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Auctions 今秋のオークションシーズンで私が実際に注目している10本の時計

入札するつもりはないが、今後数ヶ月のあいだにいくつか掘り出し物が登場する予定だ。なかにはなんと1スイスフランから始まるものもある。

10月中旬にニューヨークで開催されたウォッチウィークに来ていたなら、会場で私を見かけたかもしれない。そう、実際に人前に姿を現したのだ。実際に人前に姿を見せてみた。意外と気分がよかった。うん、たぶんそうだったと思う。そして以前のようにオークションに目を向けてみたらどうだろう、と考え始めた。仕事としてだけでなく、時計好きとして、ときどき時計を買うひとりの人間として。そこでいくつかのカタログを開いて目を通し、これから数週間のうちに出品される時計から、自分のお金で買いたいと思う10本を選んだ。心配はいらない。オークション事情に精通したマークが、今後数日のうちに、今シーズンのオークションの動向について、より詳細な解説をしてくれる。


1.これまで知られているなかで最も古いランゲ1
Ten Watches I Actually Care About This Fall Auction Season

ケースバックが閉じられた状態のランゲ1だが、ケースバックを取り外すとムーブメント番号が10番であることがわかる。1995年1月付けの付属品一式と、オリジナルの販売レシートが付属していることはお伝えしただろうか?Photo courtesy of Auktionen Dr. Crott

Ten Watches I Actually Care About This Fall Auction Season

Photo courtesy of Auktionen Dr. Crott

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Photo courtesy of Auktionen Dr. Crott

 ソリッドケースバック仕様のランゲ1はご存じだろう。私はあれが好きだ。所有したこともある。だがこれほど初期のランゲ1を所有したことはないし、その存在を聞いたことすらなかった。ドクター・クロットには、プラチナ製の素晴らしいPLMも出品されている。10年以上前に私がスティール(SS)製ランゲ1を入手したのもこのオークションハウスで、ランゲの名品を扱ってきた実績もある。そこに今回、驚くほど初期のランゲ1が登場した。どれほど初期かというと、ムーブメント番号は10。さらに1995年1月の日付が記された書類と、手書きのオリジナル販売レシートが付属する。ランゲ1が発表されたのは1994年10月だ。初期のランゲ1を探しているなら、これより早い個体が近いうちに見つかるとは思えない。付属品の揃い方も驚くほどだ。若い頃の私なら、間違いなく夢中になっていた1本である。

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2. 初代オーナーが出品するダニエルズ・ミレニアムウォッチ
Ten Watches I Actually Care About This Fall Auction Season

独立時計師のものが好みだろうか? 本物のインディペンデントウォッチがこちらだ。しかも初代オーナーから直接購入できるもので、そのオーナーの父親はジョージ・ダニエルズ本人と親交があったそうだ。Photo courtesy of Sotheby's

 独立時計師の時計が人気なのは、もうご存じだろう。では、どれほど人気なのか。先週ニューヨークでは、一見ごく普通のF.P.ジュルヌのサンティグラフが167万ドル(約2億6000万円)で落札された。一方、現在も生産中のジュルヌ トゥールビヨンが155万ドル(約2億4000万円)で落札された。とんでもない話だ。同じオークションではオクタまで80万ドル(約1億2000万円)で落札された。あの時計はつい少し前まで、いくらだったか…3万5000ドル(約550万円)ほどで取引されていたのに。別のところでは、ウォッチチェックのオースティン・チュウ(Austen Chu)がラウル・パジェス RP1に60万ドル(約9400万円)を提示しているのを見た。この時計はつい最近まで、ラウルから8万5000ドル(約1300万円)で直接注文できた。今や市場に出ているカリ・ヴティライネンの時計は、どれも7桁の値が付いている。つまり、確かに独立時計師の時計は熱い。

