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Hands-On カルティエ 「サントス ドゥ カルティエ」デュアルタイムを実機レビュー

「サントス」として初めて第二時間帯表示を搭載した本作は、多くの華やかなカルティエウォッチがお披露目された2024年のWatches & Wondersにおいて隠れたヒット作となった。目玉となるデュアルタイム機構はもちろん、ベースである「サントス ドゥ カルティエ」からキャラクターの変化はあったのだろうか。

「サントス ドゥ カルティエ」デュアルタイムは、100年以上の歴史を持つ「サントス」としてとして初めて第二時間帯を搭載したモデルだ。通常の時刻表示に加え、6時位置のサブダイヤル上で12時間で1回転するデュアルタイム表示を備えている。“魔法”をテーマにユニークなモデルが数多く見られた2024年の新作群においても、このデュアルタイムは大きな話題を呼んだ。なお、本作は同年の9月に発売されている。


第二時間帯を備えつつ、スマートな“トラベルウォッチ”にアレンジ

本作はGMTウォッチとして分類するなら“Caller GMT”、すなわちGMT針単独可動型にあたる(Caller GMTについての詳細はこの記事をチェック)。3時位置のリューズを1段階引き出し、奥側に回転させることで6時位置の第二時間帯表示のGMT針が1時間ずつ進んでいく。GMTウォッチでは昼と夜の別がわかるよう24時間表示が用いられることが多いが、本作ではサブダイヤルの上部に小窓を設け、午前6時に白に、午後6時に黒に切り替わるようになっている。昼夜を瞬時に判別できることに加え、この存在が本作を第二時間帯を備えた時計としてデザイン的に認識させてくれているように見える。

「サントス ドゥ カルティエ」LMサイズ。6時位置のデイト窓は、デュアルタイムでは第二時間帯表示の導入に伴って3時の方向に移動した。

 一般的に第二時間帯表示を搭載したことでムーブメント自体に厚みが出てしまい、結果としてそれがパッケージ全体のサイズ、厚みに影響してしまうパターンが多い。しかし「サントス ドゥ カルティエ」デュアルタイムはLM(横39.8mm、厚さ9.38mm)のサイズと比較しても、径はo.4mm、厚さは約o.8mmのアップに収めている。特に厚みに関しては、GMT針をセンターではなくサブダイヤルへ移動させたことも奏功していそうだ。ちなみに、ムーブメントにはセリタ 330に独自のデュアルタイム用モジュールを搭載したものを使用している。

 また既存の「サントス ドゥ カルティエ」をお持ちの方は気がついたかもしれないが、下のサイドビューを見てもらうとリューズの位置がケースに対して若干下側に付いているのがわかると思う。これはムーブメントの位置(重心)が文字盤寄りではなく装着時に手首側にあることを示しており、腕を振った際にも遠心力が外側に働きにくくなっている。若干のサイズアップと機構の追加がなされながら、着用感にも配慮がなされた構造となっている点は注目したい。

 さらに細かい点を挙げていくならば、レイルウェイトラックおよび時・分針、およびGMT針には夜光が施されており、暗所ではグリーンの光で判読性を確保してくれる。これは「サントス ドゥ カルティエ」共通のディテールだが、長距離フライト中の暗い機内でもひと目で現在の時刻を確認できるのはトラベルウォッチとして好ましい。「サントス」がブラジル出身の富豪であり、航空機の開発者でもあるアルベルト・サントス=デュモンの要望で誕生した時計であることを考えると、長距離のフライトにも適した機能を備える本作は、そんな背景を存分に味わえるロマン溢れる時計であるとも言える。事実、日の落ちた暗いコクピット内でもこのグリーンの夜光はきっと役に立つことだろう。


「サントス ドゥ カルティエ」らしさを守りつつ、細部で高級感を表現

本作は、2024年時点ではステンレススティール(SS)ケースにグレーダイヤルを備えた1種のみの展開となった。アンスラサイトカラーのダイヤルには中心から外側へ放射状に広がるブラッシュ仕上げが施されているが、ギラつきはなく落ち着いた雰囲気となっている。昨今の「サントス ドゥ カルティエ」ではカラーダイヤルによるアプローチが推し進められていたなか、モノトーンの方向性でまとめたモデルは珍しい。「サントス ドゥ カルティエ」LMよりすこしだけ大きなサイズのマッシブなSSケースに、控えめなグレーダイヤルの選択は好相性に見える。

