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※本記事は2017年2月に執筆された本国版の翻訳です 。
2017年のSIHHでは、ダイヤモンド アウトレイジ、フロステッドゴールドのロイヤル オーク、ブラックセラミックのロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー、そしてオフショアのアップデートなど、オーデマ ピゲからたくさんの印象的なモデルが発表された。その中でも最も多くの人を興奮させたのが、イエローゴールド製のロイヤル オーク “ジャンボ” エクストラシンの復刻モデルだ。このモデルがゴールドで登場したのは2012年のローズゴールド以来で、その時はスティール製のRef.15202と共に発表された。2017年、オーデマ ピゲはクラシックな無垢のイエローゴールド製“ジャンボ”を復活させることを決定した。ブルーとイエローゴールドのクールなダイヤルに、自動巻きCal.2121ムーブメントが搭載されている。このモデルは、モダンヴィンテージにおけるオーデマ ピゲの最高傑作だと思う。
この“新しい”リリースと何の関係があって、どうして気にするかですって? なぜならそれは、史上最もアイコニックな時計の1つであり(象徴的ということ)、1972年のオリジナルRef.5402 ロイヤル オークと同じケースを使った新モデルのリリースから5年、さらにジャンボのイエローゴールドバージョンから25年、さらに言えば6時位置にAPロゴをもつイエローゴールドのジャンボからは40年が経過しているからだ。そう、これはとても重大なことなのだ。
簡単な歴史解説
ロイヤル オークは、1971年当時はまだ無名だった時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタによってデザインされ、1972年のバーゼルワールドで公開された。当時のオーデマ ピゲにとって、ブランド初のラグジュアリースポーツウォッチであり、デザイン自体がかなりアバンギャルドなものだったことから、ロイヤル オークはかなり画期的な試みだったといえる。“ロイヤル オーク”という名前は、1651年にチャールズ2世がクロムウェル軍から身を隠したイギリスの歴史的な木に由来している。この木は最終的にチャールズ王の命を救い、イギリス社会のシンボルとなった。この名前は、1769年から1914年の間に4隻以上のイギリスの海軍艦艇につけられ、そこからこの時計の登場につながっていく。八角形のベゼルは、海軍の船の舷窓から着想を得たもので、ロイヤル オークという名前はこれが由来になっている。ちなみにオーデマ ピゲは、この名前を“王室の威信と繁栄”という意味で好んだ。
ファーストモデルのRef.5402は、1972年から1970年代後半まで生産され(正確な最終年は不明)、A~Dの4つのシリーズが作られたが、それぞれのシリーズで、クラスプやムーブメントに技術的な進歩や若干の変更が加えられている。5402は、当初SSで発売され、直径39mm、厚さ7mmだった。スレートグレーのタペストリーダイヤルには、6時位置に“AP”のロゴが入っている。当初の価格は3650スイスフランで、当時のSS製の時計としては非常に高価なものだった。5402は、ジャガー・ルクルトが製造したAP Cal.2121を搭載していた(ジャガー・ルクルトではCal.920と呼んでいる)。このムーブメントはヴァシュロン・コンスタンタンのオーヴァーシーズでも使用していたもので、デイト表示のないバージョンのCal.2120は、パテック フィリップが初期のノーチラスで使用していた。設計の権利は2000年代初頭にジャガー・ルクルトからオーデマ ピゲに売却され、現在ではCal.2121はオーデマ ピゲが独占的に自社生産している。当時も今も、世界最薄のフルローター自動巻きムーブメントである。最初のイエローゴールド製5402BAは、1977年に発表され、1980年代初頭に生産が終了した(これもまた正確な生産終了日は不明)。このモデルはすぐにカルト的なクラシックモデルとなり、現在でも非常にコレクション価値が高いモデルとなっている。
Ref.14802と15202
1970年代後半から現在に至るまで、オーデマ ピゲはロイヤル オークとロイヤル オーク オフショアのいくつを製作してきたが、オリジナルの5402のように薄くシンプルなモデルは存在しなかった。1992年になって初めて、ジャンボ Ref.5402の20周年を記念した、サファイアクリスタルのケースバックをもつ14802が1000本限定で発表された。その内訳は、SS製(ブルーまたはピンクのタペストリーダイヤル)が700本、18KYG製(ダークグレー、ゴールド、ホワイト、アイボリーのタペストリーダイヤル)が280本、PT製(ダークブルーまたはトスカーナブルーのタペストリーダイヤル、前者にはダイヤモンドインデックス付き)が20本だった。
