Business News LVMHがスイスのムーブメントメーカー、ラ・ジュー・ペレの少数株式を日本のシチズングループから取得

　スイス・ラ・ショー＝ド＝フォンに拠点を置くラ・ジュー・ペレが、現在年間約15万個のムーブメントを生産していると、同社を特集した最近のHODINKEEの記事で報じた。製造ラインには主力モデルである3針ムーブメントのG100から、コラムホイール式クロノグラフムーブメントL100、さらにはハイエンドなトゥールビヨンやモノプッシャークロノグラフムーブメントまでが含まれる。また同社は、タグ・ホイヤーとの共同開発によるソーラーグラフムーブメントの製造も手がけており、この機構は同ブランドのアクアレーサーに初めて搭載された重要な技術的要素である。

　ソーラーグラフは太陽光または人工光によって充電され、電池交換を必要としない。わずか2分間の直射日光で1日分の駆動が可能であり、強い日差しによる20時間未満の充電で6カ月間作動するという。このムーブメントは、LVMHがトップカテゴリーのモータースポーツシリーズのタイトルスポンサーを務めるなかで人気を博しているタグ・ホイヤー フォーミュラ1の復刻モデルにも採用されている。さらに両社は、ソーラームーブメントの共同開発をティファニーのロープ バイ ティファニーに搭載されるムーブメントにも発展させており、今後もLVMHグループ内の他メゾンと連携して開発を続けていくとしている。

　ラ・ジュー・ペレは、スイスブランド向けにムーブメントを供給するほかの主要メーカー、すなわちスウォッチ グループ傘下のETA、セリタ、そしてロレックスの姉妹ブランドであるチューダーが筆頭株主を務め、シャネルも出資しているケニッシと競合している。LVMHは最近、サンド財団が保有するムーブメントメーカーであるヴォーシェ社の買収候補としても名を連ねていた。同社はフランスのラグジュアリーメゾンの大手であるエルメスが20％の株式を保有しており、売却の際には優先交渉権を持っている。

　サンド家はこれまで時計製造関連資産の売却を模索してきたが、最終的に合意には至らず、直近で売却手続きを打ち切ったとされている。シチズンは今回のLVMHによる出資後も、ラ・ジュー・ペレはシチズングループの一員として独立した形で運営を続けると発表している。また、今後もシチズングループおよびLVMH以外の他社にもムーブメントを供給し続ける方針であるとしている。

　LVMHはルイ・ヴィトンをはじめ、ワインやシャンパンのモエ・エ・シャンドンなどを擁する、世界最大のラグジュアリーコングロマリットである。同社の時計関連資産にはLVMHの各ウォッチブランドに加え、近年復活を果たしたダニエル・ロートおよびジェラルド・ジェンタも含まれている。ブルガリの最高経営責任者（CEO）であるジャン-クリストフ・ババン（Jean-Christophe Babin）氏が率いるLVMHウォッチ＆ジュエリー部門は、世界でも有数の時計グループのひとつだが、生産量と売上規模の両面で、リシュモン、スウォッチ グループ、ロレックスといった競合他社に後れを取っている。

　ババン氏は声明のなかで、今回のラ・ジュー・ペレへの出資について「LVMHウォッチ＆ジュエリー部門は、この提携を通じて“ソーラーエネルギー分野における比類なき専門性”をさらに活用していく」と述べている。一方、シチズンウオッチグループの社長兼CEOである大治良高氏は、「主要パートナーとの戦略的提携は、当社の技術力が国際的に認められたことを示すものであり、今後の長期的な発展に向けた新たな道を開くものだ」とコメントしている。