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さて、まずはっきりさせておきたいポイントがある。新しいロイヤルオーク「ジャンボ」エクストラシンは「サーモンダイヤル」を持つとされているが、事実はそうではない。写真を見て欲しい。オーデマ ピゲ提供の画像も参照すると、文字盤がブラウン寄りのピンクゴールド色であることが分かるだろう。AP自身による説明でも「ピンクゴールドトーンの文字盤」とある。もちろん、サーモンと呼んでもよいのだろうが、大体サーモンとは何を意味するのだろう?
僕らが実際に目にするのは、ホワイトゴールドのインデックスと針を持つ、温かなゴールドダイヤルを誇る39mmホワイトゴールド ロイヤルオークだ。オーデマ ピゲの自動巻きムーブメント2121を使ったこの15202BCは1万9900振動/時 でパワーリザーブは40時間、厚さわずか8mmである。また、本機はトゥールビヨンでもスーパーソヌリでもないが、僕にとってはこれこそがAPの目玉ウォッチである。僕は15202BCの実機を見る前に紹介記事を書いていたが、その時僕は“プレシャスメタルのロイヤルオークには何か非常に特別なものがある”という持論に至っており、このモデルも例外ではない。
このロイヤルオークを「サーモン」の愛称で呼ぶ程に僕は親しみを感じていないけれど、概ね似た色といえるサーモンを配色したバックストーリーに思いを馳せ、そこからこの2019年限定モデルがどのように生まれたのかを考えてみるのも興味深いことだろう。
「サーモン」ダイヤルが配されたロイヤルオークの歴史は、ロイヤルオーク ジュビリー14802STが1000本限定モデルとして発売された1992年へと遡る。これらのほとんどはSS製だが、少数がYG製が作られ、さらにわずかにPTモデルもあった。2000年代中期にはさらにサーモンダイヤルモデルが製造され、41mmのWGケースを纏ったクロノグラフ・25960BC(まさにサーモンダイヤルを採用していた)や、パーペチュアルカレンダーの39mmモデル・25820PT(今なお、かなりの存在感を放つ)などがある。
新モデル15202BCはサーモンに近い色味といえるが、25820PTのようなモデルのカラーリングと比較すれば、僕が言わんとしていることが分かると思う。参考のために、われらがリーダー・ベン(BEN CLYMER)所有の25820PTの写真を以下に示す。異論の余地はあるだろうが、日付のサブダイヤルを見れように、いわゆる「プチ・タペストリー」の「サーモンダイヤル」はややピンク寄りなのだ。
色の違いはさほど大きくないと言って差し支えないと思うが、一方15202BCはピンクというよりは確かにブラウン寄りである。歴史のレッスンは省くとして、今回の15202BCは限定75本なので、このSIHHは僕にとって、実際に装着できる唯一の機会となるだろう。お察しの通り、僕はこの機会を最大限に享受した。
39mmのサイズ感は完璧で、過去に書いた通り、プレシャスメタルのロイヤルオークは、特有の重さと感触を持っている。フルゴールドバージョンも賞賛に値するが、このゴールドトーンの文字盤とWGのケースとの組み合わせには間違いなくクールでさりげない何かがある。感触が良く、見た目も素晴らしい。
けれど、受け止めなければならないのは、 この15202BCは本質的に既存モデルのカラバリであり、APの“本領発揮”に過ぎないのだ。にもかかわらず、市場の状況を鑑みれば分かるように、ブティック限定のこのモデルは収集価値が高く、入手することは極めて困難である。オーデマ ピゲが世界中で運営するブティック約50店でわずか75本ということは、ほとんどのブティックには1本しか行き渡らず、つまり皆さんが購入希望であれば、ブティックのトップ顧客にならなければならない。
580万円の価格で、薄くも存在感をさりげなく語るこの一本は、これからますます希少価値が付くだろう。このように、半世紀経っても変わらない美しさを求める方にとって、この15202BCこそ想像しうる最高の形だと思う。
編注:この記事は、15202BCが限定75本ではなく2019年の本数が75本であるとするオーデマ ピゲからの新情報により、2019年3月8日に改訂・更新された。
詳細はオーデマ ピゲ公式サイトへ。