何カ月も待っていた時計がついに入荷したと正規販売店から悪名高い“着信”があったときの、あの純粋な興奮をご存じでしょうか? 残念ながら、僕はそのような楽しい電話を受ける幸運には恵まれていませんが、かなりいい気分であることは想像できます。想像するに、僕が大好きな日本のアニメ『ドラゴンボールZ』とスウォッチの新しいコラボレーションの話を聞いたときと似ているのではないでしょうか。実際、読者の皆さんのなかにも共感できる方がいらっしゃるのではないでしょうか。アニメオタクのみんな、団結しよう!
ドラゴンボールZを知らない方々のために説明すると、このアニメは80年代後半から90年代半ばにかけて放映された日本の人気番組で、サイヤ人の戦士である悟空と仲間たちが地球外生命体の敵から地球を守るのが粗筋でした。単純なストーリーながら、長時間の戦闘と主人公たちの無限のパワーアップが話題を呼びました。
時計メーカーがアニメとコラボすることはこれまでもありましたが(セイコーが『NARUTO』や『ワンピース』とコラボしたり、「ゼニス×ルパン三世」シリーズなど)、あまり興味を引かれたりすることはありませんでした。個人的には、アニメや漫画のような軽快さをステンレスの時計で出すことはできないと思っています(スヌーピーだけは例外かもしれませんが)。ステンレスの冷たい感じや、シルバー一色というのも、アニメのカラフルな世界観と比べると、なんだか無骨な感じがしますしね。ダイヤルはアニメの世界観を表現するためのキャンバスとしてうってつけですが、とても狭いですよね。でも、ケースやブレスレットにも使われていない部分がたくさんあるのです。
そこにきて、スウォッチとドラゴンボールZ コレクションの7本の時計は、本当に際立った存在だと思います。このコレクションは、ドラゴンボールZシリーズの人気キャラクター(悟空、悟飯、ベジータ、亀仙人、セル、魔人ブウ)に大きく影響され、典型的なスウォッチスタイルの、主にプラスチックケースとシリコンストラップが装備されています。このような素材を使うことをチープだと揶揄する人もいるかもしれませんが、スウォッチはダイヤルだけでなく、ケース、ストラップ、そして風防にも鮮やかな色を使うことができるのです。
ベジータモデルは、まさにその典型的なモデルです。サイヤ人の王子が敵の戦闘力を読み取るために使用した有名なスカウターをイメージしたデザインを採用しています。赤い風防に加え、ダイヤルには初めは敵同士であった悟空の黒いシルエットがプリントされています。ストラップもベジータの戦闘服をイメージしたフルカラー仕様です。この時計がどのキャラクターなのか、遠くからでも一目瞭然で、「戦闘力は9000以上…!」(ベジータのスカウターが悟空の戦闘力が予想以上に大きいことを示すアニメの名シーン)を瞬時に思い出すことができます。めちゃくちゃカッコイイですよ、これは。
このなかでいちばん好きなのは、おそらく亀仙人モデルです。彼はチームのなかで最もおちゃらけたメンバーのひとりですが、ドラゴンボールZの出来事の前、悟空がまだ子供だった頃を描いた前章のドラゴンボールシリーズで最もスポットライトを浴びたキャラクターなのです。ドラゴンボールZしか見たことがない人は、ぜひオリジナルのドラゴンボールも見てみてください。おもしろいですよ。
とにかく呑気な亀仙人の性格を見事に表現したのが、このモデルの真骨頂。ダイヤルには、彼の忘れられないおバカな顔と、アイコニックな赤いサングラスがあしらわれています。ストラップの裏側は彼のアロハシャツにインスパイアされたアルファベットが散りばめられ、彼の装いを彷彿とさせます。もしスウォッチがほかのキャラクターの顔をこの時計につけたら、うまくいかなかったでしょう。でも、亀仙人の場合は実にうまくいきました。彼の顔を見ると、思わずほほ笑んでしまいます。
