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今日は、2019年に登場した最もエキサイティングな新作のうちの1つを詳しく見ていきたい。この新作は2018年9月の最初の週にひっそりと発売され、ジュネーブサロンでは全くもてはやされることもなかった。実際、全く新しいラインナップというわけではないこの時計は、ヴァシュロン・コンスタンタン コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955で、同ラインナップのスティール製バージョンとして加わった。振り返ってみると、それが今まで存在しなかったこと、そして若いコレクターや純粋なメンタリティを持つ人々の間で多大な関心を集めていることに、私は本当に驚いている。
2017年に発売され、ほぼ瞬時に売り切れたHODINKEEのヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955 限定エディション以来、今回のモデルはシリーズで2番目のSSモデルであり、この新作とヴィンテージしか存在していない。本機のリリースは、ヴァシュロン・コンスタンタンを非常にユニークな会社にし、コルヌ・ドゥ・ヴァッシュの通常ラインナップに全く新しい選択肢が追加されることになる。現在、シリアル生産が行われているコルヌ・ドゥ・ヴァッシュは他に2つしかない。その頂点に君臨するのはプラチナ製で、なんと728万円だ。もう1つは18K(4N)PGバージョンで、価格は564万円だ。
SSのコルヌ・ドゥ・ヴァッシュの420万円は決して安くはないが、他の選択肢よりかは手の届くプライスで、購入を検討する人が望む要素をすべて持ち合わせている。どちらかといえば、SSのオプションによってかなりの利点が増えるだろうと私は考えている。より若しく、幅広いシーンで使用できるようになり、カジュアルからフォーマルなシチュエーションまでカバーできるようになっているからだ。(上記いずれも税抜価格)
トップブランドのSSモデルの需要は過去3年間、衰える兆しが全くなかった。顧客はそういった商品、特にスポーツモデルに列をなし続けている。あまりのニーズの高さに、すぐに手に入れようとメーカーの希望小売価格の数倍を支払う者も続出しているのだ。2018年8月にとあるジュネーブのメゾン(そういう点ではドイツメゾンも当てはまる)のSSドレスウォッチも特別なものと見なされる傾向になってきている。デイトナやノーチラス、ロイヤル オークに見られるそれと同様の、しかしわずかに異なるコレクション性を生み出しているからだろう。人々が自分の欲望に従っているということは間違いない。そして、現時点では、彼らが望むのはステンレス製の時計なのだ。
SSのコルヌ・ドゥ・ヴァッシュは、これら2つの領域、つまりドレスウォッチとスポーツウォッチにまたがっているとみなしてもいいだろう。ケース素材、クロノグラフの複雑さ、防水性能、タキメータースケールの採用という点からみると、間違いなくスポーティだ。
しかしその一方で、手巻きのレマニアベースのクロノグラフは、今日スイスで生産されるクロノグラフの中でも随一の複雑性を保ち、洗練されているムーブメントだ。それに加え、ケースサイズと派手なラグも含めると、様々な側面を持つ時計であるということが分かる。
私の意見としては、コルヌ・ドゥ・ヴァッシュほどセクシーなモダンウォッチはほとんどない。バロック様式の「カウ・ホーン」は、1940年代アメリカの高級セダンのフェンダーラインを思い起こさせるようにケース側面から飛び出していて、派手なラグを理想的な美しさへと昇華している。時計にこのラグの名前が付けられているのには理由があるのだ。本機を手に取ったとき、あなたはそれを実感するだろう。確かに、ティアドロップ型にも似ているが、私が考えるにそれよりももう少し洗練されているのだ。このケース(そしてラグもそれ以外すべても)とても素晴らしいものだ。
バロック式の「カウ・ホーン」は
派手なラグを理想的な美しさへと昇華した
現存のコルヌ・ドゥ・ヴァッシュの貴金属モデルと同様に、SSの新作には、ダイヤルにタキメータースケールが印字されている。新しいSSコルヌ・ドゥ・ヴァッシュのタキメータースケールは黒色で、2つの貴金属バージョンで見られる青いスケールから置き換えられている。 分目盛りが5分間隔で赤い数字に重なる、ちょっとしたアクセントは素晴らしいものだ。
HODINKEE限定のコルヌ・ドゥ・ヴァッシュの特徴は、もちろんパルスメータースケールだった。HODINKEEの本部がNYにあることもあって、英語表記を用いた。アメリカ市場では、クロノグラフのスケールは、英語で表示されるのが一般的だが、ヨーロッパ大陸に留まったクロノグラフは、多くの場合フランス語で表記されてきた。コルヌ・ドゥ・ヴァッシュの場合、もっと興味深い方法が提供されている。スケール上には、「BASE」の単語だけを記載している。ベースは、両方の言語で同じ意味を持っているのだ。
ムーブメントはコルヌ・ドゥ・ヴァッシュの最も魅力的な点のひとつだ。 50年代半ばの時計への歴史的オマージュにふさわしい手巻きクロノグラフキャリバーは、絶妙な品質を保っている。そのルーツは手巻きクロノグラフの黄金時代にまで遡ることができる。自社工場で製造される1142はもちろん、史上最高の手巻きクロノグラフキャリバーのひとつである、レマニア2310をベースとしているのだ。
これは、オメガのCal.321と同様の構造を共有するムーブメントだ。このムーブメントに対するヴァシュロンの取り組みは、ご想像の通り相当ハイレベルなものだ。ジュネーブシールの認証基準だけでなく、仕上げレベルがブランドによってより高く設定されている。Cal.1142やCal.2310が語るまでもなく申し分ないのは当たり前のことだ。最高水準のムーブメントであることは理にかなっているし、2019年にヴァシュロンがそれを製造し、使用し続けているという事実は、その品質の証なのだ。
付属品にはスティールのマルタ十字ピンバックルとエイジングされた茶色のカーフスキンストラップが提供される。レビューのためにこの時計を受け取ったとき、ストラップの品質は明らかだったが、慣らしの時間がかなり必要だと感じた。購入するとしたら(今回でいえばA Week On The Wristなどのより長い形式でレビューするとしたら)、ストラップを、もうちょっとしなやかで、よりカジュアルな見た目のものに変更したいというのが正直なところだ。
コレクターたちは、ステンレスウォッチの価値と使いやすさにますます引き寄せられている。そしてヴァシュロンは、同社で最も魅力的なモデルのひとつにステンレス素材の選択肢を加えたのだ。コレクターに人気があることは、既に明白だ。コルヌ・ドゥ・ヴァッシュは、秀逸なケースデザインを持っているため、SSモデルは貴金属タイプの兄弟モデルたちよりも意義ある成功を収める可能性がある。本機は、この古典的デザインの人気をますます広い層に拡大するだろう。
この新しい選択肢が現在のヴァシュロン・コンスタンタン・コレクションのトップセラーにならなかったら私には驚きだ。これはそれだけのものなのだから。
SSのヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955の詳細についてはヴァシュロン・コンスタンタン公式サイトへ。