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Auctions パネライ ルミノール マリーナミリターレがフィリップス香港オークションで予想落札価格の3倍で落札

パネライのル ミノール マリーナミリターレが、フィリップス 香港オークションにて、163万8000HKドル(21万1270USドル、約2200万円)の落札価格を記録した。

 11月30日。フィリップスの香港オークションにパネライの歴史の中でも重要な4つのヴィンテージモデルが出品され、そのうちの1モデルが、24万〜48万HKドル(3万800〜6万1500USドル)という予想落札価格の3倍以上となる、163万8000HKドル(21万1270USドル、約2200万円)で落札された。

 印象的な結果を残したのは、約2200万円で落札されたルミノール マリーナミリターレ(Ref.6152/1)であるが、残る3つのモデルも全て、予想落札価格を上回り、日本円で1000万円を超える価格で落札された。

 「これらのユニークなヴィンテージ作品をオークションで見ることに興奮しました。」とパネライCEO、ジャンマルク・ポントルエは今回のオークションについて語ると共に、以下のコメントを発表している。

 「パネライは革新的なハイテク素材で新しい世界に参入しています。しかし、私たちのDNAで変わっていないのは、私たちの強いイタリアのルーツと伝説的な歴史です。フィリップスの香港オークションに出品された4つのレアピースは、私たちの歴史の中でそれぞれが等しく重要なマイルストーンであることを表しています。また、今日のパネライの礎でもあります」

 今回のオークションに出品されたのは、いずれもパネライの歴史においても非常に珍しいモデルだ。以下、出品された4つのモデルの詳細を紹介しよう。

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ルミノール マリーナ ミリターレ Ref.6152/1

©️Phillips

製造年: 1960年代
ケースナンバー: 124,964, Matr. No. 31
ケース素材: ステンレススティール
ムーブメント: 手巻き, アンジェラス Cal.SF 240, 15石
ブレスレット/ストラップ: レザー
クラスプ/バックル: SS製ピンバックル
サイズ: 47mm
署名: ケース, ダイヤル&ムーブメント

予想価格: 24万 – 48万HKドル
落札価格: 163万8000HKドル(約2200万円)

 1955年に、ロレックスは500本のRef.6152/1を、パネライの顧客であったイタリア海軍に独占的に提供した。この500本は全てロレックスのシグネチャーであるねじ込み式リューズを装備しており、パネライに1ロットずつ送られたと言われる。イタリア海軍に納品される前に、パネライは注文された時計に、独自のラジオミールダイヤルを装着。1950年代の終わりにはリューズ保護装置の特許を取得し、ルミノールケースを完成させた。
 

 このモデルは、ルミノールダイヤルを備えたRef.6152/1の中では最も古いと考えられる個体だ。1988年のマリーナ ミリターレの在庫リストに掲載されており、そこには9時位置にスモールセコンドを備えたマリーナ ミリターレダイヤルと管理番号“Matr. No.31”と記載されている。
 だが、Ref.6152/1には、特殊な来歴をもつ個体があったという。それが、第2次世界大戦で使用されていた30本のRef.3646を改造して作られたRef.6152/1である。本個体は、その30本作られたRef.6152/1のうちの1本で、現在までに初期のRef.3646をベースとしたケースをもつ個体は3本しか確認されていない。

 Ref.3646をベースにしてRef.6152/1の変更点は、ムーブメントをコルテベール製のCal.618ではなく、8日間巻きのアンジェラス製Cal.240に交換したことである。
 Ref.3646に使用されたアンジェラスのCal.240はコート・ド・ジュネーブが施され、MAI.61(1961年5月)の刻印が押されていた。しかし、これは必ずしもムーブメントの製造日を反映しているわけではないようで、製造された地板の製造日を示しているに過ぎないという。

 このモデルを含め、Ref.3646をベースにしたモデルは、パネライが製造した最初のスペシャルエディションと考えられており、新しいアンジェラス製Cal.240をアピールするためにパネライの歴史上で初めて “Officine Panerai - Brevettato”のエングレーヴィングが施されたケースバックを与えたとされている。


ラジオミール “8 Giorni Brevettato” エジツィアーノ GPF 2/56

©️Phillips

製造年: 1956年
ケースナンバー: Matr. N.E. 019
ケース素材: ステンレススティール
ムーブメント: 手巻き アンジェラス 240 Cal.12.55, 17石
ブレスレット/ストラップ: レザー  
クラスプ/バックル: SS製ピンバックル
サイズ: 60mm
署名: ケース, ダイヤル&ムーブメント

予想価格: 38万 – 78万HKドル
落札価格: 138万6000HKドル(約1860万円)

