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Editors' Picks ジュネーブ・ウォッチ・デイズ 2026(そしてその周辺)で見つけたお気に入りの時計たち

多くのブランドが本気の新作を発表した今年、編集部からジュネーブ・ウォッチ・デイズとその周辺で見つけたお気に入りの時計を発表します。

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Photos by TanTan Wang

9月上旬はジュネーブ・ウォッチ・デイズが開催されました。1年のなかで新作時計の発表が最も集中する週ではありませんが、それに近い週であることは確かです。2026年も数十ものブランドがジュネーブに集まり、最新かつ最高の新作を披露しました。私たちは、それらの時計の多くを発表されるたびに紹介してきましたが、実際に目にした時計を数日かけて振り返り(実際に会場に足を運んだ人もいれば、間接的に見た人もいます)、特に印象に残ったものをいくつかご紹介します。そして、どうかご容赦ください。できる限りジュネーブ・ウォッチ・デイズそのものに絞るよう努めたのですが、当然のことながら、いくつかその周辺で発表された新作も含まれています。しかし、どれも話題にする価値のある時計であることにはきっと皆さんも同意してくれると思います。

 もちろん、私たち編集部だけではここで紹介できる時計に限りがあります。ですから私たちの選んだ時計をすべて見終えたら、ジュネーブ・ウォッチ・デイズで皆さんの目に留まった時計はどれだったのか、ぜひコメント欄で教えてください。

YG製のローラン・フェリエ クラシック・ムーン ダスク(それとM.A.D.3 ヴィンセント・カラブレーゼ)[ベン・クライマー]

 2本選んでもいいだろうか? いや、今年はそうせざるを得ない。今年はなんだか、昔に戻ったような気分だった。私がジュネーブ・ウォッチ・デイズ 2026で実際に買いたいと思った2本は、どちらも私が長年愛用し(実際に所有し)てきたブランドの時計だった。ローラン・フェリエとMB&Fだ。まずはローラン・フェリエが新たに限定生産する、イエローゴールド(YG)製のクラシック・ムーン ダスクから見ていこう。

Laurent Ferrier Classic Moon Dusk in Yellow Gold

 ご存じのとおり、私はYGが大好きだ。そして、この素晴らしいモデルの初期モデルはまさに私の好みに刺さった。もし(以前のような時計の買い方を今もしていたら)、おそらくこれを買っていただろう。YG製ケースに、落ち着いた色味の美しいダイヤル、そしてオブシディアンのムーンフェイズ! ブランドはこのカラーリングを“トープ、チョコレート、そしてゴールドの色合い”と表現している。これが私に響かないはずがない。とはいえ完璧かと言われれば、そんなことはない。ムーブメントがナチュラルエスケープメントを搭載したものをベースにしていたらよかったのにと思うし、価格が9万3000スイスフラン(約1700万円)もするのでなければ、なおよかったのにとも思う。それでも個人的な意見ではあるが、本作はここしばらくのローラン・フェリエのなかでも最高の1本だと思う(ちょうど最近、偶然にも昔のローラン・フェリエをよく着けているのだが、やはり本当にいい時計だ!)。

M.A.D.3

 2本目はMB&F、正確にはそのスピンオフブランドのMADから登場するM.A.D.3だ。マクシミリアン・ブッサー氏、MB&F、ヴィンセント・カラブレーゼ氏が手がけた時計を、数千ドルで手にできるというのか? 長く時計を見てきた人にとって、これほどクールなものはなかなかない。本作はとにかく楽しい時計であり、インディペンデントウォッチメイキング界の“元祖ギャングスター”のひとりを称える素晴らしい1本でもある。だから、これは注文せずにはいられなかった。

ミン 57.05 コメット[ティム・ジェフリーズ]

 ミンの57.05 “コメット”を見るまで、サマータイム対応のベゼルが必要だなんて、考えたこともありませんでした。でも今では、これなしではいられないかもしれません。ミンはワールドタイムベゼルをふたつのリングに分け、外側にサマータイムを採用する都市、内側に採用しない都市を配置。クリック1回でサマータイム対応都市だけが進み、小窓でサマータイムの有効/無効がひと目でわかります。こうした機構は、一見すると「なぜ今までなかったのだろう」と思うほど、理にかなったものです。それでいて、これほどエレガントな形で解決された例はありませんでした。これこそ真のイノベーションだと私は思います。

