trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Business News 業界が逆風にさらされるなかでも、時計購入者と業界関係者は依然として実店舗での販売を支持(デロイトスタディ)

【ニュース】デロイトスタディの調査によると、スイスの時計産業は地政学的リスク、貿易障壁、そしてインフレといった要因によって大きな試練に直面しており、とりわけ部品メーカーが最も深刻な影響を受けていると報告する。

監査・コンサルティング会社であるデロイト スイス(Deloitte Switzerland)による報告書によれば、スイスの時計購入者や業界関係者によると、今後も時計の購入・販売は主に実店舗で行われるのが主流であり続けるという。経済的および地政学的な圧力が強まるなか、時計業界は守りの姿勢を取っており、各ブランドはオンライン販売の成長に対する期待を引き下げている。

 デロイトの調査によると、回答したブランドと小売業者のおよそ3分の2が、オンラインでの販売は店舗販売に比べて全体の1割未満にとどまっており、今後も大きな成長は見込んでいないと答えた。また業界関係者のほぼ4分の3(74%)が、今後5年間もオフライン販売が主流であり続けると予想している。これは、2023年には62%が“実店舗での販売が今後も主流であり続ける”としていたのに対し、その割合がさらに増えたことを示している。

 デロイトによる50ページを超える報告書は、業界および経済データに加え、100人以上の経営幹部と6500人の消費者への調査に基づいており、パンデミック後の拡大期を経て、スイス時計業界がいまや拡大から持続・統合・防衛へと舵を切ったことを示唆している。

 レポートによると、中東やウクライナでの武力衝突、スイス製品に対する米国の関税、金をはじめとする原材料価格の高止まり、さらにスイスフラン高などが、消費者心理や利益率に悪影響を及ぼしているという。こうした状況のなかで、ブランド各社は米国の関税によるコスト上昇を相殺するために価格を引き上げているが、消費者の価格への敏感さは一段と強まっている。

 さらに、消費者は時計購入においても対面での体験を好む傾向が続いている。時計購入者の6割以上が、購入場所として最も可能性が高いのは実店舗であると回答している。また調査では、単一ブランドの店舗よりも複数ブランドを扱う店舗を好む傾向が示されており、回答者の38%が、マルチブランドストアが第一の選択肢と答えたのに対し、単一ブランドストアを好むとしたのは23%にとどまった。

 レポートは、女性消費者が明確にマルチブランドストアでの時計購入を好む傾向にあることも示している。

 デロイト スイスのマネージングパートナーであり、コンシューマー産業およびラグジュアリー&ファッション部門リードを務めるカリーヌ・セゲディ(Karine Szegedi)氏はインタビューでこう語っている。「女性はマルチブランドストアのほうをはるかに好みます。なぜなら、より多くの選択肢があるからです」

 レポートはさらに、多くの業界関係者、なかでも部品サプライヤーは、一部市場での需要減少により大きな圧力にさらされているという。とりわけスイス時計の輸出が大幅に落ち込んでいる中国市場でその影響は顕著だ。しかし最大の懸念は、現在スイスから米国への輸入品に課されている39%の関税であり、これがスイス時計産業全体を揺るがしている。

  “この関税は非常に大きな影響を及ぼしています。米国は2021年に中国を抜いて以来、スイス時計にとって最も重要な輸出市場となっています。2024年の対米輸出額は44億スイスフラン(当時の相場で約7560億円)に達し、スイス時計輸出全体の16.8%を占めました。こうした関税そのもの、そして今後どうなるか分からない不透明感が、業界の計画や投資判断を難しくし、負担をさらに大きくしているのです。その打撃は業界にとどまらずスイス経済全体にもおよんでいます。時計はスイスの全輸出の9.2%を占め、製薬業に次ぐ規模を持っているのですから”と、デロイトのアナリストは報告書で述べている。

 部品およびコンポーネントのサプライヤーは、すでにその影響を実感している。時計業界向けサプライヤーのうち実に74%が、コスト削減が現在の市場環境における最優先事項であると回答している。一方で、61%はイノベーションや新製品の開発も重要な優先課題であるとしており、厳しい経済状況のなかでも前向きな取り組みを続けていることがうかがえる。

 ウォッチメーカーやブランド各社も、変化に対応しながら対策を講じている。調査によると、業界関係者の70%が過去12カ月のあいだに投資を減速させており、63%がスイス国内で短期就労制度を利用しているという。この制度は、従業員を一時的に休業させつつも、正規の解雇を回避できる仕組みだ。

 レポートは、需要の減速が続くなかで業界が連携して対応している点を指摘している。経済的な圧力の高まりを受け、複数の部品メーカーがブランドによって買収される動きも見られる。その一例が衝撃吸収システムメーカーのインカブロックであり、ロレックス、パテック フィリップ、そしてリシュモンを含むコンソーシアムによって買収された。

  “時計業界はこれまで幾度となく変革の波を経験してきました。現在ではそのサイクルがより短く、頻度も高まっており、これまで以上に高い柔軟性が求められています”と、Watches & Wonders財団およびWatch & Jewellery Initiative 2030の会長であり、カルティエ元CEOであるシリル・ヴィニュロン(Cyrille Vigneron)氏は報告書のなかで述べている。