1992年のアニバーサリーモデルだったRef.14802は、2000年まで継続して販売。そして12年後の2012年にはロイヤル オーク40周年を記念して、同じ極薄のケース(直径39mm×厚さ7mm)と、同じCal.2121のムーブメントをもち、6時位置のAPロゴも復活させた、スティールとローズゴールドの15202が発表された。これは、同じく2012年に発表されたロイヤル オークのRef.15400と混同されることはなかった。15400は直径41mmでやや厚みがあり、センターセコンド針を備えたオーデマ ピゲのCal.3120ムーブメントを採用した。当然ながら、15202は大ヒットし、高い人気を博した。さて、今日はこのモデルを紹介しよう。
ロイヤル オーク エクストラシン “ジャンボ” イエローゴールド
ということで、ようやくロイヤル オーク エクストラシン Ref.15202(イエローゴールド)の話に入る。2012年に発表された15202と何が違うのか? 大きな違いはないが、それが、わたしがこのモデルを気に入っている理由なのだ。
最も顕著な違いは、2012年のようなSSや18KRG製ではなく、18KYG製の15202であるという事実だ。ケースは伝統的な(そして快適な)39mmで、わたしたちがよく知る大好きなサイズだ。サファイアクリスタルを追加したことで、ケースの厚みは8.1mmとなった。装着しやすいだけでなく、日常使い出来る時計だとわたしは確信している。
ブレスレットは、もともと1972年にゲイ・フレアーによって作られたのと同じマルチリンク構造だが、今のモデルではわずかに重く、それによって頑丈になっている。それは、信じられないほど繊細な面取りと小さなリンク1つ1つの仕上げまで美しく細工されており、わたしのお気に入りのロレックスのブレスレット(オイスタープレジデント)のように、夢のようにフィットする。
しかし、この時計の最大のニュースは、18KYGのケースと、ゴールドとブルーのタペストリーダイヤルの組み合わせだ。これらのダイヤルはロイヤル オークならではのもので、どうやって作られているのか知らない人はこちらを見て欲しい。とんでもない工程! イエローゴールドのダイヤルはこれまでにもあったが、18KYGのジャンボにブルーダイヤルはなかった。さらに、18KYGのジャンボが6時位置にAPロゴを配して登場したのは、初代5402BA以来のことだ。そして、どうだろう? 美しいとしか言いようがない。
それぞれの色は、少しずつ異なったものを提供している。ゴールドダイヤルについては全体がゴールドに見えるため、議論はかなりタフになる。時計全体がやや控えめに感じるのは、どういうわけだろう(直観に反したようにきこえるかもしれないが)。ブルーダイヤルは、このような形で今まで存在しなかったにも関わらず、より古典的な感じがする。何かそれ自体に懐かしさがある。両色とも、ダイヤルに同系色のデイトウィンドウがあり、ヴィンテージモデルのように白いデイト表示が文字盤の統一感を無くすことはない。
この時計は非常に装着感が良い。わたしには大きすぎるという人もいるかもしれないが、完璧にフィットすると思っている。ラグが手首からはみ出ることもなく、スリムなケースはセーターの袖の下にもよくフィットする。サテン仕上げのゴールドは、最初はヒヤッとした感じがするが、すぐになじむ。ブレスレットは手首をしっかりと包み込むので、安心感がある。これは大事なことだ。この時計を落とすようなことがあったら涙するだろうから。
この時計がまだオーデマ ピゲを代表する地位にあることには理由がある:それはほぼ誰にでもフィットし、誰もが以前より10倍クールに見えるからだ(申し訳ないが、そうなのだ)。時計が常にクールさを重視するものではないことは承知だが、ロイヤル オークはそれだけでクールなのだ。それはあなたの気分をよくし、格好よく見せ、確実に手首に自信を与えてくれる(何を言っているか分かるよね?)。しかし、クールな要素は見た目だけではなく、それ自体がデザイン史の一部になるようなものを身に着けることにあるのだ。
結論から言うと、ジャンボは昔からあまり変化していない。でも、それでいい。実際それがいいのだ。わたしにとって、APのようなマニュファクチュールが、変化のために何かを変える必要性を感じることなく、何度も繰り返しこの時計を作り続けているのを目にすると、とても新鮮に思える。それは、APが良いものをいたずらにいじってはいけないと認識していること、そしてクラシックでクリーンな形が常に生き残るということを示してくれる。そして、それはさほど重要でないこと(結局、時計は時計)に見えるかもしれないが、わたしはその一貫性に安らぎを感じているのだ。
オーデマ ピゲ ロイヤルオーク "ジャンボ" Ref. 15202は、イエローゴールド製で、文字盤はブルーとイエローゴールドの2種類があり、価格はどちらも同じ620万円(税抜)だ。限定モデルではないが、毎年限定数での生産となる。詳細はこちらをクリック。