ADVERTISEMENT
カルティエで最も長く愛されるデザインのひとつ、サントスが大きく生まれ変わり、サイズや素材の組み合わせが異なるさまざまなモデルが発売されたのはわずかに昨年のことだ。サントス-デュモンはカルティエの時計作りに初めて触れる人にとって無難な入門機だが、今年に入り、このコレクションには優秀なエントリーレベルのクォーツも投入された。とはいえ、これらの新型も、時計デザインにおける数少ない王道的なアイコンを上品に踏襲したものであった。「アイコン」という言葉は使わないようにしているが、サントスについて語るときには許されてもいいと、私は思う。そこに理屈はない。
さて、本機は我々の期待を裏切る時計だ。カルティエの近年の得意分野である、あえてのスケルトンウォッチである。そもそもスケルトンウォッチとは、言うまでもなく、美しさを追求する時計職人や彫刻士が必要最小限のフレームワークを残して、標準的なキャリバーから少しずつ余分な肉をそぎ落としていく過程の中で誕生した。対照的にカルティエは、リシャール・ミル(Richard Mille)やロジェ・デュブイ(Roger Dubuis)と並び、スケルトンウォッチを作るという明確な目的意識を持って時計をデザインしたウォッチメーカーの先駆けである。「夜更かし」を意味する単語を冠したサントス ドゥ カルティエ スケルトン ADLC ノクタンブールは、スケルトンのベースプレートが文字盤となり、中心軸を囲んだスクエアブリッジからローマ数字が放射状に広がるデザインが用いられた。
開発当初からスケルトンムーブメントを設計することで、カルティエはベースプレートを魅せるダイヤルへと変身させることに成功した。ADLC(非晶質ダイヤモンドライクカーボン)加工が施されたケースはどこまでも黒く、ムーブメントと針にはたっぷりとスーパールミノバが塗布されている。こうして完成したのが最高にモダンなサントスである。太陽の下では控えめに振る舞い、ひとたび日が落ちれば輝く、魅力的な外観を持つ腕時計。こうこうと光る文字盤を思い浮かべるとき、最初に思い浮かべる時計は普通、スケルトンウォッチではないかもしれない。しかし、今まさにそれがサントス ドゥ カルティエ スケルトン ADLC ノクタンブールであり、このデザインが実にうまくハマったと言わざるを得ない。
ケース幅は39.8mm、ラグ幅は47.7mm、厚さは9.08mmとなっており、その丸みを帯びたおよそ40mmの正方形の形状は、腕に着けてみると想像していたよりも大きく感じられるかもしれない。これはXLクロノグラフを除いた現行のサントスラインの中で最も大きなサイズのケースであり、大きなスポーツタイプの時計のように感じられるのも無理はない。日中でも本機により洗練された印象を与えてくれるスケルトンのムーブメントだが、はかなさは一切感じさせないのだ。
ADLC加工が施されたステンレススティールは標準的なPVD加工と比較してかなりキズに強く、100mの防水性も備えている。この時計には、例えばビスが埋め込まれたベゼル角型ケース、新しく考案されたクイックスイッチによるストラップ交換システム、カボションがついたリューズといったように、新世代のサントスに我々が期待するDNAがすべて受け継がれている。それでいて昨年のモデルよりもずいぶんとスムーズな仕上がりになっている。
ご覧のとおり、この写真は、サントス ドゥ カルティエ スケルトン ADLC ノクタンブールに付属のグロッシーなブラックアリゲーターストラップを付けたものだ。セミマットなグレーのアリゲーターストラップも付属されているので、手にしたその日から、例のストラップ交換システムを体験できる。また、黒色のADLCケースがずいぶんとスポーティであることから、極めて品の良い、上質な黒のラバーストラップとこの時計との相性が気になるところだ。
さて、ムーブメントに見覚えはないだろうか。カルティエの角型スケルトンウォッチでよく使われている手巻きキャリバー9612MCだ。光の下では、ムーブメントの明るくメタリックなグレーがADLC加工のブラックケースに対して心地良いコントラストを作る。しかし暗部では、文字盤全体にまぶしいグリーンのスーパールミノバが光る。極めて控えめで、明るい所ではほぼ見えないようなカルティエのロゴさえも、一文字ずつ塗られた夜光塗料のおかげで突如として存在感が増すのだ。9612MCはフル巻き上げで72時間駆動を持つ。この3日間パワーリザーブは自動巻き機構ナシでも十分なものだ。いずれにせよ、フルローターデザインを用いてしまえば9612MCをスケルトンにすることで生まれた開放感あふれる見た目をすっかりと損ねてしまうだろう。これは、着け手に必要な情報を即座に伝える、優れた視認性を持つムーブメントだ。このムーブメントは138のパーツと20石から構成されている。
サントス ドゥ カルティエ スケルトン ADLC ノクタンブールは手元に大きな楽しみをもたらしてくれる存在で、もしブラックライトが手元にあれば、文字盤に蓄光させ、夜光の発光をより強めることができる。この記事を書くために本機と1時間ほど一緒に過ごしたのだが、それでは飽き足らずもう数日、昼も夜も着けてみたくなった。
カルティエ サントス ドゥ カルティエ スケルトン ADLC ノクタンブール:39.8mm×47.5 mm×9.08 mm、100m防水、ブラックADLCケース、サファイアクリスタル、手巻き(9612MC)、2万8800振動/時、72時間パワーリザーブ。カルティエ クイックスイッチシステムで交換可能なアリゲーターストラップ2本付き。275万円(税抜)。詳細はカルティエの公式サイトへ。
話題の記事
Breaking News パテック フィリップ Ref.5711 ノーチラスがチャリティのための1点ものとして復活
日本の時計収集を支えた機械式時計ブームと、市場を牽引した時計ディーラーたち
Four + One カントリー歌手の時計コレクションが描く音楽キャリアの軌跡