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Breaking News パテック フィリップのスティール製ソヌリ&ミニット・リピーターが、Only Watchで1730万ドル(約27億円)で落札

クリスティーズのウェブサイトがダウンしているそのあいだも、パテック、ジュルヌ、レジェピなどへの入札は止まらなかった。

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Hero image courtesy of Rich Fordon.

もともと2023年11月に予定されていたOnly Watchのオークションだが、ソーシャルメディア上での喧々諤々(けんけんがくがく)の論争を経て、ついにこの週末にジュネーブで開催された。

 先月お伝えしたように、Only Watchはこの延期期間中に財務監査を終え、組織とガバナンスを見直すことになった。そしてそのあいだに、オーデマ ピゲ、チューダー、ショパール、ビバーを含む16のブランドが今回のOnly Watchへの参加を取りやめた。それでもなお、47本がオークションに残った。そのなかでも注目されていたのは、パテック フィリップのユニークピースであるRef.6301A スティール製ソヌリ&ミニット・リピーターにレジェップ・レジェピのクロノメーター アンチマグネティック、ブルガリ、ジェンタ、ジュルヌ、リシャール・ミル、さらにペテルマン・ベダ/アフレ、ヴティライネン、グローネフェルドといった独立系ブランドからのユニークな出品であった。

only watch 2024 geneva

 HODINKEE Radioのオークションプレビューでは、Only Watchをめぐる論争によってコレクターのあいだでこのオークションに対する認識がどのように変わったかについて少し触れた。さて、その結果についていくつかご覧いただこう。

christie's only watch 2024

当日朝、期待に胸を膨らませた参加者を出迎えたクリスティーズのウェブサイト。

 もちろん、Only Watchがそんな簡単にいくわけがない。というのも、何もかもがおかしくなってしまったのだ。私がジュネーブで行われるオークションをライブストリーミングするために目を覚ますと、クリスティーズのウェブサイトとアプリがすべてダウンしていた。要するにオンラインによる入札は一切できなくなり、入札はすべて電話かジュネーブのオークション会場で行われることになったのだ。あとで分かったことだが、クリスティーズはオークションの前に“ITセキュリティ上の問題をチェック”したため、オークション前夜にウェブサイトを一時的に閉鎖せざるを得なくなったというメールを顧客に送っていた。同メールでは入札希望者に、Only Watchオークションは予定どおり開催されるものの、インターネットからの入札はできないことを通知していた。ウェブサイトはオークション開催中、ずっとダウンしたままだった。

 「この問題の原因を究明し、解決するために技術専門チームを増員、必要なあらゆる手段を講じています」と、クリスティーズの広報担当者はニューヨーク・タイムズ紙に語った。サイトダウンは、この記事を執筆している現在(5月10日当時)もなお続いている。「適宜、顧客に最新情報を提供します」

 クリスティーズを欠席した私は、会場にいた友人たちからのWhatsAppメッセージを頼りにオークションの現場の雰囲気を掴み、ピーク時には約1000人が視聴したというOnly WatchのYouTubeライブストリームを見つけた。

 第1印象について。上の写真を見て、2021年時のレポートと比較して欲しい。3年前と比べ、会場が満席でないことが分かるだろう。出品点数が少なく、オークションの開催が1カ月前に再決定したばかりであることに加え、前述のような論争もあった。驚くべきことではない。

 結果として、Only Watch 2024は、2021年とほぼ同額の2832万スイスフラン(日本円で約48億7000万円)を売り上げた。後述するように、その半分以上は1本のパテックからのものである。

 注:このオークションはチャリティオークションであったためにバイヤーズプレミアムはなく、以下に表示されている最終価格はハンマープライスと同額である。

パテック フィリップ Ref.6301A:1570万スイスフラン(日本円で約27億430万円)
patek 2024 onlywatch

 例年に違わず、今回のOnly Watchの主役はパテックだった。まずパテックは期待を裏切ることなく、スティール製のユニークなソヌリ&ミニット・リピーター、そして手作業によるギヨシェ文字盤を披露した。クリスティーズとOnly Watchは、この特別なパテックに150万~180万スイスフラン(日本円で約2億5800万〜3億1000万円)の見積額を提示した。オークションの見積額は、Only Watchのような場所では特に無意味である。その理由を簡単に書いておくと、各時計の唯一無二の価値に加えてチャリティーという要素もある(税金が免除される!)ため、オークション会場ではこれらの時計を手に入れる唯一のチャンスを求めて入札者が沸き立ちながら競り合うことになる。

