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Hands-On フィアーズ ブランズウィック、ヴィンテージから着想を得た絶妙なバランスを突く2モデルを実機レビュー

懐古的なデザインがあふれるなかで、イギリスのブランドであるフィアーズは見事に的を射た仕事をしている。

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時計愛好家たちのあいだでの成功が着実に広がっているとはいえ、フィアーズはもっと注目されるべきブランドだ。つまり、このブランドはすでに受けている称賛以上の評価に値するのだ。現在も創業家によって経営されている真のヘリテージブランドであり(実際には現在、6代目にあたる)、その歴史は途切れた時期もあるものの、確かな歴史的重みを感じさせる。その背景には、同社の第4代マネージングディレクターであるニコラス・ボウマン=スカーギル(Nicholas Bowman-Scargill)氏の存在が大きい。そしてもうひとつは、デザイナーのリー・ユエン-ラパティ(Lee Yuen-Rapati)氏である。彼とは昨年シンガポールで開催されたIAMWATCHのパネルディスカッションで一緒になる機会があったが、正直なところ、十分な称賛を送れなかったと悔やんでいる。

Lee

リー・ユエン-ラパティ氏が、IAMWATCHの参加者たちが着けていた時計をスケッチしている様子。

 ユエン-ラパティ氏はとても親切で知識豊か、そして創造的なデザイナーであり、InstagramのOneHourWatchデザインで知っている人も多いだろう。彼の作品はクリエイティブで、ときに実用的、ときに遊び心にあふれ、そして少なくとも1度はブランドに模倣された可能性があるほど、常に魅力的なアイデアに満ちている。

 だからこそ、ハブリング²やJ.N.シャピロといったブランドが彼を数字デザインのために起用し、ほかのブランドがイラストレーションを依頼するのだ。だが今回焦点を当てたいのは、彼(そしてフィアーズのチーム全体)がどのようにしてヴィンテージからのインスピレーションと現代性のバランスを絶妙に解釈したかである。それが具現化されたのがブランズウィック 38 “チャコールローズ”と、ブランズウィック 40.5 ジャンプアワー “バーリーコーン・プラム”の2モデルなのだ。

Fears Brunswick Models

 ウォッチデザインにおいて最も難しいことのひとつは、ヴィンテージからのインスピレーションをどの程度取り入れるかだ。ブランドによっては徹底的に突き進み、ヴィンテージムーブメントまで用いた復刻を行う場合もあれば、歴史的要素をかすかに示す程度にとどめる場合もある。そのなかでもっとも難しいのは、いわゆる“ちょうどいい”アプローチである。

 ヴィンテージ感を出しすぎると不気味の谷に陥り、モダンともヴィンテージともいえない中途半端なものになってしまう。しかし絶妙なさじ加減を見極めることができれば、特別な存在となる。その鍵は、そもそもヴィンテージピースを魅力的にしている要素を理解しているかどうかにかかっている。その1例として、以下に紹介する時計を見てみよう。

Fears Vintage

フィアーズのコレクションに収蔵されている、1924年製スターリングシルバー製クッションケースを備えたモデル。Photo courtesy Fears

 この1924年製スターリングシルバー製のクッションケースウォッチは、フィアーズがどこで失敗していてもおかしくなかったという意味で興味深いケーススタディだ。ウォッチデザイナーを惑わせかねない魅力的な要素が数多く潜んでいる。ブレゲ風の数字、ケース素材、それともホワイトダイヤルや繊細な針に引かれるのだろうか? また、クッションケースから伸びるワイヤーラグもまた印象的な要素である。

 しかしブランズウィックが焦点を当てたのは、力強いクッションシェイプとラウンドダイヤルであり、それを取り囲むモダンなベゼルと存在感のある針によって現代的に仕上げている。そして、ラグはワイヤーラグを想起させつつも、通常のスプリングバーシステムを採用し、よりモダンな外観を実現している。これによりケースとダイヤルにもうひとつの奥行きが加わり、バランスの取れた仕上がりとなっている。

Fears Brunswick 38 Charcoal Rose

 ブランズウィック 38 “チャコールローズ”は、いわゆるサーモンダイヤルの流行を直球で追いかけるのではなく、コントラストと温かみを巧みに取り入れたダイヤルが特徴のモデルだ。インダイヤル、外周の分目盛り、そして針が、強いテクスチャーをもつチャコールグレーのセンターダイヤルと美しい対比を生み出している。

 ケースサイズは直径38mm×厚さ11.69mmで、ここに示されているのはシースルーバック仕様とドーム型クリスタルを備えたバージョン。防水性能は100mを確保している。11.84mm厚のソリッドバック仕様も選択可能(さらにブレスレット仕様も用意されている)だ。ケースサイドには上下にかけて滑らかな傾斜とファセットを施し、そこにヘリテージ感を強調する大ぶりの“オニオン”リューズを組み合わせている。

