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またひとつ1週間を乗り切った。とはいえ今週は特に、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)を失ったことで、どこか痛ましい週にも感じられた(編注;本稿は5月25日にHODINKEE US版で公開された記事の翻訳です)。ジャズは“クールでない”音楽だと思われているのかもしれない。だがもしソニーの昔の作品を聴いたことがないなら、彼の名盤『橋(The Bridge)』を聴いてみて欲しい(ちなみに、彼がウィリアムズバーグ橋の上で、たったひとりサックスの練習を続けていた時期があり、その逸話がアルバムタイトルの由来になっている)。
しかし皆さんはそういった文化的な刺激を求めてここに来たわけではないだろうから、早速本題に入ろう。これまで取り上げたモデルの結果を振り返ると、2週間前のイギリス空軍用ハミルトンは1600ユーロ(日本円で約30万円)で落札され、喜ばしい結果となった。先週のオメガ マリン クロノメーターは2000スイスフラン(日本円で約40万円)、マーヴィン “オーシャン チーフ”は1000ドル(日本円で約15万8000円)、ゼニス 2000は3000ポンド(日本円で約64万円、手数料込みで3720ポンド/日本円で約80万円)で落札され、Rare Birdsのジャガー・ルクルト エトリエも売却された。
番外編
Photo courtesy GALERIE DES VENTES D'ORLEANS
Photo courtesy Craft + Tailored
Photo courtesy Bonhams
まずはスクエアウォッチがお好きな皆さんのために、ゼニスのサインが入ったオリジナルのNSAブレスレットを備えた美しいゼニス レスピレーターを紹介する。デニソン ALD デュアル タイムは、多くの人の予想外の欲求を満たしたようだ。確かにダブルダイヤル仕様の優れたヴィンテージウォッチもあるが、ダイヤルに関しては“多いほど良い”という考えにハマってしまったら、4つの独立したダイヤルを備えたこの 18Kゴールド製のショパールはまさにあなたにぴったりだ(落ち着かない人たちのために、4つの独立した手巻きムーブメントも備わっている/編注;現在オークションは終了しており、7500スイスフラン/日本円で約150万円で落札)。ジラール・ペルゴのアラームウォッチは、一般的なアラーム設定用の第4針を採用していない点が実に魅力的で、この個体はきわめて良好なコンディションに見える。今週開催されるボナムズの香港オークションには、実に魅力的な出品がいくつも揃っており、ホイヤー スキッパレラ(編注;現在オークションは終了しており、18万香港ドル/日本円で約360万円で落札)と、このオーデマ ピゲ 25720BA スター ホイール(編注;現在オークションは終了しており、28万香港ドル/日本円で約520万円)もある。そして最後に、この控えめなホワイトゴールド製のヴァシュロン・コンスタンタン Ref.7390(編注;現在オークションは終了しており、3000ユーロ/日本円で約55万円)には気に入らないところが全くない。一見すると何でもない時計のようでいて、毎日着けても飽きることのない時計だ。
ユニバーサル・ジュネーブ ポールルーター スーパー
ユニバーサル・ジュネーブ(UG) ポールルーターについて、いまさら説明や宣伝は不要だろう。ヴィンテージモデルについての記事はすでに読んでいるはずだし(もしかするとアプリもダウンロードしているかもしれない)、ブランド再始動のニュース、そして当然そこに含まれていた新しいポールルーターについても、すでに目にしているはずだ。もちろんポールルーターには数多くのリファレンスが存在するだけではなく、さらに細かなサブカテゴリーも存在している。特にポールルーター・サブはその代表例だ(まずスーパーコンプレッサーケース仕様があり、その後にベゼルを備えた左右対称ケース仕様、さらにベゼルを備えた非対称ケース仕様へと発展していった)。つまりポールルーターとは単に竪琴ラグとドーフィン針(運が良ければブロードアロー針)だけで語れる存在ではないのだ。
Photo courtesy OXIO
