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Four + One ハロー・パテック、ハローキティ! 彼女はおもちゃのような品から気品ある時計まで幅広く揃えている

最近、コレクションのよろこびを知ったばかりのモジデ・カッター氏。今は失われた時間を取り戻そうとしている。

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本稿は2022年6月に執筆された本国版の翻訳です。

Photos by Meghan Marin

小さいころはフリックフラックを身につけ、時計に夢中な父と兄弟がいるにもかかわらず、モジデ・カッター(Mojdeh Cutter)氏が時計に対する情熱を抱くようになったのは1年ほど前のことだ。彼女は約1年前、“TimeForArt”(時計ブランドとタッグを組み、新人芸術家にチャンスを与えたり、支援したりするための資金を集めるチャリティーオークションを主催するプラットフォーム)の責任者になった。オークションの売り上げはすべて、新たな才能を応援するニューヨーク市の非営利の現代アート美術館であるSwiss Institute(スイス・インスティテュート)に寄付される。

 5年間にわたってSwiss Instituteの資金集めを行っているカッター氏は、「TimeforArtに出合うまで、時計づくりの世界を積極的に追求することはありませんでした。でも常に、おぼろげながらも身近に時計が存在していたことは間違いありません」と語る。だが今は自身の仕事、さらには幼少期の時計との無意識の邂逅によって、完全に時計の世界に引き込まれている。

A woman wearing a watch poses in front of a feature wall

 現在29歳のカッター氏は、ここ1年ほど時計業界にどっぷり浸かっていて、それで時計への情熱に火がついた。いや、むしろ再び火がついたと言うべきか。「私をずっと待ち構えていたとも言える情熱を再発見し、それを深め、さらに磨いています。それまではあまり目を向けていなかったのですが…。とてもニッチな世界ですが、1度入り込むと、どこを見ても時計が目に入るようになります。まさに取り憑かれているようです。地下鉄に乗っているときでも人の時計を見てしまいます」

 彼女はすでにコレクションを始めており、以下でその一部を紹介しよう。次は、自身の30歳の誕生日プレゼントとしてゴールドのカルティエ パンテールかタンクに狙いを定めているようだ。「今はこの業界で働いているため、より理にかなった選択に感じられます。成長するなかで、カルティエは小さなころから大人の女性のシンボルでした」。これから、彼女のコレクションを構成する品々を見ていこう。なおカッター氏はUS版HODINKEE Vol.10の特集記事『Ones To Watch』にも登場している。


彼女の4本
ロレックス デイトジャスト(2020年製)
Rolex Datejust watch

 これは父親から贈られた品だそう。彼女の父は常に、大事な節目を記念する思い出深い品として時計を見ている。娘と婚約者が結婚する際に、父が1対のデイトジャストを贈ったのは当然の流れだった。彼女の時計にはピンクの文字盤とローマ数字、相手の時計にはブラックの文字盤とバゲットインデックスが施されている。

 ふたりはコロナ禍において、Zoomで式を挙げた。そのため、機械式時計の贈り物はより一層心を打たれる。「パーティや正式なお祝いは開いていません。だからこそ、この時計はとても特別に感じられます。本当に大切な思い出の物のようなものですね」

 現在カッター氏が一番愛用しているのがデイトジャストで、仕事中はもちろん、夫とのおそろいの品としても使用している。実際ふたりはよくペアで身につけている。「一緒にロレックスへ行ってブレスレットを締めてもらいました。まさに結婚を記念する品ですから。デイトジャストはラブストーリーのようなもので、多くの感情がこもっているんです」

カルティエ トリニティ(1990年代製)
Cartier Trinity watch

 「間違いなく、最初に心を奪われた時計です」。イエローゴールドとローズゴールド、そしてダイヤモンドをあしらったホワイトゴールドが渦を巻いたベゼルを持つカルティエ トリニティについて、カッター氏はそう語る。最近母親から受け継いだものだそうで、母は現在、毎日欠かさずオメガ コンステレーションを身につけている(“快適だから、それしかつけません”)。“娘が成人したときのために”このカルティエはいつも金庫にしまってあったそうだ。