 元祖の独立時計師といえば誰か? ジョージ・ダニエルズだ。今日私たちが知り、愛する独立時計師たちの土台を築いた人物であり、時計製造への貢献はどれだけ強調してもしすぎることはない。それなのに独立時計師の話題で真っ先に名前が挙がるのは、たいていF.P.ジュルヌだ。では、ジュルヌの師は誰だったかご存じだろうか? ジョージ・ダニエルズである。ミレニアムウォッチは47本が製造された。ダニエルズにとって初の、そしておそらく唯一の連続生産モデルであり、ミレニアムの終わりと、彼がコーアクシャル脱進機の開発に成功したことを記念して作られた。その脱進機は当時、“18世紀にトーマス・マッジがレバー脱進機を発明して以来、250年ぶりに実用化された新しい時計脱進機”と評された。

Ten Watches I Actually Care About This Fall Auction Season

Photo courtesy of Sotheby's

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Photo courtesy of Sotheby's

 ミレニアムウォッチは、時計史においてきわめて重要なモデルだ。250年ぶりに、レバー脱進機以外の脱進機を搭載した世界初の量産時計であるだけでなく(オメガがコーアクシャル脱進機を採用する1年前にあたり、コンセプトを売却する際にジョージ・ダニエルズが設けた条件でもあった)、若きロジャー・スミスとダニエルズを結びつけた最初のプロジェクトでもあった。時計の構想を練ったのはダニエルズだが、初めて迎えた唯一の弟子を試すため、ケース製作から針の切削、ダイヤルのギヨシェ彫り、組み立て、仕上げに至るまで、その多くをスミスに任せた。このプロジェクトを通じて、ふたりは時計師としても、人としても親交を深めた。これがなければ、今日のロジャー・スミスは存在しなかったかもしれない。彼は思想、経済、技術のすべてにおいて真の独立性を保つ、ごく数少ない独立時計師のひとりだと私は思う。

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Photo courtesy of Sotheby's

 ダニエルズのミレニアムが売りに出されることは、ほとんどない。しかも今回の個体は初めて市場に出るもので、出品者は最初のオーナーだという。オーナーの父親はダニエルズと親しい友人だったようだ。これ以上の来歴はないだろう。F.P.ジュルヌ トゥールビヨンのほとんどが、一般市場で100万ドル(約1億5700万円)を超える価値を持つのなら、この個体の30万〜60万スイスフラン(約5700万から1億1000万円)という推定落札価格はかなり控えめに感じる。少なくとも、そうであってほしい。というのもこの時計は、現在7桁の価格で取引される独立時計師の時計の多くよりはるかに興味深く、重要であり、独立時計製作の精神を体現しているからだ。買えるものなら、私も買いたい。そして今回のオークション直後にアワーグラスとフィリップスがダニエルズに関する大規模な特集を行うことを考えれば、この時計の評価にはまだ上昇の余地があると思う。ダニエルズの作品であるだけでなく、ロジャー・スミスにとって初の腕時計とも言えるのだから。

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3.90年代製のサーモンダイヤルを備えた、プラチナ製ヴァシュロン・コンスタンタン カレンダー ムーンフェイズ
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これはお買い得かもしれない。プラチナケースにサーモンダイヤル、さらにヴァシュロンのロゴ入り。これでもお買い得かもしれない。Photo courtesy of Sotheby's

 必ずしも独立時計師の時計で、7桁の価格である必要はないだろう? これは、プラチナ製ケースにサーモンダイヤルを組み合わせた、きわめてシンプルなヴァシュロン・コンスタンタンのトリプルカレンダーだ。もちろん、手巻きのヴィンテージムーブメントではない(JLC 889をベースとする自動巻きだ)。それでも予想落札価格は1万5000〜3万スイスフラン(約280万から570万円)で、この範囲に収まるならまさに掘り出し物である。

 この色のダイヤルを備えたプラチナ製モデルは、私も見たことがない。現在、大きな注目を集めているブランドの、希少で興味深く、価格も魅力的な個体だ。予想を上回る価格で落札される可能性はあるだろう。それでも、そうそう見つかるものではない。プラチナとサーモンの組み合わせは個人的にも大好きで、いままさに人気を集めている。手ごろな価格で手に入れられないか、チェックする価値はある。

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4.ホワイトゴールド製のパテック フィリップ 3448、自動巻きでパーペチュアルカレンダーを搭載
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パテック フィリップが製作した、世界初のホワイトゴールド製自動巻きパーペチュアルカレンダーは、先週F.P.ジュルヌ オクタ・リュヌが落札された価格と同額で落札されると予想されている。Photo courtesy of Christie's.

