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ストラップがどんどん集まっていくというのは本当のことで、私は時計愛好家というよりもストラップコレクターなのではないかと思うほどだ。時計のストラップを変えることは、その時計の個性を変えることに似ていると言われることがある。NATOストラップをつけることは、一日の終わりにドレスシューズを脱いで、家のスリッパに履き替えるようなものだ。
時計のストラップは、時計と同様、それぞれ目的をもって設計されている。アウトドアウォッチウィークを開催している今週は、スティールではなくラバーを、レザーではなくナイロンを選んだほうがいい状況や場面をご紹介したいと思う。
ストラップにこだわるには、人生はあまりにも短いのだ。
謙虚な(地味な)NATOストラップ
ほとんど多くの人が最初のアフターマーケット品のストラップとして選ぶ、ユビキタスなストラップがNATOだろう。1970年代に英国国防省が策定したG1098規格に準拠して設計されたこのナイロン製ストラップは、タフでありながら快適で簡単に調節ができ、手首にしっかりと固定できることが求められた。NATOストラップは、軍用ストラップの枠を超えて、身につけやすいスタイルと手頃な価格で爆発的に売れているジャンルである。
もちろん、すべてのNATOスタイルのストラップが同じように作られているわけではない(Amazonで500円くらいのストラップを衝動買いして、その品質にがっかりしたことのある人は何人いるだろうか?) 。しかし、最高のNATOストラップは、時計を身につけるという体験を、より簡単により快適にしてくれる。夏の始まりにグレーのNATOにダイバーズウォッチを着けるように、シンプルなことがこの趣味を価値あるものにしているのだ。
私のNATOストラップは、時計コレクションのなかで季節ごとに分かれている。5月に発売されたNATOストラップは、10月になると引き出しに溢れかえる。NATOストラップは、水泳、ハイキング、キャンプ、バスケットボール観戦など、屋外での使用に適している。よいNATOはすぐに乾くし、もし登山中に片方のバネ棒が飛んでしまっても、NATOがあれば時計の残りの部分を失わずに済む。予測不可能な場所に行くなら、しっかりしたNATOはその多機能性で勝るものは他にないだろう。
ワンポイントアドバイス: もしNATOストラップのせいで時計の重心が高くなってつけ心地が悪くなるのが嫌な方は、ジェームズ・ステイシーの記事「NATOストラップの付け方に関するライフハック」をご覧いただければ解決できるだろう。もしストラップを切るのが嫌だという場合は、引き通しのNATOストラップも存在する。安全面で少々劣る点は覚えておこう。
信頼性の高いラバーストラップ
ラバーは最高だ。ラバーストラップが何をもたらしてくれるかはあなたもよくご存知だろう。柔軟性、延性があり、弾力性もある。しかし、本質的に万能というわけではない。ラバーはさまざまな意味で素晴らしいストラップ素材となるが、合成素材であるがゆえの制約もあるのだ。ラバーはラバー。ラバーストラップを職場や学校、ディナーにつけていくことはないだろうが、週末になればプールサイドのアクセサリーとして活躍してくれる。
ラバーストラップといえば、1960年代から70年代にかけて、ヴィンテージのダイバーズウォッチに取り付けられていた、ワッフルのような質感のストラップが有名だ。海辺で遊ぶためのラバーストラップを探しているなら、伝説的な「トロピック」をおすすめする。最近では、ロレックスやパネライなどの人気スポーツウォッチに対応したラバーストラップが、アフターマーケットで提供されることがブームになっている。私もチューダーのブラックベイ フィフティ-エイト用に購入したことがある。しかし、最初のうちは快適で洗練されたデザインに見えたが、その斬新さはすぐに失われてしまった。質感が独特すぎて、長くつけていられなかったのだ。結局私はブレスレットに戻した。好みは分かれるかもしれない。
ラバーストラップは濡れることを想定して作られている。水はこの素材をしっかりと弾いてくれる。水中で使う時間が短くても長くてもこの素材に敵うものは他にないだろう。
ワンポイントアドバイス: 時計メーカーが「シリコン」や「カウチュ」と呼んでいる場合があるが、これらはラバーストラップだ。
過小評価されがちなパーロンストラップ
