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特定の限定版オメガ スピードマスターの価格が近年3桁の伸びを見せていることについて、その理由を説明するつもりはない。例えば、2万ドル(約230万円)のタンタンや、最新版は1万ドル未満で販売されていた5万ドル(約570万円)以上するシルバー スヌーピーなどの例があるが、私にもよくわからないのだ。
しかし、私もあなたと同じ気持ちであることは間違いない。今の価格を見ると、私が10年半愛してきた趣味が、いったい何でこんなことになってしまったのかと思う。
苦言を呈するわけではないが、私は2004年に日本限定で発売されたスピードマスター プロフェッショナル レーシングダイヤルが1万ドル以下でタンタンがそのすぐ横に並び、一貫してさらに安い価格で提供されていた時代を覚えている。そして、それはそれほど昔のことではなかった。これは時計に限ったことではない。あらゆるものが値上がりしているが、それが私の頭を悩ませている。
また、2011年ごろにオメガのブティックに立ち寄った際、誰も欲しがらずに奥に眠っていたアラスカプロジェクト(Ref.311.32.42.30.04.001)をすすめられたことを覚えている。今では私が挙げたこれらの時計(すべてCal.1861を搭載)は、1万ドル半ばから2万ドル前半の価格で取引されている。これは誰のせいでもない。昔ながらの市場原理が働いているだけなのだ。見えざる手がスピードマスターの市場を動かしているのである。
しかし私が知る限り、これら限定版のスピードマスターを欲しがるバイヤーがほとんどいなかった時代を生きてきた。そして、私は今誰も欲しがらない時計は数年後に馬鹿げた価格を求める時計と同じであることを学んだ。そこで以下では価格が高騰してしまったスピーディと、まだ高騰していない手頃な価格の代替モデルを組み合わせて紹介してみた(すべては相対的なものだ)。これにより、あなたの懐具合に応じた選択肢を得ることができる。また、今を生きることに興味があるのか、将来の“たらればの話”を防ぐことに興味があるのかにもよるだろう。
高騰モデル:スヌーピー スピードマスター(Ref.311.32.42.30.04.003)
Analog/Shiftのジェームス・ラムディン(James Lamdin)氏と時計の話をしていたとき、彼は鋭い観察をしていた。5万ドル前後の価格で取引されているスピードマスターの多くには、とあるテーマがあるという。 彼曰く「どれも不遜で楽しいものばかり。漫画的でもある。深刻さを感じさせないものが魅力的なのです」と。その通りだ。スヌーピーはその最たるものだと思う。現代のスピードマスターの世界では子供向けアニメをあしらった限定品が高値で取引されている。上手く説明できないが、そうそう、NASAのシルバー・スヌーピー賞の意味は重々承知している。
手頃な代替モデル:スピードマスター プロフェッショナル 銀河鉄道999(Ref.3571.50.00)
このスピードマスターの限定モデルは正面から見ると通常のモデルと変わらないが、裏返すとケースバックにアニメのキャラクターが出てくる。この時計では銀河鉄道999の脇役、メーテルが描かれているのだ。限定版でありながら通常モデルのようなステルス性を持っているのが魅力だ。シルバー スヌーピーが1970本であるのに対し、銀河鉄道999は1999本限定となっている。同じくらいの希少性があるが、知名度はそれほど高くない。
高騰モデル:オメガ スピードマスター アラスカプロジェクト(Ref.311.32.42.30.04.001)
2008年のアラスカプロジェクト限定モデルは、オメガが70年代初頭にコードネーム「アラスカプロジェクト」と名付けたプログラムに基づいている。その目的は極端な温度変化のある環境に適したスピードマスターを作ることだった。このプロジェクトでは、チタンなどの新素材やビーズブラストなどの表面加工に加えて、時計のシールドを作成した。この時計は70年代に試作されたままだったが、2008年にオメガは70年代のアラスカプロジェクトの時計に似せた1970本の時計を発売した。小売価格は約5000ドル(約60万円)だったが、現在これらの時計は2万ドル(約230万円)台前半で取引されている。
手頃な代替モデル:オメガ スピードマスター HODINKEE 10周年記念限定モデル(Ref.311.32.40.30.06.001)
