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Editors' Picks ジュネーブ・ウォッチ・デイズ 2025でのお気に入りの時計たち

今年のジュネーブ・ウォッチ・デイズで発表された力強い新作のなかから編集部がお気に入りを選びました。

 ジュネーブ・ウォッチ・デイズでの怒涛の新作ラッシュもひと段落し、HODINKEEチームもようやく時差ぼけから回復してきたところです。私たちは今回、今や世界で2番目に大きな年次時計見本市となりつつあるこのイベントでのお気に入りを厳選しました。今年は出展ブランドが増え、新作の数も拡大。もしそのニュースすべてを見逃してしまったとしてもHODINKEEの記事で振り返ることができます。また、今後公開されるHands-on記事なども、ぜひウェブサイトでチェックしてください。ひとまず今回は、編集部メンバーにジュネーブ・ウォッチ・デイズ(およびその周辺で発表された新作)で特に印象に残ったモデルそれぞれを挙げてもらいましたが、選ばれたモデルはカラフルなものから複雑機構を備えたものまでじつに多彩です。

 本稿を読み終えたら、ぜひコメント欄であなたのお気に入りの新作をシェアしてください!


MB&F LV101/EVO仕様 [タンタン・ワン–編集者]

 マキシミリアン・ブッサー(Max Busser)氏とMB&Fチームが時計を発表した際、率直に認めていたように、MB&Fのもっともシンプルな(かつ装着しやすい)レガシー・マシンにEVO処理を施すことはまさに待望の展開だった。オーバーサイズのテンワを搭載しつつも複雑機構を持たない“シンプルさ”で愛されたLM101と、多くの人々を魅了してきたスペースエイジ的デザインのクレイジーなオロロジカル・マシンの両方を好む人にとって、このEVO仕様のLM101はその中間に位置する存在だ。流線形のケースに一体型ラバーブレスレット、スムーズに仕上げられたバランスホイール、そしてスケルトン化されたガンギ車まですべてが少し未来的に感じられる一方で、より伝統的な兄弟機としっかりつながっている。

MB&F LV101 EVO

 そして何より重要なのは、このEVO仕様のLM101が真のスポーツウォッチとして設計されている点だ。80mの防水性能、ねじ込み式リューズ、さらにムーブメントを保護するためのブランド独自の衝撃吸収システム "フレックスリング(FlexRing)"を備えている。これはきわめて大きな進歩であり、理論的にはこのクレイジーなマシンひとつで十分という存在になり得る。

 とはいえ、最終的にこれを私のお気に入りに選んだ理由はもっと単純(あるいは人によっては馬鹿げているかもしれない)なものだ。MB&FがついにグリーンダイヤルのLM101を作ってくれたからである。最大の話題をさらったのは間違いなくそのダイヤルだ。CVDコーティングによって仕上げられ、角度によって明るいグリーンからブルー、さらにはパープルへと幻想的に変化する。気分で色が変わるリングの時計版に、本格的なウォッチメイキング技術(ムーブメントのブリッジにはヴティライネンの名が記されていることを忘れてはならない)を組み合わせたことこそ、まさに極上の仕上げだといえる。

 EVO仕様のLV101のIntroducing記事はこちらから。


フェルディナント・ベルトゥー ネソンス ドゥンヌ モントル3[マーク・カウズラリッチ–シニアエディター]

 最初は、すでに選んでいたモデル(ファーラン・マリの、ダイヤモンドがあしらわれたオニキスダイヤルを備えるディスコ・ヴォランテ)と、これまで見てきたなかで最も芸術家のビジョンを的確に表現したと本気で思えるモデル(ブルガリ×リー・ウファン氏のコラボレーション)のどちらにするか迷っていた。しかし最終的にはまったく別の方向を選んだ。それが今年もっとも非凡な時計のひとつといえる、フェルディナント・ベルトゥー ネソンス ドゥンヌ モントル3(Naissance d'une Montre、時の誕生という意)だ。

ferdinand berthoud

 フェルディナント・ベルトゥーは、歴史と現代的なウォッチメイキングを融合させた精緻な時計を年間50〜60本ほど製作しており、以前から私の注目ブランドのひとつだった。しかしその少ない生産量ゆえ、直接触れる機会はこれまでなかった。そんなとき、第3弾となるネソンス ドゥンヌ モントル(Naissance d'une Montre)、“時計の誕生”が発表されたと聞き、どうしても実物を見たくて動き始めたのだ。実のところ、諦めずに見に行くよう励ましてくれたのは、ジュネーブ・ウォッチ・デイズでのアポイントメントの合間に偶然出会ったフィリップ・デュフォー(Philippe Dufour)氏だった。

