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この記事は、Hodinkee Australiaの友人たちから転載されたものの翻訳です。
我々が知っていること
アーティストでありコレクターでもあるフィル・トレダノ(Phil Toledano)氏と、時計デザイナーのアルフレッド・チャン(Alfred Chan)氏による時計デザインのコラボレーション、トレダノ&チャンが、新作オシノビを発表した。ブルータリズム建築に着想を得たデザインを受け継ぎながら、今回は“隠す”という新たなコンセプトを取り入れている。
“オシノビ(お忍び)”は、日本語で身分の高い人物が正体を隠して移動することを指す言葉だ。この名前は、新作の仕組みを暗示している。水平にスライドするカバーを備えた、いわゆるシークレットウォッチで、カバーを開くと、スノーセッティングによって2カラットのダイヤモンドが雪のようにあしらわれた、有機的な形状の凹面ダイヤルが現れる。さらに人目を避けるように、リューズもケース裏側の12時位置に隠されている。
オシノビのダイヤルとクリスタルの形状にも、隠すというコンセプトが反映されている。着想源となったのは、自然界に存在するジオード(晶洞)。外見はごく普通の岩石でありながら、割ると内側に結晶がびっしりと広がる、あの不思議な構造を持つ鉱物だ。そうして生まれたのが、建築的で力強いフォルムのブレスレット。その内側には、有機的な形状のダイヤルが隠され、ダイヤモンドが不規則に散りばめられている。
週末にフィルとジェイミーと私は座ってオシノビについて話し合ったのだが、フィルはダイヤルを隠すヴィンテージのシークレットウォッチに長年魅了されてきたと話してくれた。派手な時計を身に着けて街を歩くことの安全性を懸念する時計コミュニティの会話を耳にして、彼はオシノビをその解決策だと考えているそうだ。
フィル・トレダノ氏。
アルフレッド・チャン氏。
「ロンドンのような場所を歩き回っているとき、手首に2カラットのダイヤモンドが輝いているのに、誰もそれに気づかないというのは、密かな喜びです」と彼は語り、さらにこう付け加えた。「オシノビのコンセプトは、人前でも安心してダイヤモンドウォッチを身に着けられるようになることです。まるで時計のランジェリーのように、身に着けていることを誰にも知られずに楽しめる時計なのです!」
グレード5チタン製のケースにはサンドブラスト仕上げが施され、b/1を思わせる左右非対称のリンクを交互に組み合わせた構造になっている。真上から見ると、オシノビは時計というより、ブレスレットそのもののように見えるかもしれない。側面から眺めて初めて、ムーブメントとダイヤルを収めるだけの厚みを備えたケースであることがわかる。これも狙いのひとつだ。幅は21mmで、ブレスレットは先細りにならないストレートな形状。留め具には、トレダノ&チャンの高い評価を得た初作b/1と同様の、外から見えないバタフライクラスプを採用している。
オシノビは、ブランドにとっていくつかの点で初となるモデルでもある。サザビーズで販売された一点物のb/2 AREA 51を除けば、ブランド初の手巻きモデルであり、リューズを隠し、セリタ SW100以外のムーブメントを採用した初のモデルでもある。今回、フィルとアルフレッドが選んだのは、Le Temps Manufacturesのキャリバーだ。ムーブメントを変更した主な理由は、オシノビのサイズにある。ケース幅がわずか21mmという小ぶりな設計には、より小型のLTM製ムーブメントが適しているのだ。さらに手作業で仕上げと組み立てが行われているため、セリタ製のムーブメントよりもはるかに高い品質を備えているという。しかし、具体的にどのLTM製キャリバーを搭載しているのかについては、現時点ではチャンとトレダノの胸の内にとどめられている。近日中に量産モデルが発売される際には、ムーブメントについてもさらに詳しい情報が明らかになるはずだ。
こちらはプロトタイプのオシノビだ。ケースバックには“TIME FOR ART”の刻印があり、次に向かう先を示唆している。この時計は、2026年12月5日に開催されるフィリップスのチャリティオークション、TimeForArtに出品される予定だ。量産版のトレダノ&チャン オシノビは2027年に発売予定で、詳細が決まり次第、改めてお知らせする。
我々の考え
