多くの人々がそうであるように、ここ数年で私もフォーミュラ1(F1)を観戦するようになった。“Drive to Survive”ブーム(Netflixが制作するドキュメンタリーシリーズ『Formula 1: Drive to Survive』によって始まったブーム)に乗っかったひとりと言えるかもしれないが、それでも遠くからこのスポーツを追いかけ、コース上やその外で繰り広げられるドラマに夢中になり、レースの合間にはその裏側についてひたすら読み漁る日々が続いている。そしてついに先週末、マイアミ・グランプリでその興奮を直接体感することができた。
この週末のグランプリで最初に目に留まった展示は、ランス・ストロール(Lance Stroll)のアストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チームのマシンだった。背景にはアストンマーティンのヴァンテージも映えている。
マイアミのオーパ・ロッカ・エグゼクティブ空港の隣に位置する、会員制の自動車クラブことThe Concours Clubからイベントに招待された。このクラブは全長2.1マイル(約3.4km)のレーストラックを擁しており、クラブのメンバーであればプライベートジェットで空港に到着し、クラブが空港まで持ってきてくれる愛車に乗り込んでそのままサーキットへ直行することができるのだ。そのサーキットを走るクルマは、個人所有のメルセデス AMG-Oneや、クラブが保有するBMW M2 CS レーシングなど多岐にわたり、出発前に数周のドライブを楽しむこともできる。またサーキットに留まって、リアルタイムのデータを取得してリモートコーチング付きのレースレッスンを受けたり、ニュートラルなチューニングの車両で走行技術を磨くことだって可能だ。もちろん、クラブの豪華な設備も堪能できる。
さらに言えば、私がThe Concours Clubとともにマイアミ・グランプリを訪れたのはモータースポーツと時計のあいだに切り離せない関係があるからにほかならない。例えばブリッグス・カニンガム(Briggs Cunningham)のように、偉大な時計の物語にはモータースポーツとの深い結びつきが存在する。さらに、プライベートジェットや数百万ドルのレーシングカー、そして高額なクラブの会員費を支払える人々であれば、素晴らしい時計も所有し、それを楽しんでいる可能性が高いだろう。
The Concours Clubのラウンジには大型スクリーンが設置されており、レースの観戦はもちろん、外のサーキットでの走行をリアルタイムで追うこともできる。
クラブラウンジにはエリオ・カストロネベス(Helio Castroneves)のレーシングスーツがアイルトン・セナ(Ayrton Senna)のスーツの隣に展示されている。
クラブのエントランスには、アーティストのポール・オズ(Paul Oz)によるミハエル・シューマッハ(Michael Schumacher)の彫像が立っている。
まず最初に紹介するのはその日の最後に目にした時計、グルーベル・フォルセイのバランシィエ コンテンポランだ。これを見た瞬間、クラブのメンバーたちが並々ならぬこだわりを持っていることがよくわかった。
日曜日のイベントはまったく期待を裏切らなかった。どの瞬間も素晴らしかった。F1アカデミーのレースでは雨の影響で少し混乱もあったが、サーキット全体でドラマが展開される素晴らしいレースだった。朝はThe Concours Clubでのウェルカムブレックファストから始まった。クラブの施設を少し体験し、いくつかのクルマも見ることができたが、メンバーのプライバシーを守るためにヘネシー・ヴェノム、フェラーリ SF90XX ストラダーレ、フェラーリ ローマ スパイダー、F40、数台のポルシェ、複数のメルセデス AMG-One、その他ガレージ内に保管された車両の撮影は許可されなかった。またクラブの要請で、ゲストのプライバシー保護のために名前や顔が特定されないよう配慮し、出席者の写真を多く撮ることも控えるよう求められた。この日、クラブはアストンマーティンとの新たなパートナーシップも発表した。これにより、クラブのメンバーはヴァンテージ、DBX707、DB12といったブランドの最もクールで速いモデルにアクセスできるようになるという。まさに彼らのガレージにさらなるスパイスを加えるラインナップだ。その後、私たちはマイアミ・インターナショナル・オートドロームにあるThe Concours Clubのラウンジへ向かい、ターン3のトラックサイドビューからグランプリの白熱した戦いを観戦することになった。