 ネソンス ドゥンヌ モントル(Naissance d'une Montre)プロジェクトは、グルーベル・フォルセイ(Greubel Forsey)、フィリップ・デュフォー氏、そしてミッシェル・ブーランジェ(Michel Boulanger)氏によって始められたもので、ウォッチメイキング技術とその伝承に焦点を当てている。目的は、失われつつある技術を復活させ、若い時計師に伝え、学ばせ、そして本当にほぼ完全に手作業でつくられた時計を生み出すことだ。基本的に風防以外は、すべて伝統的な工具を使い、CNCマシンを使わずに製作されている。製作にはフェルディナント・ベルトゥーと姉妹会社であるショパールの時計師たちが協力している。価格は83万スイスフラン(日本円で約1億5450万円)で、限定11本(この秋にフィリップスで競売にかけられるスティール製プロトタイプを含む)。時計にはコンスタントフォースのフュゼ・チェーン機構とバイメタルテンプを搭載しており、80人以上の職人による1万1000時間以上の作業が注ぎ込まれている。この時計とプロジェクトについては今後さらに詳しく取り上げるつもりだが、写真を見ればなぜこれほどまでに心を奪われるのかがわかるはずだ。

 フェルディナント・ベルトゥー ネソンス ドゥンヌ モントル3(Naissance d'une Montre 3)の詳細はこちらから。


ベルネロン カンティエーム・アニュアル/ブラック[ジェフ・ヒラルド–リミテッドエディション ディレクター]

 製品を評価する最良の方法は、最初の印象が薄れた後もなお、そのことを考え続けているかどうかだ。私にとってベルネロン カンティエーム・アニュアルはまさにそうだった。ミーティングのあとも数日間、同ブランドのデザイナー、シルヴァン・ベルネロン(Sylvain Berneron)氏が語ってくれたことを何度も思い返していた。時計そのものは客観的に見ても美しい。しかし私の注意を引いたのは、さりげないディテールの数々だった。

Berneron Quantième Annuel in Black

 あのスティール製“オーバーケース”?  それはプラチナを保護するためだけのものではない。もう1度よく見てみると、ラグに配置されたその構造がパテック フィリップ Ref.3970の段差を思わせることに気づく。ベルネロン氏はこのリファレンスを愛し、コレクションしていたが、事業資金のために手放したと語っていた。また、ホワイトメタルのわずかな色調の違いは私の好きなタンタル×スティールのロイヤル オークを思い出させる。

 ダイヤルのレイアウトは?  見て美しいだけでなく読み取りやすい。彼によればデザインは、時刻は上下、カレンダーは左右という実用性を軸に考えられたという。しかし裏側のムーブメントでも同じ十字形が再現されており、これは容易に成し遂げられることではない。少し難解かもしれないが、私はそこに引かれた。

Berneron Quantième Annuel in Black

 アニュアルカレンダーファンとしてベルネロン氏は、ほとんどの人が、そして自分自身も面倒でストレスが大きいために設定しないことが多いと嘆いていた。だがこの時計には4時半と7時半位置の操作しやすいボタン、6時位置のAM/PM表示、そして31日を持たない月に自動リセットする仕組みが搭載されており、設定はきわめて簡単だ。あまりに簡単なので、きっと設定したくなるはずだ。

 もちろん価格の問題はある。パテックやランゲに肩を並べるレベルだ。しかしそれは根拠のないものではない。彼は美しい時計を生み出しただけでなく、大手ブランドが見過ごしがちな問題を掘り起こし、解決しているのだ。既存の産業構造を揺さぶることがどれほど難しいかを過小評価してはいけない。ベルネロン氏はまさにそれを実行しており、その革新には十分な価値があると私は考える。

 ベルネロン カンティエーム・アニュアルのIntroducing記事はこちらから。


ゼニス デファイ クロノグラフ USM[アンディ・ホフマン–シニア ビジネスエディター]