そう、これは我々が手がけたスピードマスターの限定モデルだ。通常、我々が手がけた時計について言及することは避けているが、アラスカプロジェクトに代わるよりリーズナブルな選択肢となると、HODINKEE 10周年のスピーディが素晴らしい選択肢となる。アラスカプロジェクトの約半額の価格で取引されているが、60年代、70年代のオメガのツールウォッチの美学を受け継いでいる。当時のオメガのツールウォッチはまるでミレニアム・ファルコンのコックピットから飛び出してきたかのようだ。このスピーディは、60年代、70年代のフライトマスターの9時位置のインダイヤルに似た2色のインダイヤルを備えている。また、クロノグラフの針にも色が使われている。この時計にはアラスカプロジェクトのプロトタイプと同時代に登場したデザイン要素が盛り込まれているのだ。70年代のオメガのツールウォッチのような独特のデザインをお求めの方は、HODINKEE 10周年のスピーディは検討する価値があるだろう。
高騰モデル:オメガ スピードマスター タンタン(Ref.311.30.42.30.01.004)
フラテロ(Fratello)ではタンタンとのつながりに関して、ヨーロッパでコミックを生んだベルギー人漫画家のエルジェ(Hergé)がオランダの人気時計ブログに送った手紙の内容までを紹介した。エルジェは“タンタン”と呼んで欲しくないと言ったが、この名が定着した。そしてこの時計の人気は2013年の発売以来、高まる一方だ。実は発売当時は、まったく人気がなかった。最初の評判は良くも悪くも生ぬるいものだった。赤と白の市松模様の秒針は、賛否両論あり、この時計は2年半しか生産されなかったが、正確な生産数は不明だ(1000〜2000本と言われている)。この知識の穴によって、タンタンは現在1万ドル(約115万円)台後半で取引されている状況だ。レボリューション(Revolution)のウェイ・コー(Wei Koh)氏のように「ポール・ニューマンレベルの次の刺激的な時計になるのではないか」と予想する人もいた。実際、その日がやってきた。そして現在に至る。
手頃な代替モデル:オメガ スピードマスター プロフェッショナル アポロ15号40周年記念モデル(Ref.311.30.42.30.01.003)
ダイヤル外周にレッド、ホワイト、ブルーの3つの同心円状のリングが配置されている。この配色はアポロ15号に関連してアメリカの国旗を意識したものだが、このトリオカラーを誇る宇宙先進国がある。ロシアだ。オメガが限定モデルを発表したソユーズのテストプロジェクトは、ロシアがソビエト連邦の一部だった時代に行われたもので、別の国旗の下で飛行していた。しかし、現在のロシアは宇宙開発に多大な貢献をしている。民間企業が参入する前の2011年、シャトル計画が中止され、さらにNASAの予算が削減された後、アメリカの宇宙飛行士をソユーズロケットでISSに送り、運用を続けていたのはロスコスモス(ROSCOSMOS)社だった。もしあなたが予算削減に直面しているなら、この時計はまだ1万ドル(約115万円)以下で取引されている。
高騰モデル:スピードマスター プロフェッショナル レーシングダイヤル 日本限定(Ref.3570.40)
この2004年の日本市場限定モデルは、1969年に発売された初代スピードマスター レーシングの“プレムーン”モデルを視覚的に再現している。ダイヤルはスピードマスター マークⅡと共通で、我らがジェームズ・ステイシー(James Stacey)お気に入りのスピードマスターであり、私のお気に入りでもある。機会があれば手に入れたいと思っていたが、結局、レーシングダイヤルのマークⅡを所有することになった。多くの限定モデルがそうであるように生産数は生産年を反映しているため、この時計は2004本存在し、現在は1万ドル(約115万円)台前半から半ばで取引されている。スピードマスターはもともとレース用の時計だったが、偶然にもムーンウォッチとして有名になった。ジェームズが言ったように、それを物語るエディションには素晴らしいものがある。
手頃な代替モデル:オメガ スピードマスター リデュース レーシング(Ref.3518.50.00)
スピードマスター リデュースは、コレクターの間ではあまり人気がなかった。その理由は修理代が高いことと歴代ムーン・スピーディの最大の特徴が自動巻きではないことにある。しかし、どうしてもレーシングダイヤルが欲しいという方には、このモデルがおすすめだ。2010年に6000本限定で発売されたこのモデルには、人気モデルと同じレーシングトラックが採用されている。6時位置のインダイヤルの上にも“Racing ”と書かれており、レースとシューマッハの関係をより強調している。このモデルはCrown&Caliberでも販売しているが、そうでなくても私はこのモデルを選ぶだろう。