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計器盤、メーター、そしてダッシュボードについて

世界で最もエキサイティングなクルマたちのステアリングを握ってきたキャリアをとおして、特に印象に残る計器、メーターをヘンリー・キャッチポールが振り返る。


美しいサテン仕上げの表示盤が、光を完璧に捉えてほのかなサンレイ模様を描き出す。その上を、1本のシンプルな針が12を指して滑らかに動く。もっともそれは“12時”ではなく、“1時の位置にある12”だ。だがこの12は決定的な意味を持つ。なぜならそれはシフトアップのタイミングを示しているからだ。数瞬前に針がレトログラードのように跳ね返り、再び上昇を始めたときに始まった、あの叫ぶようなクレッシェンドの頂点を告げる合図である。ここでの“12”は実際には“1万2000”を示しており、このダイヤルは私の背中越し、震える脊椎のすぐ後ろに搭載されたGMA T.50の驚異的な3.9リッターV12エンジンの回転数とつながっている。

 12、リフト、クラッチ、シフト、クラッチ、スロットル。それは理屈ではなく、体が覚えたリズムのような動きだ。

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GMA T.50 の超高回転エンジンに備わるセンタータコメーター。

 私はこれまでダッシュボード上のメーターをルーペで覗いたことはないが、長年にわたり、きわめて集中して見つめてきたことなら何度もある。もちろんクルマには時計が備わっていることが多い(しかもそのなかには興味深いものもある)が、私の関心を引いてきたのは常にスピード、回転数、ブースト圧などを示す計器類だった。それらは、腕時計が私を引きつけてやまないのと同じ種類の魅力を持つ。

 私が若かったころはクルマの窓からなかを覗き込んで、時速180mph(約290km/時)、いや200mph(約322km/時)まで刻まれたスピードメーターを見つけたときの驚きに心を奪われたものだった。子どものころの私はフェラーリが大好きで(赤はもちろんお気に入りの色だった)、テスタロッサの黒いヴェグリア製メーターの上で、文字や針が蛍光オレンジにも似た鮮やかな色で際立っていたあの光景を、いまでもはっきりと覚えている。もっと身近な話をすれば、どんなクルマに乗っていようと、おそらく誰もが1度は機械式時計のパワーリザーブインジケーターのような自動車のメーターに見入った経験があるはずだ。残量を示す針が最後の目盛りに張り付いたままの状態で、ようやくガソリンスタンドを見つけたときほど安堵を感じる瞬間はない。そして満タンから空になるまでの針の動きが、なぜ、あるいはどのように速度を変えて落ちていくのかを不思議に思ったことがあるのは、きっと私だけではないだろう。いや、FullからEmptyではなく、AufからAb(編注;FullとEmptyのドイツ語表記)へと落ちていくのを眺めたことがある人もいるはずだ。

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ブルー仕上げが施されたアルピナ BMWのインストルメントクラスター。

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エディ・ホール(Eddie Hall)がル・マン24時間レースで(なんと単独で!)走らせた1933年製ベントレーのタコメーター。

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そして、航空機から着想を得たロケッティア MX-5のメーター類。

 私がモータージャーナリストとしてキャリアをスタートしたとき、私たちは自動車メーカーの加速、最高速度、そしてブレーキの主張がどこまで正しいかを確認するために多くのテストを行っていた。これはミルブルックやMIRAのような試験場に行き、ほとんどのオーナーが自分のクルマでは決して行わないようなかなり過酷な手順を実行することを含んでいた。最近ではローンチコントロールと、通常わずかふたつのペダルを操作するだけですべてがはるかに簡単になったが、当時はかみ合いのポイントとスロットル入力を両立させる難しいバランス取りであることが多かった。

