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Hands-On アトリエ・ウェン インフレクション ― フルタンタル製ケースとグラン・フー エナメルダイヤルで限界に挑戦

フレンチチャイニーズのマイクロブランドから登場した、これまでで最も野心的な1本は、同じく野心的な価格設定で提供される。

Photos by TanTan Wang

アトリエ・ウェンが今年アンセストラを発表し、ブランド史上最高の価格帯でハンマー加工されたグラン・フー エナメルダイヤルで、中国のクラフトマンシップの別領域へと拡大したことを覚えているだろうか? さて、アトリエ・ウェン創業者のロビン・タレンディエ(Robin Tallendier)氏とウィルフリード・ビュイロン(Wilfried Buiron)氏は、今年の2作目となるインフレクションコレクションのために“Hold my beer(大胆なことをするからちょっと待っててくれ)”と言った。これは、ブランドによると“世界初の非限定、継続コレクションであるフルタンタル製のブレスレットウォッチ”だ。この言葉遣いはきわめて意図的である。というのも、ブランドから2024年に登場したパーセプションデザイン、Only Watch 2024のためのF.P.ジュルヌ クロノメーター・ブルー・フルティフのユニークピース、そしてジャン・アルノー(Jean Arnault)氏の手首に見られたタンタル製ルイ・ヴィトン タンブールなど、いくつかのきわめて限定されたタンタル製ブレスレットウォッチの例が思い浮かぶからだ。オーデマ・ピゲからはブレスレットの一部が異なる金属で作られていたものの、タンタル製の古いロイヤル オークの例が知られている。

Atelier Wen Inflection Side Shot
Atelier Wen Inflection Case Side
Atelier Wen Inflection Bracelet Side Shot

 タンタルは悪名高いケース金属であり、その高い密度と暗くわずかに青みがかった色合いで愛されているが、機械加工、仕上げがきわめて難しいことで知られている。タンタル製ブレスレットはめったにない。しかしアトリエ・ウェンは以前、旧型の一体型ブレスレットデザインであるパーセプションを限定数で製造したことがある。インフレクションはパーセプションのシルエットを採用し、タンタルの仕上げをさらに困難にする大幅な改良を加えることでこの成果の上に構築されているが、より豪華な外観と質感を生み出している。

 直径40mm×厚さ10.25mm、ラグ・トゥ・ラグ45mmという短い一体型ブレスレットのデザインは、ここ数年アトリエ・ウェンの歩みを追っている人にとっては確かになじみ深いものに感じるだろう。このデザインの際立った特徴は、曲面のファセットの圧倒的な数と、チタンケースとブレスレットの対照的な要素だ。実際、ケースとブレスレットには技術的には平らな面はない。これは、CNCマシンから直接着用者の手首へと出てきたように感じられがちな多くのマイクロブランドデザインの一体型ブレスレットデザインから、インフレクションのデザインを際立たせるのに大いに役立っている。凹型のベゼルや隆起したミドルケースなどの小さなディテールが、すべてを興味深く保つのに十分な遊び心を加えている。これらすべてが完全にタンタルで構成されていることを考慮に入れると、その効果は実に印象的だ。私は特にブレスレットのセンターリンクの、完全に磨かれた曲面が好きだ。それは、インフレクションの完成度にどれほどの努力が注がれているかを思い出させる要素のひとつだ。

Atelier Wen Inflection Green Macro Dial
Atelier Wen Inflection Caliber
Atelier Wen Inflection Black Dial Macro

 ガラス質のグラン・フー エナメルダイヤルのデザインも、アンセストラのために開発されたダイヤルの進化形であるため、少しなじみ深いものに感じるかもしれない。3つのバリエーションすべてが、アトリエ・ウェンによって、北京を拠点とするエナメル職人であるコン・リンジュン(Kong Lingjun)氏の工房で製作を委託されており、彼はほかの中国ブランドのエナメルダイヤルも製作し、自身の作品をコンサイス(Koncise)レーベルで提供している。ハンマー加工されたシルバーのダイヤルベース上に鮮やかなグリーンのフュメを施した“Yōu”モデルは、発売記念エディションと位置付けられ、30本限定だ。ふたつのレギュラーモデルも発売され、“Mò”は、ギルトアラビア数字とマッチする5Nレッドゴールドメッキを施した針を備えた豊かなブラックのグラン・フー エナメルダイヤルを特徴とし、“Yuān”は対照的な白いアラビア数字を備えたミッドナイトブルーのグラン・フー エナメルダイヤルを提供する。私はお気に入りとしてグリーンダイヤルを選ぶだろうが、暖かみのあるギルト数字を備えたブラックエナメルは、タンタルの冷たい青い色合いと対照的な興味深い温もり感を提供する。これはうまくいくとは思わなかった組み合わせだが、おそらく3つのなかで最も繊細なものだ。