The Concours Clubとのパートナーシップについての噂は以前からあったが、メンバーへの正式な発表はレース前日の午後3時30分まで行われなかった。
The Concours Clubのアーロン・ワイズ(Aaron Weiss)会長は、ウブロ(Hublot)を身につけていた。
こちらはマイアミ・インターナショナル・オートドロームのThe Concours Club Loungeの様子だ。ターン3に位置するこのラウンジはVIP用の送迎エリアに近いため、アクセスのしやすさが選ばれた理由だという。
だが、レースのレポートや施設のホスピタリティについて聞きたいわけではないだろう。この記事を読もうと思ったのはきっと、クルマ、アクション、そして何よりも時計のためだ。そして私はここでこう言いたい。“It's lights out and away we go”(F1実況の常套句)。マイアミ・グランプリのフォトレポートをお届けしよう。
スピードを象徴する週末にふさわしく、最初に目にした時計の2本がオメガ スピードマスターだったのも納得だ。
オメガ スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン
そしてまったく予想していなかった一本がこちら。ヴォルティック・ウォッチズ(Vortic Watches)による、1925年製のウォルサム モデル1894のコンバージョン。
ムーブメントを見て欲しい。なんて美しいんだ。
チューダー ブラックベイ 58。HODINKEEのメンバーにとっても特別な存在だ。
ADLCコーティングのカルティエ サントス ドゥ カルティエ。
そして、今日何本も目にすることになるであろうロレックス デイトナのひとつ目がこちら。
その日最初のイベントはフォーミュラ1アカデミーのドライバーたちによるレースで幕を開けたが、あっという間に雨に見舞われた。こちらはPREMAレーシングとメルセデスAMG ペトロナス フォーミュラワンチームと提携しているドリアーヌ・ピン(Doriane Pin)だ。
グレッグ・クリーマー(Greg Creamer)はマイクを握り、レースの展開を彼ならではの視点で伝えてくれた。
アクションといえば、サーキットで最初に目にした時計のひとつがこちらだ。オーデマ ピゲ ロイヤルオーク コンセプト スプリットセコンド クロノグラフ ビッグデイト GMT。
テーマカラーの“レッド”にこだわって、こちらはMAD1 “Red”。さらに腕にはEquation of Time(均時差)のタトゥーが彫られている。まさに時計愛が伝わる写真だ。
スクーデリア・フェラーリのドライバーであるマヤ・ウーグ(Maya Weug)が、雨のなかターン3で走行している様子。
続いてロッソ・コルサ(レーシング・レッドの意)のテーマに合わせた、パテック フィリップ Ref.7118/1200 ローズゴールド。
さらにロッソ・コルサとローズゴールドのマッチングを示す、オーデマ ピゲ ロイヤル オーク クロノグラフも登場。
そして誰もが欲しがる人気モデル、ロレックス “パンダ” デイトナ。
ウブロ ビッグ・バン ウニコ ホワイトセラミック
ロダン・モータースポーツが運営するマシンで、マクラーレン・ドライバー・デベロップメント・プログラムの一員でありるエラ・ロイド(Ella Lloyd)は雨のなかを駆け抜けた。
販売されていた記念品には、サイン入りのレース使用済みバイザー、帽子、ラグナット、そしてジョージ・ラッセル(George Russell)のIWCロゴが入ったプーマのレーシンググローブも含まれていた。
さらにフェルナンド・アロンソ(Fernando Alonso)が実際に使用したヘルメットや、そのミニチュアバージョンも購入することができた。
パテック フィリップ Ref.5168Gは、時代を超えて愛されるネオクラシックだ。
ちなみにパテック フィリップ Ref.5726Aは、現在カタログに残っている数少ないステンレススティール製ノーチラスのひとつだということをご存じだろうか?
