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Hands-On ビクトリノックスによるダイバーズウォッチの最新作、ダイブプロからチタン製モデルにフォーカス

スイス内陸の丘陵地帯で生まれたブランドによる、インダストリアルでまるでツールのようなダイバーズウォッチだ。


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ビクトリノックスから今年4月に発表された大型ダイブウォッチの新ラインであるダイブプロは、イノックスの継続的な成功とそのなかのタフなダイブウォッチのヒットを受けてブランドが開発した最新進化形とも呼べる時計である。ステンレススティール(SS)製とチタン製の両方が用意されたこの新世代のスイス製ダイバーズウォッチは、ブランドが昔から重点を置いてきた価値と品質を、モダンで個性的な、まさにツールのようなパッケージに詰め込んで提供している。

victorinox dive pro

 新しいダイブプロはすべて直径43mmで、自動巻きかクォーツ式のムーブメント、そしてSSまたはチタン製のケースから選ぶことができる。この新ラインの価格帯は、これらのオプションの組み合わせ次第で12万1000円から26万9500円(ともに税込)まで広がる。少しコレクションを俯瞰して見てみると、ビクトリノックスのダイバーズウォッチの選択肢は6万2700円のマーベリックから26万9500円(ともに税込)のダイブプロ オートマティックまでラインナップされており、とりわけダイブプロはスイスブランドにおけるダイビングウォッチのフラッグシップとなり得る存在だ。このレビューではダイブプロのなかでも中間に位置する、クォーツムーブメントを搭載し、チタンケースに鮮やかな黄色のストラップを取り付けた16万5000円(税込)のモデルを選んだ。

 個人的に今はクォーツ人気が高まっていると思っており(今回はクォーツ“危機”とは呼ばない)、軽量で激しい動きにも対応し、かつ手間がかからないダイバーズウォッチというアイデアは非常に気に入っている。まあもしそのように思わないのであれば、SS製ケースを選んで数百ドルを節約するか、400ドル多く支払ってチタンケースの自動巻きモデルを選ぶこともできる。

victorinox dive pro
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 手元にあるダイブプロのクォーツモデルにフォーカスしてみよう。この時計のサイズは直径43mmで厚さ14mm、全長54.2mmで重さは96g。ケースはグレード2のチタン製で、サファイアクリスタル風防にクローズドケースバック、ねじ込み式リューズ、逆回転防止チタンベゼル、そして300mの防水性能を備えている。

 ラグ幅は21mmで、ラバーストラップには簡単に交換できるクイックリリース用のバネ棒が取り付けられている。クォーツモデルではロンダの715クォーツムーブメントを採用しており、自動巻きモデルにはセリタのSW220(2万8800振動/時で動作し、パワーリザーブは38時間)を使用している。また自動巻きモデルは曜日・日付の表示があり、リューズは4時位置に配置されているが、クォーツモデルは標準的な日付表示に加えて3時位置にリューズガード付きのリューズを備える。

victorinox dive pro

 これらの新しいモデルには、既存のダイバーズモデルであるイノックスからのインスピレーションが明確に見て取れる。そして、かつて僕がイノックスで感じた高級感がこのダイブプロにもあり、15万円から30万円前後のスポーツウォッチとして確かな価値を提供している。大型のリューズは非常に精巧に作られており、ベゼルは軽快な回し心地ながらも120クリックのラチェットを備えている。

 ISO 6425に準拠したダイバーズウォッチとして、ダイブプロ クォーツは特徴的なベゼルの頂点にルミナスポイントを配している。ダイヤルは大きなアプライドマーカーと最小限の文字要素、良好な夜光、そして随所に散りばめられたイエローのアクセントにより最高の視認性が得られるように調整されている。ストラップにベゼル、秒針に配されたイエローのアクセントは僕がこのモデルに引かれた大きな理由のひとつであり、その色はマット仕上げのチタンケースが見せる温かみのあるダークトーンと非常によく調和していると思う。

victorinox dive pro

 ビクトリノックスは昔から、僕にとって魅力的なブランドだった。祖母がスイスアーミーナイフをプレゼントしてくれたのをきっかけに、成長するにつれてこのスイスメーカーは僕の一番好きなブランドのひとつになっていった。ビクトリノックスの製品はいつだって良質でありながらも公正な価格を保っていて、スイス製品としての慎重かつ公平なまなざしを持ち続けている。

 確かにビクトリノックスは優れたナイフやカッティングツールで広く知られるブランドだが、最近スイスにある製造拠点を視察した際には、ナイフ製造の要素を巧みに時計に取り入れているビクトリノックスの手腕に感心させられた。実際、時計のケースもスイスのデレモンにある工場で製造されており、ここで組み立てや品質保証(現在では100以上のテストとチェックが行われ、時計は5年間の保証付きで出荷される)までもが行われている。

victorinox dive pro

ビクトリノックスのスイス工場で見かけた、何千ものスイスアーミーナイフのハンドル部。

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スイスアーミーナイフが組み立てられていく。

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ビクトリノックスの従業員が、スイスアーミーナイフを数秒(初めての場合は数分を要する)で組み立てるために設計された特別な機械を操作している。

 ビクトリノックスの事業には主に4つの柱(ナイフ、ラゲッジ、時計、フレグランス)があり、時計が占める割合はそのうちのほんの少しだ。それでも現在4代目のCEO(創業者の曾孫であるカール・エルスナー氏。そう、彼らはみんなCarlやKarlという名前なのだ)によって経営されており、家族主導の財団と非営利組織の混合所有となっているため、ブランドは自由に舵をとることができる。1884年の創業以来成功しているビジネスモデルを変更する理由はほぼない。

