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ゼニスは2025年11月、ゼニス × ルパン三世の第4弾となる最新モデル、クロノマスター リバイバル 次元大介エディションを発表した。2019年の初登場から6年を経て、ゼニス × ルパン三世のコラボレーションは、いまやブランドにおける人気の限定シリーズのひとつとなった。アニメやマンガをモチーフにしたコラボレーションウォッチは多々あるが、それらとは一線を画す革新的なポイントであるのは、“アニメのなかにだけ存在した腕時計を現実化させた”という点だ。
そもそも、アニメ『ルパン三世』に登場するキャラクター、次元大介が劇中でゼニスの時計を着用していたというのは、アニメの公式設定としてあったわけでもなければ、ある日ゼニスが公式に発表したわけでもない。1970年代~80年代のテレビ放送や再放送時から、時計に詳しい一部のファンのあいだで「次元の腕時計は、ゼニスのクロノグラフではないのか?」といった観察と推測があったようだが、当時のアニメはセル画の描写が一定ではないため確証がなく、長年それは噂として存在していた。
インターネットが普及した2000年代以降、ルパン三世好き、時計好きの考察ブログやウォッチフォーラムなどで検証が進み、劇中で次元が着用していた時計に“ZENITH”と書かれていることが特定され、ケース形状やクロノグラフのレイアウト、プッシュボタンの形状などを根拠として、それが1969年に発売されたゼニスのエル・プリメロを搭載したクロノグラフ、A384に最も近いという説が事実上の定説となった。
そして、それがSNSの普及によって拡散された。ファンの長年にわたり観察・検証して積み上げてきた“気づき”をゼニスも知るところとなった。そして2019年、A384復刻プロジェクトのタイミングで“アニメ『ルパン三世』の劇中で次元大介が着用していた腕時計を実物として再現する”という公式企画が立ち上がり、ついにはエル・プリメロ A384 リバイバル ルパン三世エディション(1stモデル)としてリリースされることとなったのである。ブランド主導ではなく、熱心なファンたちの声がゼニスを動かし、製品化されるというストーリーはきわめてユニークと言える。
ただし、その製品化はさまざまな意味で難しい挑戦だったことだろう。なにせ劇中で描かれたダイヤルの配色、デザインを持つモデルは実在せず、あくまで“アニメのために描かれた架空の時計”なのだ。製品化に際しては、アニメやマンガの版権、キャラクターの使用権、ブランドやデザインのライセンス交渉などそもそも権利関係においてクリアすべきハードルは多い。さらには商業的なリスクも大きい。架空の時計を製品化することと、それを“売れる時計”として成立させられるかは不透明だ。そうしたリスクを考慮すれば、プロモーションや展示用のワンオフで終わっていた可能性もあっただろうし、2019年のA384復刻のタイミングでもともとリリース予定だったA384 リバイバルをベースに、単にアニメのロゴや次元大介のモチーフをあしらうという選択肢もあったに違いない。
ゼニス × ルパン三世のコラボレーションが人気の限定シリーズとして受け入れられることになったのは、“幻の時計を現実に”というファンの情熱に耳を傾け、ゼニスが劇中の時計を本気で再現することに注力して生まれたモデルであることが大きな理由だろう。事実、これまでに登場したモデルは、ダイヤル・インダイヤルのカラーやレイアウト、クロノグラフの針色や夜光の色味など、劇中の時計が持つ雰囲気と、実物としての完成度の両立が追求されてきた。以下で、これまでに製品化されたゼニス × ルパン三世のコラボレーションモデルについて解説するが、歴代モデルの詳細を知ると、その人気の理由がより一層深く理解できるはずだ。
©モンキー・パンチ/TMS・NTV
2019年/エル・プリメロ A384 リバイバル ルパン三世エディション(1stモデル)※日本限定
Ref.03.L384.400/27.C815
2019年に記念すべき最初のモデルとして登場したのが本作だ。限定50本、日本市場のみで発売され、当時の価格は93万5000円(税込)。ベースとなったのは、1969年に誕生したエル・プリメロを初めて搭載した3モデルのうちのひとつ、A384を忠実に再現して同年にリリースされたクロノマスター エル・プリメロ A384 リバイバルだ。ゼニスはオリジナルのA384のブループリントと製造図面を用い、リバースエンジニアリングによって特徴的な形状を37mmのステンレススティールケースで忠実に再現。ポンププッシャーやリューズなど、1969年に発売されたオリジナルと寸分違わぬスタイルを実現した。
