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Introducing ゼニス デファイ クロノグラフ USM(実機レビュー&編集部撮り下ろし)

ゼニスが、スイスの名門家具メーカーUSMと初のコラボレーションを実現。オリジナルのデファイケースにカラフルなエル・プリメロを搭載し、USM製の特注ウォッチストレージも付属する。

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Photos by Andy Hoffman


我々が知っていること

時計業界において、ブランド同士のコラボレーションは今や当たり前となり、新たな組み合わせに対しても特別驚かされることは少なくなった。だからこそ、新たなタッグが“驚き”だけでなく、“知的好奇心”や“感動”までももたらしてくれるとき、そこには確かな価値が生まれる。今回、スイスのモジュラー家具システムの名門USMと手を組み、カラフルなエル・プリメロ搭載のクロノグラフとオリジナルUSM製ストレージを組み合わせた限定シリーズを発表したゼニスの試みは、その完成度においても際立つものとなった。

 このコラボレーションには“初めて”が数多く詰まっている。1885年創業の家族経営企業USMにとっては、これが初の時計ブランドとの提携であり、同社の代表作であるUSMハラーシリーズのデザイン言語を時計の世界に取り入れる試み自体もこれが初めてである。そして、今年で創業160周年を迎えるゼニスにとっても、1969年に登場した伝説のエル・プリメロムーブメントを、同ブランドのなかでもっとも建築的な意匠を持つオリジナルのデファイケースに搭載するのは、今回が初めてのことだ。このオリジナルのデファイは、発売当時その堅牢性と密閉性の高さから“コフルフォール(貸金庫を意味する言葉、もしくはタイムセーフ)”という愛称で呼ばれた。初出は1969年で、現在ではデファイ リバイバルとして復刻されているRef.A3642 ダイバーがその起源である。

 今回のデファイ クロノグラフ USMは、1960年代に両社がそれぞれ誕生させたアイコニックなプロダクトデザインを、もし両者が当時から頭を突き合わせ、製図台の前で共同開発していたらどうなっていただろうか……、という仮想に基づいた作品である。ゼニスがスイス高級時計界の重鎮として、長年にわたり敬意と愛情を込めて語られてきた存在であることは、HODINKEE読者であれば周知の事実であろう。我々自身、過去にこの名門ブランドと、その象徴たるエル・プリメロを用いた限定モデルを複数手がけてきた経緯もある。だが今回、ゼニスがコラボレーションの相手に選んだのは、やはりスイスに拠点を構えるUSMである。ベルン州ミュンジンゲンに本社と工場を構え、その産業的・製造的な遺伝子をゼニスと共有するブランドだ。ゼニス本社のあるル・ロックルからは、車でおよそ1時間半の距離に位置しており、両社のあいだには言語的にも文化的にも架空の国境と称される“ロシュティグラーベン(Röstigraben)”、すなわちフランス語圏とドイツ語圏を隔てる文化的な境界線が存在している。

 ゼニスのプロダクト開発およびヘリテージ部門ディレクターであるロマン・マリエッタ(Romain Marietta)氏によれば、両社がコラボレーションについての話を始めたのは約5年前のこと。ゼニスがオフィスに追加でUSM家具を導入しようとしていたのがきっかけだったという。その際にUSMの幹部との関係が築かれ、マリエッタ氏とそのチームは、時計と家具のコラボレーションを提案した。

 「我々には多くの共通点があると気づいたのです。非常に似ている部分が多い」とマリエッタ氏はインタビューで語る。「スイスブランドとしての卓越性や精密さ、そしてクラフツマンシップに対する姿勢など、価値観の多くを共有していることがわかりました」

各モデルに付属するUSM製ストレージチェストのクローズアップ。

 ゼニスとその創業者であるジョルジュ・ファーブル=ジャコ(Georges Favre-Jacot)と同様、USMというブランドもまた、創業者ウルリッヒ・シェアラー(Ulrich Schärer)のビジョンによってかたちづくられた存在である。社名はシェアラーのイニシャルと、今も工場が稼働を続ける本拠地ミュンジンゲン(Münsingen)の頭文字に由来している。USMは19世紀後半に金属加工工場として創業し、20世紀半ばには金属建築構造物のメーカーへと進化を遂げた。1960年代初頭には創業家3代目にあたるCEOでありエンジニアのパウル・シェアラー(Paul Schärer)が、スイス人建築家フリッツ・ハラー(Fritz Haller)に対してスティール製のモジュラー構造システムを用いた新工場とオフィス棟の設計を依頼した。この構造は、クライアントの産業的・管理的ニーズの変化に応じて柔軟に適応、変更できるものである必要があった。やがてハラーとシェアラーは、建築物と調和する家具シリーズの開発にも着手する。これによって誕生したのが、現在USMの主力商品として知られるUSMハラー モジュラーシステムである。その中核には、独自に設計・特許取得されたスティール製のボールジョイント構造があり、今なおUSM家具の根幹をなしている。