1950年代にドイツで開発されたパーロンストラップは、その独特のクロス編みパターンと一本通し構造が特徴だ。一般的なNATOの代わりに、パーロンストラップはより軽量で通気性のある構造になっている。NATOストラップが太くて高い位置にあるのに対し(ジェームズによる有名な解決策があるが)、パーロンストラップはゴワゴワとした羽のような質感で、湿度の高い夏の日にも着けやすいストラップだ。
私はパーロンストラップに少し偏見がある。正直に言うと、これは私の夏の定番であり、時計に質感や色を加えるお気に入りの方法のひとつだ。誤解しないでいただきたいのは、私はNATOストラップも好きだしたくさん持っているが、腕につけたときのパーロンの質感はもっと好みなのだ。
水辺でのアクティビティが増える? 個人的な経験から言うと、カジュアルな水泳やビーチでの活動にはパーロンストラップはより適しているように感じる。NATOに比べて、高品質のパーロンストラップは乾きが早く手首の通気性もよく、水洗いも簡単だ(砂まみれのNATO=かぶれるのは必至)。
ワンポイントアドバイス: パーロンストラップは、この交差したウィーブパターン編みによって、無段階のマイクロアジャストが可能だ。常に完璧なフィット感を得ることができる、私が知る限り唯一のストラップオプションである。
無類のメタルブレスレット
オイスター、ジュビリー、ビーズ・オブ・ライス、ミラネーゼ、ボンクリップ! 現在、時計のブレスレットには実に多くの種類がある。ほとんどの時計メーカーや多くのコレクターは、高級なブレスレットのデザインと構造を、それ自体が芸術であると考えている。高品質のメタルブレスレットは、ステンレススティールまたはゴールド(他にもセラミック、プラチナ、チタンなど)が使用されており、個々のコマが直列に配置され、通常はテーパーがついていて、最終的にはクラスプにつながる。コマは、ネジやプッシュピン、あるいは恐ろしき割りピンで取り外すことができ、手首に適切にフィットするようになっている。ブレスレットのなかには、クラスプにマイクロアジャストメントシステムを組み込んでいるものもあるが、そうでないものも多い。最大の欠点はまさにそれで、どんなに調整してもすべての手首に合うわけではない。ブレスレットを調整しても、完璧なフィット感を得られない人は必ず出てしまう。
ブレスレットと時計については、誰もが意見があるようだ。ブレスレットが付いていない時計は買わないという人もいれば、永遠にストラップの代わりになるものを選ぶという人もいる(ブレスレットは、正直なところ、密接なものだ。ブレスレットは、ケースとムーブメントに次いで、3番めに重要な要素だと考えることができる。さらに言えば、装着感や快適性の面でも最も重要な要素と言えるだろう。ブルガリのオクト フィニッシモのブレスレットのように、固有のケースに合うようにイチから設計されたブレスレットは、間違いなく高いデザイン性を持ち芸術的な価値がある。しかし、高品質な時計のブレスレットを体験できるのは、ごく例外的に高価格帯に限られている。
優れたブレスレットは、どこにでも行けて、何でもできるものだ。オーデマ ピゲのロイヤル オークやパテック フィリップのノーチラスなど、ある種の高級時計ではブレスレットを外すことができないのには理由がある。メタルブレスレットは、水中でも、陸上でも、空中でも使用することができるのだ。それにレッドカーペットでスーツに合わせても、ジムでも、ソファでくつろいでいてもOK。時計のOEM(相手先ブランド)ブレスレットは、常に最も汎用性の高い選択肢と言えるだろう。
ワンポイントアドバイス: 同じ時計をストラップ付きで買うか、ブレスレット付きで買うかの選択を迫られたら、ブレスレット付きを選ぼう。後日、アフターマーケットのレザーストラップに交換することができる。現時点ではブレスレットタイプを選ぶ方が高価だが、いつかブレスレットで時計を着用したいと思ったときに、長い目で見ればお金の節約になる(注:ブレスレット単体での購入の方が高額な場合が多い)。レザーストラップとは異なり、OEMのブレスレットを購入するにはメーカーに頼らなければならないだろう。これは非常に高価な方法だ。アフターマーケットのブレスレットの選択肢は、ストラップの選択肢に比べるとはるかに少ないが、存在はしている。私はForstner Bandsが素晴らしいと聞いている。
大胆なブンドストラップ
賛否両論あると思うが、なかでも特に注目したいのがブンドストラップだ。これは、スティーブ・マックイーンやロバート・レッドフォードの手首で人気を博した70年代のスタイルの遺物である。文字通りのレザーカフで、中央に時計が取り付けられており、時計と手首のあいだにはレザーの層がある。
