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フィリップスは、2017年5月に開催されるジュネーブオークションで出品される品々を明らかにしたが、驚くべきことに、そのカタログには、幻の“バオ・ダイ”ロレックスのRef.6062が載っていたのだ。“究極の時計”という言葉をよく聞くが、このトリプルカレンダーのロレックスに関しては、まさに最適な表現だ。
※本稿は2017年3月にHODINKEE US版で公開された記事の翻訳です。
ブラックダイヤルとダイヤモンドマーカーの組み合わせは、Ref.6062としては最も珍しい構成だが、このユニークなタイムピースの高貴な出処が、その魅力をさらに高めている。“バオ・ダイ”は、1954年にベトナムのグエン朝の最後の皇帝に販売されたが、その後、持ち主が替わったのは元の所有者の家族がオークションに出した2002年の1度だけだった。落札価格は23万5000ドル(当時約2700万円)という、その時の史上最も高価なロレックスとなった。15年経って、その時計が再びタイトル(2017年3月当時は、スプリットセコンドが保持していた)を取り返すだろうと考えられている。予想落札価格は、少なく見積もっても150万ドル(約1億5570万円)以上だ。多くの人は、その金額が、コレクターが喜んで支払う額の半分にすぎないだろうと信じている。
ロレックスにおいて、トリプルカレンダーとムーンフェイズを搭載したのは2つのモデルだけで、いずれも1950年代の初めだった。以来、当然のことながら、両モデルともその印象的な外観のために非常に切望されるようになったのである。Ref.6062は、伝統的なオイスターケースに前述の複雑機構を搭載しているが、Ref.8171はより角張った(そして38mmと大きい)ケースを採用している。今日では、これらはオークションハウスが夢中になる時計であり、ステンレススティールとゴールドのモデルに関しても同様になっている。しかし、“バオ・ダイ”Ref.6062 は、全く別の次元にある。これは、めったに見ることのできない時計なのだ。
以前、この時計が出品されたのは2002年で、当時としては記録的な23万5000ドルという価格で落札された(当時の価格で約2700万円。当時と現在のオークション市場と為替レートは非常に異なっていたことを覚えておいてほしい)。2017年5月には、2016年に落札されたスプリットセコンド クロノグラフ Ref.4113の250万ドル(約2億6820万円)を抜いて、ロレックス史上最も高価な時計となる可能性がある(※当時の話。実際に更新されたが、その後2017年にはさらにポール・ニューマン所有のデイトナにより大きく更新された)。ルモンド・エドモンドの編集者であるエドモンド・サランは、実際手に取ったこの時計のライブ写真を共有している。このオークションに関しての彼の所感もサイトで見ることができる。一見の価値はある。
この時計の稀にみるストーリーは、間違いなく更にその価値を高めている。皇帝がジュネーブを訪問していた時に購入した時計を見つけるなど、非常に稀だ。当時、皇帝は店が提供できる最も価値あるロレックスを希望していたが、このRef.6062 がまさにそうだった。また、それは、当時のロレックスにおいて最も高価な時計でもあり、全部で3本しか存在しないことが知られている。さらに、“バオ・ダイ”の1本は、偶数時間位置にダイヤモンドマーカーをもつ唯一のものであり、他の2本は奇数時間位置にそれがある(1つは2006年に47万スイスフランを記録した)。このユニークな構成は、時計のデザインそのものに直接影響を与えた。リューズのロゴは通常よりも低い位置に配置する必要があり、その結果、クロノメーターのラインは、ムーンフェイズのすぐ下に配置されることになった。
この時計は1952年に製造され、翌年のバーゼルワールドに出品された。1954年には、当然のことながら最も高価なロレックスであり、パテック フィリップのパーペチュアルカレンダー Ref.1518に匹敵する価格がついていた。そのユニークさはさておき、このロレックスには、レギュラーモデルのRef.6062をすぐにコレクター垂涎の的にしてしまった理由がある:スポーティなオイスターケースの中に、自社製自動巻きムーブメントであるCal.655という複雑な機構を搭載しているのが素晴らしいのだ。このリファレンスは、どのオークションでも常に上位に来るものであり、フィリップスのジュネーブオークション:ファイブでは2本が出品された。2本めのRef.6062は、1953年に製造された見事なSS製のモデルで、その非常に優れた状態から、予想落札価格は60万~120万スイスフラン(約6718万〜1億3437万円)とされた。 ※実際の落札価格は、193万スイスフラン(約2億2065万円)
今回のオークションは、リファレンス6062だけのためでもなければ、ただのヴィンテージロレックスのためでもない(これらは最初に発表されたオークションの目玉商品だが、それ以外にも続く)。この超レアなリファレンス6062では、昨年の記録的な高値を記録した後の、ロレックス史上最高額の入札が行われるかもしれない。例えば、下のイエローゴールドのポール・ニューマンのデイトナは、予想落札価格80万~160万スイスフラン(約8994万〜1億7988万円)だ。それは間違いなく、レモン色のダイヤルとブラックのインダイヤルをもつことで知られる3本のイエローゴールド デイトナのうちの1本であり、“The Legend(伝説)”と呼ばれるにふさわしいものだ。 ※実際の落札価格は、372万2000スイスフラン(約4億2300万円)。
これだけが特別なデイトナではない。Ref.6265のカブースと、ティファニーの刻印入り Ref. 6241“ジョン・プレイヤースペシャル”もあり、どちらもその特徴を持つ唯一無二のモデルであると考えられている。また、ブラックのガルバニックダイヤルにイエローゴールドを使用した、今まで見た中で最も美しいRef.6238もある(ブラックダイヤルにゴールドのフォントはこれまでに2本しか発見されていないので、それほど大胆な表現ではないだろう)。この特別なRef.6238の予想落札価格は、25万~50万スイスフラン(約2716万〜5432万円)だった。 ※実際の落札価格は、44万6000スイスフラン(約5350万円)。
オークションの詳細、およびジュネーブ ウォッチ オークションの他のロット情報については、フィリップスのウェブサイトを。