この時計がユニークだったのは、アニメ的な表現を実際のダイヤルデザインとして翻訳した点だ。1971年に放送された『ルパン三世(第1シリーズ)』の第1話「ルパンは燃えているか…?!」に登場した時計は、アニメ特有の陰影のないブラックダイヤルを備えていた。本作は、そんな平面的な黒を表現するために、グレーのインダイヤルを合わせた深いマットブラックダイヤルを特別に開発したのだ。それだけではない。劇中に登場した時計のクロノグラフ秒針がベージュに近いゴールドカラーであったことから、本作も針とアプライドアワーマーカーにもそれに近いゴールドカラーとクリーミーベージュのスーパールミノバを塗布し、アニメの雰囲気を壊さない絶妙なバランスで表現した。
そして、サファイアクリスタルのシースルーバックにはアニメでおなじみのハットをかぶった次元大介のシルエットを印刷。この仕様は、ゼニス × ルパン三世コラボレーションの歴代モデルにも共通するディテールとなった。本作は、単なる限定モデルではなく“アニメと高級時計ブランドの関係性”を変えたとも言うべきマイルストーン的存在で、のちに続くモデルの起点となる重要な1本だ。
2020年/クロノマスター リバイバル ルパン三世 セカンドエディション(2ndモデル)
Ref.03.L384-2.400/07.M384
2019年に登場した1stモデルは、ゼニス史上初のアニメキャラクターとコラボレーションした限定商品として大きな反響を呼び即日完売した。そして翌年に発売されたのが、この時計である。1stモデルの成功を受けた本作は世界限定200本が用意され、日本以外で購入できる初のルパン三世コラボレーションモデルでもあった。価格は110万円(税込)。1stモデルからの価格アップの大きな理由は、オリジナルが当時採用していたゲイ・フレアー社のラダー(梯子)ブレスレットを復刻し、採用した点にある。
本作がホワイト+ブラックのインダイヤルという“パンダ風ダイヤル”を採用しているのは1stモデルとは異なり、『ルパン三世』第1シリーズ最終話「黄金の大勝負!」の冒頭で次元大介が着けていたブレスレットモデルを再現したため。実は劇中で、次元はふたつの異なるゼニスを着用しており、もうひとつのダイヤルバリエーションを再現したのが2ndモデルである。よりアニメに忠実であるのがダイヤル12時側の表記だ。1stモデルは“ZENITH CHRONOGRAPH AUTOMATIC El Primero”とプリントされているのに対し、2ndモデルは“ZENITH”のブランド名のみ。この点においてもアニメで描かれたディテールを忠実に表現した。
Ref.03.L384-0.400/20.M384
同年、一般向けに販売されたものではないが、もうひとつのゼニス × ルパン三世のコラボレーションウォッチが登場している。それがクロノマスター リバイバル ルパン三世 The One – Offだ。これは同年11月にフィリップスが開催した「レトロスペクティブ 2000-2020」オークションに出品されたものである。ゼニスはこのユニークピースのオークションでの落札価格の18万9000スイスフラン(日本円で約2200万円)を、小児がん患者とその家族を支援し、小児がんの研究促進とその社会的認知の向上を目指す非営利団体であるZoé4life(ゾエ・フォー・ライフ)に寄付した。
本作がユニークだったのは、チャリティを目的としたワンオフモデルというだけではない。実は劇中に登場したA384をベースにしたと思しき時計は、ブラックダイヤルにゴールドレターでプリントが施されているのだが、実はよく見てみると、インデックスは小さく、ZENITHロゴのプリントも“Z”と“H”の文字が黒く塗りつぶされていたのだ(劇中では、おそらく商標権侵害を防ぐためと思われる)。また“AUTOMATIC”と本来表記されるべきところ、“AUTOMNTIC”というスペルミス(単なるミスなのか、意図的なものかはわかっていない)も見られた。このワンオフモデルでは、そんな細かな表記も劇中に登場した時計そのままに、忠実に再現していた。
2022年/クロノマスター リバイバル ルパン三世 ファイナルエディション(3rdモデル)
Ref.95.L384.400/50.M384