またしても登場、オーデマ ピゲ ロイヤル オーク クロノグラフ。
やがて雨は上がり、太陽が顔を出した。そしてよく言われるあの言葉が思い浮かぶ……、「Sun's out...」(太陽が出たぞ…)、
「...guns out」(全開で行こう!)。そしてここで目にしたのは、これまで実物を見たことがなかったパテック フィリップ Ref.5373P 永久カレンダー モノプッシャー スプリットセコンド クロノグラフ(左利き用)だ。実際に手に取って見てみると、その魅力にすっかり心を奪われた。グレーのグラデーションダイヤルは見事な仕上がりで、左側のリューズも実際の操作では親指で扱いやすいことがわかった。
最近手に入れたという、パテック フィリップ ノーチラス Ref.5712/1A。
さらにもう1本。
そしてまたもう1本。
大量のノーチラスズ(もしくはラテン語風にいうならノーチライ?)が並ぶなかで、ローズゴールドのRef.5712はひときわ強い存在感を放っていた。
マット・アームストロング(Mat Armstrong)。YouTubeで最も影響力のある自動車系コンテンツクリエイターのひとりが、The Concours Clubに姿を見せた。
彼の手首には、クラシックなロレックス デイトジャストが輝いていた。
一方で、観客の女性たちのあいだではロレックス レディ デイトジャストのツートンが圧倒的な人気を誇っていた。
もう1本の“イットガール”ウォッチ、ブルガリ セルペンティ。
ラウンジは朝の数時間はかなり静かだったが、レースの時間が近づくにつれて徐々に混み始め、最終的には大勢の人で賑わった。
アーティストのポール・オズによる彫刻作品。
スピークイージー(秘密のバーの意)への入り口。
先述のアーティスト、ポール・オズの手首にはパネライ ルミノール GMTが輝いていた。
スタートグリッド全体に、タグ・ホイヤーのロゴが目立っていた。ラウンジ内でもひときわ強い存在感を示していた。
オイスターフレックスを装着したロレックス デイトナは、暖かく湿気の多い天候のなかで人気の選択肢だった。特にこのエバーローズゴールドモデルは目を引く存在だった。
ほかの選択肢もいかがだろうか?
会場は徐々に人で埋まり始め…
プールに飛び込んで、何周も泳ぐ人もいた。
会場を満たすDJレイ・コスタ(DJ Ray Costa)のプレイ。
そして、DJブースにはさらに多くのロレックス デイトナが並んでいた。
待って、あれは?
マクラーレンのオスカー・ピアストリ(Oscar Piastri)だ!
そしてHP...いや、フェラーリチームだ。
リシャール・ミルはフェラーリとマクラーレン両ドライバーのスポンサーである。そして、ほかに誰をサポートしているか知っているだろうか? そう、ラファエル・ナダル(Rafael Nadal)だ。話は変わるが、こちらはリシャール・ミル RM 35-03 “ラファエル・ナダル”。ブルークォーツTPT仕様の特別なモデルだ。
リシャール・ミル RM 11-03 フライバッククロノグラフ
もしくは、ロータスチームにぴったりな1本はどうだろう? RM 11-03 “ロマン・グロージャン”。
そしてついにレースが開始。人々の興奮が一気に高まった。
アルピーヌのピエール・ガスリー(Pierre Gasly)。
レーシングブルズのリアム・ローソン(Liam Lawson)。彼は残念ながらDNF(Did Not Finish)に終わった。
(エンジン音)「ニーィィィーーーン...」
5行表記のチューダー ペラゴス。
このゲストは日付こそ合わせていなかったものの、この日のテーマにはしっかり合わせていた。5月4日は“May the Fourth Be With You”(スター・ウォーズの日)だったため、文字盤がミレニアム・ファルコンのコックピットを模したデザインのシチズンをつけていたのだ。
思いがけずスピーク・マリンを発見。
そして、クロノスイス クロノスコープも。
