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ポルシェ 911 S/TやGT3 RSの専用時計とは? ポルシェデザインのオーナー限定モデルとカスタムビルト

ポルシェ 911を手がけたフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェが1972年に創設したデザインブランド、ポルシェデザインの限定ウォッチを見ていこう。

HODINKEE Japanでは2026年10月30日(金)から11月5日(木)まで、Car & Watch Week 2026としてクルマとそれに関する時計に焦点を当てた特集を公開している。このウィークのために用意した新規取材記事をサイト上で毎日配信していく予定だ。すでに公開されたコンテンツについてはこちらから確認して欲しい。

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ポルシェデザインの時計、2つの注文方法

ポルシェの車両を注文するとき、ボディカラーやホイール、インテリアを選ぶ。その仕様を腕時計にも取り入れられるとしたら、どんな1本ができるだろうか。ポルシェデザインには、好みに合わせて時計の仕様を選べる「カスタムビルト・タイムピース」と、対象車種のオーナー向けに用意された車種専用クロノグラフがある。

 カスタムビルト・タイムピースは、用意された選択肢から時計の仕様を組み合わせて注文するシリーズだ。ポルシェの車両を所有していなくても注文できる。2025年に日本でも展開が始まったコンフィギュレーター(オンラインで時計の仕様を組み立てるツール)では、車両で選んだ外装色やインテリアの仕様を時計に取り入れることも、時計単体で好みの組み合わせをつくることもできる。

ポルシェデザイン クロノグラフ 1 ユーティリティ — HODINKEE限定モデル

長年愛されてきたポルシェデザイン クロノグラフ 1を、これまでで最も忠実に現代へよみがえらせたHODINKEEとの限定モデル。詳細はこちら。

 一方、車種専用クロノグラフは、対象車両のオーナー、または発注済みで納車を待つ購入者が対象となる。注文時には車台番号(VIN)を照合し、同じ車両向けの時計がまだ製造されていないことを確認する。この条件を満たせば、中古車のオーナーも注文できる。

 ポルシェデザインの時計の原点は、1972年に登場したクロノグラフ 1にある。911のデザインを手がけた創業者フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ(Ferdinand Alexander Porsche)が設計したモデルだ。クルマの機能性やデザインを腕時計に取り入れる考え方は、現在のカスタムビルトや車種専用モデルにも受け継がれている。

 こうした時計の存在は、ポルシェオーナーにもまだ広く知られているわけではないという。正規販売店では車両が主役となり、時計は関心を持った顧客に案内することが多いからだ。ポルシェデザインのコンフィギュレーターでは、15モデルをベースに時計の仕様を選べる。ここではまず911 スピリット70、911 S/T、911 GT3 RS、911 ダカール、718 ケイマン GT4 RSに対応する専用クロノグラフ5本とカスタムビルトを見ていく。


911 スピリット70(911 Spirit 70) ── パシャ柄と70年代の色彩

 1970年代の911に着想を得た911 スピリット70は、1500台限定で生産されたモデルだ。3.6リッター水平対向6気筒エンジンにT-Hybrid(電動ターボとトランスミッション内のモーターを組み合わせたハイブリッドシステム)を組み合わせ、エンジンとモーターを合わせた最高出力は541PSに達する。車内では、シート中央部のパシャ柄やオリーブネオのカラーが目を引く。

 この車両に対応する専用クロノグラフは、ポルシェデザインの1919コレクションをベースとしている。ダイヤルにも、シート中央部に着想を得たブラックのパシャ柄を採用。文字盤外周のリングには、ヘリテージのレブカウンター(エンジン回転計)に使われたフォスファーグリーンとトラフィックレッドを配し、サブダイヤルや日付表示の数字にもフォスファーグリーンを取り入れた。時分針とインデックスには白いスーパールミノバを塗布し、色のアクセントと暗所での視認性を両立させている。

 ケースは42mm径のチタン製で、ブラックのチタンカーバイドコーティング仕上げ。ケースバックには車両と同じ限定番号が刻まれる。内部のCal.WERK 01.100はCOSC認定を取得し、ローターは専用ホイールを模したブラックとブロンザイトのツートンカラー。中央には歴史的なポルシェクレストを配した。ストラップには車両用レザーと糸を用い、バサルトブラックの表面にボンネットの911グラフィックとデコラティブストライプを型押ししている。オリーブネオまたはダークシルバーのステッチが入った2種類のストラップがセットに含まれ、工具なしで交換できる。