ポールルーター IIIにも熱心なファンはいるのだろうが、ここではぜひ、このツートーン仕様のポールルーター スーパーに注目して欲しい。もしこれまで見たことがなければ、オリジナルポールルーターの“やや粗野で筋トレ好きな従兄弟”のように感じるかもしれない。確かに、UG製のマイクロロータームーブメント Cal.69を搭載している点や、台形の日付窓を備えている点は共通している(さらに詳しい人なら、UGもロレックスと同様に日付窓の“9”にオープン9を採用していたことにも気づくだろう)。しかし家族としての共通点は実質それくらいだ。オリジナルモデルが持っていた優雅で曲線的な美しさに代わって、このスーパーでは直線的なサテン仕上げを施したラグによって、よりタフなシルエットとなっている。それはもう、スポーツウォッチだと半ば宣言しているようなものだ。
興味深いことに、通常のポールルーターとスーパーの最大の違いは見た目ではわからない部分にある。1965年に登場したスーパーシリーズはポールルーター・サブの後継モデルであり、どうやら300m防水を備えていたらしい(この点は、時計本体のどこかに明記しておくべきだったように思える)。このモデルがこれほど高い防水性能を実現しているのは、古い特許技術とジョン・サイモンという人物の功績によるものだ(彼については、こちらでさらに詳しく読むことができる)。
Photo courtesy OXIO
この個体はほぼ間違いなくリューズが交換されているだろう。オリジナルの正しいものはきわめて大型で、ゴールド製だったはずだ。またダイヤルの状態も完璧とは言えないが、スーパーは滅多に出回らないため、出てきた時点で注目に値する存在だ。ケースはラグに明らかなサテン仕上げが残っており、かなり良好な状態に見える。残念ながら、ムーブメントとケースバックの写真を依頼したものの、オークションハウスから返答はなかった。この個体がいくらで落札されるかは予想できない(編注;現在オークションは終了しており、550ユーロ/日本円で約10万円で落札)。執筆時点では160ユーロ(日本円で約2万9000円)まで入札されており、5月30日にオークションが開始される。しかし私が最後に見たフルスティール製の個体は、数カ月前にオークションに出品され、2000ドル(日本円で約30万円)以上で落札されていた。
モバード アーティストエディション “ビル・タイム”
Photo courtesy Rapp Auktionshaus
この時計はアーティストのマックス・ビルがデザインしたモバードの“ビル・タイム(Bill Time)”であり、やりすぎ寸前のところであるように感じられる。派手すぎるし、色使いも強烈だし、見た目もかなり奇妙だ。しかし時計に対してやりすぎだと言うこと自体、とても厄介で含みの多い話でもある。そもそも、それをどう語ればいいのかさえ難しい。例えば全面パヴェダイヤル仕様のロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.116506だって、ある意味ではやりすぎではないだろうか? しかも“やりすぎ”という言葉は、必ずしも批判を意味するわけではない。実際、GWAR(編注;米国のヘビーメタルバンド)を好む人はたくさんいる。だとすると、そもそも何を基準に判断すればいいのだろう? あるいは、こうした問題を客観的に論じる方法など最初から存在せず、結局は合衆国最高裁判事のポッター・スチュワート(Potter Stewart)の有名な「I know it when I see it(見ればわかる)」という判断へと行き着いてしまうのだろうか。
Photo courtesy Rapp Auktionshaus
もちろんマックス・ビルは、1993年のモバードとのコラボレーション以前にも時計のデザインを手がけており、最初のデザインは1960年代のユンハンス向けのものだった。彼の過去の作品を知ると、このモバードの時計はより一層魅力的に映る。工業的な純粋さを追求したユンハンスとはかけ離れた、この奔放な色彩の爆発とも言えるデザインはほかに類を見ないだろう。しかしもう少し調べてみると、ビルは1987年にオメガともコラボレーションしており、その奇妙な二面性を持ったデザインの時計(まるでマレットヘアのように、前面はビジネスライク、背面はパーティ仕様だ)は、彼がモバードでどのようなデザインを生み出すのか、その兆しをすでに感じさせるものだった。
Photo courtesy Rapp Auktionshaus