また、悟空、悟飯、魔人ブウ、フリーザ、セルをモチーフにしたモデルも展開されており、ベジータや亀仙人と同じようにそれぞれのテーマに沿って作られています。ほかの作品にはあまり感情移入できませんでしたが、これだけの選択肢があれば、誰もが好きなキャラクターを見つけることができるのではないでしょうか。
腕時計のサイズは、選ぶキャラクターによって3種類展開されます。悟空とセルは直径47mm、フリーザと魔人ブウは直径34mmです。そして、悟飯、ベジータ、亀仙人は直径41mm。いずれも30m防水です。
この1週間は、どのモデルともとても楽しく過ごすことができました。プラスチック製のため、腕に軽く、つけやすい。セルと悟空の47mmサイズも、これまでつけてきたステンレスやチタンの腕時計より軽く感じられました。魔人ブウとフリーザのバージョンはさらに軽く感じましたが、直径34mmのケースは僕の18cmを超える手首には少し小さく見えたのも事実です。ダイヤルのMは私の苗字の頭文字でもあるので、小さくても魔人ブウを愛用しています。悟飯、ベジータ、亀仙人モデルは、ケース径が41mmと普段つけ慣れているサイズなので、いちばん腕になじむと思います。
正直なところ、この時計は耐久性のあるものとは思えませんでしたが、それは重要なことではないと思います。スウォッチの時計は、ツールウォッチやスポーツウォッチとして販売されることはありません。85ドルから135ドル(日本国内では税込1万780〜1万7600円)という手ごろな価格帯で、ドラゴンボールZの熱狂的なファンが楽しむためのものなのです。
競合モデル
大人気のオメガ×スウォッチコラボのムーンスウォッチは、同じメーカーが製造し、すでに象徴的なブランドとのコラボレーションであることから、おそらく最もわかりやすい比較対象でしょう。両者の明確な違いのひとつは、ケースの素材です。ドラゴンボールZモデルはプラスチック製ですが、ムーンスウォッチはスウォッチのバイオセラミック素材でできています。プラスチック製よりずっとファンシーに聞こえますが、時計全体の雰囲気はあまり変わらない気がします。しかし、私は実際にバイオセラミック製に触れたことがないので、シニアエディターのダニー・ミルトンのウィーク・オン・ザ・リストから引用します。「ケースはスウォッチが開発したバイオセラミック製で、プラスチックとセラミックを混合して作られた素材だ。マットでザラザラした質感で、ありえないほど軽い。チタンの軽さではなく、いわゆるプラスチックの軽さだ。スティールフォークとプラスチックフォークの違いのようなものだと言えばわかりやすいかもしれない」
ムーンスウォッチに関しては嫌いではありませんが、私は宇宙開発競争の時代に生きていなかったので、それに縁のあるものにはあまり思い入れがありません。オメガ スピードマスターは審美面でもゴージャスな時計ですが、やはり月面を歩くことにはあまり共感できないのです。一方、ドラゴンボール、ドラゴンボールZ、ドラゴンボール超は全話何度も見ているので、スーパーサイヤ人にはなれませんが、アニメに関連するものには強い感情移入ができます。ただ、もしあなたがドラゴンボールZを観たことがなく、宇宙飛行士になることにロマンを感じているのなら、税込3万3500円という非常に手ごろなこの時計は素晴らしい選択肢となるはずです。
最終的な考え
私はいくつかの技術スペック(最低限知っておくべきことは、この時計がクォーツムーブメントを搭載していることくらいです)を割愛してしまったのは、この種の気軽につけられる時計にとって、これらがそれほど重要とは思わないからです。ドラゴンボールZのファンでなければ買わないような、リーズナブルで楽しい時計です。私たちの小さな時計バブルの渦中には、何と言えばいいのか、ときに鼻持ちならない人がいます。しかし、ハイエンドの高級腕時計をしているからといって、ほかの誰よりも洗練された時計コレクターであるとは限りません。私たちアニメオタクも含めて、時計収集は誰にでも門戸を開いているのですから。
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