1stモデル、2ndモデルでそれぞれ劇中に登場した異なるデザインの時計を忠実に表現したゼニス。本来であれば2ndモデルをもってコラボレーションが終了となってもおかしくなかったが、多くのファンの予想を裏切り発表されたのが、3rdモデルとなるクロノマスター リバイバル ルパン三世 ファイナルエディションである。
2022年に登場した本作は、異なるふたつのダイヤルデザインを組み合わせた、ユニークなスプリットダイヤルが最大の特徴で、これまでのコラボレーション、すなわち1st(2019年)と2nd(2020年)のダイヤルデザインをひとつの時計に統合。ダイヤルを左右非対称に分割し、ふたつの時計が持つそれぞれの表情を巧みにかつ同時に表現しており、モデル名にも表れているように、コラボレーションの“集大成”という位置付けとしてリリースされた。限定本数も、それに合わせるように1stと2ndの限定本数を合わせた世界限定250本に設定。価格は116万6000円(税込)であった。
そしてこれまでとは大きく異なるのが、外装素材である。これまではケースやブレスレットはSSだったが、本作ではオリジナルのA384の形状はそのままに、チタン製のケースとラダーブレスレットを採用している。アニメに登場した異なるふたつのデザイン、そしてヴィンテージ感と現代的な質感を組み合わせ、両立させた本作は、ユニークなコラボレーションというだけでなく、ゼニスの時計の表現の幅広さを知らしめる意味でも重要なモデルとなった。
Ref.95.L384-2.400/27.M384。2021年に登場したクロノマスター リバイバル ルパン三世 50周年 アニバーサリーエディション。
なお、実は2021年にも『ルパン三世』とのコラボレーションモデルは登場している。それがクロノマスター リバイバル ルパン三世 50周年 アニバーサリーエディションだ。本作は『ルパン三世』アニメ化50周年を記念して発表されたモデルで、デザインとしては1stモデルとまったく同じSSケースで、ブレスレットに1stでは採用されなかったSS製のラダーブレスレットを装備していた。日本限定50本のモデルとして発売され、価格は119万9000円(税込)であった。
2025年/クロノマスター リバイバル 次元大介エディション(4thモデル)
Ref.97.L384.400/04.M384
クロノマスター リバイバル ルパン三世 ファイナルエディションで終わりかと思われたゼニス × ルパン三世のコラボレーション。3年の沈黙を破り、1stモデルから数えて実に6年目となる2025年に発表されたのが、このクロノマスター リバイバル 次元大介エディションだ。本作のインスピレーションソースとなったのは、2020年発表の2ndモデルと同じく『ルパン三世』第1シリーズ最終話「黄金の大勝負!」の冒頭で次元大介が着けていたブレスレットモデルだ。
2ndモデルと異なるのは、その再現度である。2ndモデルも十分に劇中の時計を表現したものだったが、ゼニスとしてはまだ完璧ではなかったのだろう。本作はダイヤルカラーや外装の色味をさらに劇中の表現に近づけ、ベージュダイヤルにマットブラックのインダイヤル、ブラックの針に温かみのあるベージュカラーの夜光を施し、そしてケースと、それに合わせたおなじみのラダーブレスレットには、マイクロブラスト仕上げを施したマットブラックチタンを採用することでダークグレーのニュアンスを引き出した。
マイクロブラスト仕上げのマットブラックチタンケースが公式に登場したのは、2020年に登場したクロノマスター リバイバル シャドウが初めてだった。状況からすると、2020年時点でも技術的には本作と同様のモデルが製作できたのではないかと推察できるが、当時のサプライヤーの技術では、本作のダイヤルのようなレトロな雰囲気のベージュカラー文字盤の表現が難しかったとも言われており、年月を重ねたからこそその進化を感じることができる。
そんな本作の価格は143万円(税込)で、世界限定200本。2025年11月19日に伊勢丹新宿店メンズ館1階ザ・ステージで開催されたポップアップストアとオンラインブティック(日本のみ)で世界先行販売を開始し、11月26日から世界中のゼニス ブティックおよびオンラインブティックでの発売を開始した。オンラインブティックをみる限り、まだ購入可能(本稿執筆時点)であるようだが、過去のモデルはいずれも完売となったレアピースゆえ、本作が完売となるのも時間の問題であろう。
そのほか、時計の詳細はゼニス公式サイトをご覧ください。
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