 驚きつつも理にかなったこのコラボレーションは、まさにスイスらしさの極みといえるだろう。すでにコンセプトについては紹介したが、ジュネーブ・ウォッチ・デイズで両ブランドの時計や家具、経営陣と時間を過ごしたあと、私はますます確信を深めた。これはここしばらくで最もクールなスイスブランド同士の提携だ。

Zenith Defy Chronograph USM

 特にエキサイティングなのは、エル・プリメロ搭載のクロノグラフがオリジナルのデファイ ケースに収められたのが初めてである点だ。これは当然の成り行きといえる。というのも、初代デファイはゼニスのケースデザインのなかでも特に建築的な造形を持っており、1885年に金属加工工場として創業し、その後、建築家・デザイナーであるフリッツ・ハラー(Fritz Haller)とのコラボレーションを通じて発展したファミリー企業、USMの哲学と非常に親和性が高いからだ。USMは現在、MoMAのパーマネントコレクションにも収蔵されている。同時に、USMのユニークなデザイン要素へのオマージュはあくまで控えめで押しつけがましくない。USMハラーコレクションのオリジナルカラーを取り入れることで、創業160年を迎えるゼニスは、すでにロレックスやオメガといった大手が進出しているカラーダイヤルの分野に参入することとなった。しかし、この色調は紛れもなくUSM独自のものであり、オリジナリティを際立たせている。

 また、クロノグラフ秒針にあしらわれた小さなボールジョイントは、USMハラーのモジュラーシステムが構成・接合される際の象徴的な手法に敬意を表している。さらに、このコラボレーションでは本物のUSM家具が付属し、時計やそのほかの物を収納できる仕様となっている。価格は159万2800円(税込)で、ゼニスのほかのトップクロノグラフと同水準だ。限定モデルであり、各色60本のみが製作される。唯一の注意点として、すでに時計コレクターであるなら、USMに触れることによってスイス製高級家具デザインの新たな収集癖が芽生える可能性が高いということだ。警告はしたので、あとは自己責任で。

 ゼニス デファイ クロノグラフ USMのIntroducing記事はこちらから。


ブルガリ オクト フィニッシモ リー・ウファン限定モデル[和田将治–HODINKEE Japan エディター&ウェブプロデューサー]

 ここ数十年のアイコニックな時計を挙げるなら、ブルガリのオクト フィニッシモが真っ先に思い浮かびます。極薄のアーキテクチャとミニマルなエレガンスによって、ラグジュアリーウォッチの世界に新たな次元を切り開いた存在です。

 オクト フィニッシモを特に魅力的にしているのは、クリエイティブなプラットフォームとしての役割でしょう。ブルガリはこのモデルをベースに、安藤忠雄や坂本龍一といった世界的クリエイターとのコラボレーションを実現し、時計製造と幅広い芸術表現を見事に融合させてきました。こうしたプロジェクトは、この時計が多様な創造的ビジョンを独自に受け止められる存在であることを浮き彫りにしています。

Bulgari Octo Finissimo Lee Ufan x Bulgari

 今年のジュネーブ・ウォッチ・デイズで僕が選んだのは、ブルガリ オクト フィニッシモ リー・ウファン限定モデルです。これは過去のブルガリウォッチのコラボレーションからさらに発展し、彫刻的な進化を示す作品だと感じます。鏡面の文字盤は妹島和世 限定モデルで、レーザー刻印のブレスレットはタトゥー アクアで探求されましたが、リー・ウファン限定モデルはその先へ進みました。ケース全体が丹念に手作業でヤスリがけされ、荒々しくも豊かな質感が生み出されています。それは磨き上げられた文字盤と鮮やかなコントラストを描き、視覚的な魅力に加えて触覚的な体験をもたらします。実際に手にしたときに初めて、その真価を発揮する時計です。

 これらを手がけるのはもちろん、ブランドのプロダクト・クリエイション・エグゼクティブ・ディレクターであるファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏。彼が作り上げるさまざまなクリエイションには今後も大いに期待していますが、そろそろ小径サイズのオクト フィニッシモも見てみたい、というのが僕の正直な気持ちです。

 本作については、紹介記事「ブルガリ オクト フィニッシモ リー・ウファン限定モデル」をご覧ください。


ローラン・フェリエ クラシック・トゥールビヨン ティール–セリエ・アトリエ VII[ティム・ジェフリーズ–デピュティ・エディター]

