレスレット、そしてレザーストラップのバックルには、いずれも工具不要で微調整できるマイクロアジャスト機構が備わっている。
このムーンフェイズ付きカレンダークロノグラフモデルは、なじみ深いバルジュー系クロノグラフのダイヤルレイアウトを採用し、長年にわたってロンジンのカタログを象徴する存在であり続けてきた。それにもかかわらず、時計愛好家のあいだでロンジンを薦める際に、このモデルが候補として挙がることはあまりなかったように思う。個人的には、従来のダイヤルデザインがこのモデルの魅力を阻害していたのではないかと思う。もちろん現在でも、ドレスウォッチらしい意匠に厚みのあるケースと数々の複雑機構を組み合わせた、かなり好みの分かれるデザインではある。しかし今回、さりげない進化にとどまるなかでも、新世代モデルのダイヤルは従来モデルから大きく洗練されている。
新たなマスター コレクション クロノ モノプッシャー
前述のクロノ ムーンフェイズは長年のモデルをアップデートしたものだったが、皆さんのほとんどは、今回新たに発表されたクロノ モノプッシャー目当てでこの記事を読んでいることだろう。ロンジンが現代のコレクションにモノプッシャー・クロノグラフモデルをリリースするのは久しぶりだ。前回は6年前、20世紀初頭のパイロット向けに懐中時計を腕時計へと転用した、特徴的な斜め配置のクロノグラフにオマージュを捧げたアヴィゲーション タイプA-7 1935まで遡る。それにしても、これほど長く新作が登場しなかったのは、ロンジンというブランドにとっては少し不思議な空白期間だった。というのも、ロンジンは腕時計の歴史において、最初期からモノプッシャー・クロノグラフを手がけてきたブランドのひとつだからだ。
幸いなことに、モノプッシャー・クロノグラフモデルがついにロンジンのカタログへ復帰した。本作はマスター コレクションの美学を踏襲し、丸みを帯びた全面ポリッシュ仕上げのケースやコンケーブベゼル、型押しによるバーリーコーンのギヨシェ模様が特徴だ。ダイヤルは2色展開で、ひとつはフロステッドブルーのような色合いのRef. L2.960.4.93.2、もうひとつは温かみのあるシルバーオパリンのRef. L2.960.4.78.2。どちらも41mm径のステンレススティール製のケースに収められ、厚さは12.6mm、ラグ・トゥ・ラグは48.6mmとなる。
つまりクロノ モノプッシャーとクロノ ムーンフェイズは、ケース直径とラグ・トゥ・ラグが同じで、厚さだけが異なる。今回の刷新では、このラインも統一感のあるデザインに仕上げられている。また、ハイドロコンクエストやレジェンドダイバーといったほかのモデルを見てきた経験からすれば、いずれはより小ぶりなサイズも登場するのではないかと期待してしまう。
ダイヤルでは、針と色調を揃えたアプライドのアラビア数字を採用。シルバーオパリンのダイヤルには5Nローズゴールドプレート、ライトブルーのダイヤルにはロジウムプレートが採用され、バーリーコーン模様があしらわれている。しかしクロノ ムーンフェイズとは異なり、2、4、8、10の数字は、スネイル仕上げを施したふたつのインダイヤルによって一部が隠れている。また、日付表示をあえて設けなかったのは良い判断だと思う。
クロノグラフに一般的なタキメータースケールではなくパルスメータースケールを採用したのは、時計好きにはうれしいディテールだ。しかし魅力的な意匠である一方、これはダイヤル全体に対してかなり大きなスペースを占めている。そのため、メインダイヤルの周囲に生まれた余白が少し物足りなく感じられる。とはいえ、パルスメータースケールを大きくすることで、クロノグラフ秒針が読み取りやすくなっているというメリットはある。また歴史を振り返れば、ヴィンテージクロノグラフの多くに搭載されたパルスメーターにも、同じような視覚的特徴が見られる。しかし当時の時計ははるかに小型だったため、41mm径になると、この余白の広さがより目立って感じられる。将来的に、より小型のケースを採用したモデルが登場すれば、この問題は解消される可能性がある。だがその場合、スケールの再設計が必要になるだろう。
ダイヤルについてこれだけ細かく指摘できるのも、今回の仕上がりには、それ以外に大きく不満を感じるところがほとんどないからだ。実物を見ると、ダイヤルはプリントされたスケールとインダイヤルのタイポグラフィに統一感があり、かなり魅力的だ。また個人的には、アプライドの数字もダイヤルにほんの少し上質感を加える要素として好印象だ。それに近くで見ると、ダイヤルにはわずかなレイヤー構造も設けられている。パルスメータースケールのリングがレイルウェイの分目盛りよりわずかに高く、そのさらに下に、少し沈み込んだインダイヤルが配置されている。これらは決して劇的な変化ではないが、バーリーコーンのギヨシェ装飾を施した中央部分と相まって、圧倒されることなく、十分な質感と奥行きが生まれている。
着用してみると、このクロノ モノプッシャーは、クラシックな趣を備えたきわめて魅力的な1本だと感じる。41mmというケース径は決して小さくなく、全面ポリッシュ仕上げによって視覚的にも大きく見える。それでも短めのラグのおかげで、私のように手首が細めでも無理なく収まる。しかし、ロンジンにはぜひお願いしたい。そろそろブラックダイヤルも見せてもらえないだろうか? フロステッドブルーの非常にクールな色味と、シルバーオパリンの温かみのあるトーンのあいだを埋めるような選択肢を求める人は、きっと少なくないはずだ。
ケース右側には、丸みを帯びたポリッシュ仕上げのミドルケースから張り出した大ぶりなリューズがあり、リューズ中央にモノプッシャーが一体化されている。このプッシャーで操作するのが、ETAが製造し、ロンジン専用に仕立てた新しい手巻き式モノプッシャームーブメント Cal.L799.5だ。コラムホイール、シリコン製ヒゲゼンマイ、68時間のパワーリザーブを備え、毎時2万8800振動で駆動するこのムーブメントは、現代のロンジン製クロノグラフムーブメントでおなじみのスペックを持つ。
アリゲーターレザーストラップ仕様(残念ながらクロノ モノプッシャーにはブレスレット仕様は用意されていない)で56万2100円(税込)という価格設定は、時計の機能を考えるときわめて魅力的だ。もちろんマイクロブランドのモノプッシャー・クロノグラフのなかには、これより安いものもあるが、それらは通常、カム式クロノグラフムーブメント Cal.SW510を搭載している。それにもかかわらず、SW510を搭載したモノプッシャーのなかには、本作と同程度、あるいはそれ以上の価格で販売されているものもある。
2020年発売のアヴィゲーション タイプA-7 1935と比較すると、6年を経て、より複雑なダイヤルとスペックを向上させたムーブメントを採用しながら、価格上昇がこの程度に収まっているのは驚くほど控えめだ。そう考えると、マスター コレクション クロノ モノプッシャーは、数少ない機械式のモノプッシャー・クロノグラフの選択肢に加わる、ロンジンの現行ラインナップのなかでも優れたバリュープロポジションを備えている歓迎すべき新作だと言えるだろう。
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