オシノビは、創業からわずか2年の時計ブランドが手がけたとは思えないほど、意外にも長い系譜のなかに位置する最新作だ。今回の対談でフィルは、この時計がトレダノ&チャンのラインナップにおいてどのような位置づけにあるのかを詳しく語ってくれた。
「私たちが時計をデザインするうえで常に意識しているのは、有機的な要素と無機的な要素の対比です。ブルータリズム建築を思わせるb/1のケースと、(b/1.3rの)波紋のようなダイヤルは、その対比を生み出しています。オシノビでは、有機的な要素はジオードの形状です。ブルータリズム的なブレスレットに対して、できる限りジオードらしさを表現しようとした結果、凹型のダイヤルを採用しました。またダイヤモンドにはスノーセッティングを採用し、あえて異なるサイズの石を組み合わせています。まるで岩を割り、その内側に隠れていた結晶を見つけたような感覚を表現したかったのです」
トレダノ&チャン b/1.3r “リップル”。Photo by Mark Kauzlarich
オシノビには、ふたつの明確なコンセプトが込められている。ひとつは、ダイヤモンドを身に着けてお忍びで移動する大物実業家。もうひとつは、堅牢で目立たない外殻の内側に潜む、きらめくジオードだ。最初は別々の発想のように感じられていたが、フィルとの対話を重ね、実際にオシノビをじっくり眺めているうちに、ふたつのコンセプトがひとつにつながっていくように思えた。どちらも目立たない外見の内側に、驚くほど美しいものを隠すという発想に基づいているのだ。
オシノビで私の目を引いた細かなディテールのひとつが、リンクを交互に回転させたブレスレットのパターンだ。リンク自体はb/1と同じ形状だが、ひとつおきに向きを変えることで、非対称なデザインのなかに対称性を生み出している。その副産物として、ブレスレットの両側にはギザギザとしたカミソリのようなエッジが現れ、時計というより、機能を持たない単なるブレスレットのような印象がいっそう強まっている。カバーを開けると、このエッジがダイヤルを囲むケースプレートの右側まで伸びていることから、これが意図的なものであることがわかる。また横から見ると、ケースはまるでサンドブラスト加工されたSF戦艦の装甲板のようだ。
トレダノ&チャンの時計に対する批判として、これまでたびたび挙げられてきたのがセリタ製ムーブメントの採用だ。ブランドの価格帯を考えると、搭載されるキャリバーの格が見合っていないという意見もある。個人的には、これまでそうした批判をしたことはない。同ブランドの時計の魅力は、見事なムーブメントを披露することではなく、芸術性の高いケースやクリスタル、そしてダイヤルの形状や構造にあると考えているからだ。デザインとケースの仕上げにお金を払っているのだから、ムーブメントにばかり注目するのは、木を見て森を見ず、という考え方だ。もちろん同じ価格帯であれば、より精巧に作られたムーブメントの方が望ましいだろう。しかし、それが購入を断念する理由になったことは一度もない(編集者注:そもそも、これらの時計はソリッドケースバックだ)。
オシノビに搭載されるLTM製キャリバーは、ムーブメントを時計選びにおいて重視する人たちの期待にも応えてくれるはずだ。量産版が2027年に登場した際には、キャリバーの詳細に加え、価格や生産本数についても、さらに詳しくお伝えできるだろう。
基本情報
ブランド: トレダノ&チャン(Toledano & Chan)
モデル名: オシノビ(Oshinobi)
直径: 21mm
ケース素材: グレード5チタン、サンドブラスト仕上げ
文字盤: 2カラットのダイヤモンドをスノーセッティングであしらったシークレットダイヤル
夜光: なし
防水性能: 非公表
ストラップ/ブレスレット: 一体型チタンブレスレット、バタフライクラスプ付き
ムーブメント情報
キャリバー: Le Temps Manufactures製のLTM 200
機能: 時・分表示
パワーリザーブ: 38時間
巻き上げ方式: 手巻き
クロノメーター認定: なし
振動数: 2万5200振動/時
価格&発売時期
価格: オークション結果による
発売: プロトタイプは2026年12月5日に、フィリップスのチャリティオークションTimeForArtに出品予定
限定: 現時点では一点物。2027年に限定生産モデルの発売を予定(価格未定)
詳しくはこちらをご覧ください。
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