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アジズ・アンサリが1978年製ロレックス デイトナを『Good Fortune』の主役に据える

監督デビュー作で、アンサリ氏はヴィンテージのロレックス デイトナに主演の役割を与え、Craft + Tailoredのキャメロン・バー氏と手を組んでそれを実現しました。

アジズ・アンサリ(Aziz Ansari)氏の新しい映画で、監督デビュー作となる『Good Fortune』のクレジットには“プリティ ベイビー”はリストされていないかもしれませんが、それは確かにキャラクターのひとつです。その理由とは? それは時計だからです。だが、それはただの時計ではなく、1978年製の18Kイエローゴールド(YG)製ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.6263であり、この映画で意味のある役割を果たしているのです。

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“プリティ ベイビー”、それは1978年製18KYGロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.6263のこと。Photo courtesy of Lionsgate

 アンサリ氏はセス・ローゲン(Seth Rogen)氏、キアヌ・リーブス(Keanu Reeves)氏、サンドラ・オー(Sandra Oh)氏、キキ・パーマー(Keke Palmer)氏らとともに『Good Fortune』に出演もしています。生粋の時計好きであり、HODINKEEのTalking Watches卒業生でもあるアンサリ氏は時計を小道具としてではなく、映画のなかで生き生きとしたシンボルとして導入することを決めました。その実現のため、彼は長年の友人であるCraft + Tailoredの創設者、キャメロン・バー(Cameron Barr)氏に協力を求め、時計の“キャスティング”と調達を依頼。彼自身も画面に登場するバー氏はアンサリ氏と長年の付き合いであり、時計を物語に組み込む時期が来たとき、すぐに彼に電話をかけたと言います。

group of watches

映画に登場するいくつかの時計。Photo courtesy of Lionsgate

 アンサリ氏は脚本執筆中のある時点で、時計を物語を静かに進行させる小道具、つまりマクガフィン(キーアイテム)のように使うことができると気づいたと私に語ってくれました。バー氏との初期の打ち合わせは、どのリファレンスがその象徴的な重みを担えるかに集中しました。「私たちは、それがロレックスでなければならないことを理解していました」と彼は言い、「しかしニューマンはあまりにも露骨すぎたので、同じエネルギーを持ちながら、もう少し控えめなものが欲しかったのです」と続けました。そこで彼は、どこかでYG製の6263を見たことをバー氏に伝えました。そしてそれが彼らが辿り着いた答えだったのです。バー氏はそのプロセスを明確に記憶しており、デイトナは「時計ツウにとっては象徴的でありながら、時計について考えたことがない人にもすぐにクールだと伝わる、スイートスポットを突いていました」と彼は言いました。ゴールドを選んだのも意図的で、「それは確固たる、価値のあるものに見える必要があったのです」とバー氏は説明。「だが、セスのキャラクターが実際に所有していると信じられるものでなければならなかったのです」と付け加えました。

 アンサリ氏とバー氏はまた、その時計に個性が必要であることにも同意しました。プリティ ベイビーという名前はセットで冗談のように生まれ、そのまま定着したようです。映画のなかで、セス・ローゲン氏が演じるキャラクターは自分への誕生日プレゼントとしてその時計を買いますが、その意味は変化していきます。自己肯定感として始まったものが強迫観念に変わり、最終的には交渉材料として用いられることになるのです。

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Craft + Tailoredのキャメロン・バー氏。Photo courtesy of Lionsgate

 私が先週末、イースト・ヴィレッジの満員の観客とともに鑑賞した『Good Fortune』の決定的な瞬間(ネタバレ注意)は、アンサリ氏とセス氏のキャラクターが文字どおり人生を交換するときに訪れます。そして当然、彼らの時計も交換されます。両者はそれぞれの感情的な状態を映し出すピースを着用しており、アンサリ氏のキャラクターはセイコー ダイバーズ Ref.SKX007から始まり、セス氏はクラシックな1978年製ロレックス GMTマスター “ペプシ” Ref.1675を着用しています。「これらすべてのものを伝え、そこで起こっていることにさらなる豊かさを加えるにはどうすればよいでしょうか?」とアンサリ氏は言います。「その人物について異なるディテールが多ければ多いほど、それはよりおもしろくなるのです」。だから当然、彼らの運命が反転すると時計も反転するのです。これらのディテールは彼が演技し、その変容を象徴するのに役立ちました。

 画面に映るすべての時計は本物です。アンサリ氏はバー氏と美術部門と密接に協力し、“この種のことを実際に知っている人々が白けた目をしない”こと、そしてすべてが本物で正しく、理由があって選ばれたことを保証することの重要性を強調しました。バー氏もこれに同意し、映画のなかで「もし時計が偽物であったり、クルマがその時代に間違っていたりするとその世界から引き戻されてしまいます。これらのディテールを正しくすることで信憑性が増すのです」と語りました。

セットでのアンサリ氏とバー氏。Photo courtesy of Lionsgate.

 そのリアリズムは時計を超えて広がっています。私が『マスター・オブ・ゼロ』から『Good Fortune』に至るまで、アンサリ氏の監督作品に引かれてきたことのひとつは、彼が設定、そして今度は小道具をそれ自体がキャラクターであるかのように扱っていることです。彼はロサンゼルスを『マスター・オブ・ゼロ』でのニューヨークがそうであったように、具体的で生活感のある場所として感じられるようにしたかったと語り、「私たちは実際に行く場所、コリアタウン、ロス・フェリス、イーグル・ロックで撮影しました。私はそれが私が知っているLAの姿に見えることを望んでいて、単なる一般的な背景であって欲しくはなかったのです」。同じ哲学は実在の人物のキャスティングにも適用されています。アンサリ氏は、バー氏が彼自身を演じるべきだと最初からわかっており、「可能な限り実在の人物を起用するのが好きです」と彼は私に語りました。「キャム(編注;バー氏の愛称)は適切なトーンを知っています。彼はカメラに慣れており、その世界を理解しています。そのほうがより自然なのです」。

Photo courtesy of Lionsgate

 結局のところ、『Good Fortune』とは、物質的なものがアイデンティティをどのように反映するかについての物語です。時計は、そのアイデアを具現化するのに役立っています。アンサリ氏にとって、ケースバックのエングレービングからレストランの看板に至るまですべてのディテールが意味を持っています。「監督業は、本当に何百万もの決断を下すことです」と彼は言いました。「目標は、それぞれの決断について思慮深くあるための十分な時間を持つことです」。

『Good Fortune』は現在、アメリカの劇場で公開中です(編注;現時点では日本公開日は未定)。