Ming 57.05 Comet

 そしてダイヤルにも注目です。重なり合うラスターによって、多層構造の“コメットテール”パターンを描いており、1日のなかで光が当たる角度によってその表情が変化します。ムーブメントにはセリタをベースとしたキャリバーを採用し、針の代わりにGMTディスクを回転させる仕組みとなっています。そして仕上げの決め手となるのが、ミンのポリメッシュブレスレット。これだけでも、この時計が欲しくなる理由として十分です。着用する喜びはもちろん、旅先でもきっと素晴らしい体験となるでしょう。200本限定なので、すぐに完売する(あるいは、すでに完売している)ことになりそうです。

ギャレ クラシックス マルチクロン[マーク・カウズラリッチ]

 ギャレのクラシックス マルチクロンコレクションは、私にとってちょっとしたうれしいサプライズだった。

Gallet Multichron Classic Wristshot

 一般に思われていることとは違い、忠実に復刻版を作ることはビジネス上の決断として簡単なものではない。ましてや、時計を大規模に販売するとなるとなおさらだ。そして誤解しないで欲しいのだが、それがギャレの大きな目標なのだ。ブライトリングは、いくつかのモデルを少量販売したり、愛好家市場だけをターゲットにするためにこのブランドを買収したわけではない。自社のリテールスペースで多くの時計を販売し、ギャレというブランドに興味を持ってもらったうえで、その先にあるブライトリングにも目を向けてもらいたいのだ。私はヴィンテージウォッチが大好きだが、ヴィンテージの復刻版を作るだけでは、その目的を達成することはできないと思う。少なくとも、それだけでは十分ではない。

 確かに、ニバダ グレンヒェンはかなり大きなビジネスを展開している。おそらくHODINKEE(とそのほか)の読者層よりも、はるかに幅広い層に時計を販売しているだろう。ただ、ブライトリングほどの規模を持つ企業が手がけるブランドとして考えるなら、ギャレはもっと幅広い層に届かなければならない。それも、かなり広い範囲に。だからリニューアルされたフライング オフィサーやマルチクロン スポーツ、マルチクロン パイロットが登場することは予想していた。一方で、ヴィンテージウォッチ好きに向けたものが出てくるのかは正直わからなかった。ところがギャレはそれを実現しただけでなく、かなりうまくやってのけた。

Gallet Cultichron Classics Trio

 私はまだ実物を見ていないので、判断は少し保留しておくべきだろう。ドクサのサブ 300は実物を見たことがあり、チタン製にしたらどんな感じになるかも想像できるので、そちらを選んだ方が簡単だったかもしれない。だが内部に搭載されたムーブメントの品質、サイズ、そしてヴィンテージを思わせるディテールまで考えると、ギャレ クラシックス マルチクロンの各モデルはほかより少し高い価格設定ではあるものの、それでもかなり高い価値を備えているように感じる。そして皆さんの多くも同じように感じているのは、うれしい驚きだった。これは、なかなかできることではない。だからよくやった、ギャレ。新しいアルバムをプロモーションするときだって、ときにはクラシックを演奏する必要があるものだ。

チューダー ノースフラッグ[ジェームズ・ステイシー]

 ノースフラッグとサブ300 Ti5のどちらを選ぶか迷ったが(僕は一貫性を重んじる人間なので)、より“新しい”と感じるのはチューダーのほうだ。復活したニッチなモデルは、以前よりもニッチさを抑えた仕上がりになったうえ、チューダーがぺラゴス 39以外の時計なら、どれにでも搭載したがっているように見えるGMT機能まで備えている。冗談だ。まあ、少しばかり自虐的な冗談ではあるが。初代ノースフラッグよりも手首で小さく、薄くなり、さらに“T-fit”クイックアジャストクラスプとMETASマスタークロノメーター認定まで備えた本作は、ブラックベイ GMTやぺラゴス FXD GMT、さらにはブラックベイ プロに代わる実に魅力的な選択肢に見える。とはいえ私たち時計愛好家の多くは、初代モデルのチャーミングなパワーリザーブインジケーターを恋しく思うかもしれない。

Tudor Northflag Wristshot

 私はこのノースフラッグが持つ独自性を、小ぶりなレンジャーやブラックベイ クロノ、予想外のモナーク、そして年々進化を重ねてきたブラックベイの各モデルに続く、チューダーのラインナップ拡大を象徴する1本としても評価している。同時に、2015年に登場したオリジナルモデルほど大きく変わっていないという点もいいところだと思う。