ゼニス クロノマスター スポーツ
IWC インヂュニア クロノグラフ
マイアミを思い描くとき、まず最初に頭に浮かぶものがある(友人のT.S.のおかげで)。スパークリング花火とシャンパンだ。
私たちはコースのすぐそばにいたため、目の前のフェンスが邪魔でレースアクションを撮影するのは難しかったが、1.6リッター V6エンジンのターボ音を間近で聞くことができた。そのスピードはフォーミュラ1アカデミーのクルマとは比較にならないほどで、ターン3とターン4のあいだの短いストレートに入るときのシンクロしたアップシフトの音も鮮明に聞こえた。
ランス・ストロールがアストンマーティンを駆り、ターン3から飛び出してきた。
メルセデスのジョージ・ラッセルの隠し撮り(スニークショット)に成功。
メルセデス AMG ペトロナス F1チームに所属する若きスター、キミ・アントネッリ(Kimi Antonelli)は先週末、素晴らしい走りを見せてくれた。彼は今後注目すべき存在になるだろう。
IWC ビッグ・パイロットをつけてメルセデスを応援に来た人もいた。
パネライ ルミノール
ウブロ スピリット オブ ビッグ・バン
イベントのセキュリティチームのひとりがG-SHOCKをつけていた。
オメガ x スウォッチ “ムーンスウォッチ”
ティソ PRX
ロレックス ヨットマスター
ロレックス “ブルージー” サブマリーナー
ロレックス GMTマスター “コーク”
ロレックス GMTマスター “ペプシ”
フェラーリのシャルル・ルクレール(Charles LeClerc)がターン3を駆け抜ける。
ウィリアムズのカルロス・サインツ(Carlos Sainz)。
レッドブルの角田裕毅。
タイミングよく、ランス・ストロールを再び目にすることができた。
ロレックス “ジョン・メイヤー” デイトナ
ロレックス ディープシー チャレンジ RLXチタン(実物を見るのはこれで2回目だ)。
ロレックス デイトナ、プラチナモデルのオフカタログ品。バゲットインデックスとバゲットベゼルが備わっている。
オーデマ ピゲ ロイヤル オーク クロノグラフ
バンフォードカスタムのロレックス デイトナ。まるで“ポール・ニューマン”のようなデザインだ。
タグ ホイヤー モナコ キャリバー11 クロノグラフ バンフォード
アルピーヌのコックピット近くには、H.モーザーのロゴが入っている。
最終的に3位でフィニッシュを果たしたのは、ジョージ・ラッセル。
キック・ザウバーのガブリエル・ボルトレート(Gabriel Bortoletto)は苦戦。完走こそできなかったが、少なくとも数周は走った。その証拠がここにある。
最後に、今回のフォトレポートを締めくくるのは、会場で見かけたお気に入りの時計たちだ。なかでも特に印象に残ったのは、この真新しいパテック フィリップ Ref.5164Gだ。
パテック フィリップ Ref.5980/60G
オーデマ ピゲ ロイヤル オーク オフショア クロノグラフよりも、メッツのワールドシリーズリングのほうが真のステータスシンボルと呼べる。
個人的に実物を見たことがなかった珍しい時計、オーデマ ピゲ ロイヤル オーク オフショア トゥールビヨン クロノグラフ。
最新のオーデマ ピゲ ロイヤル オーク ダブル バランスホイール オープンワーク。ブラックセラミックケースにローズゴールドのムーブメントを搭載したモデル。
パテック フィリップ Ref.5470/1G
F.P.ジュルヌ サンティグラフ ローズゴールド 。イベントで目にした最後から2番目の時計。
RM 11-03 “マクラーレン”は見つけることができなかったが、オスカー・ピアストリ(Oscar Piastri)がマイアミ・インターナショナル・オートドロームで57周を走り抜き、見事に3連勝を達成したことを最後に祝福したい。
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