 スタンディングスタートのために特定のクルマがどれだけの回転数を必要とするかを把握する必要があり、それは成功と失敗のあいだのほんのわずかな差であった。エンジンが失速するか、タイヤがケン・ブロック(Kenneth Block)の煙の雲のなかで溶けるかのように空転するかだ。私はスタートラインに座り、必死にアクセルワークを微調整しようとしてふくらはぎの筋肉を張り詰め、つま先に力を込め、そしてクラッチを放す前にレブカウンター(編注;タコメーター)の針が揺れるのを止める。そうしながら正しい数字の上を安定するのを祈っていたことを覚えている。

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グループBラリーカーである、アウディ スポーツ クワトロ S1 エボのいびつなレイアウト。

 もし完璧にシフトを決められたなら、タイヤと路面のあいだで理想的なスリップとグリップのバランスを感じられるだろう。しかし、その成功を祝う時間は決してなかった。なぜならすぐにレッドゾーンに集中しなければならないからだ。最初のギアから2速への変速はさまざまな理由で難しいことが多い。ほとんどの場合、回転数が上昇するにつれて加速し、最初のギアでは針がきわめて速く動くため、変速を予期する必要がある。早すぎると、クルマの持つ潜在的な性能を最大限に引き出していないことを知るだろう。遅すぎると電子制御の壁にぶつかり、リミッターからのムチ打ちのような軽い警告を受けながら、走行を中止するしかないと悟るのだ。完璧に合わせ、針の先端が赤いペイントに入る瞬間に変速できると、意図された正確なクリックに素早く回転するベゼルを操作したときのような満足感がある。

 私は長年にわたり速度計に魅了されないように努力してきた。ドイツのアウトバーンまたはブランティングソープ(英国の元戦略航空軍の爆撃機基地)のような使用されていない滑走路で高速度を追い求めるとき、針が特定の数字へ掃引する様に魅了される誘惑が常にある。視線が計器盤に釘付けになり、時速3マイル(編注;約4.8km)以上で迫りくる世界を注視するというもっと重要な任務がおろそかになることもある。少なくともアナログ表示盤では目盛りの曖昧さが許容され、ときには判読しづらいことがかえって救いになる。それは約200mph(約322km/時)だったと記憶を頼りに速度を落とし、後でその話をしても良心の呵責に苛まれることはない。デジタルでの読み取りはきわめて邪悪で決定的だ。

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マクラーレン F1の象徴的なメーター類。

 もちろん、いくつかの表示盤は物事を容易に識別できるようにしているが、ほかの表示盤は最初に目にしたときのブライトリング ナビタイマー Ref.806のように当惑させるものだ。最も明らかな表示盤のセットのひとつはGMA T.50の精神的な先駆者であるマクラーレン F1に見られる。真っ白な背景に浮かぶ黒い文字は、その圧倒的なシンプルさで人を魅了する。右側のスピードメーターは、260mph(約418km/時)まで表示されるという点で明らかに優れているが、レブカウンターは1000から8000rpmまでの4桁で表示され、各数字がきわめて簡素で、明らかに不完全なチャプターリング上の細いスパーの端にある。

 時計と同様に、優れた表示盤のデザインは高価な高級品だけの専売特許ではない。プジョー 205 GTiは優れたフィールドウォッチと同様に、すっきりとシンプルで心地よいダイヤルを備えており、常に私の心に残っている。同様に、そのフランスのライバルであるルノー クリオ・ウィリアムズはブルーを基調とした内装によって、ダッシュボードの色彩をいかに引き立てられるかを示した。

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E46 BMW M3 の計器(photo courtesy of Thomas Holland)。

 もうひとつ常に私の心に残るのは、E46世代のBMW M3のレブカウンターだ。バケットシートに沈み込み、アルカンターラ張りのステアリングホイール越しに見ると、かなり地味なグレーの表示盤に比較的小さなホワイトの文字と長いオレンジの針が見えるだろう。しかしエンジンを冷たい状態からスタートすると、一連の正方形が点灯する。それは4から8までのイエローの8つの小さな正方形、そして9の上にふたつの赤い正方形だ。

