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Auctions 2026年ジュネーブ秋季オークションのメガプレビュー―パート2:フィリップス、サザビーズ、マルトー&カンパニー

今回のオークションに出品される、残り400本超の時計を見ていこう。

本日からジュネーブで開催される4つのオークションのうち、ふたつを取り上げた。今回は、残るフィリップスとサザビーズを見ていく。これで、私が記事で取り上げる候補として目を通した時計は約1200本に達することになる。掘り出し物を見落としているか? もちろんあるだろう。写真で見るほど実物は魅力的でない時計も1、2本あるか? きっとそうだろう。それが私が今週ジュネーブに来て、できるだけ多くのプレビューを見て回っている理由のひとつである。前にも述べたように、気になる点があれば記事を更新するつもりだ。これ以上の前置きは省いて、さっそく時計を見ていこう。


フィリップス―2026年11月7日と8日

 さて、今週はジュネーブにいる。主な目的はGPHGだが、うれしいことに、GPHGの授賞式が行われる当日の朝からフィリップスのオークションが始まる。つまり朝はフィリップスで入札を見届け、その後ホテルに戻ってスーツに着替え、夜はパーティを楽しめるというわけだ。これ以上、何を望むだろう?

市場に初めて登場した、実質ワンオーナーのロレックス Ref.6062 “ステッリーネ”。Photo courtesy Phillips

 フィリップスには欲しいものがたくさんあるが、まずは今回初めて市場に出たばかりのこの素晴らしいロレックス Ref.6062 “ステッリーネ”から始めよう。推定落札価格が60万スイスフラン(約1億1600万円)を超えるこの時計は、私が長らく見てきたなかでも、最も美しく、オリジナルの状態をよく保ったイエローゴールド(YG)製のRef.6062のひとつである。出品者は元の所有者の家族から購入し、ほぼすぐにオークションへ出品したため、実質的にはワンオーナー品といえる。ダイヤルには経年変化が見られるものの、気になるほどではない。ケースには青や緑の色合いを帯びた見事なパティーナが現れているが、コンディションも驚くほど良好だ。2018年にロレックス “ダークスター”が157万ドル(当時のレートで約1億7300万円)で落札されたのだから、こちらはさらに高値をつけると予想している。まったく別の話だが、こちらのロレックス Ref.2737 “レギュレーター”もかなりおもしろい。

Photo courtesy Phillips

 さて、これでジュルヌについて議論する前に少し休憩できた。先日、このプレプロダクションのクロノメーター・レゾナンスをどう捉えるべきかについて議論があった。このロット以外にもジュルヌの時計が13本(時計全体の約6%)出品されており、そのうちクロノメーター・レゾナンス “レジャンス(Régence)”は、プレプロダクションモデルを上回る100万スイスフラン(約1億9300万円)超の推定落札価格が付けられている。ジュルヌ本人が、最初に製作したレゾナンスにホワイトゴールド(WG)製の手彫り“レジャンス”ダイヤルを取り付けた。レジャンスダイヤルは3枚しか存在せず、今回出品されるピンクダイヤルは唯一のものだという。これはとんでもない価格になるはずだ。プラチナケースにダイヤモンドをあしらったヴァガボンダージュ Ⅲは、今年初めに110万ドル(約1億7300万円)で取引された(個人間取引)。そこでフィリップスに出品される時計の評価基準として、この数字を使ってみようと思う。

フィリップスのオークションで注目を集める2本の逸品は、フランソワ-ポール・ジュルヌ氏の個人所有の時計に次ぐ、シリアルナンバーが2番目に古いF.P.ジュルヌ 22/99Rと、伝説的なSS製のパテック フィリップ Ref.1436である。Photo by Mark Kauzlarich

