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ヴァシュロン・コンスタンタンがブランドの創立日を祝った翌日(ちょうどルーヴル美術館でオートマタを備えた信じられないほど複雑なクロックを発表した翌日)、彼らはジュネーブ郊外の本社にプレスを集め、“我々の挑戦はまだ終わっていない(We're not done yet)”と自信満々に述べた。
“レ・キャビノティエ ”の背後にある概念は単純で、“もちろん、私たちならできる(Yes, we can do that)”である。 これはVIP顧客(高額を支払い待つ意志のある新規顧客も含む)向けのブランドのカスタム、一点物、ビスポーク、特注品のためのある種の研究所だ。この時計は超複雑でしばしばバロック様式であり、超未来的ではなく、多くの場合、メティエ・ダール工房の有能な職人にフィーチャーしている。だからこそ今日この記事で多くの信じられないほどの彫金、ジェムセッティング、エナメル装飾を目にすることになる。
ヴァシュロン・コンスタンタン レ・キャビノティエ・ソラリア・ウルトラ・グランドコンプリケーション、世界でもっとも複雑な腕時計。
しかしレ・キャビノティエ は、バークレー・グランドコンプリケーションやソラリア(世界でもっとも複雑な懐中時計および腕時計)なども担当している。今の時期はブランドが自社の成果を示すだけでなく、潜在的な顧客に自分たちのカスタム作品のアイデアを得る機会を与える時期である。これらの時計はすでに販売済みか、リクエストのみで入手可能なため、価格は提示されていない。この発表で彼らが持ち出したものを見てみよう。
レ・キャビノティエ・アーミラリ・トゥールビヨン —プレアデスの神話—
もしかしたらこれを2本、あるいは3本手に入れることは可能だろうか? プレアデス星団から教えを授けるために来たかのように、ヴァシュロン・コンスタンタンが再びアーミラリ・トゥールビヨンの新バージョンを発表した。このモデルは、2016年に発表されたCal.1990をベースとしている。手巻きムーブメントは針のジャンプを同期させるという、瞬時に切り替わるレトログラード機構を特徴としているが、技術的なハイライトは毎分1回転する2軸性トゥールビヨンである。トゥールビヨンとムーブメントの直径35.5mm×厚さ10mmという寸法により、時計は比較的大きく直径45mm×厚さ20.13mmである。しかしこれは、ヴァシュロンのほかの工芸技術に対して大きなキャンバスを提供する。
この時計のテーマはポーランドの天文学者ヨハネス・ヘベル(Johannes Hevel/1611年〜1687年)、通称ヘベリリウスの作品に触発されている。彼は月のマッピングに加えて多数の彗星を発見し、星の詳細なカタログを編纂した。彼はまた最初期の正確な星図のひとつを作成し、彼の彫刻、特にプレアデスのそれがこのデザインに使用された。450時間の彫金を経て、この時計は両側にふたつの情景を描いている。リューズ側のケースには、剣と盾を手にしたオリオンが雲のあいだから現れ、プレアデスを征服するために戦いを挑むシーンが描かれている。この星団はゼウスが送った牡牛によって守られている。もう一方の側には、プトレマイオス(紀元100年頃〜168年)によって古代の星座として説明された船アルゴ号が描かれており、帆には守護女神アテナの像がある。さらにケースにはプレアデスを表す正確な場所に10個のブリリアントカット・ダイヤモンドがセットされている。
過去に私はアーミラリ・トゥールビヨンが、顧客が実際に大きな時計を要求していた時代からのものであり、時代錯誤的に感じると述べたことがある。しかし今回のケースは、まさに理想的な使用例と言える。私は直接彫金を見たが、ディテールのレベルは圧倒的だ。マイクロ彫刻(深さ1mm未満で行う必要がある)の小さなラインのそれぞれが完璧に配置されているため、まずこれを着用することを想像するのは難しく、ひとつのへこみが作品を台無しにすることは容易に想像できる。これは芸術であり、キャンバスがたまたま時計なだけだ。
レ・キャビノティエ・コスミカ・デュオ・グランドコンプリケーション
これは私がジュネーブでのプレビュー中に最も印象的だと感じた時計だ。コスミカ・デュオは、新しい天文観測に焦点を当てた自社製Cal.2756-B1によって動作する24の複雑機構を備えた両面時計である。18Kホワイトゴールド(WG)製ケースに収められたこの時計は、直径47mm×厚さ20.2mmだ。もしそのサイズがあなたにぴったり合うなら、ヒンジ式のラグとインターチェンジャブルシステムを備えたストラップにより、どちらの側を上にしても容易に装着できる。ヴァシュロン・コンスタンタンは決してそう言わないだろうが、これは直ちにパテック フィリップのグランドマスター・チャイムに対抗するライバルとして私に衝撃を与えた。比較は明らかだが、実行は大きく異なる。