 GPF 2/56は、フィレンツェのG.パネライ&フィグリオ社(G. Panerai & Figlio)で開発、製造された初の連続生産モデルである。本作以前にパネライが流通させていたダイバーズウォッチは、全てロレックスのオイスターウォッチで、パネライはこれに独自のダイヤルを与えていた。GPFとは、Guido Panerai & Figlioを指しており、2/56は1956年の第2次製品開発のコードだ。なお、G.パネライ&フィグリオでは、このGPF 2/56を約50本生産したとされているが、現在、エジツィアーノの管理番号をもつモデルは、約15個が確認されている。

 またGPF 2/56は、半月型のリューズプロテクターを初めて搭載した時計であり、現代のパネライウォッチにも通ずる特徴だ。デザイン的には、クッションケースが特徴的なロレックス製の個体とは異なり、よりパネライらしいスタイルが確立された。1953年に発表されたロレックスのサブマリーナー、ブランパンのフィフティファソムズにインスパイアされたようで、ダイバーが潜水と減圧の時間を計ることができるように5分単位の目盛り付き回転ベゼルを搭載している。

 ケースの構造は、1920年後半に発表された第1世代のロレックス オイスターケースにインスパイアされている。重厚なステンレススティール製ミドルケースは、回転ベゼル、風防、そして裏蓋の間を貫通するように6本のネジで固定され、大きなラバーガスケットによって防水性を高めた。

 そして、GPF 2/56では、それまでテーブルクロックとトラベルクロックにのみ使用されていた8日巻きのアンジェラス Cal.240が搭載されている。これは当時ル・ロックル似合ったシュトルツ・フレール社がパネライのために特別に製作したムーブメントで、通常のアンジェラス Cal.240と比較すると、パネライのために作られたものは15石ではなく17石となっている。

 腕時計用ではないムーブメントの採用も影響し、GPF 2/56は直径60mmというプロ用ダイビングツールウォッチの中でも最大級の大きさを誇っている。


ルミノール マリーナ ミリターレ Ref.6152/1

©️Phillips

製造年: 1960年代
ケースナンバー: 124,964, Matr. No. 31
 ケース素材: ステンレススティール
ムーブメント: 手巻き, アンジェラス Cal.SF 240, 15石
ブレスレット/ストラップ: レザー
クラスプ/バックル: SS製ピンバックル
サイズ: 47mm
署名: ケース, ダイヤル&ムーブメント

予想価格: 38万 – 78万HKドル
落札価格: 126万HKドル(約1690万円)

 イタリア海軍に納入されたロレックス製のパネライウォッチは、水深十数m付近での潜水を想定して開発された。しかし、その後登場する圧縮空気を使用したスキューバダイビングでは、事前に最大深度や、潜水時間などの計画を立てる必要があり、時間を記録する回転ベゼル求められた。

 こうしたニーズに対応すべく開発が進む中で製作されたのが、Ref.6152/1をベースにプラスチック製の回転ベゼルを与えたモデルだ。この回転ベゼルは、1960年代にG.パネライ&フィグリオ社が製作したもので、本個体は試作品のプラスチック製回転ベゼルを搭載することで知られる4つのモデルのうちの 1 つだ。互いに120度の角度で配置された3本の小さなバネ式金属ピンが、プレキシ風防の側面に加工された溝に噛み合い、ベゼルを所定の位置に固定する。Ref.6152/1には、こうした溝付きベゼルを採用したモデルが数多く存在したが、構造上、強い衝撃に耐えられず、オリジナルのベゼルが残っているのは3本だけといわれる。


ルミノール Ref.6152/1

©️Phillips

製造年: 1960年代
ケースナンバー: 124’833
ケース素材: ステンレススティール
ムーブメント: 手巻き, ロレックス Cal.618, 17石
ブレスレット/ストラップ: レザー
クラスプ/バックル: SS製ピンバックル
サイズ: 47mm
署名: ケース, ダイヤル&ムーブメント

予想価格: 24万 – 38万HKドル
落札価格: 90万7200HKドル(約1220万円)

 パネライのアイコンと言えば、やはり半月型のリューズプロテクターだ。前述の通り、これはGPF 2/56で初めて採用されたが、すぐにRef.6152/1でも取り入れられることとなった。
 1950年代後半から1960年代前半当時のG.パネライ&フィグリオ社のアーカイブ写真で、リューズプロテクターを備えてたRef.6152/1が確認されており、6152/1にリューズプロテクターが装着され始めたのは、1950年代の終わり頃と考えられている。

 この時計が注目されるのには、そうした歴史的背景をもつモデルであるということもあるが、1992年に日本の時計雑誌の表紙に掲載されたことも特別な関心を集める要因となった。この時計は、パネライとその歴史に関する特集記事の中でも掲載され、この記事と日本の時計収集コミュニティからの好意的なフィードバックが、1993年にオフィチーネ・パネライがいわゆるルミノールを再現するきっかけとなったといわれる。記事に掲載されている写真と比較しても、この時計は過去38年間、手を加えられていないようである。