911 S/T ── マニュアル車のシフトパターンを文字盤に

 911 S/Tは、911誕生60周年を記念した限定モデル。排気量4.0リッターの自然吸気エンジン(ターボを使わず、エンジンが自ら空気を取り込む方式)を搭載する。エンジンは水平対向6気筒で、最高出力は525PS。6速マニュアルトランスミッションを組み合わせ、車両全体の重さは1380kgに抑えられている。

 時計も車両と同じ1963本限定で、ポルシェデザインのクロノグラフ 1をベースとしている。ブラックのダイヤルとベゼルリングは、歴代911 S/Tの計器を思わせる。分目盛りの赤い“60”は911の60周年を示し、数字、曜日表示、日付にはフォスファーグリーンを採用。さらに、マニュアル車であることを示すシフトパターンをダイヤルにプリントした。ケースは無コーティングのチタンをサンドブラストで仕上げている。

 ムーブメントはCOSC認定のCal.WERK 01.240。フライバック機能により、計測中にプッシャーを押すと針がゼロに戻り、すぐ次の計測に移れる。ストラップには車両用レザーとインテリア用の糸を用い、軽量化を意識した左右対称のパンチングを施した。無コーティングのチタンブレスレットも選択でき、クイックチェンジ機構によって工具なしで交換できる。軽さとマニュアルトランスミッションを重視したS/Tの性格は、シフトパターンやケースの仕上げにも表れている。


911 GT3 RS ── ラップ計測と脈拍を示すサーキット仕様

 S/Tが軽さとマニュアル操作に重きを置くのに対し、911 GT3 RSはサーキットでの走行性能を追求したモデルだ。可変式の空力パーツ(走行状況に応じて角度を変える前後のウイング)を備える(ウイングに当たる空気の流れで車体を路面に押しつける力を、ダウンフォースと呼ぶ)。時速200kmでは、車体に約409kgの重量を載せたときと同程度の力が下向きに働く。これによりタイヤが路面を捉えやすくなり、高速走行時の安定性が高まる。

 専用クロノグラフは、ポルシェデザインのカスタムビルト・タイムピース(後述)をベースに仕立てられている。時計のダイヤルにはカーボンファイバーを用い、プッシャーにはStart/StopとNext Lapの文字をレーザー刻印した。9時位置のスモールセコンドには911 GT3 RSのロゴと、サーキットの縁石を思わせる赤と白のグラフィックをあしらっている。ベゼルにはパルスメータースケールを備えた仕様も用意され、クロノグラフで脈拍を30回数えた後、秒針が示す目盛りから1分間あたりの心拍数を読み取ることができる。ラップを計測するための操作系に加え、ドライバー自身の脈拍も測ることが可能。

 ムーブメントはCOSC認定のCal.WERK 01.200で、フライバック機能を備える。ケースはブラックまたはナチュラル仕上げのチタンから選択可能で、ケースバックから見えるローターには、ヴァイザッハ・パッケージ(軽量化を重視したオプション仕様)用のマグネシウム鍛造ホイールのデザインを取り入れている。


911 ダカール(911 Dakar) ── 砂に備えるケースとラリーの色

 911 ダカールは、舗装路の外も走ることを想定した911であり、地面と車体のすき間は標準で161mm。リフトシステムを作動させるとさらに30mm上がり、最大191mmになる。

 専用クロノグラフのベースは、ポルシェデザインのクロノグラフ 1。ここで目を引くのはケースの素材だ。チタンカーバイド(TiC)をコーティングではなくケースそのものに採用し、実現までに5年をかけた。細かな砂による傷に強く、チタンよりも軽いという。粉末をまとったような黒い外観と結晶質の表情も、一般的なチタンケースとは異なる。ダイヤルには赤い“TiC”の文字と“60”の目盛りを配し、ブラックの文字盤にアクセントを加えた。

 通常モデルに加え、1984年のパリ・ダカールラリーで優勝したポルシェ953のカラーリングを取り入れた911 ダカール ラリーデザイン エディションも用意。スモールセコンドの白、青、金、赤のグラフィックが、当時のラリーカーを想起させる。ムーブメントはS/Tと同じCal.WERK 01.240。ストラップはシート中央部に着想を得たパンチングとRace-Tex™(ポルシェ車の内装にも使われるマイクロファイバー素材)の裏地を組み合わせ、通常モデルにはシェードグリーン、ラリーデザイン エディションはシャークブルーのアクセントを加えた。2種類の時計は合計2500本限定で、ケースバックには車両と同じ限定番号が刻まれる。


