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Instagramが時計業界を一変させたことは間違いない。ほぼ毎週新しい時計が発表され、それらは人々の意識と、いつ発売されたかを示すデジタル年表の両方に記録されるようになった。そのため、ソーシャルメディア時代以前に発表された時計、特にここ20年ほどの時計については、その存在を見失われがちだ。そのような人にIG以前の腕時計を見せると、自分の好きなブランドの超クールな腕時計が自分の認識外にいたことをリアルタイムで納得してもらえるため興味深い。実は、Instagram(とHodinkee)が生まれる以前は、どんな時計がリリースされたか追うためのよい方法はあまりなかった。そこで、10/10を記念して、僕が実際に見て気に入った時計をいくつか紹介することで、それらがインスタの波にに飛び乗り参加してくれることを願う。
パテックフィリップ パーペチュアルカレンダー・スプリットセコンドクロノグラフ Ref.5004
1994年に発売され、Instagramの幕開けである2009年に生産終了となった5004は、もし今日発売されたら誰もが争奪戦を繰り広げるであろう作品のひとつだ。基本的には5970パーペチュアルカレンダー・クロノグラフだが、スプリットセコンド機能を備え、ケース径は3.5mm小さく、現代のパテックにおける最大のコスメティックディテールと僕が考えているオーバーサイズの巻上げリューズの中央にスプリットセコンドプッシャーが備わっているのだ。現在販売されているRef. 5204はアップデートされたバージョンだが、5004が唯一無二のリファレンスである36mmのサイズから、何かが失われている気がする。
オーデマ ピゲ ロイヤル オーク オフショア サバイバー クロノグラフ
オーデマ ピゲは、ブランドとして名を馳せるずっも前から、そのデザインと製造技術で何度も存在感を見せつけてきた。その好例がこのロイヤル オーク オフショア サイバー クロノグラフだ。もしこの時計が今日発売されたら、おそらく2000年代後半よりも早く1000本が売り切れたことだろう。大ぶりなケースに、ローレット加工が施され、フライス加工とドリル加工がなされた上、ストーブパイプ状のリューズとペリカンケースの蝶番のように固定されたスケルトン仕様のプッシャーガードが付いている。構造的に他のオフショアモデルよりもサバイバルに適しているとは思えないし、PVDコーティングも簡単に剥がれてしまいそうだが、僕はストーリーに弱いため、もしあなたもそうなら、すでに追い詰められているところだろう。大胆で、奇妙で、そして希少価値を生み出すには、あなたがその名を耳にする10年以上も前にすでにリリースしていることが何よりの方法ではないだろうか。
ジャガー・ルクルト マスターコンプレッサー ダイビングプロジオグラフィーク
2008年、時計業界は分厚く、機能満載のダイバーズウォッチを全面的に採用していた。このトレンドに乗じて、超高級時計メーカーであるJLCもいくつかのモデルを発表している(2008年製モデルを身につけてこの文章を書いている)。圧力センサーの露出した部分を何度も押してしまったためか、機構のキャリブレーションが狂ってしまったが、強く押すことで針が動くのを見るのは面白くて仕方がない。ブラックラバーコーティングのリンクブレスレット(僕はこの見た目と感触が好きなのだが、なぜ今はもう誰もやらないのだろうか)、ロックダウンすることで300m防水を保つフランジ付きの大きなラバー製プッシャー、チタンのデプロイヤントクラスプにかぶせるラバー製の大きなC型カバーなど、僕は今でもこの時計が通用すると思う。当時も面白かったが、今ではもっと面白い。
IWC GST ディープワン
もし、僕が何かを夢中で所有するように仕向けたいなら、次のような条件で教えて欲しい。製造があまりにも困難で、販売価格よりも製造コストが高く、顧客を獲得することができなかった、そういうようなものだ。IWCのGST ディープワンは、まさにそのようなストーリーを持つ時計だ。機械式時計への関心がまさに難解なものであった1999年に発表された本機は、IWCの成功したGSTライン(長いあいだ失われていた逸品)をベースに、最大水深100mを達成するためにケース内に水を入れるという独創的な技術的野心を持った巨大なダイバーズウォッチだった...って、たった100m? いや、でもそんなことはどうでもいい。トゥールビヨンは長いものには巻かれろ、と言ったように、この時計もまた、潜水後にケースに接続して水を吸い上げるポンプを搭載しているのだ。今よりも比較的硬く高価だったチタンを使用し、1000本程度を生産したと言われている。
ロレックス サブマリーナー “パナマ運河”
機械式時計の歴史において、強大なロレックスほど規律正しくリリースを続けてきたブランドはないだろう。規律正しく、忍耐強く、そして厳格であろうとする姿勢が、このブランドが慎重に築き上げた規範からの逸脱を愛好家に熱狂させるのである。1999年、アメリカがパナマ運河を手放し、パナマへの移管されたことを記念してサブマリーナーをロレックスが作ったと言ったら、おそらく信じるのは難しいだろう。仮にそれを信じたとしても、その時計がパナマ運河のシールを文字盤にあしらったものだとは思わない。「ロレックスはそんなことしない!」あなたはそう思っているはずだ。しかし、彼らはやったのだ(彼らはこの頃、ほかのダブルネームの時計もいくつか製造していた)。75本限定(Ref.16610:スティール、16613:コンビ)のこの時計は、過去20年間のロレックスの製品とは大きく異なるため、オークションでは第二の人生を楽しんでいるようなものだ。Instagramでこの時計を見たことがないのだが、誰かがリストショットを投稿したら、この時計を疑問視するコメントがつかないのだろうか。
まだ見ぬもの、説明のつかないものに対して懐疑的になるのは当たり前のことで、僕も知っているつもりの時代の、知らなかった時計に対して、今でも時々そうなることがあることを認めよう。年齢がもたらす恩恵といえば、記憶と経験だろう。これらの時計は、ほんの数年後にブティックで売られていたか、再販されていたのを覚えている。Instagramでは、過去の製品リリースをリアルタイムで説明できないのが、いつも面白いところだ。また、過去の時計は、発売された当時よりも現在の方が、より力強い物語を語ることができるということを、改めて実感する。だからこそ、僕たちはモノを持ち続けることができるのだ。投資というのは、必ずしもキャッシュビジネスではないのである。
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