 推定落札価格を基準にすれば、今回のトップロットは、複数のオークションハウスを通じても久しぶりとなるステンレススティール(SS)製のパテック フィリップ Ref.1436だ。直径わずか33mmと小ぶりだが、存在感は十分で、この個体はケースの状態もきわめて良好に見える。これまでに撮影されたSS製のRef.1436は3本あるが、多くの議論、調査、そしてここでは関係のない業界関係者の憶測を経て、正しい個体と認められているのは2本だけであることが判明した。この時計はそのうちのひとつであり、率直に言って、今後数十年のうちに入手できる可能性があるのはこの個体だけだろう。もう一方(Astrua Torinoのサイン入りの個体)はコレクションに収蔵されており、おそらく売りに出されることはないからだ。

 この時計はよく知られた個体で、興味深い来歴を持つ。最初に元の所有者の家族から売りに出された際には、ほとんど注目されなかった。実際、当初は“ただの”SS製パテック フィリップであることを理由にオークションへの出品を断られ、代わりに素晴らしい2本(ピンクゴールド/PG製ケースにピンクダイヤルを組み合わせたRef.1463と、シルバーダイヤルを備えたPG製のRef.1518)が出品された。その後、この時計は探し出され、2009年にアンティコルムでようやく売りに出された。次に出品されたのは2015年のフィリップスで、その際には300万スイスフラン(当時のレートで約3億6700万円)を超える価格で落札された。そして今回、その落札者が再び出品する。

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ダイヤルはきわめてクリーンだ。

そして、ケースはエッジがしっかり残っている。

それぞれSS製とYG製。後者はティファニーのサイン入りだ。Photo by Mark Kauzlarich

 そのため、現在の推定落札価格が200万スイスフラン(約3億8600万円)から始まるというのは少し控えめに感じられる。だが、これは単に期待感を高めるための策略かもしれない。Ref.1436の需要は高まっているようで、フィリップスはこの秋、ジュネーブと香港で合計4本を出品する。素材は3種類すべてそろう。市場の反応を探りながら、最高峰といえる個体を1本提示しているのだろう。推定落札価格が40万スイスフラン(約7700万円)からのティファニーのサイン入り個体もある。ダイヤルが正しいものであることを裏付ける調査資料もそろっているが、2本のケースを比べると、SS製パテック フィリップの個体の状態のよさが際立つ。

外観だけではそう見えないかもしれないが、これは初期(1年目と2年目)のパテック フィリップ Ref.5004のなかで、唯一無二ではない構成としてはおそらく最も希少なものだ。きわめてシンプルなため、入札者の目に留まりにくいかもしれない。Photo courtesy Phillips

短い針、短いリューズ…

そして第1世代のスピリットセコンド “ブロック”ブリッジ。

 最近、パテック フィリップのスプリットセコンド・クロノグラフについて考えることが多かったので、2本の初期の短針仕様のRef.5004が目に留まった。ひとつは伝統的なシルバーのアラビア数字ダイヤルを備えたプラチナ製、もうひとつは、バトンインデックスを配したきわめて珍しいブラックダイヤルを備えたWG製で、こちらはさらに高値になるはずだ。どちらも推定落札価格は18万〜36万スイスフラン(約3400万から6900万円)である。プラチナ製の個体は短いリューズと初期のブロック型スプリットセコンドブリッジを備えており、サービス時に一度もアップデートされていないことがわかる。その分、いっそう希少だ。一方、ブラックダイヤルの個体は第3世代のムーブメントブリッジと長いリューズを備える。そのほかに注目したいパテックが2本あり、ダイヤモンドインデックスを備えたおそらく唯一の個体である比較的最近のRef.5013R-014と、パテック フィリップの上に”Gumbiner”のサインが押し込まれているRef.2497だ。その時計は2019年にクリスティーズ香港で約380万香港ドル(当時のレートで約5300万円)で落札されたので、総額50万ドル(約7900万円)というのは妥当な価格と言えるだろう。