 最新の記事でも書いたとおり、一部の独立時計師の時計が、時計史においてきわめて重要で複雑なパテックを上回る価格で取引される市場の理屈が、私にはどうにも理解できない。Ref.1463は私には安く感じるし、Ref.3448も同様だ。しかし後者は実に興味深いモデルである。世界初の自動巻きパーペチュアルカレンダーとして、パテックを実用的なグランドコンプリケーションの領域へと導いた時計だからだ。

 この時計の角張った大ぶりなケースが好きだ。Ref.3448のムーブメントがRef.2526をベースにしていることは、もう話しただろうか。多くの人が、あのムーブメントを世界最高の自動巻きキャリバーだった、あるいは今もそうだと詩的なまでに称賛するのが理解できない。それがRef.3448のベースにもなっているのだ! 市場では、Ref.3940がRef.3448を上回る価格で取引されることもある。技術的な完成度、歴史、そして生産本数を考えれば、まったくばかげた話だ。これはまた別の機会に語ろう。

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Photo courtesy of Christie's

 Ref.3448なら、初期のイエローゴールド(YG)製を手にできたら最高だが、WG製はまさに夢の時計である。クリスティーズにもサザビーズにも1本ずつ出品されている。どちらも実物を見ていないので、私ならどちらにお金を出すかは言えない。だがどちらも本当に素晴らしい時計であり、市場にあるほかの時計と比べれば、比較的手ごろだ。しかもパテックの重要なグランドコンプリケーションでありながら、日常使いにも適している。

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5.オーバーサイズでブラックダイヤルを備えたエベラール スプリットセコンドクロノグラフ
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私はこれと似た時計を10年以上所有しており、今のところ売却する予定はない。Photo courtesy of Monaco Legend Auctions

 私がずっと所有していて、本当に気に入っている時計がある。エベラールの、大ぶりなスプリットセコンドクロノグラフだ。先日、車でニューヨーク州北部まで出かけたときに着用し、ストーリーズに投稿したら、6人くらいから買いたいと連絡があった。これらの時計は実際に着用すると本当に素晴らしさがわかる。大径で薄型ケース、しかも高級時計と呼ぶにふさわしいつくりでありながら、価格はさほど高くない。モナコ・レジェンド・グループにはブラックダイヤルの良個体が出ている。今日生産されている現行のスプリットセコンドウォッチなら、ほとんどどれを相手にしても私はこちらを選ぶ。本気で言っている。それほどよくできた時計なのだ。このエベラールを逃しても、アンティコルムにはブラックダイヤルの大ぶりなレオニダスのスプリットセコンドが出品されている。

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6.WG製パテックフィリップ 3428、ブレスレットと証明書付き
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これは2526ではない。技術的にはむしろ優れており、希少性も高く、WG製。さらにオリジナルの証明書付きだ! Photo courtesy of Phillips

 私がWG製のRef.2526を手放したときのことを覚えているだろうか。そう、私も覚えている。後悔しているか? いや、していない。それでもこのWG製のRef.3428を買いたいか? もちろんだ。Ref.3428はRef.2526の直系の後継モデルで、ムーブメントにはごくわずかな改良が加えられている。私がこの個体に惹かれるのは、パテック フィリップのサインが入ったメッシュブレスレット、WG製であること、そしてオリジナルの保証書が付属することだ。かつて所有していたRef.2526にあまりにも似ているため入札はしないが、これは正真正銘の時計であり、Ref.3428が何かを知る世界中の熱心なコレクターなら、きっと心を躍らせるはずだ。Ref.3428は前身のRef.2526ほど広く知られていないため、ときにRef.2526より安く取引される。だがブレスレットと保証書が揃ったこのような個体は、めったに見つからない。これを所有するためなら何だってしたい。入札はしないが、読者の皆さんからの寄付なら喜んで受け取ろう。これこそまさに“ベン・クライマーらしい時計”じゃないか。

 1960年代のパテック フィリップで、オリジナルの証明書付きのものを見つけるのがどれだけ難しいか、もう言ったっけ? ほとんど不可能なのだ。

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7.45mmで“本物の”ユニークなカリ・ヴティライネン!