1993年に99個限定で製作されたこの時計は、44mmのスターリングシルバー製の八角形ケースとそれに合わせたブレスレットを備え、まさに“やりすぎ”の極致(ブレスレットのカラーバーはすべてエナメル製)と言える。その過剰で派手で個性的なデザインは、まるでジミ・ヘンドリックスの楽曲のようで、言葉で説明するよりも実際に体験する方がはるかに良いだろう。とはいえ決して雑然としていたり、判読不能だったりするわけではない。ダイヤルには12色のカラーインデックスが配色されており、中央の大きなシルバーの塊があろうとなかろうと、どの針がどの時刻を示しているのかはひと目でわかるはずだ。
では結局、この時計はいったい誰のためのものなのか、私には全く見当がつかない。だが、この時計を見て即座に“最高だ”と思う人間がどんな人物なのかはぜひ知りたいところだ。そもそもあなたは製造本数100本未満という、とびきりカラフルな時計に夢中になるタイプなのだろうか? あるいは、市場にほとんど現れないほど特殊で難解な“フルセット完備”の特別な時計に熱狂する人なのだろうか? クリスティーズは2005年にこの時計を5000ドル(当時のレートで約55万円)以上で競売にかけ、アンティコルムは2015年に1万2500スイスフラン(当時のレートで約150万円)で販売した。現在入札がないものの、保証書とケースが揃った完品状態で出品されているこの時計が6月4日のオークションで最終的にどこへ着地するのか一緒に見届けよう(編注;現在オークションは終了しており、2600スイスフラン/日本円で約50万円で落札)。
ロレックス サブマリーナー Ref.16800
Photo courtesy Bonhams
ロレックス サブマリーナーについて、特にHodinkeeで執筆するとなると、ボブ・ディランやヤンキース、リーバイス 501について書くのと似たような感覚になる。そんな伝説について、これ以上何を語る必要があるのだろうか? だがこれは少々残念なことでもある。なぜなら、何かが文化的に深く根付くと、かえってそれを正面から見つめ、言葉にすることが難しくなってしまうのだ。ロレックス サブマリーナーほど記事にされ、憧れられ、分析されてきた時計はそう多く思い浮かばない。だからこそ私は少なからぬ緊張を抱えながら、今回はこのRef.16800を皆さんに紹介しようとしている。
Photo courtesy Bonhams
過渡期のリファレンスであるRef.16800は、私に言わせれば、ヴィンテージロレックスのなかで最高の存在だ。1970年代後半にRef.1680の後継モデルとして登場したRef.16800は、見た目が驚くほど似ていたものの、その違いは控えめでありながらも決定的だった。具体的にはRef.16800はサファイアクリスタル、ロレックス初のデイトのクイックセット機能を搭載したムーブメント(Cal.3035)、300m/1000フィート防水、そして逆回転防止ベゼルを導入した。ご覧のとおり、新素材(セラミックベゼルや、Ref.16800の316Lではなく904Lスティール)、ケース形状の変更、改良されたムーブメントを除けば、現行のサブマリーナー デイト(Ref.126610LN)は300m防水、120クリックのベゼル、サファイアクリスタルといったRef.16800で確立されたテンプレートを踏襲している。
オリジナルボックスに加え、ブヘラのサインが入ったロレックスのスプーンまで付属したこの個体は5月31日にオークションへ出品される予定だ。確かにこれはただのサブマリーナーに過ぎないのかもしれない。しかしRef.16800は、その“ただのサブマリーナー”のなかでも、間違いなく最良の選択肢のひとつに思える(編注;現在オークションは終了しており、6万香港ドル/日本円で約120万円で落札)。
ロータリーのコンプレッサー ダイバー
ロータリーは、アクアプランジ(そして他社から登場したさまざまな派生モデル)で最もよく知られているブランドだ。そして同ブランドは、ある意味でモバードにも少し似ている。クォーツショックで消滅こそしなかったものの、その後かなり長いあいだ、いわゆる“モールウォッチ”と化していたからだ。
Photo courtesy Ashley Waller Auctioneers