Fears Brunswick 38 Charcoal Rose
Fears Brunswick 38 Charcoal Rose
Fears Brunswick 38 Charcoal Rose

 ブランズウィック 38に搭載されているのはラ・ジュー・ペレ製の手巻きムーブメント、Cal.D100で、パワーリザーブは50時間。このモデルは、コート・ド・ジュネーブ装飾やブルースティールのネジを備えた上位グレードのLJPD100を採用している。最高級の仕上げというわけではないが、価格帯を考えれば十分納得できる内容だ。もし私が購入するなら、全体のヴィンテージ美学により調和するソリッドバック仕様を選んだかもしれないが、シースルーバックを欠点とまでは思わない。

Fears Brunswick 38 Charcoal Rose
Fears Brunswick 38 Charcoal Rose
Fears Brunswick 38 Charcoal Rose

 特筆すべきは、このダイヤルのつくり込みだ。見た目の美しさはもちろんだが、価格以上の価値を感じさせる。外周部分には18Kローズゴールドによる同心円状のギヨシェ仕上げが施されおり、真鍮から切削された数字はダイヤモンドポリッシュ仕上げ、フロステッド加工、シルバーコーティングを経てローズゴールドで仕上げられ、最後に手作業で植字される。チャコールの質感は奥行きと上質さを生み出しており、4000ドル(日本円で約59万円)未満の価格帯でこの完成度を目にできることに強く感銘を受ける。ブランズウィック38 “チャコールローズ” の価格は3650ドル(税抜/日本円で約54万円)だ。

 さらにモダンな解釈として登場するのが、ブランズウィック 40.5 ジャンプアワー “バーリーコーン・プラム”である。ケースはステンレススティール製で、厚さは12.8mm。このモデルにはクリストファー・ウォード(Christopher Ward)が開発したジャンプアワー機構が搭載されている(もともとはフィアーズ×クリストファー・ウォード アライアンス01に採用されていたものだが、現在ではフィアーズ専用となっている)。

Brunswick 40.5 Jump Hour 'Barleycorn Plum'

  自分はバーリーコーンパターンが好きだが、このモデルも例外ではない。手彫りのギヨシェではないものの、ダイヤルに立体的で豊かな質感を与えている。ダイヤル中央にはシルバーのサーキュラーサテン仕上げが施され、そのなかに時間を示すジャンプアワー表示窓が設けられている。分目盛りはこのシルバーのリング上にプリントされている。

 ファセット仕上げを施した針が分を指し、グレイン仕上げを施したプラムカラーのインナーダイヤルの上を回転する。全体にこの色を使えば強すぎたかもしれないが、ここでは絶妙なアクセントとして機能し、視覚的コントラストを生み出すことで、目を引きつけつつ視認性を高めている。

Brunswick 40.5 Jump Hour 'Barleycorn Plum'
Brunswick 40.5 Jump Hour 'Barleycorn Plum'

 この時計のベースには、自社開発モジュールを載せた自動巻きのセリタ SW200が使われており、クロノメーター規格に調整されている。パワーリザーブはフィアーズから公式には明記されていないが、SW200であればおおよそ38時間ほどだろう。青焼きされたローターも力強い印象を与える。ブランズウィック 40.5 ジャンプアワー “バーリーコーンプラム”の価格は4400ドル(日本円で約65万円)だ。

Brunswick 40.5 Jump Hour 'Barleycorn Plum'

 どのモデルが最適かは、外観の美しさだけでなくサイズ感でも判断すべきだ。以下のリストショットを見てもらえばわかるように、約18.4cmの手首では幅広いサイズの時計を難なく着けこなすことができる。40.5mmのジャンプアワーも気に入ったが、写真で見ると人によってはやや大きく感じられるかもしれない。ケースの厚みの比較も下に示してあるので参考にして欲しい。

Brunswick 40.5 Jump Hour 'Barleycorn Plum'
Brunswick 40.5 Jump Hour 'Barleycorn Plum'

ブランズウィック 40.5mm。

Fears Brunswick 38

ブランズウィック 38mm。

 サイズの点では38mmのブランズウィックが自分にとってベストかもしれない。しかし、ふたつのダイヤルのうちでは40.5mmのジャンプアワーのほうが視覚的に楽しいと感じる。フィアーズは見事に“ちょうどいい”デザインを実現しているが、すべてをひとつに詰め込むことはできない。とはいえ、いずれのモデルも魅力的で価格も適正であり、間違いなくこれまで以上に注目されるに値する存在である。

Fears Brunswick Salmon charcoal

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