ユニークなものってあるけど、これは別格だ。これは間違いなく私が買いたいカリ・ヴティライネンだ。Photo courtesy of Phillips

Photo courtesy of Phillips

Photo courtesy of Phillips

 市場で“ユニーク”だと称されるカリ・ヴティライネンの時計を、どれだけ見かけるかご存じだろうか? この数カ月だけでも10本、いや20本近くはあったと思う。デュフォー、ロジャー、ダニエルズ、ジュルヌや同時代の多くの時計師とは異なり、カリは昔から、真の意味での特注製作を手がけてきた。つまり、他の時計師よりも、自身のデザインコードを変更することを柔軟に受け入れてきたのだ。顧客が、自分にとって特別な意味があるからと、数字の向きを反転させたり、針の色合いを少し変えたりすることがある。本人はいつか手放すことになるとは思いもしないままに。そして今、その時計が市場に出ると、ディーラーは“ユニーク”だと呼ぶ。まあ、たしかにそうなのだろうが、この個体は本当の意味でユニークだ。そして不思議なことに、私たちもよく知る時計でもある。出品されている個体は直径45mmのSS製で、それに合わせて大型化したキャリバー32を搭載している。これはぜひとも所有したいカリ・ヴティライネンだ。今シーズン、いや毎週のように市場に登場するほかの“ユニーク”なカリ・ヴティライネンとは、明らかに趣が異なる。ケースとムーブメントに合わせた大ぶりなダイヤルに、カリらしいクラフツマンシップが最もよく表れている。まさに傑作だ。ダイヤルがグレーだということは、もう言っただろうか。私はグレーが好きなのだ。

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8.プラチナ製のIWC ドッペルクロノグラフ
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ハブリングがデザインしたIWCドッペルクロノグラフは、時計マニアのあいだで人気が高い。そしてこちらはプラチナ製で、きわめて希少なモデルだ。Photo courtesy of Phillips

 時計の黄金時代として、1990年代初頭のIWCを挙げたい。ドッペルクロノグラフ(スプリットセコンド)は、リチャード・ハブリング氏が手がけた同時代の最高傑作のひとつと言っていいだろう。この個体は、ハブリング氏が設計したスプリットセコンド・クロノグラフのきわめて珍しいプラチナケース仕様だ。彼自身がハブリング²で手がける時計としては、まず選ばない素材だろう(ハブリング²に貴金属ケースのモデルがほとんどないことに気づくだろうか)。モナコ・レジェンド・グループによると、この個体の製造は2000年代だが、リファレンス自体は1992年にさかのぼる。そして我々は以前、かなり詳しく取り上げたことがある。SS以外のケースのモデルを見たのはいつ以来か思い出せないほどだ。これはまさに時計マニア垂涎のエンジニアリングと、紛れもなく贅沢なプラチナが見事に融合した逸品だ。

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9.YG製のダニエル・ロート エクストラ プラット スースクリプション
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ダニエル・ロートの復活は、時計業界で最も冷淡な人々の心さえも温めた。そしてこれは、VIPやブランドの友人だけに提供される、めったにお目にかかれないスースクリプション版だ。Photo courtesy of Sotheby's

 過去5年間の時計界で、とりわけ素晴らしい出来事のひとつは、ジャン・アルノー氏、ミシェル・ナバス氏、エンリコ・バルバジーニ氏のもとでダニエル・ロートが復活したことだ。時計はどれも文句なしに素晴らしい。時計業界のネット上で、いつもの懐疑的な人々からさまざまな声が上がっていたが、複数のモデルが市場に登場した今では、デザインも品質も本当に優れているとして、ほぼ誰もが称賛するようになった。あまり知られていないのは、各モデルにYG製のスースクリプションシリーズが20本ずつ用意されていることだ。いずれもクローズドケースバックで、初期の時計への粋なオマージュであると同時に、ブランドが最も重要なコレクターに特別なものを提供するための方法でもある。

