ヴァシュロン・コンスタンタン メティエ・ダール 伝統的シンボルに敬意を表して、永遠の流れ&月光 trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Introducing ヴァシュロン・コンスタンタン 「メティエ・ダール-伝統的シンボルに敬意を表して-永遠の流れ、月光」

近年、美術館とのパートナーシップを深めているヴァシュロン・コンスタンタン。同社が丁寧に守ってきた芸術的装飾技法(メティエ・ダール)を用いて生み出される作品は、美しいだけでなく、伝統技法の継承にもつながっている。その最新作では、14世紀に誕生した中国の伝統的なモチーフである「海水江崖」を表現した。

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Words by Tetsuo Shinoda


クイック解説

世界で最も複雑な機械式時計を製造した技巧派であるヴァシュロン・コンスタンタン(その詳細はこちらの記事をチェックして欲しい)は、伝統技術の活用・継承に対して真摯に取り組むメゾンでもある。時計や宝飾品の製作に用いられる装飾技法をたたえる“メティエ・ダール(Metiers d'Art)”は、グラン・フーやプリカジュールといったエナメル技法にジェムセッティング、彫金、ギヨシェ彫りなどを駆使して、時計という小さなキャンバスに美しい世界を描くコレクションだ。同社のタイムピースは、そのモチーフを決める際に文化や芸術、歴史などからインスピレーションを得るのが特徴で、さらにその表現が生きるような自社製ムーブメントを選び、伝統と技の融合から美しい高級時計を生み出してきた。

乾隆帝(けんりゅうてい)。清朝第6代皇帝で1735〜1796年までの約60年にわたり中国を統治し、清朝の全盛期を築く。文化と芸術を奨励し、多くの文学や絵画を収集・保護したことでも知られている。その装束に海水江崖のモチーフが随所にあしらわれているのがよく分かる。

同治帝(どうちてい)。清朝第10代皇帝で、1861〜1875年まで在位。同治帝の時代においても清朝の宮廷文化は活発で、彼が身につけていた装束にも見事に現れている。

 今回ヴァシュロン・コンスタンタンが題材に選んだのは、中国の伝統的なシンボル「海水江崖」だ。これは14世紀に誕生したという伝統的な文様で、うねる海と岩、そして岩にぶつかって砕ける波をグラフィカルに描き出す。皇帝の祭礼時の装束、陶磁器、建築物の装飾、家具などにこのデザインが取り入れられ、その威厳や権力を象徴するものとして尊重されてきた。その構図はかなり複雑であるため、逆に同社ならではのメティエ・ダールの表現力が生きた時計となっている。

 なお、今回発表された時計の絵柄は、クロワゾネ・エナメルと彫金を用いた“メティエ・ダール 伝統的シンボルへ敬意を表して‐永遠の流れ(以降、永遠の流れ)”と、グラン・フー エナメル、彫金、ジェムセッティングを用いた“メティエ・ダール 伝統的シンボルへ敬意を表して‐月光(以降、月光)”の2種。それぞれに18Kピンクゴールドとホワイトゴールド製のケースが用意され、バリエーションは全部で4つ。各15本の限定生産となる。

 ヴァシュロン・コンスタンタンがメティエ・ダールで用いるムーブメントは、主に3種ある。中央に彫金などを配置する場合は回転ディスクを用いるCal.2460 G4、絵柄をダイナミックに表現する場合は複層ダイヤルになるCal.1120 ATが選ばれる。しかし今回は平面上に広がる伝統的なシンボルを表現したいということから、時・分針のみのシンプルな自動巻きCal.2460 SSが選ばれた。ムーブメント径が26.2mmで厚さが3.6mmというコンパクトなサイズのため、時計のケース径も38mmという美しいバランスになった。ローターには波や潮の流れを思わせる繊細な彫金が施されており、完成度の高い時計となっている。

メティエ・ダール - 伝統的シンボルに敬意を表して - 永遠の流れ

 永遠の流れで主体となる芸術技法はクロワゾネ・エナメルだ。日本では有線七宝と呼ばれる技法だが、もともとは中国に起源を持ち、景泰藍(けいたいらん)という名前で知られていた。明の景泰帝(1449〜1457年)の時代に最盛期を迎え、下絵に合わせて繊細な金線を折り曲げ固定し、それぞれの仕切りのなかにエナメルを入れて焼き上げるというもの。この作品では220本の金線を使用しており、これを敷き詰める作業だけでも50時間以上を要するという。

 さらに美しい色に配合されたエナメルを筆を使って流し込み、工程ごとに高温で焼き上げる。失敗を許されない繊細な作業に70時間以上を費やした美しいダイヤルは、最後に半透明のエナメルコーティングを施して完成となる。この作品で描かれたのは、色鮮やかな植物に覆われた山の頂が高波に洗われている様子だ。山の背景には星空が輝いており、左右対称のドラマティックな作品に仕上がっている。

 また色鮮やかなクロワゾネ装飾を際立たせるように、ベゼル部分には彫金が施されているが、渦巻で構成されるこのモチーフは、縁起が良いとされるコウモリをイメージしたものである。