718 ケイマン GT4 RS(718 Cayman GT4 RS) ── レブカウンターの色を腕元に

 718 ケイマン GT4 RSは、ミッドシップ(運転席の後方にエンジンを置くレイアウト)を採用し、ノンターボ自然吸気の4.0リッター水平対向6気筒エンジンを搭載する。最高出力500PSを8400rpmで発揮し、エンジンは9000rpmまで回転する。

 この専用クロノグラフもカスタムビルト・タイムピースをベースとしている。時計のマットブラックダイヤルは、車両のレブカウンターを思わせる意匠だ。サブダイヤルと針にはシグナルイエローを使い、外周のアークティックグレーのリングが文字盤を囲む。9時位置のスモールセコンドにはGT4 RSのロゴとチェッカーフラッグを配した。専用ストラップには車両と同じブラックレザーを用い、裏地にRace-Tex™、表面にGT4 RSの型押しを施している。ステッチはアークティックグレーまたはディープシーブルーから選べる。

 ムーブメントはGT3 RSと共通のCal.WERK 01.200で、COSC認定とフライバック機能を備える。同じキャリバーを用いながら、GT3 RSがカーボンファイバーの文字盤やラップ計測の操作表示を前面に出すのに対し、GT4 RSはレブカウンターを示す表示の色と構成を中心にまとめている。


好みの仕様から組み立てるカスタムビルト

 専用クロノグラフが車種ごとの計器表示や内装、用途を時計に反映するのに対し、カスタムビルトでは、コンフィギュレーターで選べる15モデルからベースを選び、色や素材、各部の仕様を好みに合わせて組み合わせられる。選択の幅は広く、ダイヤルリングの色から、ストラップ、ケース、ローター、そしてケースバックの刻印にまで及ぶ。

 ダイヤルリングには911の標準色に加え、ペイント・トゥ・サンプル(既存色以外の車体色を指定できるポルシェの特別塗装プログラム)を含む全189色を用意。ガルフブルーやルビースターといった往年のカラーも選べる。ストラップにはポルシェのインテリアに使われるレザーを採用し、911の内装色をそのまま反映可能だ。ステッチにも車内と同じ糸を使うことで、色だけでなく手触りという素材の面でも車両とのつながりを持たせている。また、ケースの仕上げに合わせたチタンブレスレットも選択できる。

実際のコンフィギュレーター画面。

 軽量なチタン製ケースは、ナチュラルチタンとブラックチタンの2種類を用意。いずれもビーズブラスト仕上げで、ブラックチタンにはさらにブラックコーティングを施している。ケースバックから覗くローターは、911の軽合金ホイールを忠実に再現したデザインだ。カラーだけでなく、センターロックやポルシェクレストをあしらったハブキャップなど、実車由来のディテールも指定できる。さらにケースバックにはVIN(車台番号)などをレーザー刻印でき、車両との結びつきを文字として刻むことも可能だ。

 そしてムーブメントは、クロノグラフのCal.WERK 01.100と、第2時間帯を表示するグローブタイマー機能を備えたCal.WERK 04.110の2種類で、いずれもCOSC認定を取得。仕様が決まった時計は、スイス・グレンヘンにあるポルシェデザインの時計工房で1本ずつ製作される。


乗り換えたあとも手元に残る時計

 今回取り上げた時計には、車両のボディカラーやインテリアから仕様を組み立てるカスタムビルトと、車種ごとの計器表示や素材を取り入れた専用クロノグラフがある。どちらにも、クルマの特徴が時計の具体的な仕様に表れている。

 取材のなかで、ポルシェ ジャパンの担当者は、時計が持つ意味について「車両はいつか手放すことがあっても、時計はその車に乗っていた時間を手元に残す存在になりうる」と語った。

 一台に長く乗り続けるあいだも、乗り換えた後も、時計は日常で使い続けられる。文字盤やストラップに残る色や素材は、選んだ一台の仕様を思い返す手掛かりになる。車両を手放したあとも、その一台とのつながりを手元に残せることが、ポルシェデザインが提案するタイムピースの魅力なのだろう。

ポルシェデザイン タイムピースコンフィギュレーターについて、詳しくはこちらをご覧ください。