アーミラリ・トゥールビヨン “プレアデスの神話”のようなより芸術的なスタイルの時計や、ブランドの“バッカスへ敬意を表して”と比べて、ここでの焦点は技術的側面に当てられている。この時計は手巻きで60時間のパワーリザーブを備えているが、なお24の複雑機構を作動させる1003個の部品(112個の石を特徴とする)に動力を供給している。ブランドによると、これらの複雑機構には次のものが含まれる:
“オフセンターの時・分表示、昼夜表示、第2時間帯、24の都市のワールドタイム表示、第2時間帯の昼夜表示、永久カレンダー、ローカル ホライゾン ゾーン インジケーション(編注;現地における地平線付近の昼・夜などのゾーン)を示す北半球の天空図、恒星時・分、ミニッツリピーター、均時差表示(時・分)、日の出/日の入り時刻、昼/夜の長さ、レトログレード式の高精度ムーンフェイズ・月齢表示、トゥールビヨン、パワーリザーブインジケーター”
“表側”のダイヤルはもっとも実用的で読みやすく、ブルーオパーリン仕上げを施したダイヤルだ。これはサーキュラーサテン仕上げを施した外縁、ブルーのマザーオブパールインサート、オパールのようなサーキュラーサテン仕上げとアジュール(編注;紺碧色)を施したカウンター、ラッカー仕上げを施した18KWGアプライドインデックスを特徴とする。ここでは時間を指し示すダイヤル、スケルトン化されたオレンジ色の針によって示される第2時間帯、永久カレンダー表示、第2時間帯都市インジケーター、および昼夜表示が見られる。また北半球の天空図もある。
裏側のスケルトン化されたダイヤルは少し賑やかだが、キャリバーに施された素晴らしい細工を披露している。ここではパワーリザーブ、ムーンフェイズ、昼夜の表示、日の出/日の入りがすべて、青色に着色されたマザーオブパールの小さな2段階のインサートに表示されている。仕上げはコート・ド・ジュネーブ装飾とサーキュラーグレイン仕上げを特徴とし、手面取りされたエッジがある。
プレビュー中、ヴァシュロンは、そこにいた多数のプレス向けのプレゼンテーションを進めるために写真を撮らないように求めた。しかし私は後日コスミカ・デュオの詳細を撮影するための特別な許可を得ることができたので、追って、この時計に関する追加の記事を公開する予定だ。
レ・キャビノティエ・グランドコンプリケーション・ハイジュエリー —ムーンダスト—
ブランドからの新しいハイジュエリー、高複雑機構オプションは新しい“ムーンダスト”であり、直径47mmの18KWGケースに200個のバゲットカット・ダイヤモンド(約9ct)と165個のブリリアントカット・ダイヤモンド(約0.92ct)がセットされており、実物は確かに時計の名前のイメージを思い起こさせる。ケースの側面はさらに彫金されており、ドライポイント技法とビュラン彫金の組み合わせを使用しており、約0.1mmの深さの切り込みを作成している。リューズ側には雲のあいだから地球に向かって輝く太陽光が彫り込まれており、その反対側には月の表面から見た惑星の景色が特徴となっている。石のセットには230時間かかり、彫金にはさらに180時間を要する。
この時計はCal.2755 GC16wベースとしており、16の天文学的およびカレンダー複雑機構を特徴とし、トゥールビヨンによって調節され、追加のミニッツリピーターを追加している。ムーブメントは印象的だが、ブランドの画期的な作品である250周年記念作品、“トゥール・ド・リル(Tour de l'Île)”の後継として発表された2007年にさかのぼる。これはきわめて印象的なムーブメントであり、さらに驚くべきことに表側と裏側の両方で視認性がきわめて高い。WGケースはブルーダイヤルをよく補完している。コスミカ・デュオの隣にあるこれは、おそらくこのグループで2番目にお気に入りの発表だ。
レ・キャビノティエ・セレスティア・アストロノミカル・グランドコンプリケーション —プトレマイオスへ敬意を表して—と—コペルニクスへ敬意を表して—
