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Hands-On IWC 宇宙に向かう4本のパイロット・ウォッチ・クロノグラフ “ポラリス・ドーン”エディション

地球に戻ったあと、これらの時計はクリスティーズ・ニューヨークでオークションにかけられ、収益はセント・ジュード小児研究病院に寄付される予定だ。

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Photos by Mark Kauzlarich

昨年、私はウィスコンシン州の炎天下のなか、EAA エアベンチャー 2023用に稼働中の誘導滑走路の脇で素晴らしい光景を目にするため、地平線に目を凝らしていた。それはアメリカ人起業家でありパイロット、そして億万長者であるジャレッド・“ルーク”・アイザックマン(Jared "Rook" Isaacman)氏が操縦する、アメリカで唯一所有されているであろうMiG-29だ。もし先に目に入らなくとも、その音は確実に耳に届いただろう。それを見逃すことはまずない。

MiG-29

空飛ぶMiG-29は、アメリカ上空では決してお目にかかれないものだ...この特別なケースを除いては。

 MiG-29を操縦するアイザックマン氏は、多くの航空ファンにとって凄腕たらしめているだけでなく、彼はポラリス・ドーン・ミッション(ポラリス計画という一連のミッションのなかで初の民間宇宙飛行)の指揮官でもあり、このミッションは長い遅延を経て、8月26日に打ち上げられた。しかし彼が着陸したとき、私が見ていたのはMiG-29の見事な迷彩塗装やポラリス隊のL-39ジェット機だけではなかった。彼らの手首に巻かれた時計、すなわち宇宙をテーマにカスタマイズされた4本のIWC セラミック・クロノグラフにも注目していたのだ。

Rook Isaacman Watch
MiG-29

もう1度MiG-29について言わせてほしい。ドローグパラシュートを展開していても、その機体がタキシングする姿は恐ろしいほどに迫力がある。

IWC Polaris Dawn

 昨年開催されたEAAのPhoto Report記事を見たことがあるかもしれない。それは本当に素晴らしい時間だった。2日間で12マイル(約19km)以上歩き、クールな飛行機や時計を探し求めた。しかし最も重要だったのは、ポラリス・ドーンのチームが正式に宇宙に行くまで公にできなかった別のストーリーのことだ(そのためにいた)。IWCのパイロット・ウォッチ・クロノグラフ “ポラリス・ドーン”エディションを見ただけでなく、ジャレッド・“ルーク”・アイザックマン氏との対談や、スペースX社のリード・スペース・オペレーション・エンジニアであるサラ・“クーパー”・ギリス(Sarah "Cooper" Gillis)氏やアンナ・“ウォーカー”・メノン(Anna "Walker" Menon)氏を含むほかのチームメンバーとも話すことができた。これから宇宙飛行士になる人々や、宇宙に行った、あるいはこれから行く時計を見る機会はめったにない(というより、ほとんどない)ため、その機会を逃すわけにはいかなかった。

ミッションスペシャリスト兼メディカル・オフィサーのアンナ・“ウォーカー”・メノン氏、ミッション・コマンダーのジャレッド・“ルーク”・アイザックマン氏、そしてスペースX社のリード・スペース・オペレーション・エンジニアであるサラ・“クーパー”・ギリス氏。

 スペースウォッチに対する執着は理解できるものだ。宇宙旅行はほとんどの人にとって想像を絶するものであるが、宇宙飛行に関連する時計を身につけることで、この地球を離れるという偉業が少し身近に感じられる。HODINKEEでは宇宙に行った時計についてたびたび取り上げてきたが、ポラリス・ドーン・ミッション(そしてその時計)は、これまでの宇宙ミッションとはまったく異なるものである。

 ポラリス・ドーンのクルーは、今週スペースX社のドラゴン宇宙船に乗り込み、最長5日間にわたるミッションを遂行する予定だったが、悪天候により打ち上げが延期された。このミッションでは、これまでのドラゴンミッションよりも高高度を飛行し、ヴァン・アレン帯(地球の周囲に存在する放射線帯で、高エネルギーの粒子が磁場に捕らえられた領域)を通過する予定だ。ミッションの詳細については、これからアイザックマン氏が説明してくれる。