Photos by Mark Kauzlarich

 価格帯を少し下げると、個人的に所有できたらうれしい、実に魅力的なカラトラバが5本ある。ツートンケースにブラックダイヤルを組み合わせた、エベラールのサイン入りRef.570は、実物を見ると見事な時計だ。直径36.5mmで、現代でも十分に着けやすいサイズである。確認されているのはこの1本のみで、そのこともあって推定落札価格は25万〜50万スイスフラン(約4800万から9600万円)とかなり高額だ。すぐ上に並ぶRef.1589も、“現存が確認されている”のは1本だけである。ケース一体型のラグとブレゲ数字は魅力的だが、実物はそこまで目立たない。また実物は見ていないものの、夜光塗料を施したブレゲ数字ダイヤルを備えるYG製Ref.96 SCは、サイズを別にすればまさに好みの1本だ。SS製で、ブレゲ数字をエングレービングしたこちらの個体も僅差で続く。もう少し大きめがよければ、Black, Starr & Gorhamのサインが入ったスポーティなSS製のRef.565も候補になる。

 ヴィンテージロレックスのクロノグラフに詳しい人なら、プッチ・パパレオ(Pucci Papaleo)氏の名をご存じだろう。研究者であり、コレクターであり、著者でもある彼は、おそらく世界の誰よりも多くのヴィンテージロレックス クロノグラフを見てきた。そしてその知見を記録し、広く共有してきた。彼のストーリーはフィリップスのブログで紹介されている。さらに注目すべきは、彼が素晴らしい時計をいくつも出品することだ。今回のテーマ別出品は第1弾となる(全部で何回になるかはわからない)。

 出品される時計の多くは、ほとんどの人にとって手の届かない価格帯にある。それでも、彼のクロノグラフをひと通り見てみることをすすめたい。なかには驚くほど控えめな時計もあり、その分、そうした個体に付けられた高額な推定落札価格に驚かされる。一方で、時計研究の見方を変えるような個体もある。たとえば上に掲載したRef.3525 “バリロット”は、シドニーの小売店Proudsのサインが確認されている唯一の個体だ。よく見ると、そのサインはかなり初期のものと思われる。

Photo courtesy Phillips

 ニューヨークでのプレビューでは数本を見たが、直径わずか28mmのRef.2303のモノプッシャー、ステップラグを備えた(ダブルネームの)Ref.3835、(ヴェルガが販売した)サーモンダイヤルの小ぶりな32mmのディスコ・ヴォランテ クロノグラフ、そして100万スイスフラン(約1億9300万円)を超える推定落札価格が付けられた、おそらく唯一のRef.3830 “アンチマグネティック”スクエアウォッチを見られて、とても楽しかった。こうした独創的なデザインの時計は、同じようなモデルが繰り返し登場するように感じられるロレックス市場に新鮮さをもたらす。そして、定番の枠を外れても優れた時計に出合えること、さらには、いつか市場がその価値を認めることを示している。

Photo courtesy Phillips

 インディペンデントウォッチメイキングへの需要は、まだしばらく続くと多くの人が考えているだろう。現代の独立時計師の時計を買う人のなかには、流行を追う人もいる一方、初期から支持してきた人々は、インディペンデントウォッチメイキングに深く関心を寄せていると私は見ている。そこで、ここでは2人の時計師を並べて取り上げたい。フィリップ・デュフォーとロジャー・W・スミスという2大巨匠の、最も象徴的な時計がそれぞれ出品される。市場の知識が深まり、デュフォーの作品が広く知られるにつれ、初期のデュフォーシンプリシティは価値を高めていくと思う。2004年製のこちらは初期の魅力的な個体だ。少し変化球ではあるが、アラビア数字のインデックスを配したWGとPGのツートンケースを備えるロジャー・スミス シリーズ1も、少なくとも唯一無二の存在だ。推定落札価格30万〜60万スイスフラン(約5800万から1億1600万円)の上限近くで、すぐに買い手が見つかるだろう。

