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我々はこの日が来ることをわかっていた。2020年に発表されたLM パーペチュアル EVOは、よりアクティブなライフスタイルにフィットする新しいデザインをブランドの柱のひとつにもたらした。それ以来、そのフレームワークを採用したモデルが次々と登場しており、LM101 EVOが登場するのは時間の問題だったのだ。時として期待が高すぎると失望に終わることがある。しかし幸いなことに、LM101 EVOは私が望んだとおりに素晴らしいものとなった。
誰も驚くべきではない。このチームが失敗することはまずないからだ。だからこそ、この時計の格別な品質を考えるとMB&F LM101 EVOは興味深い問いを投げかける。MB&Fはどれほど実用的なものにする必要があるのか? と。マクシミリアン・ブッサー(Max Büsser)氏は、2005年に(業界の友人と開発した)クリエイティブで時に風変わりな彫刻的デザインを土台にブランドをスタートさせた。ブランドが初めて少し伝統的な時計、レガシー・マシンシリーズをリリースしたのは2011年になってからだ。
ジャン-フランソワ・モジョン(Jean-Francois Mojon)氏とカリ・ヴティライネン(Kari Voutilainen)氏が開発したLM1は依然として前衛的だが、少なくともインダイヤルに規則的な時刻表示を備えていた。それはより実用的で親しみやすく、私のように建築的なものやクルマにインスピレーションを得たタイムピースを毎日は着用したくない購入者のためのステージを設定したのだ。
MB&F LM1。
LM101は、初代レガシー・マシンの精神を継承する後継機であり、2014年の発表はブランドにとっての画期的な瞬間だった。それはブランド初の自社製ムーブメント(カリ・ヴティライネン氏の美学と仕上げ技術というアシストがあって)の誕生だ。我々HODINKEEもこの時計のファンである(HODINKEE限定版も製作したほど)。それでもオリジナルのLM101にはいくつかの実用的な欠点があり、そのうちのひとつは30mという限定的な防水性能だ。
私はブランドのエントリーモデルが、着用面でアップデートされるという見通しに胸を高鳴らせていた。いつかMB&Fを所有したいと願っているが、人生の多くのことと同様に、ブランドのカタログを閲覧する際に少し選択に迷ってしまうのだ。また、私はブランドの最も“象徴的”な時計を探すことが多い(ひとつしか所有できないと仮定して)。レガシー・マシンシリーズは、最近までブランドの最も実用的なモデルだった。その後、より着用しやすいサイズ感を持つスペシャル・プロジェクト・ワンが登場した。しかし私が時計収集の世界に入ったとき、レガシー・マシンはMB&Fのホットウォッチであり、依然としてそれが典型的な選択肢のように思える。LM101 EVOが登場した今では、その印象はさらに強まったかもしれない。
LM101 EVOはグリーンまたはサーモンダイヤルプレートが用意されており、時刻表示用(2時位置)と60時間パワーリザーブ用(6時位置)のふたつのブラックインダイヤルを特徴としている。ブラックインダイヤルはサーキュラーサテン仕上げを施しており、それはホワイトエナメルのインダイヤルとブルースティール針(夜光なし)を特徴とする非EVO仕様のLM101とは顕著な違いがある。これはLMスプリットエスケープメントや、(実はEVOモデルとしてスタートし、のちに伝統的スタイルへと移行した)LM シーケンシャル EVOのような時計にブランドが適用した“EVO仕様”の一部だ。
私はこのデザインタッチについて複雑な気持ちだ。新たなブラックインダイヤルはホワイトエナメルよりも耐久性があり視認性も高いが、きわめて強い印象とやや威圧的なルックスを持っている。しかし同時に、すでに極端なデザイン言語を持つ時計においては、それが違和感を感じさせる要素になることはない。
時計は依然として、シュトラウマン・ダブル・ヘアスプリングを備えた14mmのテンプがダイヤルの上に浮遊している。テンプは1万8000振動/時で鼓動しており、ダイヤルを傾けてテンプを見るとダイヤルが光のなかで変化するのがわかるだろう。特にグリーンダイヤルは角度によって、ダークグリーンからほとんどブルーやティールに変化する。グリーンのLM101を待っていたコレクターが少なくないことを知っているし(私の同僚タンタンも含めて)、これは決して期待を裏切らないのだ。
