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パチーノとデ・ニーロ。 ついにスクリーンで共演。30年ほど前、『ヒート』(原題:Heat、1995年)はそう売り込まれた。マフィア映画の申し子であるふたりが、ついに共演するのだ。しかし待ってくれ、彼らは以前に映画で共演したことがあるはずだ。もちろん、そうだ。ある意味では。『ゴッドファーザー PARTⅡ』(1974年)でデ・ニーロは若き日のヴィトー・コルレオーネを演じているが、フラッシュバックのみで撮影現場にはいなかったし、パチーノ演じるマイケル・コルレオーネと映画ので同じシーンを共有したこともないのだ。要するにカウントされていないのだ。
そのため、マイケル・マン(Michael Mann)監督のLA犯罪叙事詩『ヒート』は、犯罪スリラーとしては画期的な作品となった(そして今もなお、その地位を保っている)。デ・ニーロ(Robert De Niro)演じるニール・マッコーリー(Neil McCauley)率いる犯罪者チームが詐欺の渦中に巻き込まれ、パチーノ(Al Pacino)演じるヴィンセント・ハナ(Vincent Hanna)警部補がその事件を追う内容だ。パチーノの揺るぎない俳優としてのキャリアにおいて重要な作品であり、彼の演じるキャラクターの気まぐれで不安定な態度にマッチした、90年代のブルガリの時計が登場している。
注目する理由
先月、エイヴァ・デュヴァーネイ(Ava DuVernay)のプロジェクト『One Perfect Shot』(2022年)がHBOマックスで放映された。この番組は、映画監督に、彼らのカタログにある映画のワンショットについて話を聞くもの。最終回はマイケル・マン監督が中心で、彼が選んだ作品は『ヒート』。この映画はディープな側面を切り取るようなものではない。むしろ、彼の作品のなかで最も親しみやすい作品だ。ビル・シモンズ(Bill Simmons)の「The Ringer」のファンなら、人気のポッドキャスト「Rewatchables」(何度も見る価値のある映画を取り上げる)がこの映画で確立されたことはご存じだろう。その後、『ヒート』に関連したRewatchablesのエピソードがあり、「Re-Heat」「Three-Heat」というタイトルがつけられている。
この映画は心に残る作品だ。『ゴッドファーザー』や『グッドフェローズ』のような、現代版スローバックギャング映画だが、そのような奇抜さはまったくない。この映画は、全世代の映画製作者に影響を与えるほど際立っているのだ。クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)は、『ダークナイト』に大きな影響を与えた作品としてこの映画を挙げている。
この映画は、高いレベルで、善と悪、あるいは正しいこととは何か、正しいことがあるとすればどのようなことかを考える視点について描かれている。パチーノ演じるハナは法の正義の立場に立ち、デ・ニーロ演じるマッコーリーとその仲間たちは、自分たちを押さえつける世界で成功するために、違う道を見つけようと努力する。しかし、彼らにとってハナは非常に手強い刑事で、強盗の後に知らずに残した手がかりから疑いの目が向けられることになる。また、デ・ニーロはマッコーリー役でデジタルタイメックスと見られる時計を身につけたようだ。
映画についてなら一日中でも話をすることができるが、時計製造について、少なくとも腕時計について、時計学的に話をしよう。パチーノがこの映画での我々の「ウォッチ・ガイ」だ。彼が演じるキャラクターは、今やブルガリの象徴ともなった装飾的なベゼルと、ユニークで繊細なダイヤルを備えたブルガリのディアゴノ クロノグラフを身につけている。この時計は、未来的であると同時に、90年代半ばの時代性を感じさせる、極めてモダンな時計だ。ハナは、ダークカラーを多用した90年代のシックなスーツで身を包み、ブルガリは彼のルック全体を引き締める完璧なパートナーとなっている。彼が男らしく、そして「全力を尽くせ!」と叫ぶのも、イタリアを代表する高級ブランドの時計が手首になかったら、まったく効果的でないように感じられるだろう。つまり、ストレッチブレスレットに小さなカシオを付けている彼を想像してみてほしい。確かに警察官の給料にふさわしいが、おかしな感じがするだろう。
ディアゴノは、ブルガリの時計史において重要なモデルである。1980年代後半に発表されたこのモデルは、ブルガリが初めてスポーツウォッチに進出したものだ。ステンレススティール製で(ベゼルにも名前が刻まれている)、非常に興味深い一体型ストラップのデザインを持っていた。その後、ディアゴノのデザインは、3針モデルやダイバーズにも転用されることになる。3年前に再登場したばかりのブルガリ アルミニウムへの道も開いた。注目すべきは、ディアゴノの時計がクォーツムーブメントを搭載していたのに対し、新しいアルミニウムを含む現代のブルガリは自動巻きキャリバーを搭載している点だ。ハナのディアゴノは、12時付近にブルガリのブランドロゴがないミニマルなダイヤルだが、ベゼルがその部分をカバーしているので、問題ないだろう。
この映画では、ハナが仕事に没頭し、ほかのことをしたり考えたりする時間がほぼないことがよくわかる。この時計はそんな彼にぴったりだ。スタイルとクォーツの手軽さが融合している。巻いたり、時間を確認したりする必要がない。この時計はただ役目を果たし、見た目も美しく、それだけで十分なのだ。
見るべきシーン
ハナはガールフレンドのジャスティンの家でテーブルの前に座っている。装甲車がトレーラーに衝突して警備員が全員死亡した、かなり荒っぽい強盗事件の手がかりを探す仕事で、特に長い一日を過ごした後だ。彼はバーボンを飲みながら、90年代の小型テレビで夕方のニュースを見ることに慰めを見出している。ダイアン・ヴェノラ(Diane Venora)演じるジャスティンが部屋に入ってくると、彼が夕食を食べなかったこと、料理が焼けすぎたことについてやりとりが始まる。黒いスーツに身を包んだ彼がそこに座ると、袖の下からブルガリのディアゴノが覗いているのが見える[00:27:37]。彼は彼女に向かって、パチーノ特有の言い回しで、「チキンが焼けすぎたことは……すまなかった 」と言うのだ。
おそらくこの映画で最も有名なシーン、そして間違いなく『ダークナイト』に最も影響を与えたシーンは、LAの街中で銃撃戦が始まる場面だ。銀行強盗に成功したマッコーリー一味をハナが発見し、正直言って誰も手にしていない自動小銃から銃弾が飛び交うが、これは映画だからいいとしよう。このシーンで銃を構えるハナの象徴的なショットがあり、同時にブルガリのディアゴノがはっきりと姿を表す[01:47:30]。この瞬間には確かに『スカーフェイス』の影があるが、私はこの場の主役は時計であると思いたい。
Illustration by Andy Gottschalk.
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