Photo courtesy Phillips

 一方、目の肥えた時計好きとして、独立時計師を早くから支持してきた人々の仲間入りをしたいなら、懐中時計を買おう。さらに具体的に言えば、私が実物を見たくてたまらない、デテント脱進機を備えたリチャード・ミクロシュ氏(Richard Miklosch)のフライング・トゥールビヨンを買ってほしい。昨年秋のオークションシーズンには、いくつかの懐中時計が(やや予想外に)高額で落札されたが、これも同様にきわめて良い結果になるはずだ。数学者から時計師に転身した彼は、時計製造界のビッグネーム(カリ・ヴティライネンなど)に影響を与えたが、ほかの著名な人物と同様に、2014年に亡くなるまで正当な評価を受けることはなかった。彼が製作した時計はわずか14本。そのうちの1本は今年初め、ドイツのCortrieで手数料別の90万ユーロ(約1億6000万円)で落札され、予想を大きく上回った。もうひとつ重要なトゥールビヨン懐中時計を狙うなら、フライング・トゥールビヨンが考案されたドイツ時計学校で1935年に製作された、ユルゲン・クールス(Jürgen Kuhls)の時計を検討してみてはどうだろうか。しかし前回出品された同じ時計は、今回の低いほうの推定落札価格の4倍で落札されている。

 フィリップスの“The Geneva Watch Auction: XXIV”ライブオークションの詳細については、こちらをご覧ください。

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サザビーズ―2026年11月8日と9日

 最後はサザビーズだ。時計を見続けて疲れてきたからというわけではない。取り上げるに値する時計が、ほかの時計よりもはっきりと際立って見えるからだ。とはいえ3巡目に目を通したときにも、気になる時計はいくつもあった。たとえば、このヴァシュロン・コンスタンタンのジャンプアワーや、パーペチュアルカレンダーだ(推定落札価格が笑ってしまうほど低いが、入札者に期待を持たせるためだろうか)。

オクタ・クロノグラフ “ルテニウム”。 Photo courtesy Sotheby's

 驚くことではないが、ジュルヌの時計も多く出品されている。真鍮製ムーブメントを搭載したクロノメーター・レゾナンスがもうひとつある。今シーズンで3本目…いや、4本目だろうか? もう数えきれなくなった。初期の個体で、ほかとは異なる仕様のため、選択肢のひとつにはなる。かなりヴィンテージらしく見えるオクタ・クロノグラフもある。こちらはルテニウム仕様で、経年変化が進んでいるため、そのような雰囲気をまとっているのだ。昨年、オクタ・クロノグラフの落札結果に驚かされたことをきっかけに、あるコレクターと意義深い話をする機会があった。その人のおかげで、技術面でも着けやすさの面でも、この時計がいかに優れているかに気づかされた。

史上初の量産モデル、Ref.3970。Photo courtesy Sotheby's

 私にとって、関心の大部分はパテック フィリップに向かった。私は根っからのヴィンテージ好きなのだろう。そう考えると、今シーズン出品されるパテックのなかで最も重要なのは、おそらくこのRef.3970Jだ。これは(プロトタイプではなく)シリアルナンバーを持つ最初の個体とされ、その番号は875’000である。この時計は過去に2度落札されているが、最後の取引から10年以上が経っている。近年、Ref.3970の需要が高まっていることを考えても、時計史に残る1本を手に入れる絶好の機会だ。推定落札価格は100万〜300万スイスフラン(約1億9300万から5億8000万円)で、リファレンスの記録更新はほぼ確実だろう。しかし、昨年Ref.3970EP-038が記録した139万7000スイスフラン(当時のレートで約2億6700万円)を超える必要がある。

きわめてクールなSS製のRef.530だが、残念ながらダイヤルはパテック フィリップによって修復されている。そういった点を許容できる方であれば、魅力的な購入候補となるだろう。Photo courtesy Sotheby's