 母が金庫を開くたび、カッター氏はなかをのぞき込み、このカルティエに思い焦がれていた。「母と一緒に金庫に行って、すべての品を見ていました。この時計をいつも見たいと思っていました」

A woman wearing a Cartier watch

 数字のないサテン仕上げの文字盤が、バーガンディのシンプルなストラップと調和しており、カッター氏はそのデザインに引かれた。父や兄弟がつけている大きなスティールブレスの時計とは対照的だ。「とても精巧で小さな時計です。この大きさがしっくりきて、親しみを覚えました」。ダイヤモンドをあしらいながらも、レザーがさりげなくカジュアルな雰囲気を演出している。「ひとつの物として、とても美しくてエレガントだと思います」

 今ではトリニティの正式な持ち主となった彼女だが、当初はこの“装飾的な時計”は夜のパーティのような特別な機会にしか合わないと思っていた。「でも、今ではよくつけています。もしかしたら少し頻繁につけすぎているかもしれません」

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パテック フィリップ カラトラバ トラベルタイム Ref.5034(1997年製)
Patek Calatrava watch

 今回のインタビューの最中、カッター氏は印象的なクル・ド・パリベゼルを備えた1997年製のカラトラバを身につけていた。父親が何十年も所有していた品であり、まさに家宝と言えるだろう。「いつまでもここにある、時代を超越した品のようなものですね。私のものではないし、父が個人的にもらったわけでもありません。私に子どもができれば、その子どもたちに引き継がれるでしょう。まさに共有財産のようなものです。大抵は箱の中にしまってあり、家族とともに年月を重ねるべき品なんです」

 このパテックは特別な機会に取り出されることが多い。最近ではイラン暦の元日に使われ、そこで何世代にもおよぶパテックとしての役割をきちんと果たした。「はじめは父がつけていて、夜の半ばになると今度は私が着用しました。ありがたいことに、ストラップには何人かの手首に合うだけの穴が開いています」

 また、カッター氏はこの時計を見ると、パテック フィリップやオメガなどで粋な時計を生み出した宝石デザイナーのジルベール・アルベール(Gilbert Albert)を思い出す(彼女のカラトラバはアルベールのデザインではないが)。2000年代後半、カッター氏の父親はアルベール家やその事業に近い場所にいて、彼女自身もインターンのような形でアルベールに師事していた。現在開花し始めている“時計愛好家としての種”がそこでまかれたのは間違いない。「彼や職人たちとともにし、彼の図面を見るのはとても素敵なことでした」とカッター氏は思い起こす。「彼は真の芸術家でした。もっと時計をデザインして欲しかったですね」

ハローキティのフリックフラック
A Hello Kitty Flik Flak watch

 カッター氏は、パリで育った5歳のころからフリックフラックを手首にしていたことを覚えている。その後なくしてしまったため、この時計は大人になってからハローキティのフリックフラックへ敬意を示す意味で購入した。「間違いなく感情がこもった時計であり、自分の子ども時代やフランスの子どもたちを思い出させます。フリックフラックはパリで大人気で、どこでも見かけました。この時計を見ていると、いろいろなことが感じられます」

Flik Flak watch on a wrist

 ピンククリスタルのインデックスを備えた、この“とても女の子らしくて”、“超キュート”な時計は、彼女のハローキティ愛に訴えるだけでない。大きさがちょうどよく、ファブリックストラップもつけ心地がいいと彼女は言う。基本的には特別な用事がある土曜日につけていて、まだ仕事では使っていないが、今後時計に対する自信が深まれば、それも変わるかもしれない。


もうひとつ
イヴ・サンローランの香水、イン ラブ アゲイン(1998年製、現在は製造中止)
Yves Saint Laurent perfume on a shelf

 カッター氏は、12歳以降に手に入れた香水をすべてとってあり、今では100個ほどのボトルが集まっている。1998年製のこの香水は、ベビーシッターがつけていたものだった。「女友だちと過ごしていた13歳のころにタイムスリップします。見えないものに包まれた思い出ですね」。華やかでフルーティーなグリーンの香りだったが、それが劣化した今はつけることはない。「香りが変わってしまいました。香水はそれが問題ですね。時計のように年月を重ねることはありません」