 入札は500万スイスフランから始まり、すぐに800万スイスフラン、そして1000万スイスフランと跳ね上がったが、その後入札の勢いは弱まり、最終的には1570万スイスフラン(1730万ドル、日本円で約27億430万円)で終了した。その会場にいた入札者に落札されたのだが、彼はザック・ルー(Zach Lu)であることが確認されている。2021年に650万ドル(当時のレートで約7億3800万円)でティファニーとパテックのWネームRef.5711を落札したことでも知られる人物だ。

レジェップ・レジェピ クロノメーター アンチマグネティック: 210万スイスフラン(日本円で約3億6000万円)
rexhep rexhepi only watch 2024

 パテックの次に注目されたのは、1点もののスティール製レジェップ・レジェピ クロノメーター アンチマグネティックだった。その期待に違わず、長引く入札合戦の末に、880パドルの210万スイスフラン(日本円で約3億6000万円)で落札された。開始からすぐに75万スイスフランに跳ね上がったのち、最終的に落札される前に150万スイスフランの大台で入札が減速した。2021年にRRCCIIが80万スイスフラン(当時のレートで1億1440万円)で落札されたことにより、Only Watchの寵児としての地位を確かなものにしたこの若き独立系ブランドにとって、素晴らしい結果となった。

F.P.ジュルヌ クロノメーター・ブルー フルティフ:200万スイスフラン(日本円で約3億4400万円)
journe onlywatch 2024 blue

 F.P.ジュルヌはOnly Watchでは常に注目を浴びる存在だ。年2回開催されたこのイベントで、それぞれ新しいムーブメントを発表している。そしてジュルヌは今回、パワーリザーブとムーンフェイズを裏蓋側に備えた新しいCal.1522を公開した。ジュルヌはこのキャリバーを、200万スイスフラン(日本円で約3億4400万円)で落札されたタンタル製のクロノメーター・ブルー フルティフに搭載していた。これはジュルヌにとって好成績と呼べるものだったが、レジェピがわずかに上回っている点が、同ブランドのスター性がいかに急速に高まったかを物語っている。

その他の独立系時計メーカー:リシャール・ミル、クレヨン、ペテルマン・ベダ/アフレなどが好調な結果を残す
richard mille necklace talisman

 この記事を書き始めたのは、パテックとレジェピが競り合った直後のことだった。しかしその直後、とんでもないことが起こったのだ。リシャール・ミルのネックレス、RMの“タリスマン”が238万スイスフラン(日本円で約4億1000万円)で落札され、両者を追い抜いたのだ。RMのコレクターは、私たちには決して理解できない異なる種族であるということ以外、このことが何を意味しているのか私にはまったく分からない。

 また、ほかの独立勢のユニークなOnly Watch作品も軒並み好調だった。さらにハイライトをいくつか紹介しよう。

moser mb&f onlywatch 2024 panda
  • ペテルマン・べダ×アフレ クロノメトリ・オプセルヴァトワールは24万スイスフラン(日本円で約4130万円)で落札。このふたりの若き時計師については、以前にも紹介したことがある(こちらこちらだ)。彼らはともにいまもっとも勢いのある時計職人のひとりであり、彼らの独特な仕上げ技術が組み合わされている時計を見るのはとてもクールだった。先週のジュネーブにおける私のちょっとした幸せのひとつが、アフレに偶然会い、彼にこの時計を手首からはずしてもらって見ることができたことだ。この時計はオークションのなかでも私のお気に入りの時計だったため、その出来栄えを見ることができてうれしかった。
  • クレヨン エニィウェアは44万スイスフラン(日本円で約7570万円)で落札。電話入札者が迅速に40万スイスフランで飛びついたあと、クレヨンはすぐに44万スイスフランで落札された。クレヨンはメインストリームではあまり注目されていないブランドだが、誰も考えつかないような複雑機構を搭載した、実に印象的な時計を製造する小さな独立系メーカーのひとつである。
  • ファーラン・マリ×ドミニク・ルノー×ティシエ セキュラー・パーペチュアルカレンダーは13万スイスフラン(日本円で約2240万円)で落札。互いに補完し合うスキルを持つ3人のスマートなメーカーが関与したこの時計の独創的でシンプルな仕組みについて学ぶのはとても楽しかった。ファーラン・マリがこれをどのように(できれば手ごろな価格で)商品化し、私たちに提供してくれるのか楽しみにしている。