 あまりオークションに出回らない時計の一つに、スカイムーン トゥールビヨン Ref. 5002があります。今回のオークションの推定落札価格はRef.3970と同じで、確かに重要で技術的にも素晴らしい時計ですが、エレガントさには欠けます。エレガントさを求めるなら、ハウスマンのサインが入ったRef. 1463「タスティ・トンディ」がおすすめです。実物を見ていないので断言はできませんが、非常に状態の良い個体のようです。また、素晴らしいブラックダイヤルと長いサインが特徴的なスチール製のRef. 530も魅力的です。ラグはやや「スリーブポリッシュ」されているように見えるという意見もありますが、より重要なのは、ダイヤルがパテックフィリップによって修復されている点です。最高の出来とは言えませんが、適正価格であれば十分通用します。もう少し手頃な価格のスチール製カラトラバとしては、夜光塗料付きのブレゲダイヤルを備えたこの565や、特別なダイヤル構成がないためあまり知られていない(しかし、素敵な長いサインが付いている)初期のRef.96などがあります。

 めったにオークションに出ない時計といえば、スカイムーン・トゥールビヨン Ref.5002もそうだ。ただし、こちらの推定落札価格の下限はRef.3970と同じである。重要で技術的にも見事な時計だが、エレガンスではかなり劣る。優雅さを求めるなら、ハウスマンのサインが入ったRef.1463「タスティ・トンディ」を選びたい。実物は見ていないが、とても状態のよい個体に見える。個人的には、驚くほど美しいブラックダイヤルと長いサインを備えたSS製Ref.530にも惹かれる。ラグは、コレクターが言うところの「袖口で磨かれた」ような状態に見えるが、さらに重要なのは、文字盤がパテックによって修復されていることだ。最高の仕上がりとは言えないものの、価格次第では許容できる。もう少し手の届きやすいSS製カラトラバなら、蓄光塗料を施したブレゲ数字ダイヤルのRef.565や、特別な文字盤仕様ではないため少し見過ごされそうだが、長いサインが魅力の初期型Ref.96がある。

The Rolex Tru-Beat is so underappreciated, people used to swap out the movements to make them look less "quartz," but imagine Rolex making a dead-beat seconds today. Photo courtesy Sotheby's.

 フィリップスに出品されたRef.6062のパティーナが気に入ったなら、サザビーズではもっと手頃な価格で、似た雰囲気のRef.6032アンチマグネティック・クロノグラフを狙える。推定価格は20万〜40万スイスフランと、もちろん安くはない。だが、デイトナ以外のモデルに目を向けると、どれほど魅力的な時計に出合えるかという話を思い出してほしい。このリファレンスでこれまでに落札されたのはわずか4本で、そのすべてが正しい個体とは限らない。今回の個体は素晴らしい。見事なパティナに加え、ケースバックのエングレービングも魅力的だ。

 とはいえ、歴代デイトナのなかでも特に好きな1本は、サザビーズが出品するソーダライトダイヤルとサファイアベゼルのモデルだ。ただ、派手なブルーのアリゲーターストラップに戻して、その魅力をもっと前面に押し出してほしい。ここしばらく、オリジナルのデッドビート・セコンド機構とトゥルービート・ダイヤルを備えた、状態のよいロレックス トゥルービートを探している。だが価格は上がり続け、良品を見つけるのは難しい。メッシュブレスレットを備えたYG製のこの個体はかなりよさそうだが、写真から状態を判断するのは少し難しい。

 ほかに目を引いた現代の時計は、最近の限定モデルがいくつか出品されていたことだ。市場に出てくるのが意外だった。カルティエ ペブルは発表からしばらく経つので、そろそろ市場に出始めてもおかしくない。一方、2025年製のダニエル・ロート エクストラ プラット スークリプションや、2024年製のMB&Fレガシー・マシーン パーペチュアルは、まだかなり新しい。もちろん、自分の時計をどうするかは持ち主の自由であり、私がこうしたことを裁く立場にあるわけでもない。ただ、正規価格で買いたかった人がほかにいたはずだと思うので、落札価格も購入時の価格に近いところに落ち着いてほしい。