 インフレクションの最も注目を集める要素はタンタルの使用だが、私が同様に興味深いと思ったのは、内部で駆動しているムーブメントだ。一般的なセリタ、ラ・ジュー・ペレ、または中国製ではなく、アトリエ・ウェンはインフレクションのためにカスタマイズされたジラール・ペルゴのムーブメントを使用している。これは自動巻きのCal.GP03300をベースに、歴史的な中国の絵画に見られるモチーフのような曲線的で流れるようなラインが加わることで、まったく異なる美学を重ねている。このコンセプトに基づいてブリッジは再設計されており、これらの曲線を作成するためにいくつかの追加のスケルトン化が行われている。アングラージュ(面取り)は、素晴らしいコントラストのために広く施されており、レーザー彫刻された曲線的なストライプが流れるような外観を引き継いでいる。私は、ローズゴールドメッキの真鍮とタングステンで作られたスケルトン化されたローターが大好きだ。これはデザインにぴったりの外観だ。2万8800振動/時で駆動するカスタマイズされたCal.GP03300は、1日あたり-0/+10秒の精度を誇り、48時間という標準的なパワーリザーブを備えている。

Atelier Wen Inflection Green Wristshot
Atelier Wen Inflection Inner Clasp
Atelier Wen Inflection Clasp

 手首に装着すると、インフレクションのタンタル構造が完全に力を発揮する。私は過去に多くのタンタル製ウォッチを扱ってきたが、タンタル製ブレスレットとケースが手首に与える感触に匹敵するものはない。それはとてつもなく重いが、着用する絶対的な喜びを感じる。そしてこれほど重い時計では、フィット感がきわめて重要だ。大きすぎたり緩すぎたりすると時計は手首の端にぶら下がり、手に垂れ下がってしまう。インフレクションはスポーツウォッチとして適切なサイズであり、存在感は十分に大きいが、ラグ・トゥ・ラグとブレスレットの垂れ下がりは私のような小さな手首でもうまく機能する。グリーンダイヤルを備えるモデルが私の手首にフィットしたとき、感激した。そしてインフレクションケースの曲線は全体的に流れるような感触を与え、きわめて安心感のあるフィット感につながっている。41mmのロイヤル オークよりもはるかに快適だと言っても過言ではないだろうか?

 私がインフレクションで本当に見てうれしかったのは、クラスプのアトリエ・ウェンのロゴボタンを押すことで作動する、工具不要のマイクロアジャスト機構の搭載だ。アトリエ・ウェンがこれをタンタル製ブレスレットに搭載できるのであれば、チタンやスティールを使用しているほかのブランドに言い訳の余地はない。しかしアトリエ・ウェンは、インフレクションがタンタル製ブレスレット仕様できわめて高額な2万9800ドル(日本円で約460万円)という価格設定であるため、こうした点を強化せざるを得ないのも当然だろう。セイルクロスストラップ仕様は1万9800ドル(日本円で約300万円)でオプションとしてあるが、私にとっては、フルタンタル製ブレスレットの壮大さなしにこれを購入することは考えられないだろう。今年のアンセストラでは、ほぼ6000ドル(日本円で約92万円)という価格帯がブランドにとって野心的な目標のように見えた。しかしそれから数ヵ月後、約3万ドル(日本円で約460万円)の時計を見ているのだ。

Atelier Wen Inflection Black Wristshot

 多くの人が、依然として本質的にはマイクロブランドであるものに高級時計の金額を費やすのは難しいと感じるだろうが、インフレクションはきわめて印象的なデザインであると言わざるを得ない。おそらくアトリエ・ウェンはニッチの中のニッチをターゲットにした時計を作成したのだろうが、私は実際、この価格は公正だと感じる(もちろん、かなり高額ではあるが)。

 モダンなフルタンタル製ウォッチ、ブレスレットなどを探しているのであれば、いくつかのモダンなビスポークを除いて、市場にはほかに何もない。そしてそれらを入手するには、はるかに6桁ドル(編注;日本円で約1500万~1億5000万円)の金額を費やすことになるだろう(そう聞いている)。グラン・フー エナメルという追加の職人技を備えたインフレクションは、着用時に絶対的な楽しみをもたらしてくれるユニークな製品を提供しながら、かなりのパンチを効かせている。

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