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最近、フルリエではとてもエキサイティングなことが起こっている。8月末のジュネーブ・ウォッチ・デイズでパルミジャーニの新しいトンダ PFコレクションが発表されたとき、私はそう言った。そして私はその言葉を維持したい。先日、私はこのコレクションを手に取ることができ、パルミジャーニの新CEOである元ブルガリのグイド・テレーニ(Guido Terreni)氏(またの名を、オクト フィニッシモを世に送り出した男)と話をすることができた。
トンダ PFは、パルミジャーニにとってまったく新しいデザインを意味する。時間・日付表示モデル、クロノグラフ、アニュアルカレンダーに加え、後ほど紹介する限定のプラチナ製ラトラパンテもあり、これらはテレーニ氏の指導のもとで発表された最初のコレクションだ。しかし、彼の目的はゼロからのスタートではなかった。会社のDNAを刷新したいのは確かだろうが、ブランド独特のビジュアルアイデンティティは健在だ。
テレーニ氏から学んだことの一つは、トンダ PFコレクションのすべてのダイヤルに表示されている新しいロゴは、実はまったく新しいものではないということだ。創始者であり、ブランド名の由来でもあるマスターウォッチメーカーで修復家のミシェル・パルミジャーニがブランドを立ち上げた1990年代半ばに、貴金属ケースのホールマークとして使用したり、ムーブメントに刻印したりするためにデザインしたものなのだ。新製品の12時位置に配された楕円形の“PF”ロゴは、時計メーカーが時計のダイヤルに過剰な表現をすることに飽き飽きしている人々の願いを叶えるようなすっきりとしたデザインになっている。
この決定は、ダイヤルに過去の栄光を乗せることにこだわるいくつかの時計メーカーへの反撃としてなされたものではないと思うが、テレーニ氏がパルミジャーニに求めている市場、つまり真剣で重厚な時計を愛する人々、純粋主義者たちの気持ちを表していると思う。
「私たちが求めているのは、すでにすべてを持っているお客様です」と彼は語る。「私たちのお客様は、初めて時計を買う人ではありません。また、物質主義的なスタイルや自分の富を表現したい人でもありません。それを超えたところにあるのです。パルミジャーニを購入するということは知識や文化、洗練されたものに対する自信を表しています。標準化されていないエレガンスを表現しているのです」
この戦略には意味がある。パルミジャーニは伝統的なフルリザンの時計製造における最も著名な実践者であり、会社のデザインの多くはミシェル・パルミジャーニがサンドコレクションのために修復した時計から影響を受けている。サンドコレクションとは、真のアンティーク愛好家だけが愛することのできる唯一無二のストックだ。つまり、同ブランドは特定の成熟した顧客層に向けたニッチな存在なのだ。
この新しいトンダ PFが成功したのは会社の範囲を少しだけ広げ、急速に拡大しているベテランの時計愛好家の間でより多くの人にアピールすることができたからだ。テレーニ氏は、それがパルミジャーニの成長の鍵だと考えている。実際、彼が今年の初めにパルミジャーニ社に着任した理由の一つはそこにある。たとえ最大の顧客層でなくても常に適切な顧客層に語りかける必要があるのだ。
「今日、ニッチなブランドは非常に勢いがあります。それは30代から40代の人々が自分の好み、内なる好みを満足させるさまざまな方法を探しているからです」とテレーニ氏は語る。「トンダ PFはこうした願望に応えるためのパルミジャーニ初のコレクションです。製品自体も現代的で、人々が求めるものを満たす方法も現代的な優れた洗練を純粋主義の人たちに提供することができるのです」
そこには洗練という言葉が欠かせない。トンダ PFモデルを手にしたとき真っ先に思い浮かんだことだ。実際に手にすると製品写真やスペックシートではわからない、さまざまなディテールが生きている。ケースのサテン仕上げはベルベットのように非常に柔らかい。金属に残るラインは、ほかの高級スポーツウォッチに見られるようなラフで大まかなものではなく細い糸のようだ。