 私がデザインでいちばん好む点をひと言で表すなら、それは“さりげなさ”です。とりわけ時計製造においては、華美であからさまな見せ方よりも抑制されたアプローチを好むのですが、ローラン・フェリエの新作クラシック・トゥールビヨン ティール–セリエ・アトリエ VIIほどその完璧な例はないでしょう。一見すると、6時位置にスモールセコンドを配したシンプルなタイムーオンリーウォッチにすぎませんが、この時計をひっくり返したとき、そこにトゥールビヨンが姿を現すのです。時計製造におけるもっとも劇的で印象的な複雑機構を、これ以上なく控えめな方法で見せています。

Laurent Ferrier Classic Tourbillon Série Atelier VII

 “さりげなさ”という点で言えば、ぱっと見や少し離れたところから見ると、アワーマーカーはごく普通のインデックスに見えます。ところがよく目を凝らして見ると、それらは繊細に描かれたローマ数字であることがわかります。この控えめな上品さの重なりが、まさに私の琴線に触れるのです。

 しかしこの抑制のきいた外観の奥には、確かな実力が息づいています。セリエ・アトリエ VIIに搭載されているのは手巻きのトゥールビヨンムーブメント、Cal.LF619.01。ダブルヘアスプリングを採用し、驚異的な80時間のパワーリザーブを実現しているため、週末をとおして動き続けます。

 これほどまでに控えめでありながら卓越した技術をも備えたデザインを成立させるには、相当な自信が必要でしょう。フェリエ氏自身はすでに半世紀にわたって第一線を支えてきた存在ですが、彼の名を冠するブランドはまだ10代ともいえる若さです。それでも、そのデザインアプローチには老舗メゾンのような知恵が備わっていると感じます。さらにプラチナケース、美しいティールカラーのグラン・フー  エナメルダイヤル、そしてアリゲーターストラップが組み合わさることで、私のジュネーブ・ウォッチ・デイズでのベストウォッチとなりました。

 ローラン・フェリエ クラシック・トゥールビヨン ティール–セリエ・アトリエ VIIのIntroducing記事はこちらから。


デニソン ALD デュアルタイム[ジェームズ・ステイシー–編集長]

 正直に言うと、このチョイスはアンディから“盗んだ”ようなものだ。でも説明させて欲しい。この新しいデュアルタイムのデニソンが発表されたとき、まずメールをざっと見て、それからもう1度確認。そして価格をチェックした。そしてプレスリリースをひととおり確認し終える頃には、アンディからのメッセージがスマホに届いていた。ごめんよ、アンディ。でもUSMのゼニスが最高にクールだから、そこまで罪悪感はない。

 昨年12月に発表されたデニソンの初代ALDリファレンスにリッチ・フォードンが注目していたのに便乗した記憶はあるが、正直なところ、僕はもともと“タイムオンリー”ウォッチにはあまり引かれないタイプだ。だからこそ、今回のデニソンが、あの70年代風クォーツウォッチのスタイルや雰囲気はそのままに、スマートなセカンドタイム表示を加えてきたことには、思わず歓喜してしまった。

Dennison Dual Time

 今回の新作ラインナップは、スティール(SS)またはゴールドトーンのケースをベースにした全12種類のバリエーションで構成されている。ダイヤルにはラピスラズリ、マラカイト、タイガーアイ、アベンチュリンといった素材が採用されており、その上にミニマルな2針表示が組み合わされている。この表示形式はダイヤルの構成によって異なり、ひとつの素材を使ったダイヤル上に、片方の表示だけグレイン仕上げを施すモデルもあれば、異なる素材で構成されたセグメントダイヤルに、それぞれ独立した時分針を備えるモデルも存在する。

 デザインはクリーンで、選んだダイヤル素材を存分に引き立てる舞台となっている。ラピス×ゴールド、マラカイト×SS、アベンチュリン×SSからどれを選ぶか、僕自身まったく決められないでいる。これらの新しいトラベル対応型ALDモデルは、ふたつのロンダ製クォーツムーブメントを搭載し、価格は890ドル(日本円で約13万1000円)。確かな価値と、優れたスタイルを兼ね備えている。実物を見るのが待ちきれない。

 デニソン ALD デュアルタイムのIntroducing記事はこちらから。