 しかしながらスイスアーミーナイフが世界的に広く普及している一方で、時計製造は1989年に始まった最近の動きであり、ビクトリノックスにとって最も近しいスイスの競合であるウェンガーを2005年に買収したことでさらに強化された。以前にも言ったが僕はハミルトン(オンタリオ州)のライムリッジモールへたまに顔を出すことがあり、そこでは必ずナイフハウスに立ち寄ってビクトリノックスの製品を見ていた。若いころはタイメックスのアイアンマンを愛用していたが、洗練されたブラックのビクトリノックスを手に入れることをいつだって夢見ていた。12歳のジェームズにとって日々の必需品であった、スイスカード(編注;クレジットカード型のマルチツール)にぴったりな時計が欲しかったのだ。

victorinox dive pro

 ここまでは、僕が長年のビクトリノックスファンであることを言いたかっただけだ。ビクトリノックスは独自の路線を貫くブランドであり、ナイフ製造の豊富なノウハウを持つ鋼鉄へのこだわりが強いメーカーであることが、結果として優れたスポーツウォッチを作るための確固たる基盤となっている。

 さて、時計に話を戻そう。ビクトリノックスが15万円を少し超える程度の価格でチタン製の時計を作り上げたことに僕は感心している。製品は同価格帯で僕がリサーチしてきた多くのモデルよりも上質に感じられる。独自色が強いケースデザインとベゼルは、その形状が非常に複雑であると同時にインサートがないにもかかわらず、エングレービングが施された表面とペイントによるマーカーで見事に仕上げられている。

victorinox dive pro
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 モダンでインダストリアル(あまり主張しない)な形状のケースとベゼルは、センターサークルのアクセントを持ち、3時位置のデイト表示とも調和するシンプルで上質なダイヤルによってさらに際立つ。マットブラックのダイヤルは見栄えがいいだけでなく、白で日付が配された黒のデイトホイールとマッチ。大型のセミスケルトン針は、たっぷりと塗布された夜光と分針の先端にあしらわれた小さなイエローの輝きによって引き締められている。

 ストラップは天然ゴム製で、通気孔(ベント)、遊環、ピンバックルが付いている。ビクトリノックスはこのほかにもストラップのオプションを用意しているが、やはり僕はラバー製に軍配を上げざるを得ない。というのも、かさばることなく(最近のFKMラバー製ストラップによくある問題だ)時計にぴったりマッチするとても素晴らしいオプションだからだ。つけ心地もよく、ビクトリノックスはこれを別売りで販売する予定で、ラグが21mm幅の時計を持っている人にはいい知らせだが21mm幅のサイズもいくつか用意している

victorinox dive pro
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 特に時計愛好家の観点から見た場合、ダイブプロにおける最大の課題はサイズにある。43mmのケース径は僕の7インチ(約17.8cm)の手首にはまったく問題ないが、ラグからラグまでが約54mmというのはかなり長い。この時計をスイスアルプスでのハイキングを含めて多くの場面で着用し、快適であることは理解しているが決して小さな時計とは言えない。とはいえ時計マニアの心中を無視すれば直径43mmというのは時計としてかなり一般的なサイズであり、チタン製のケースはこの時計が手首に過度な負担をかけないようにひと役買っている。しかしビクトリノックスは実店舗で試着するのも難しくないブランドだ。数字の上でサイズが大きすぎると感じたなら、実際に試してみるのがいいだろう。

 サイズに関する話の延長線上で、ダイブプロの小径モデルを特にチタンで企画するようビクトリノックスに求めたい。ある意味でダイブプロはビクトリノックスにとってのペラゴス(チューダーだ)のようなものであり、ダイブプロと僕のペラゴス39をつけ替えながら使うことで、ミッドサイズのなかでもより小ぶりな選択肢の魅力がさらに際立つ。

Victorinox dive pro
victorinox dive pro
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 要するにこの時計のことが僕は大好きで、ビクトリノックスのコレクションのなかでこの時計が担う立ち位置も気に入っている。だが上記の小型モデルへの要望に加えて、いくつかの建設的な批判もないわけではない。まずムーブメントについてだが、クォーツを選ぶなら真にハイスペックなムーブメントを求めたい。ロンダ 715も十分なムーブメントだが、このモデルの魅力を16万5000円(あるいは18万円ぐらいまで)で高めるならマラソンがスチールナビゲーターに使用しているETA F06.412のような高精度ムーブメントが望ましい。クォーツという選択肢を提案するなら徹底的に追求するべきだ。

 さらに細かい点を挙げるならベゼルの操作感はもう少し重くてもいいと思うし、120クリックではなく60クリックのアクションにすることでユーザーのエクスペリエンスはより高まると思う。こだわりが強いって? そうありたいと思っている。

victorinox dive pro

 ダイバーズウォッチカテゴリにおけるブランドの最新進化形として、2024年のダイブプロでビクトリノックスが示している方向性はとても素晴らしい。クォーツとチタンという選択肢やモダンな(やや強烈な印象も受ける)スタイリング、そして価格帯といった要素が一体となり、スイス製ダイバーズウォッチとしてよく練られた、そしてつけていて楽しい価値あるモデルに仕上がっている。

 これはまさにビクトリノックスが作るべき時計なのだ。

詳しくはビクトリノックスのウェブサイトをご覧ください。