このケース形状は、かつてのパルミジャーニを連想させる最も特徴的な要素だ。1つの違いはトンダ PFコレクションはねじ込み式リューズであることで、ほかのほとんどのモデルは標準的な押し引き式だ。湾曲したラグは、かつてのトンダのケースと同じとは言わないまでも非常によく似ている(クロノグラフのプッシャーをブレスレットの流れに合わせてデザインした時計メーカーを常に評価したい)。しかし、それらはブレスレットとのシームレスなリンクによって新たな命を与えられている。そういえば、トンダ PFのブレスレットはパルミジャーニにとってまったく新しいデザインだ。これは伝説的なオクト フィニッシモの開発に携わったテレーニ氏が自ら開発を指揮した。
ケースに最も近いリンクを除いてブレスレットは全体的にフレキシブルで、テレーニ氏は着用者にとって“第二の皮膚”と表現している。オクト フィニッシモからトンダ PFのブレスレットに引き継がれている要素の一つは、リンクの短さだ。それぞれのリンクは基本的にハーフリンクのサイズと同じで、オーナーはハーフリンクの心配なく完璧なフィット感を得ることができる。私はこの時計を短時間使用しただけなのでブレスレットのサイズを測る機会はなかったが、リンクはネジ式になっているため、憂鬱なピンや、さらに最悪な割りピンでないのは嬉しいことだ。
ダイヤルに目を移すと、トンダ PFの各モデルには同一のグランドルジュギヨシェ装飾が施されている。このギヨシェはフルリエのローズエンジン旋盤で仕上げられた本物だ。織物のように交互に配置された模様は、実際に見ると息を呑むほど美しい。テレーニ氏はスポーツライフスタイル向けのハイエンドウォッチで本物のギヨシェを採用しているものはほかにないと指摘する。少し考えてみたが、現在のブレゲ マリーンのダイヤル仕上げをどのように評価するかにもよるが、私は彼が正しいと思う(ただし、コメント欄で間違いが証明されるのを楽しみにしている)。
仕上げの美しさもさることながら、私はこのダイヤル最大の魅力は、それぞれのモデルがどのように奥行きを表現しているかにあると思っている。どのモデルも外周が少しだけ下がっているが、ダイヤルと同じ色(ブルーまたはウォームグレー)で、サテン仕上げが施されている。アプライドの数字は、1段ずつ重なっている。そして、それらが一体となって光と影のコントラストによる思いがけない視覚的なダイナミックさを実現しているのだ。アニュアルカレンダーとクロノグラフモデルでは、各インダイヤル外周にも同様の処理が施されている。
幸運なことに、この記事を書くためにコレクションのすべてを目にすることができた。同コレクションに関する最初の記事で、時間・日付表示モデルのダイヤル上のスペースの広さに驚かされたことを覚えているだろうか。2本の針と日付窓があるだけで、ほかには何もない。何かが足りないのではと思ったが、実際に見てみるとそんなことはなかった。40mm×7.8mmという簡潔なサイズは、ダイヤル装飾に最適なキャンバスとなり、退屈しない程度の活気を与えているのだ。
私はこれまでも、そしてこれからもムーブメントのマニアだが、グレーダイヤルでスティール製の2針のトンダ PF マイクロローターは、腕につけたときに最も魅力的な時計だと感じた。ディナーのときも家の中で寝転がっているときも仕事のときも、どこでも身につけられる。そして私の時計がプラチナ製のベゼルとマイクロローターを内蔵していることを誰も気づかないだろう。この時計はディスクリート(控えめな)ラグジュアリーの優れた例であり、テレーニ氏が言うところの“リッチミニマリズム”なのだ。
パルミジャーニ・フルリエは今年で25年めになる。しかし、このブランドは私が経験したようなクオーターライフ・クライシスを経験することなく、これまでに見たことがないほど短期的にも長期的にも将来にフォーカスし、活気に満ちていると感じている。トンダ PFコレクションがパルミジャーニにおいて今後発表するデザインと時計製造の質を示す指標となるなら、テレーニ氏のリーダーシップのもと、素晴らしい手腕が発揮されると思う。
ファースト・インプレッションとフルスペックについては、私の紹介記事をご覧いただければと思う。現在の販売価格は以下の通り。トンダ PF マイクロローター, RG (612万7000円), SS (258万5000円);トンダ PF クロノグラフ, RG(796万4000円), SS (354万2000円);トンダ PF アニュアルカレンダー, RG (885万5000円) , SS (442万2000円);トンダ PF スプリットセコンドクロノグラフ (1960万2000円)。すべて税込。
All images by Tiffany Wade.
パルミジャーニ・フルリエの詳細はこちら。