ブンドストラップのルーツは航空技術にある。ドイツ空軍(Bundesrepublik)は、空気中の温度変化に対応するために、パイロットの時計を革製のパッドの上に置いて供給していた。もうひとつの理由は、コックピットの火災や墜落の際にパイロットを保護するためであった。
正直に言うと、どんなときにブンドストラップをつけたらいいのかよくわからない。熊と戦うときとか? 氷点下で薪割りをするときにも必要なのか? それはわからない。私は一日中、机に向かって時計のことを書いている。もし私がパイロットの免許を取ったら、お気に入りのツールウォッチにブンドストラップをつけてみることを約束しよう。それまでは、70年代の男らしさに対する人間嫌いの認識が私を遠ざけているだろう。
ワンポイントアドバイス: 上の私の意見は無視して。それよりもジェイソン・ヒートンのこの記事をご覧いただきたい。
タイムレスなレザーストラップ
じきにわかる。革製のものはどれも同じだ。最も一般的なストラップであることには理由がある。レザーは快適で、魅力的で、調達が簡単で、サイズ、テクスチャ、カラーも無数にある。オフィスで一日中カーフスキンの時計をつけていたら、ディナーの前にアリゲーターに変えてみれば、まったく別の時計を手にした感覚になるだろう。
これは言わずと知れた事実だが、多くの場合、あなたの時計に取り付けられている純正ストラップは、品質的にあまりよいものではない。もちろん、例外は無数にあるが、誰もが新品の時計についているストラップがあまりにも硬いという被害を受けたことがあるはずだ。インターネットにおける時計の分野が進化し続けていることの素晴らしい点は、あなたの時計に高品質のレザーストラップを調達するための選択肢が以前よりも増えたこと。ストラップのない時計趣味は考えられない。
レザーストラップは、その人気の高さの割に、使用環境に大きく左右される。スエードのストラップを選ぶ場合は、外出前に天気予報をチェックすることをおすすめしたい。濡れたスエードを好む人はいないだろうから。また、レザーストラップをつけたまま激しい運動をするのは避けたほうがいいだろう。塩分を含んだ汗は、革にとっては好ましくないのだ。シンプルで魅力的なレザーストラップは、友人との食事、オフィスでの仕事、散歩など、日常の何気ない場面で活躍する。質のよいレザーストラップは、使い込むことで色落ちして経年変化していく。レザーは日常のためにあるのだ。
ワンポイントアドバイス: 恐れずにいろいろな種類の革を試してみて欲しい。私が今、シェルコードバンを愛用しているのも、ある日ふとしたきっかけで手に入れたからだ。
レザーストラップの代わりとなる新ジャンル
実験的な新素材は次々と登場するが、古いものを愛する時計の世界で生き残れるかどうかが問題だ。昨今、さまざまな業界で人工皮革製品がトレンドになっているが、なかでも「人工皮革」は生き残りそうな気がする。最近では、世界で最も高額な時計メーカーであるグルーベル・フォルセイが、ストラップを100%人工皮革に切り替えることを発表。平均価格が1000万円超えであるため、否定的な考えを持つ人は、この会社の独占性を強化するために、もっとエキゾチックな動物由来のレザーを期待したかもしれないが、そうではなく、2022年1月1日から、同社のOEMストラップはすべて植物由来のものになるのだ。
誤解を恐れずに言えば、革ストラップが自分に合っているかどうかは、すでにわかっているはずだ。素材は時代とともに進化していくし、数年後にはもっと増えていくと思う。このストラップはなくならないだろう。
代替レザーストラップは、動物性の革の重みや表面、質感などの感触を模倣しているが、まったく異なる品質をもつことがある。例えば、HODINKEE Shopで販売しているパイナップルレザーを使用した「アマゴウォッチストラップ」は、当然ながら防水機能を備えている。そのため、夏に購入したとき(私はグレイシャーベイにした)、プールサイドや雨が降るかもしれないときにストラップをつけていても、自然と安心感があった。
ワンポイントアドバイス: 私が試した代替レザーストラップのなかには、馴染むまでに時間がかかるものもあった。リアルな革のストラップのように箱から出してすぐは硬いということではなく、むしろ繊維が手首に馴染むのに時間がかかるように感じる。
時計のストラップは人生を映す鏡のようなもので、快適さやフィット感を得るには時間がかかることがあるのだ。
Photos, Tiffany Wade.
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