IWC Polaris Dawn

IWC パイロット・ウォッチ・クロノグラフのダイヤルには、“ルーク”のシルエットが見て取れる。

IWC Polaris Dawn

 もし自分が宇宙に行くのなら、そのとき身につけていた時計を手元に残しておきたいと思うだろう。さらに個人的なことに、各時計には番号が振られ、各宇宙飛行士の名前とコールサインが刻まれている。ただ残念なことに、宇宙飛行士たちはこれらを記念品として持ち帰ることはできない。サラ・ギリス氏は思い出だけで十分だと私に語った。4本の時計はすべてIWCからポラリス・ドーン・ミッションに寄贈されたもので、時計は今秋、クリスティーズ・ニューヨークでボックスセットとしてオークションにかけられる予定だ。その収益はすべてセント・ジュード小児研究病院に寄付される。

IWC Polaris Dawn
Inspiration4

インスピレーション4(Inspiration4)のために製作されたIWC。

 今回宇宙飛行士たちが一緒に仕事をするのも、IWCがスペースX社のミッションに協力するのも初めてではない。IWCは、世界初となる民間人のみの軌道周回ミッション、インスピレーション4のために、とても似た宇宙飛行ウォッチを製作し、その後オークションで販売した。その時計は上の写真だ。そのミッションでそれぞれ異なる役割を果たしていた現在のチームメンバーたちは、今回の新ミッションで再び一堂に会することになった。

 「そのミッション(インスピレーション4)は宇宙での生活が可能であること、またそこでも快適で健康に過ごし、生産的な活動ができることを示すためのものでした。ただ単に宇宙に行って新しい冒険を始めるだけでなく、地球上の生活をよりよくできることを証明するためでもあったのです」とアイザックマン氏は語った。続けて「だからこそ、セント・ジュード小児研究病院がインスピレーション4にとって重要な存在だったのです。このミッションでは2億5000万ドル(当時の相場で約230億円)以上の資金を集めることができました。またIWCとの素晴らしいパートナーシップもあり、彼らが提供した時計を宇宙に持ち込み、インスピレーション4の一環として活用しました」とも述べた。

Polaris Dawn Team

 「そのミッションのあと、私たちはスペースX社が目指している未来、つまり人類の生活を多惑星化するというビジョンを見据えるようになりました。星々を旅できるようになれば、世界はもっとおもしろい場所になるという考えです。そしてそのために、新しい打ち上げ機であるスターシップを開発しています」

 「ポラリス・ドーンはアポロ17号での月面探査以来、人類が地球から最も遠くへ到達するミッションとなります。ここにいるクーパーとウォーカーは、歴史上最も地球から遠くへ旅する女性探検家となるでしょう。その高高度、高放射線環境からは多くのことを学ぶことになります。また船外活動を行い、船内を真空状態にしてテストも行います。そして40年ぶりに開発された新しい宇宙服を試します。これは何億ドルもかかる宇宙服ではなく、将来的に月や火星で数百人、数千人が着用することを見据えた量産が可能な宇宙服です。ですからこの宇宙服とその操作をテストし、さらに新しい通信衛星コンステレーションであるスターリンクも試験します。試験とは時速1万7500マイルで移動する、ふたつの物体間でレーザー通信を行います」

Stanislas Rambaud

IWC シャフハウゼン北米ブランドプレジデントのスタン・ランボー(Stan Rambaud)氏が、L-39のコックピットを見ているところ。左にいるジョン・“スリック”・バウム(John "Slick" Baum)氏がイグニッションの場所を教えているのだと思う。

 時計について、アイザックマン氏とチームはIWCとのパートナーシップに感謝しているだけでなく、同ブランドの歴史に深く惚れ込んでいた。「ポラリス・ドーンは、私たちが明日生きたいと願うエキサイティングな未来に向けて、前進し、限界に挑戦すること、そして地球上で抱えている課題を解決するためによい進展を遂げることが目的です」と彼は語った。「IWCはその点で私たちと完全に一致しているように感じました。ブランドはすでに航空業界で進取的な姿勢を見せていましたし、限界を押し広げたいと考えていたようです。彼らはインスピレーション4で携行可能な特別な時計を惜しみなく提供し、これらをオークションにかけて、セント・ジュード小児研究病院のために約50万ドル(当時の相場で約5490万円)を集めるという大成功を収めました」