 出品されるパテック フィリップ Ref.3448Gが2本あること(1本はこちら、もう1本はクリスティーズ)と同じく、ベンもダニエルズ・ミレニアムへの関心について書いていたので、ここではこれ以上触れない。その代わり、最後に懐中時計について書きたい。とりわけ、パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーター、グラン・プチ・ソヌリを備えた初期のA.ランゲ&ゾーネの懐中時計をぜひ実物で見たい。これは、スプリットセコンドを備えた同種の時計よりも、複雑機構をひとつ減らした仕様といえる。かつて、そうした時計に現在のような推定価格が付くことはなかった。懐中時計好きとしては、私にも納得できる形で市場が落ち着いていくのではないかと期待させてくれる。

 サザビーズの「Important Watches」ライブセールについて詳しくは、公式サイトをご覧いただきたい。


マルトー&カンパニー — 10月30日~11月6日

 今週、もうひとつ気に留めておきたいオークションがある。他のセールよりも早く終了するため、先に見ておく必要があるのだ。マルトー&カンパニー(Marteau & Co.)のオークションは、ジュネーブ時間で2026年11月6日(金)午後2時30分に終了する。オンラインで入札が続けば、各ロットの終了時刻は延長される。また、少し変わった試みとして、競売人が会場を仕切ることなく、コレクターが集まって落札結果を見守るイベントも開かれる。入札を眺めながら、気軽に過ごせる場だ。

 先月、史上最も高額なオンラインセールのひとつ(あるいは最高額かもしれない)が行われたばかりの今回のセールは、ブルーをテーマにしている。まずは、以前にも取り上げた、ブルーアベンチュリンダイヤルを備える唯一無二のフィリップ・デュフォー シンプリシティから始まり、執筆時点での入札額は85万スイスフランに達している。もっと手頃な掘り出し物もあると言いたいところだが、私のお気に入りの多くはすでに驚くような価格になっている。そのひとつが、こちらのカリニッヒ・クライス「アインザー」ピース・ユニークだ。クレエ氏が最近事業を離れたため、今後数カ月以内にヨハネス・カリニッヒ(Johannes Kallinich)氏に話を聞く予定だ。しかし残念ながら、1万2000スイスフランの開始価格はすぐに過去のものとなり、現在は10万スイスフラン前後まで上がっている。

 おもしろいことに、ベンが別のセールに出品されたケース径45mmのヴティライネンについて、その希少性を記事にした後、あるコレクターから「ヴティライネンがそのサイズで製作したのはほんの数本で、当時は誰も欲しがらなかった」とメッセージが届いた。ときには、証明できることだけを書くしかない。私はその事実を証明できなかったので、記事では踏み込まなかった。ところが、ここに実物という証拠がある。正確には、WG製だ。

 取り上げる時計があちこちに飛んでしまうが、もう少しお気に入りを挙げたい。新作のルイ・エラール×ヴィアネイ・ハルターには賛否があったようだが、私はかなり気に入った。こちらは唯一無二の仕様で、価格は現在3万5000スイスフラン。若者の言い方を借りれば、気に入らない人はあちらへどうぞ、というところだろう。子どもたちのためのチャリティに寄付され、入札者からも同じように熱い支持を集めている時計といえば、文字盤に「ポーラー・マザー・オブ・パール」を採用したバルチック ステップグラフのタンタル製プロトタイプもある。リザーブ価格にはすでに達している。いくらまで上がったのか? 現時点で2万2000スイスフランだ。本当にうれしい。

 最後に、あまり評価されていない独立時計師、ポール・ゲルバー(Paul Gerber)氏による、興味深く、独創的で、実に見事な小さな時計を紹介したい。ブランド名に使われている書体が好みではなく、個人的にはまだこの時計に惹かれていないのだが、魅力的だと感じる人は多い。時計製作の内容は実におもしろい。大幅に改造されたペセー 7001をベースに、特許取得済みのツインローター機構を搭載し、時・分表示、レトログラード式秒表示、動的なパワーリザーブ表示を備える。私が尊敬する人たちの多くがこの時計を高く評価しているので、一見の価値がある。ほかにも見どころはたくさんある。終了前に、ぜひチェックしてほしい。

 マルトー&カンパニーの「The Blueprint」オークションの詳細は、公式サイトをご覧いただきたい。