ダイヤル側のもうひとつの重要な変化は、テンプを吊り下げるフライングアーム、ならびに脱進機とアンクルの形状に関するものだ。以前のLM101は、特に下部でより彫刻的なアーチデザインを特徴としており、テンプを保持する滑らかな柱のための建築的な基盤に似た鋭い角度を持っていた。新しいLM101 EVOはより洗練されたデザインを特徴とし、より流動的に見える。一方、オリジナルLM101脱進機にはブラックポリッシュ仕上げを採用し、きわめて伝統的だ。また、EVOはより角度のある形状に再設計されたアンクル用アタッチメントによって支えられた、スケルトン化された“バトルアックス”スタイルのアームを特徴としている。
ムーブメントはLM101とほぼ同じで、40時間のパワーリザーブと23石を備えている。前述したように、これはブランドにとっての画期的な瞬間だった。少なくとも私の視点からだが、LM101とLM101 EVOの主要な魅力のひとつはマクシミリアン・ブッサー氏のデザインと20年間のブランドの伝統、そしてカリ・ヴティライネン氏の影響の両方を手に入れられることだ。
実質的にひとつの時計で、現代の独立系ウォッチメイキングのふたつのアイコンを手に入れることになり、これは多大な価値がある。アンスラサイト仕上げはもうひとつのEVO仕様だが、コート・ド・ジュネーブ装飾、アングラージュ、そして傾斜したきわめて伝統的なブリッジは依然として同様の特徴であり、それはなぜかMB&Fのモダンデザインとより調和しているように感じる。
どのEVO仕様モデルにおいても最も目立つ変化はケースであり、これはすべての購入者にとって最も大きな実用的な問題を提示すると考えられる。最初は、MB&Fの美学を最もよく表しているデザイン仕上げは何かという問題だと思っていた。しかしいくつかの熟考ののち、“ある特定のモデルにとって最適なデザイン仕上げはどれか”と捉え直すべきだろう。LM シーケンシャル EVOは、よりスポーティなフレームワークで発表されることに意味があった。あらゆる機能を備えたクロノグラフは理にかなう。しかしブランドの最もシンプルなタイムオンリーウォッチでもそうだろうか?
直径40mm×厚さ16.5mmのケースは、チタンの使用により着用しやすくなっている。同時に、ブランドの特許を取得したフレックスリング耐震機構がムーブメントとケースのあいだに配置され、アップグレードされた80m防水を含め、時計の限界使用時に生じる衝撃からムーブメントを保護するのを助けている。49mmのラグ・トゥ・ラグは少し長いように思えるかもしれないが、ラグへの鋭い落ち込みとストラップのタイトな一体化(17mmのラグ幅)により、さまざまな手首サイズにうまくフィットすることを保証している。
ラバーストラップはブランドの素晴らしいバネ仕掛けのバタフライクラスプと相まって、市場で最も着け心地のよい体験のひとつだ。クラスプはシャネルによって作られており、リシャール・ミルにも同様のデザインを提供している。これは時計全体が手首に密着する構造で厚さを最小限に抑えるのに貢献している。
では、LM101のどのバージョンが現在、最もよいのか? 新作のLM101 EVOはチタン製で、ステンレススティール製のスタンダードモデル(税・関税抜きで5万8000スイスフラン/日本円で約1110万円)に比べ、わずかに上位の6万2000スイスフラン(日本円で約1190万円)に設定されている。確かに、価格を見て驚くのも無理はない。特に、かつて MB&F LM101 リミテッドエディション For HODINKEEを発表した当時(5万2000ドル/当時のレートで約620万円)と比べればなおさらだ。しかしこの価格上昇は、現在市場に出ているほぼすべてのラグジュアリーウォッチにも言えることだ。
しかしあなたが手に入れるのは、さまざまな状況で着用する際に安心感を向上させる時計であり、実機を目の前にするとまったく高すぎるとは感じないだろう。先ほどLM EVOの成功は、このモデルに何が最もふさわしいかと考えることだと述べたが、もしかするとそれは日常使いできるMB&Fを求めるかどうかという問いに置き換えたほうが正確かもしれない。もしそうした1本を望む人(そしてこのブランドへの最初の入口を探している人)にとっては、LM101 EVOこそが最適な選択となるだろう。
MB&F LM101 EVOの詳細については、ブランドのウェブサイトから。
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