 これらは、普通のBMW 3シリーズに乗っているのではないことを思い出させるものだった。ていねいに暖機を必要とする素晴らしいS54直列6気筒エンジンを制御しているのだ。最初の数マイルを走り、オイルが温まるとライトは消え、M3の素晴らしい吸気音をもっともっと聞くことができるように回転数をさらに上げてもよいという許可が下りる。そうすれば、M3の素晴らしい吸気音の咆哮を、より多く耳にすることができるのだ。

 同様にして、もっと実用的なレベルでMk4 ゴルフ(エンジンタイプと排気量は不問)は、その表示盤がブルーのバックライトで光る様子は、常にお気に入りだった。Mk3 ゴルフのダイヤルはその前身と同様に、しばしば前面からかなり暗く照らされていた。Mk4は長年の色あせたラジウム夜光のあとにスーパールミノバ BGW9が採用されたようなものだった。

 1960年代のボルボ P1800は、信じられないほどの深みとほとんど不要な美しさを持つ表示盤のセットを備えている。1970年代のシリーズ 1 シトロエンCXで回転するドラム式の表示盤から回転数と速度を読み取ることは、M.A.D.1で時間を読むのに似ている。アウディ クワトロとニッサン 300ZXはその素晴らしいフルデジタルダッシュボードのために両方とも言及に値する。それらはすべて、私がクラシックなカシオを愛する理由そのものだ。

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ボルボ P1800のゲージパックのバックライトの美しさ。

 ひどいものもいくつかある。前述のフランスの幻想的なものとは対照的に、私自身のルノー クリオ 182はどれほど運転が好きであっても、表示盤の文字がまるでコミックサンズのいとこのように見える。それはフリック フラック(編注;世界中で愛されるキッズ時計)が軍用規格のように見えるほどだ。ランチア デルタ インテグラーレ(リード画像にある)は象徴的だが、計器類の混沌とした集合体は、情報を確認しようと一瞥しただけで圧倒されそうになる。個々のセクターダイヤルの縁にピップやプロットがあるデザインが大好きだが、集合体としては多すぎる。

 表示盤でよく見る素敵な名前のひとつにスミス(Smiths)がある。そう、エクスプローラーのエベレスト広告に“デラックス”の文字が登場したあのスミスだ。20世紀初頭、海軍のために最高のスミスウォッチを製造していたニコル・ニールセンは、最初のスミス スピードメーター(Perfect Speed Indicatorとして知られている)をデザインした。その後、製造拠点となった建物は今もロンドンのグレート・ポートランド・ストリートに存在し、予想どおりThe Smiths Buildingと呼ばれているが、当時はスピードメーター・ハウス(Speedometer House)と名付けられていた。今日スミスの表示盤はすべて英国有数のドライビングロードにほど近い南ウェールズで製造されている。

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ジャガー XK120のスミス製タコメーター。

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ジャガー XK120のスミス製スピードメーター。

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ジャガー XK120のスミス製デュアル温度計器。

 クラシックな表示盤でよく見られるもうひとつのおなじみの名前はジャガーだ。それはまさにジャガー・ルクルト レベルソに刻まれる“J”と同じだ。ジャガーは第1次世界大戦中に連合国の飛行機のために計器を製造し、戦後はその技術を自動車分野に転用した。しかしスピードメーターなどはフランスやスイスで製造されたのではなく、エドモンドが1921年に英国で設立した別の会社、Ed. Jaeger (London) Ltdによって製造された。その後、同社の4分の3は1927年にスミスに売却されたが、そのふたつの名前は分離して継続し、ときには同じクルマのなかに両方が登場することさえあった。

 そしてジャガーの計器盤は私の心に特別な場所を占めている。それは年代が近い2台のクルマに搭載されていたが、私の生活に現れたのは約30年の隔たりがあったからだ。私がまだ半ズボンをはいていたころ、母が所有していた1955年製のMG TF 1500を運転するふりをしながら美しいが動かないジャガーの表示盤を見つめていた。母は20代前半の社交界の娘だった頃から所有していたが、私が生まれるずっと前に納屋の上に置かれていたため、私はクモの巣をかき分けて運転席のひび割れた革に忍び込み(ああ、あのヴィンテージの匂い!)、MGのバッジに合わせるために八角形のジャガー製表示盤のほこりを拭き取り、見えない競争相手とレースするふりをしながら大きなハンドルを操作した。最終的にペダルに届くようになったときには操作もした。