 では、時計の話に戻ろう。44.5mmのダイヤルに映り込んだ反射を消すことができなかったのに気づいたかもしれない。まず前提として、この時計は“ルーク”の元に戻さなければならなかった。彼はファンと会い、EAAを巡ってポラリス・ドーン・ミッションについて来場者と話していたため、急いで撮影する必要があったのだ。しかし、どうやら世界で最も混雑する空港のひとつである誘導路で、真っ昼間に完璧な光を得るのは難しいようだ。それでもこの時計の魅力を少しでも伝えられていればと思う。

IWC Polaris Dawn

 ポラリス・ドーンモデルは4本あり、それぞれの宇宙飛行士に合わせたユニークな刻印が裏蓋にあしらわれている。外観はクロノグラフ・“レイク・タホ”とほぼ同じだ。ホワイトセラミック製のケースは44.5mm、厚さ15.7mmで、60mの防水性能を備え、自動巻きムーブメントであるCal.69380を搭載している。これらのクロノグラフの文字盤レイアウトは、IWCにとって長い歴史を持つデザインであり、そのルーツはバルジュー7750の輪列に由来している。縦型に配置されたカウンター(12時位置に30分計、6時位置にスモールセコンド、9時位置に12時間積算計)がその特徴だ。またデイ&デイト機能も備えており、現代では少し時代遅れに感じるかもしれないが、やはりクラシックな要素として根強い魅力がある。IWCはケース素材やカラーの組み合わせを工夫することで、外観や内部の技術を常に刷新してきた。このポラリス・ドーンウォッチは、その進化をさらに1歩進めている。

IWC Polaris Dawn
IWC Polaris Dawn
IWC Polaris Dawn

 先ほど写真で見ていただいた裏蓋に加え、濃紺のラッカーダイヤルには無数の星が描かれており、ポラリス・ドーンのミッションロゴも印刷されている点が特徴だ。星がプリントされた時計について今まで考えたことがなかったが、このデザインがふさわしいと思える時計があるとすればまさにこれだろう。ロゴは過去に見たことのあるユニットウォッチを思い起こさせるもので、IWCがこれまでに一般向けや特定のプロジェクト向けに行ってきたデザイン(2023年のブラック・エイセスモデルなど)をほうふつとさせる。ただし、ダイヤルに宇宙飛行士が描かれたIWCの時計はほかに記憶がなく、これは特に特別なものだ。

IWC Polaris Dawn

 アイザックマン氏が述べたように、ポラリス・ドーン・ミッションの一環として、チームは新しいスペースX社の船外活動(EVA)スーツを使用した初の商業宇宙飛行士による宇宙遊泳に参加している。ダイヤルデザインは、おそらくそのEVAスーツの元となった船内活動(IVA)スーツをもとにしていると思われる(私がこの時計を見たのは昨年だ。EVAスーツは今年初めに発表されたばかりのため、これは推測である)。

IWC Polaris Dawn

 私はこのポラリス・ドーン・ミッションをずっと見守り、安全な打ち上げを心待ちにしている。というのも、このストーリーをまとめる過程でチームに会った経験があるからだ。正直に言うと、宇宙遊泳のアイデア自体が恐ろしく感じるし、ましてや巨大なロケットで宇宙へ飛び立つなんて考えるだけでも怖い。だが幸いにも、私自身がその恐怖に直面することはない。それでも宇宙ミッションに挑む人々のことをこれほどまでに心配したことはこれまでなかった。彼らは多くのことを成し遂げる予定だ。これからも全体の進展を見守り、宇宙飛行士と時計が無事に帰還したら、彼らのミッションの最終章であるクリスティーズのオークションも見届けたい。そしてどれだけの資金が集まるのか見届けたいと思う。

IWC Polaris Dawn
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