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Business News フォッシル、債務と関税負担の悪化を受け再建へ

【ニュース】かつては世界的な時計メーカーとして知られ、ゾディアックやスイス製STPムーブメント、さらには多数のファッションウォッチブランドを擁していたフォッシルが、拡大する財務損失を受けて再建のための法的手続きを申請した。

かつて世界最大級の時計メーカーのひとつであったフォッシルグループは、イギリスおよびアメリカの連邦倒産裁判所において法的手続きを通じた財務再建を進めている。同社は老舗スイスブランドのゾディアックを傘下に持ち、さらにマイケル・コースをはじめとする、多数の有名ファッションブランド向けに、マス向けモデルを製造してきた小売業者でもあるが、現在は債権者からの猶予を求めている。この申請は、フォッシルの売上が減少し、財務損失が拡大するなかで行われたものだ。同社はスマートウォッチ事業への大規模な投資を断念したあと、米国の関税および貿易政策の影響により、粗利益率の低下に直面していると経営陣は説明している。

 アメリカの連邦倒産裁判所へのフォッシルの申請は、比較的低価格帯のマス向け時計を製造・販売する企業が直面している困難を浮き彫りにしている。経済不安の高まりによって、一部の消費者が生活必需品以外の自由裁量支出を先送りするようになった一方で、世界の時計業界全体では、より高品質で高価格、かつ少量生産の時計へとシフトが加速している。同時に、アップルやサムスンといった業界大手が手がけるスマートウォッチがカテゴリー全体を席巻し、多くのコスト意識の高い消費者の手首を占めるようになったことで、フォッシルやその傘下ブランドのシェアは奪われていった。もっとも、連邦倒産裁判所への提出書類によれば、アメリカ・テキサス州に本拠を置くフォッシルが最終的に債権者保護の申請に踏み切る決定打となったのは、アジアで主に製造される自社製品の輸入コストを押し上げたアメリカの関税・貿易政策の変更だったという。

 2014年の企業プロフィールによると、フォッシルは最盛期には年間およそ2600万本の時計を生産していたという。これは、2024年におけるスイスの時計産業全体の年間生産量である約1550万本を大きく上回る数字である。2015年にはテクノロジー系ウェアラブル企業のミスフィットを買収し、2017年にはアルマーニ エクスチェンジやアディダス、バーバリー、スカーゲン、ハルドといったブランドとのライセンス契約のもとで、最大300種類におよぶ新しいスマートウォッチおよびウェアラブル製品の発売を計画していた。

 しかしながら、フォッシルによるスマートウォッチおよびウェアラブル製品への大規模な参入は、最終的に断念されることとなった。2025年第2四半期の決算報告において同社は、この分野から撤退する決定を下したと発表しており、それにより売上の減少と店舗閉鎖が生じた。同社はまた、カラフルなダイバーズウォッチで知られるスイスブランドのゾディアックやフォッシル各ブランド、さらにはほかの時計メーカー向けに機械式ムーブメントを製造するスイスのムーブメントメーカー、スイス・テクノロジー・プロダクション(STP)を所有している。

 テキサス州南部地区連邦倒産裁判所に提出された書類のなかで、フォッシルは“極めて厳しい事業環境”において損失の拡大と売上の減少が続いている現状を報告している。同社によれば、2022年の売上高は約17億ドル(当時の相場で約2240億円)で、純損失は約4400万ドル(当時の相場で約60億円)だった。ところが2024年には売上高が11億ドル(当時の相場で約1670億円)まで減少し、純損失は約1億100万ドル(当時の相場で約150億円)へと悪化している。フォッシルは、Appleやサムスンといったメーカーによるスマートウォッチやウェアラブル機器、さらにはスマートフォン全般によって、時計小売業界が大きな打撃と競争の激化にさらされていると説明している。

 2025年7月時点で、フォッシルは世界各地に214店舗を展開し、約4500人の従業員を抱えていた。同社の製品は小売、卸売、そして直販チャネルを通じておよそ130の国と地域で販売されている。フォッシルグループの株式はアメリカ・ナスダック市場で取引されており、現在の時価総額は約1億1200万ドル(日本円で約172億円)。かつての約27億ドル(日本円で約4150億円)というピーク時から大幅に下落している。

 先月、アメリカの連邦倒産裁判所に提出されたフォッシルの最高財務責任者(CFO)ランディ・グリーベン(Randy Greben)氏による宣誓書には、同社が債務の借り換えと事業再編を進めるなかで、アメリカの関税政策が事業に及ぼしている影響が詳述されている。フォッシルはそのなかで、“アメリカの関税政策の変更およびそれに伴う市場の不確実性が、当社グループの事業ならびに戦略的なリファイナンス取引の実施に悪影響を及ぼした”と述べている。

 フォッシルによれば、同社製品の大部分は海外で組み立てまたは製造されており、その多くは中国から輸入されているという。輸入品に課された関税により、同社の第2四半期決算では粗利益率が約80ベーシスポイント(0.8ポイント)低下したとされる。価格引き上げや生産・調達拠点の他地域への移転によって影響を抑えようとしたものの、十分には補えなかった。また同社は負債削減を目的として一部ブランドの売却を試み、取引成立の直前まで進んでいたが、不透明な経済環境のなかで最終合意には至らなかったと、法廷提出書類で明らかにしている。

 フォッシルはアメリカに本社を置き、その製品の大半をアジアで製造し、北米およびヨーロッパで小売事業を展開しているものの、債権者保護と財務再建の申請先としてイギリスの裁判所を選んだ。フィナンシャル・タイムズによれば、同社は“ヴェニュー・ショッピング(有利な裁判地選択)”を行った可能性が高いという。これは、イギリスの裁判所のほうがアメリカの連邦倒産裁判所に比べて、企業や関係者にとって有利な判断を下す傾向があり、特に再建手続きの過程で、企業の株式(持分)により高い価値を認めるケースがあるためだ。フォッシルはアメリカでは連邦破産法第15章の手続きを通じて申請を行っており、これによりイギリスでの再建手続きが優先されることになる。

 この法的手続きにより、フォッシルは債務および事業の再編を進めながら、ゾディアックやSTPを含む関連会社とともに事業を継続することが可能になる見通しだ。

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