 H.モーザー × MB&Fのパンダモニウムが38万スイスフラン(日本円で約6540万円)、アトリエ・ド・クロノメトリが13万スイスフラン(日本円で約2236万円)で落札されたなどこのあとにもまだまだ続くが、総じてOnly Watchに参加し、オークションに残った独立系ブランドは好調だった。これらのウォッチメーカーとそのウォッチメイキングに対する興奮が、今回のオークションに関するさまざまな話題に打ち勝ったようだ(もちろん、今回のような状況がなければ、この結果がさらによいものになったかどうかは分からないが)。

その他の主要ブランド:ルイ・ヴィトン、ジェンタ、ウブロの結果は明暗が分かれた
bulgari only watch 2024

 大手ブランドもOnly Watchに参加、提供しており、おなじみの顔ぶれはいなかったものの多くのブランドが残っていた。結果は堅調であったが、賛否両論であった。以下はその結果の一部だ。

  • ルイ・ヴィトン アインシュタイン オートマタは70万スイスフラン(日本円で約1億2040万円)で落札。しかし、マッドサイエンティストが舌を出している時計としては、決して堅実な結果ではなかった。
  • ブルガリ オクト フィニッシモ トゥールビヨン マーブル 19万スイスフラン(日本円で約3270万円)で落札。悪い結果ではなかったが、提示された見積額(15万〜25万スイスフラン)に収まった数少ないモデルのひとつである。
  • ジェラルド ジェンタ ミッキーマウスは見積額35万〜50万スイスフランを大きく下回る17万スイスフラン(日本円で約2925万円)で落札。最近復活したジェンタブランドから発表された最初の時計としては、少々残念な結果と言わざるを得ない。特に、マウス自身をフィーチャーしている今回のような場合は。
  • ウブロ タカシムラカミ トゥールビヨンは42万スイスフラン(日本円で約7225万円、見積額35万〜40万スイスフラン)で落札。つまりこの時計は、マウスが一生懸命頑張っているように見える分、ミッキーマウスの時計より単純におもしろいのだ。というわけで、ウブロが今回もまたウブロらしさを貫いてくれたことを祝福したい。

 その他の結果: 例えば、タグ・ホイヤーのモナコ ラトラパンテは11万スイスフラン(日本円で約1895万円)で落札されたが、これは4月のWatches & Wondersで発表された限定モデルの小売価格よりも実は低いものだった。

furlan marri secular perpetual calendar

13万スイスフラン(日本円で約2240万円)で落札されたファーラン・マリのセキュラー・パーペチュアルカレンダー。

 しかし私にとってOnly Watchで最もエキサイティングな要素は、上記のような新進気鋭の独立系時計メーカーが注目され続けていることだ。彼らにとっては、そのウォッチメイキングやデザイン、そしてまだまだ市場に出回らないようなアイデアをお披露目する絶好の機会なのである。そのチャンスを逃すことなく目立つ結果を残して注目を浴びれば、大きな成功につながるジャンプスタートを切ることができる。Only Watchが大きな話題となり逆風が吹くなかでの開催であったにもかかわらず、好成績を収めた独立系時計メーカーに祝福を送るとともに、コレクターたちが今後も継続するであろうエキサイティングな時計製造に関心を寄せてくれることを願っている。

編集部注: 5月10日にクリスティーズのウェブサイト停止に関する追加情報を更新した。