 スースクリプション仕様のダニエル・ロートが市場に出ているのを見るのは、これが初めてだ。きっと好調な結果になるだろう。そうならないとすれば、単にその価値が理解されていないからだ。ここ数週間、友人たちが着けているプラチナ製やローズゴールド製のエクストラ プラットやトゥールビヨンを何本か見た。だがYGのモデルを見れば、これがいかに特別かがわかる。実物をほかに見たことがないのだから。私自身、YGのトゥールビヨン・スースクリプションを所有している。この時計を買って揃えたいという考えが、頭をよぎったのは確かだ…。

 これらの時計の品質を知るには、ローズゴールドモデルを実機で紹介した記事を見てほしい。マークが撮影した素晴らしい現場写真も掲載している。

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10.プラチナ製のフィリップ・デュフォー シンプリシティ
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シンプリシティは、ベン・クライマーの歴代ベストリストに名を連ねており、上位にランクインしている。ジュルヌやカリのようにほぼ毎日(少なくともそう見えるほど)入手可能なものとは異なり、シンプリシティが公に販売されているのを見るのは久しぶりだ。Photo courtesy of Phillips

 生涯で最高の時計をひとつ挙げてみてと言われたら、シンプリシティは間違いなく上位に入る。誰も驚かないだろうが、今の市場にはデュフォーの時計がほとんど出てこない。そもそもシンプリシティ、デュアリティ、グランド・ソヌリを合わせても、現存するのはおよそ250本だ。つまり、オーナーたちは手放さずにいるということだ。今回の個体は仕様も魅力的だ。ギヨシェ彫りのダイヤルを備えた37mmで、本人が34mmのプロトタイプに採用したのと同じものである。先ほどのダニエルズと同様、推定落札価格は30万スイスフラン台(約5700万円)から始まる。時計製造史における偉大な独立時計師のひとりが手がけた時計が、2次流通市場で売られている時計史上の重要性がほとんどない新世代の時計師たちの時計と少しでも近い金額で落札されたら、私は個人的に憤慨するだろう。

 高値で落札されると思うし、そうあるべきだ。フィリップ・デュフォーがいなければ、スイス生まれの独立時計師たちの一世代は、手本となる存在を持てなかっただろう。シンプリシティがなければ、超精緻な仕上げの技術が今日の水準に達することもなかったはずだ。そして、仕上げの技術でデュフォー氏に肩を並べる新世代の時計師がひとり、ふたりと登場しているとはいえ、レジェップ・レジェピ氏でさえ、シンプリシティを生み出したフィリップへ感謝の念を抱いていることは明らかだ。シンプルでエレガントでありながら、驚くほど緻密に仕上げられた時刻表示のみの時計を広く知らしめたのが、このモデルである。そして、そうした時計を求める人々の欲求は尽きる気配がない。

 量産型のジュルヌが150万ドル(約2億3678万円)で落札され、SS製のアクリヴィアが380万ドル(当時のレートで約6億円)に達する時代に、スイス独立時計師の典型とも言えるこの時計はいくらの価値を持つのだろう。正直なところ、私にもまったくわからない。だが、結果を見るのが待ちきれない。

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ボーナス:スクールウォッチが多数、なかにはなんと1スイスフランから購入できるものも!
Ten Watches I Actually Care About This Fall Auction Season

Photo courtesy of Antiquorum

 ブランドには興味がなく、とにかく面白い時計が好きな人に向けて、アンティコルムには“エコール”ウォッチ、つまりスイスの時計学校で学生たちが学びながら製作したり、ときには腕試しするために使ったりした時計が多数出品されている。文字どおり開始価格1スイスフラン(約190円)から始まるものもあれば、複雑機構を備えたパテック フィリップやオーデマ ピゲにそっくりなものもある。私のお気に入りのなかには、当時の象徴的な時計を明らかに手本にしたものもある。エル・プリメロを模したこのクロノグラフや、ロレックスかギャレにも見えるが、実際にはどちらでもない時計などだ。

 これらのスクールウォッチをぜひご覧ください。