USMハラーの家具が使用された、シェアラー家の私邸“The Buchli”。この邸宅は、フリッツ・ハラーの設計によって建てられ、USMの素材が随所に用いられている。

 ゼニスのデファイのケース設計、ラダーブレスレット、エル・プリメロ ムーブメントが同社の製品哲学と製造基盤を象徴しているように、USMにとってのUSMハラー システムもまた、同様の役割を果たしている。クロームメッキされたスティールチューブ、接続用ジョイント、メタル製パネルやシェルフによって構成されるこのモジュールは、ユーザーの用途に応じて自由に構築・変形することができ、いまやひとつの完成されたデザイン言語として確立されている。

 USMのCEO兼会長であるアレクサンダー・シェアラー氏はこう語る。「私たちの製品や業種、さらには顧客層がゼニスとは一見すると異なって見えるとしても、究極的には時代を超えて愛される品質、洗練された美意識、そして目的に根ざした機能性への揺るぎない信念によって、私たちは結ばれているのです」

USM本社(ミュンジンゲン)

USMのボールジョイント接続システム。

カラフルなUSMハラー構成例。

 今回、我々は発売に先立ってデファイ クロノグラフ USM モデルとUSM家具に直接触れる貴重な機会を得た。また、USMの本社および工場(ミュンジンゲン)も訪問し、製品が生み出される現場を見学することができた。オフィススペースはUSMハラーシステムの多彩な構成例を体感できる理想的なショールームとなっており、空間づくりの無限の可能性を示している。工場内では、多くの作業員たちが金属パーツのロール成形、切断、塗装を行っており、パネルや棚板に使われるカラフルな部材がここで仕上げられていく。さらに、USMの象徴であるボールジョイントやチューブなど、各モジュールを連結・固定する独自パーツもこの施設内で製造されている。こうした施設は、世界でもっとも労働賃金が高い国のひとつであるスイスにおいても、際立って効率的かつ清潔で洗練された工場である。

USMの工場で成形されるスティール素材。

 このモデルは、特徴的な14角形のデファイケース(直径37mm)に収められており、限定コレクションとして4色のダイヤルカラーを用意。各色60本ずつの生産となる。ラインナップは“ジェンシャンブルー”、“ピュアオレンジ”、“ゴールデンイエロー”、“(USM)グリーン”の4色で、いずれもUSMがハラーシリーズで初期に採用していたカラーに由来する(ブラックとホワイトを除く)。USMは、多くのスイス時計ブランドと同様に、製品のアップデートにおいては慎重かつ計画的な姿勢を貫いている。たとえば、最近オリーブグリーンが加わった際には、それがハラーシステムにとって20年以上ぶりの新色であったほどだ。ゼニスのロマン・マリエッタ氏によれば、今回のダイヤルは単純にパントーンの色番号を指定して済むものではなく、USM独自の塗料色に合わせるべく特別な顔料を調合する必要があったという。

 各モデルのインダイヤルはシルバー色での仕上げで、6時位置にスモールセコンド、12時位置に12時間積算計、3時位置に30分積算計を配置。さらに、ゼニスらしく(そして一部では議論を呼ぶ)4時30分位置のデイト表示も採用されている。インデックスには、オリジナルのデファイ Ref.A3642でも使われていたブラック×シルバーのストライプ際立つロジウムメッキのブロック型インデックスが用いられ、セミ・インダストリアルなテーマを強調している。また、文字盤にこそUSMのブランドロゴは入っていないが、クロノグラフ秒針の先端に極小のUSMハラー製ボールジョイントを模した意匠が施されており、これがスイスの家具メーカーとのコラボレーションを象徴するさりげない演出となっている。この“ボールジョイント付き秒針”は、ゼニスのデザイナーおよび技術者たちにとっては技術的なチャレンジでもあった。視覚的な存在感を持たせつつ、重量バランスに配慮し、針全体やムーブメントの精度に影響を与えないように設計する必要があったからだ。針はロジウムメッキ仕上げで、時針および分針には夜光塗料が施されている。また、ケースは100mの防水性能を備えている。