もし興味があれば、ロータリーのスーパーコンプレッサーがオークションに出品されている。だが特徴的なクロスハッチ入りリューズを備えていないため、本当にESPA製ケースのスーパーコンプレッサーなのかどうかは断言できない。この時計の開始価格は350ポンド(日本円で約7万5000円)で、30日に始まるオークションには現在入札がない(編注;現在オークションは終了しており、350ポンド/日本円で約7万5000円で落札)。そして何より、過去にデザイン性よりも入手可能な部品を寄せ集めて組み立てたように見える“ビンウォッチ”と呼ばれてきた類いの時計たちを、ささやかながら復活させる機会を与えてくれる。
このロータリーには明らかに見覚えがあるだろう。オークションではこの時計のサイズは記載されていないが、当時のスーパーコンプレッサーのほとんどと同じ36mmだと考えて間違いないだろう。そして時針もどこかで見たことがあるはずだが、アクアスター Ref.1701の時針とほぼ同じだ。興味深いことに、秒針も同時期のトラディション コンプレッサー(トラディションはシアーズが自社ブランドの時計に使用していたブランド名)のものとほぼ同じだ。それ以外のダイヤルデザインも(ブランドロゴを除けば)、当時の数多くのスーパーコンプレッサーとよく似ている。
一般的に私たちは個性的で、デザインにこだわり、考え抜かれた時計を高く評価する。それはもちろん素晴らしいことだ。しかしこのような時計の魅力は、ごくありふれた、ある意味ではほとんど匿名的ですらあることだ。これは称賛まではいかなくとも、少なくとも楽しむ価値はあるだろう。その場にあるパーツを使って、どこか気軽に、半ば勢いで組み上げられたような時計には安心感がある。過剰な緊張感を取り払い、時計という存在をもっと気楽なものにしてくれるのだ。
いずれにせよ、この時計は見た目は申し分ない。特に際立った特徴はないものの、ミッドセンチュリー期のモデルとしてはなかなか魅力的な個体に見える。もしロータリーがピンと来ないなら、シルバーダイヤルを備えたムルコ エスカファンドレはどうだろうか(編注;現在オークションは終了している)?
ルイ・ヴィトン モントレー II “LV2”
私がぜひ読んでみたいエッセイシリーズは、時計愛好家たちが、当初は気に入らなかったり、反応できなかったりしたモデルについて詳細に語ったものだ。単に興味を抱かなかった時計のことではなく、本能的な拒否反応を引き起こしたような時計についての話だ。
Photo courtesy Goldfingers Vintage
ルイ・ヴィトンのモントレー II “LV2”を初めてInstagramで見かけたのは、おそらく6年ほど前のことだったと思う。その瞬間、私はスマホの電源を切り、ほかのことに意識を向けた。とにかく、すべてが嫌だった。上部のリューズ、完璧に滑らかなペブルケース、奇妙なダイヤル、そして大きくて間抜けな針(何かを嫌う最良の方法は、盲目的に、愚かにもそうすることだ)。そして最初から嫌悪感を抱いた多くのものと同じように、私は結局またこの時計へ戻ってきて、何が気に入らなかったのかを突き止めようとした。
結局のところ、私がその時計を気に入らなかったのは、単純に見た目がほかと違っていたからだ。この時計は(前述のモバードのように)派手ではないが、誰もが知っている時計に似せようとはしていない。完全に独自の個性を持っているのだ。もちろん、好みは人それぞれだが、見た目が独特だというだけで何かを嫌うのは、実に無粋なことだ。
ルイ・ヴィトン モントレーについて誰がどう思おうと、今となってはほとんど問題ではない。マライカ・クロフォードがモントレーの復活に関する記事で指摘したように、オリジナルのモントレー I(ワールドタイム、ムーンフェイズ、日付、アラーム付き)とモントレー II(アラームと日付のみ)は著名人に着用され、その結果、再発売されるに至るほど、すでに無視できないほど文化的な存在へと昇華しているからだ(今回はIWCのクォーツムーブメントやセラミックケースの製造協力に頼るのではなく、すべて自社で行っている)。この個体はわずかな使用感しかなく、きわめて良好な状態のようで、箱と保証書が付属し、Goldfingers Vintageで1万2995ドル(日本円で約200万円)で購入できる(編注;現在オークションは終了している)。確かにその価格はかなり強気に思えるが、昨年8月にはLoupe Thisで同モデルが1万3000ドル(日本円で約200万円)で落札されていたことを考えると、決して市場感覚から外れた数字というわけでもない。
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