ダニエル・ロート エクストラ プラット ローズゴールド ギルト[マライカ・クロフォード]

 ダニエル・ロートの時計はネオヴィンテージも新作も、どれもこの上なくエレガントだ。そのなかでも、ローズゴールド製ケースにブラックのギルトダイヤルを組み合わせた新しいエクストラ プラットは、これまでの復活後のモデルのなかでも、特にお気に入りの1本かもしれない。ブラックとゴールドには、それだけでどこか贅沢な雰囲気がある。それが、ひと目でダニエル・ロートだとわかる、あの極薄のダブルエリプスケースと組み合わさることで、実に完璧なバランスを保っている。控えめながらも洗練された魅力があり、その美しいギヨシェ彫りがそれを際立たせている。

Daniel Roth Extra Plat

Image, courtesy of Daniel Roth

 この時計の主役は、なんといってもダイヤルだ。まず5Nローズゴールドの無垢材からダイヤルを削り出し、ローズ旋盤を使って手作業でエンジンターン加工を施す。こうしてさまざまなギヨシェパターンを描いたあと、ブラックの電気めっきを施す。この工程では、あらかじめマーキング部分をマスキングするため、ゴールドのプリントのように見える部分は、実はローズゴールド製のダイヤル地金そのものが現れたものだ。その結果、ダイヤルには驚くほど鮮明なコントラストと奥行きが生まれている。個人的には、これまでのトーンを抑えたエクストラ プラットのいくつかのモデルに欠けていたのはこの表現だったようにすら思う。

Daniel Roth Dial

Image, courtesy of Daniel Roth

 そして、ゴールドケースにブラックダイヤルという組み合わせは格別だ。ヴィンテージの世界でこの組み合わせが高く評価されるのには理由がある。どこか退廃的な雰囲気を漂わせながらも、完全にクラシックな佇まいを保っているからだ。ブラックとゴールドの組み合わせには、どこか古代を思わせるところもある。深く艶やかな黒の表面に、神々や人物の姿が浮かび上がるギリシャ陶器を思わせるのだ。ここでも同じコントラストが、控えめなドレスウォッチに豊かな表情を与えている。

 ラ・ファブリク・デュ・タンがダニエル・ロートとともに手がけていることは、今も時計製造における私のお気に入りの復活劇のひとつだ。厚さわずか7.7mmの本作はまさに私が理想とするドレスウォッチだ。個性的でつくりが美しく、少し風変わりで、そしてこの上なくエレガントなのだ。

アルト アート 02[アンディ・ホフマン]

 週初めにアルトとのアポイントメントを控えていた私は、彼らが発表するアート 02という時計が、フランスを拠点とするスイス製新興ブランドにとって大きな転換点となることはわかっていた。

Alto ART 02

Image, Andy Hoffman

 発表された新作は、オリジナルのアート 01を洗練させ、アップデートしたモデルだ。本作はより小型で装着しやすいチタン製ケースにアルトのデザイン言語を凝縮し、操作しやすいクイックチェンジシステムとマイクロアジャスト機能を備えた、アルト初のオリジナルデザインの一体型ブレスレットを採用している。また、ル・セルクル・デ・オルロジェ(Le Cercle des Horlogers)と共同開発した自社製ムーブメントA02を搭載。アルト独自のムーブメント構造を継承し、ファセットカットされたサファイアクリスタル製のシースルーバックをとおしてその精緻な動きを堪能できる。

Alto ART 02 Wristshot

Image, Andy Hoffman

 驚くほど軽い着け心地も、この時計の魅力のひとつだ。グレード5チタン製ケースの重量はわずか38gで、ケース径は36mm、全長は42.3mmである。とはいえ本当の見どころは、アルトの構造的なアンスラサイトダイヤルと針だ。アルトの特徴である逆回転する秒針を備え、驚くほど立体的に面取りされたカーブドサファイアクリスタル風防越しに、その動きを眺めることができる。

 アートピースのようなこの時計は、比較的小ぶりな私の手首にもよくなじみ、アルトが大切にしている彫刻、時刻表示、アート、デザインといったテーマをじっくりと味わうことができた。1万5750ユーロ(約280万円)という価格設定のアート 02は、今年150本の限定生産を予定している。強烈な印象を残す本作は、現代のコレクターのあいだでアルトが現代のコレクターたちのあいだで、アルトが確かな存在感を示していることを改めて印象づけた。