 このモデルには、オリジナルのデファイにも採用されていたステンレススティール製のラダースタイルブレスレットが装着されている。もともとは著名なブレスレットメーカーであるゲイ・フレアーによって製造されていたもので(同社はのちにロレックスに買収された)、この構造もまた、全体の建築的・構造的なデザインテーマを強調する要素となっている。搭載されているのは、ゼニスが誇るフラッグシップムーブメント、エル・プリメロだ。1969年に発表された、世界初の高振動・自動巻きクロノグラフムーブメントである。USMのロゴと名称は、サファイアクリスタルのケースバック越しにのみ確認でき、そこにはゼニスのロゴもあわせて刻まれている。さらにコート・ド・ジュネーブ装飾が施されたローターが回転し、3万6000振動/時で駆動するムーブメントは高精度を維持し続ける。

 今回のコラボレーションでは、USMの塗装色を取り入れたダイヤルに加え、オリジナルのデファイケースにエル・プリメロを初めて搭載したという点も注目に値する。さらに、各時計にはUSMハラーの特注ストレージ家具が付属する。この家具は、ブルー、イエロー、オレンジ、グリーンといった時計と同じカラーリングで仕上げられ、ロック付きの扉と3つの収納コンパートメントを備えている。もちろん、そこに収納できるのは……そう、腕時計である。このチェストには最大12本の時計を同時に収納可能だ。もちろん使い方は持ち主次第であり、この家具はれっきとした本物のUSMハラー製品である。USMのほかのモジュールと同様に追加・再構成・改造が可能で、必要に応じてカスタマイズもできる。もしも4色すべてのモデルを購入すれば4つのUSM製チェストが手に入ることになり、USMハラーのモジュラーシステムによって複数の構成に組み合わせることも可能となる。


我々の考え

 付属するUSMハラーのストレージ家具、新鮮なダイヤルカラー、そしてエル・プリメロが初めてオリジナルのデファイケースに収められたという事実を踏まえれば、このゼニス デファイ クロノグラフ USMの価格は、かなり良心的であると感じられる。価格は1本あたり159万2800円(税込、USM製ストレージチェスト付き)。これは、現行のゼニス クロノマスター スポーツとほぼ同水準の価格帯だ。それにしても、ゼニスがこれまでエル・プリメロをオリジナルのデファイケースに1度も搭載してこなかったというのは驚きである。個人的にこのケースは、ゼニスのなかでも最も気に入っているデザインであり、自分自身もヴィンテージの“コフルフォール”をゲイ・フレアー製のラダーブレスレット付きで所有していることを誇りに思っている。今回のモデルは、過去のアーカイブをそのまま復刻したものではない。むしろこれは、ゼニスのクラシックなデザインをUSMの影響とともに再構築し、そこに伝説的クロノグラフムーブメントを搭載した再解釈モデルと言える。USMの魅力をすでに理解している人々にとっては、その時代を超えるミニマルなデザイン性や堅牢で再構成可能な構造が、まさに高級機械式時計と共鳴する価値観として映るはずだ。本作は、そんな両ブランドの哲学と美学を融合させた1本である。そして、もしまだUSMになじみのない読者がいるとすれば……ようこそ、この世界へ。1度その魅力を知ってしまえば、おそらく今後はあらゆる場所でUSMの存在に気づくことになるだろう。


基本情報

ブランド: ゼニス(Zenith)
モデル名: デファイ クロノグラフ USM(Defy Chronograph USM)
型番: 03.A780.400/19.M3642/03.A780.400-1/65.M3642/03.A780.400-2/91.M3642/03.A780.400-3/56.M3642

直径: 37mm
厚田: 13.9mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: USM ジェンシャンブルー/USM ピュアオレンジ/USM ゴールデンイエロー/USM グリーン
インデックス: ロジウムメッキ
夜光: スーパールミノバ
防水性能: 10気圧
ストラップ/ブレスレット: SS製ラダーブレスレット


ムーブメント情報

キャリバー: エル・プリメロ 400
機能: 時刻表示はセンターに時針・分針を備え、スモールセコンドは9時位置に配置。クロノグラフ機能としては、センターにクロノグラフ秒針、6時位置に12時間積算計、3時位置に30分積算計を搭載。さらに4時30分位置に日付表示を備えている
直径: 30mm
厚さ: 6.6mm
パワーリザーブ: 55時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 3万600振動/時
石数: 31
クロノメーター認定: なし


価格&発売時期

価格:  159万2800円(税込)
発売時期: 発売中
限定: 4色すべて各60本限定

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