 実際に着用したのが以下の写真だ。サイズによる存在感はありながら、ケースと同系色の文字盤を採用したことで着こなしにも自然と溶け込んでいる様子がわかるだろう。パッと見た印象では、従来のLMモデルと大きく変わらない。2018年に刷新されてから変わらない角をラウンドさせた特徴的なスクエアフォルムや、ブレスへと自然に流れるベゼルの形状など、新たな機能を加えていながら紛れもなく「サントス ドゥ カルティエ」のディテールを備えている。

 また、通常はインデックスと同じレイヤーにあるレイルウェイトラックを、文字盤表面から一段掘り込んだところに配置している点もユニークだ。文字盤の立体感がルックスの高級感にも直結している。加えて、GMT針を6時位置に移動したことは「サントス」のデザインコードの維持にも繋がった。時・分針と区別するために装いを変えた大振りなGMT針がセンターにあっては、手首の上での見え方はまた違っていたことだろう。


幅広いシーンでの活躍を実現するカルティエ独自の着脱・調整機能

「サントス ドゥ カルティエ」らしいディテールで言えば、ブレスレットに見られるカルティエ独自の機構、“クイックスイッチ”と“スマートリンク”もそうだ。前者はブレスとラグの接合部に見られるグレーのバー状の機構で、この部位を爪で押しながらケースに対して垂直に引き上げることで簡単にブレスレットを交換することができる(レザーストラップにも同様にセットされている)。後者は通常器具が必要なコマ調整をワンタッチで行えるようにしたもので、コマ裏側の端にあるボタンを押すことでピンが飛び出てくる仕組みになっている。

 グレーのアリゲーターストラップが付属する本作においては、クイックリリース機構がもたらす恩恵は大きい。特に第二時間帯表示機能を備えたトラベルウォッチである点を考慮すると、旅先で時計店に立ち寄ったり工具を持参したりすることなく、さまざまなシーンに対応できる本作はジェットセッターの心強い味方となってくれることだろう。レザーストラップを付け替えることで、下の写真にように雰囲気は激変する。スポーティにもドレッシーにも活躍する、まさに1本で2度美味しいモデルなのだ。またバックルにアジャスターこそ付いていないが、長時間のフライトでむくんでしまった手首に合わせて、スマートリンクによるコマ調整を着陸前に気軽に行えるのも魅力だ。

 「サントス」に第二時間帯機能を搭載するという新しくも意欲的なモデルながら、機能面、デザインともに使い勝手がよく、より多くの人々の手にとってもらえるであろう1本になっている。LMに近いサイズ感は小振りなカルティエを求める人にとって少し大きく感じるかもしれないが、前述の着用感への配慮に加えてラグトゥラグも47.5mmと一般的だ(この記事のTOPから見られる動画では、HODINKEE Japan編集長・関口が自身が所有するMMサイズとの比較も行っている)。カルティエウォッチに対して華やかでドレッシーな印象が強く、僕は自分には似合わないかもしれないと一歩引いて見ていた。しかしグレーのワントーンで落ち着いた印象の本作なら、初めてのカルティエとしても手に取りやすい。145万2000円(税込)とコンプリケーションを搭載しながら控えめな価格にとどまっている点も好ましい。これには、セリタ製ムーブメントをベースとした選択が効いていそうだ。まもなく開催されるWatches & Wonders 2025で「サントス ドゥ カルティエ」デュアルタイムの後継モデルがお披露目される可能性もあるが、汎用性が高く実用的なデュアルタイムウォッチがお好みなら本作を手に取ってみて損はないだろう。

そのほか、時計の詳細はカルティエ公式サイトへ。

Video by Kazune Yahikozawa (Paradrift Inc.)、Camera Assistance by Kenji Kainuma (Paradrift Inc. )、Sound Record by Saburo Saito (Paradrift Inc. )、Video Edit by Nanami Maeda、Video Produce by Yuki Sato、Photos by Yusuke Mutagami