天文学的テーマがまだ明確でない場合は、この点を裏付けるためにもう2本の時計がある。これらはそれぞれ23の天文学的な複雑機構を持つふたつのユニークピースであり、複雑な機構の割に、合理的でスリムな直径45mm×厚さ13.91mmの18KローズまたはWGケースで作られている。Cal.3600は2017年に登場したため、これはコスミカ・デュオ以外で最も現代的なムーブメントだ。ムーブメントは6つの香箱が直列になっているため、3週間の大きなパワーリザーブを持つ。さらに驚くべきは、ムーブメントがわずか直径36mm×厚さ8.7mmという寸法であることだ。そのパワーリザーブとサイズには永久カレンダーや高精度ムーンフェイズ、季節、至点・分点表示、春分秋分表示、天文黄道帯表示、潮汐表示、天体図など、多数の複雑機構を搭載している。
ヴァシュロンは、自分たちが天空図と天体複雑機構のマスターであることを人々に思い出させているようだ(バークレー・グランドコンプリケーションやソラリアによって証明されているように)。そしてどういうわけか、彼らは時計を45mmという大きさを感じさせないパッケージに仕上げた。ケースは、プレアデスよりはるかに薄いものの、空間を効果的に活用している。
歴史に詳しい方ならご存じだろうが、プトレマイオスは地球が宇宙の中心であると絶対的に確信していた(もちろん彼は間違っていた。宇宙の中心はスイスだ。どのスイス時計師に尋ねてもそう答えるだろう)。その目的のために、WGのプトレマイオス的な時計はケースからラグまで完璧に続く地動説に基づく天球図が彫金されているが、ドライポイント技法で地球の周りを回る惑星が描かれ、楕円のあいだの空間はシャンルヴェといったエナメル技法で中空にされ、サンドブラスト仕上げが施されている。一方、惑星は立体感を出すためにドーム型になっている。コペルニクスは異なる見解を持っていたため、18Kゴールドの時計には地動説の図がケースに彫金されている。ダイヤルはケースと一致する18KローズまたはWGでグレイン加工が施されており、表示ははるかに技術的に感じられるが、各複雑機構はダイヤル上に明確で読み取り可能なスペースを持っている。
レ・キャビノティエ・ミニッツリピーター “偉大な英雄たちへ敬意を表して”
ほかのすべての時計には何らかの天文学的な結びつきがあったが、レ・キャビノティエからのこれら最後の発表は工芸技術自体に関するものだ(ただし、ベースはきわめて優れている)。ヴァシュロンの年代記におけるもうひとつの有名な複雑機構は、彼らの極薄ミニッツリピーターの技術だ。この時計に搭載されているCal.1731は2017年にさかのぼるが、厚さはわずか3.9mm。これらの時計のようにイエローまたはWGのケースに収められ、パッケージ全体は直径41mm×厚さ8.59mmだ。
ここには4つのユニークピースのオマージュがあり、それぞれ歴史と神話からの偉大な戦士の英雄に捧げられている。ダイヤルは手彫りとグラン・フー ミニチュア・エナメルを組み合わせて、アレクサンダー大王、アンタル(アンタラ・イブン・シャッダード)、チンギス・ハーン、および佐々木盛綱を描写している。ケースはさらに、本当にゴージャスで複雑なタイユ・ドゥース(酸を用いたエッチング)技法で手彫りされている。
すべての時計は、2N、18Kイエローゴールドのダイヤルプレートから始まり、20時間かけて彫金されて背景を作成する。背景は光沢からマットに変化し、場合によっては木目のようなテクスチャーを持つ。エナメル職人は、表面を保護するために透明な融剤の薄い層を敷き、焼成したのち、白いエナメルの2層でシーンのシルエットを作成する(ダイヤル表面とのコントラストを生み出すため)。ミニチュアペインティングが6層または7層で行われる前に、時計は再度焼成される。
ダイヤルは本当に驚異的だ。エナメルの層がもたらす立体感が、眺める喜びを格段に高めている。アンタルの例は、きわめてダイナミックなシーンでおそらく私の1番のお気に入りだ。アンタラ・イブン・シャッダードは、イスラム以前のアラビアで壮大な探求を行った戦士詩人のなかで最も有名であり、貴族の出身だが、奴隷として生まれた。
彼は注目すべき強力な戦士と騎手となった。そして彼の冒険のひとつはライオンと対峙して殺したものであり、それがこの時計のダイヤルに示されている。ムーブメントは見落とされるかもしれないが、これは評価に値する強力で素晴らしく仕上げられたミニッツリピーターだ。ある意味で、これらは今年のレ・キャビノティエの発表のなかで最も伝統的なものかもしれないが、それゆえにきわめて力強い作品となっている。
ヴァシュロン・コンスタンタン レ・キャビノティエコレクションの詳細はこちらをご覧ください。
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