メティエ・ダール - 伝統的シンボルに敬意を表して - 月光

 色彩豊かな永遠の流れに対し、月光ではモノクロームの世界を表現した。ダイヤルは3つのパートからなり、背景部分はブルーのグラン・フー エナメルを施して海を表現。層を重ねるごとに焼き上げることで深みのある表情を引き出し、その上に施したくぼみにホワイトエナメルで繊細な波模様を描いている。また岩に当たって砕ける白波は、ブリリアントカットのダイヤモンドを238個も使用したジェムセッティングで表現。そして手前にそびえる荒々しい岩山を表現。ベースの金属部分に彫った溝にエナメルを施すシャンルヴェエナメルの技法を用いて立体感を演出する。
 さらにベゼルにも74個のブリリアントカットダイヤモンドをセッティングし、月夜に浮かぶ美しい情景を表現した。


ファースト・インプレッション

近年、メティエ・ダールに力を入れるブランドが増えている。いわゆるコンプリケーションウォッチのトレンドが一巡し、技術的にも成熟したため、次なる高級時計の表現方法として力を入れているのだろう。その一方で、職人を育成してきたブランド側の努力は無視できない。メティエ・ダールの中心となるエナメル装飾職人は、後継者不足と伝統技術の継承の難しさ、そして高度な技術と経験が必要であることを理由に一時期かなり減少してニーズに対応できない時期もあった。しかし地道な育成プログラムのおかげもあり、多くのメティエ・ダール作品がつくられるようになった。そこには伝統的な装飾技術やその文化を守りたいという意識があったことは間違いない。

 ヴァシュロン・コンスタンタンのメティエ・ダールにも文化保護といったメッセージもある。モチーフとするのは伝統や文化、干支、遺産などが多く、人類の英知を讃えようという一貫した姿勢があり、その荘厳な世界観に引き込まれてしまう。

 2022年に発表された「メティエ・ダール 偉大な文明へ敬意を表して」は、ルーヴル美術館とのパートナーシップから生まれたもので、サモトラケのニケやアウグストゥス帝の胸像などの大きな彫金をダイヤルの中央にあしらう大胆な構成が話題となった。それに比べると今回のメティエ・ダール作品は、モチーフの美しさや壮大さを表現することに注力しているように思える。製作に際しては北京故宮博物院で副研究館員を務めた宋氏に協力を依頼し、何度もマニファクチュールの職人たちとセッションを重ね、文化的、歴史的意味までしっかり学んだうえで作品に取りかかったそうだ。その丁寧なプロセスが、完成度の高さに直結しているのは想像に難くない。

 本作でもさまざまなメティエ・ダールの技法が用いられているが、やはり見どころはエナメル技法だろう。昨年、ヴァシュロン・コンスタンタン本社内にあるメティエ・ダール工房を取材させてもらったが、特に興味深かったのがエナメル技法だった。壁にはエナメルのカラーパッチが並んでおり、使用する塗料には1950年代のものもあるという。ダイヤル素材によっても発色が異なるため、理想の色を出すためには技術だけでなく、どれだけ多くの塗料を持っているかがカギになるそうだ。そしてこういったノウハウがクロワゾネの色鮮やかな配色や深みのあるブルーに生かされるのだ。

 ヴァシュロン・コンスタンタンでは、多くのメティエ・ダール作品を作り続けることで、表現と創造性の幅を広げている。そして伝統的なモチーフを繊細な技術によって美しく表現することで伝統文化に対する敬意を示す。時計をアートとして昇華させるメティエ・ダールは、美しい文化遺産を世に知らしめる役割も果たすとともに、265年以上もの歴史を誇る老舗メゾンに連綿と継承されてきた時計づくりの技法を今に伝えている。

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基本情報

ブランド: ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)
モデル名: メティエ・ダール - 伝統的シンボルに敬意を表して - 永遠の流れ&月光
型番:Ref.2400A/000R-H024、2400A/000G-H023(永遠の流れ)/Ref.2405A/000R-H022、2405A/000G-H021(月光)

直径: 38mm
厚さ: 9.88mm
ケース素材: 18Kピンクゴールド(PG)、18Kホワイトゴールド(WG)
文字盤: クロワゾネ・エナメル仕上げダイヤル&手作業の彫金を施したベゼル(永遠の流れ)/グラン・フー・エナメル仕上げ&手作業の彫金によるモチーフのダイヤルに238個のブリリアントカットダイヤモンドをセット(月光)
インデックス: なし
夜光: なし
防水性能: 3気圧
ストラップ/ブレスレット:ダークブルーまたはバーガンディのミシシッピアリゲーターレザーストラップ(同色系の手縫いサドルステッチ、アリゲーターレザーのライニング)、18KPGまたは18KWGのフォールディングクラスプ


ムーブメント情報

キャリバー: 2460
機能: 時・分表示
直径: 26.2mm
厚さ: 3.6mm
パワーリザーブ: 約40時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27
クロノメーター認定: なし
追加情報: ジュネーブ・シール取得、


価格 & 発売時期

価格: 要問い合わせ
発売時期: ●●●●●●●●
限定: 各世界限定15本。ヴァシュロン・コンスタンタンブティック限定モデル

詳細は、ヴァシュロン・コンスタンタン公式サイトをクリック。