A.ランゲ&ゾーネ 1815 アップ/ダウン[グリフィン・バーチ]

 厳密にはジュネーブ・ウォッチ・デイズに参加していなかったブランドの限定モデルを選ぶのは、今回の企画の趣旨から少し外れていることはわかっています。しかしジュネーブ・ウォッチ・デイズから数日が経った今、もしこの企画でA.ランゲ&ゾーネ 1815 アップ/ダウン以外を選んだら、自分に嘘をつくことになるでしょう。それくらい、頭から離れない時計なのです。ジュネーブ・ウォッチ・デイズ(というより少なくとも先週の新作)のなかでは、間違いなく私のお気に入りです。そして2026年に登場した時計のなかでも、簡単にお気に入りの1本に入ると思います。

A. Lange & Söhne 1815 Up/Down Two-Shot

 私なら、選ぶのはホワイトゴールドです。多くの人はローズゴールドを選ぶでしょうが、私の目には、ホワイトゴールドのほうがほんの少し特別に映ります。ほとんどモノクロームともいえるその佇まいがとても印象的ですし、(もちろん近いうちに私に割り当てが回ってくる可能性なんてほとんどありませんが)今の自分が自然に着けている姿を想像できる時計でもあります。無理に別の自分に合わせようとする必要はないのです。

 37.5mmというサイズも、現代的でドレッシーな時計として、ちょうどよく、理にかなった大きさだと思います。本作では39mmだった時計を37.5mmへ小型化しましたが、初代1815 アップ/ダウンの35.9mmまで小さくしなかったことも重要です。小型化するからといって、必ずしもかつてと同じサイズまで小さくする必要はないのです。今回の時計は、その好例だと思います。

A. Lange & Söhne 1815 Up/Down Wristshot

私はホワイトゴールドのほうが好みですが、ローズゴールドもかなり素敵です。

 考えてみれば、私は自分の好みをもっとよくわかっていたはずで、これほどこの時計を気に入ることも予想できたのかもしれません。私は小ぶりな時計の大ファンですし、ランゲにはめっぽう弱い。つまり、これはまさに私のど真ん中に刺さる時計なのです。しかもランゲがこうしたアプローチを見せるのは、今年これが初めてというわけでもありません。Watches & Wondersで発表された36mmのサクソニア・アニュアルカレンダーにも、今回と同じような魅力を感じました。要するに、ランゲは私がもともと好きなフォーマットを、より小ぶりなサイズで改めて仕立て直しているのです。それでいて、何ひとつ犠牲にしていない。これはランゲがどんなコンセプトであっても、見事に形にできることを物語っていると思います。

ブルガリ×ヴィアネイ・ハルター オクト フィニッシモ[タンタン・ワン]

 見た瞬間から、何日も、何週間も、あるいは何カ月も頭から離れなくなる時計がある。もちろん、ジュネーブ・ウォッチ・デイズからまだそれほど時間が経っていないので、何カ月も心に残っているとは言えない。それでも、ショーで発表されたブルガリ×ヴィアネイ・ハルターによるオクト フィニッシモには思わず息をのんだ。今回の新作では、オクト フィニッシモの滑らかでフラットなフォルムを捨て、スチームパンク風のレイヤードデザインを採用し、ふたつのタイムゾーン、日付、昼夜をそれぞれインダイヤルで表示する。オクト フィニッシモのデザインも、ヴィアネイ・ハルターのアンティコアも、決して万人向けとは言えないだろう。だが、もしその両方が好きなら、まさに夢のようなコラボレーションだろう。

Bulgar Octo Finissimo Vianney Halter

 ブルガリはこれまでも、アーティストやデザイナーとのさまざまなコラボレーションを通じてオクト フィニッシモで遊ぶことをためらわなかった。だが今回のモデルは全く別物に感じられ、実機も期待を裏切らなかった。このコラボモデルはオクト フィニッシモであると同時に、まさにスチームパンクなアンティコアでもあるのだ。それこそが、本当の意味でのコラボレーションが成し遂げるべきことだと思う。レザーストラップを合わせたゴールドモデルのほうが、アンティコアのデザイン言語をより忠実に受け継いでいると言うこともできるだろう。それでも、より洗練されたオールチタン仕様のモデルは、いつか所有できたらと夢に見る1本だ。