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Mother Catchpole's MG TF 1500. 母のMG TF 1500。

 何年もあと、私は同じくらい大きく、薄いリムのホイールの後ろにいる自分に気づいたが、今度は前面に別のゴージャスなホワイト・オン・ブラックのジャガー製表示盤があった。しかし今度はペダルに手が届くというよりも、それぞれのペダルの役割を思い出すことに集中せねばならなかった。なぜなら問題のクルマは1958年のル・マンで優勝したフェラーリ テスタロッサ(今回は2語)で、それは中央スロットルを持っていたからだ。バズ・オルドリン(Buzz Aldrin)氏のスピードマスターを渡され、それでレースの計測をしろと言われ、しかもこれまで知っていたものとは逆になっていると告げられる状況を想像して欲しい。喜びと畏敬と恐怖が入り混じった感覚は、フェラーリでの運転と似たようなものだった。これほど集中したことはない。

 残念ながら、現代のフェラーリは表示盤に関してはどちらのテスタロッサにも見劣りする。しかし、この傾向は彼らだけではない。近年、パフォーマンスカー業界はある種のクォーツ アイデンティティの危機を経ているように感じる。メガワット充電システムを搭載したEV自動車は、純粋な数値上では従来の内燃機関スーパーカーを圧倒している。しかし、顧客は単にきわめて正確な計時以上のものを求めていることが判明した。彼らは感情と美しさ、そして個性を求めているのだ。

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ブガッティ トゥールビヨンの時計製造にかなりインスパイアされた表示盤。

 そして同じ考えは、より具体的なレベルではコックピットにも当てはまる。タッチスクリーンとデジタルディスプレイが常識となっているが、スクリーンをスワイプするよりもリューズを巻く感覚を好むのと同様に、ドライバーは触覚的なもので調整することを望む(実際の使用の容易さは別として)。

 アストンマーティンは、美しくローレット加工が施された重みのあるスイッチギアで先導しており、フェラーリもそれに理解を示し、物理的なスタート/ストップボタンに戻った。私はデジタルのダッシュボードがもう少しのあいだ流行し続けるだろうと思うが、(適切なことに)新しいブガッティ トゥールビヨンは高級時計製造の世界に公然と敬意を表す、印象的なスケルトンダイヤルセットで、すでに(当然のことながら)その先駆者としての役割を果たしている。

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TVR タスカンの計器。

 だから私は今後も長いあいだ、表示盤に魅了され続けるだろう。それがスピードメーター上の新しい数字であれ、ブーストゲージ特有の躍動感であれ、歴史あるレーシングカーのタコメーターに浮かぶ恐ろしい警告灯であれ、ベントレーの回転するトブラーローンのような驚異が明かす三連図であれ、あるいはNISMO 400Rのグローブボックスの計器であれ、心引かれるであろう。

 そして私はTVRについて言及していないが、それは私のタスカンダイヤルのジョークをするためだ。おそらくそれが最善だろう。


著者について

 ヘンリー・キャッチポール(Henry Catchpole)氏は英国の自動車ジャーナリスト、プレゼンター、およびドライバーであり、その雄弁な物語と高性能車への深い技術的専門知識で称賛されている。雑誌『Evo』、その後『Carfection』での活躍で知られており、彼のレビューはその詩的なトーンとハンドルを握った際の精密さが特徴だ。今日、彼はHagertyのYouTubeチャンネルの主要なホストを務め、現代のハイパーカーからモータースポーツのアイコンに至るまで、あらゆるテーマを探求しながら、愛好家の情熱と専門家の洞察を融合させている。